もう一人の勇者   作:Katarina T

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少女、夏の終わり

「うむ……つまり、あのリゾート所有権を不良達にばらまき、群島全体でリゾート狩りという、その島の所有権をめぐる争いが起きるように仕向けていたのが、オクトパスバンク延いては、カイザーコーポレーションで………

 その経営統括をそこにいるお祭り運営委員会にすることで、百鬼夜行の信用を落とそうとしていたと…………

 ……そう言う事であってるか……先生。」

 

“うん…それで合ってるよサオリ。ザックリとした説明になっちゃったけど、伝わったようで良かったよ。”

 

サオリは、今回の騒動の全貌を先生から説明して貰っていた。

 

説明を聞き終えたサオリは、深刻そうな顔をしながら悔し気に拳を震わせる。

 

「…くっ!まさかそんな所からの依頼を受けてしまうとは…………また、私は騙されてしまったのか!?」

 

サオリは改めて先生と横で一緒に説明をしていたシズコの方に向き直ると、深々と頭を下げて謝罪をし始める。

 

「依頼であったとは言え、先生達に危害を加えてしまい……本当に申し訳ない。」

 

「ああもういいですから……顔を上げて下さい。」

 

「しかし……」

 

「いいんです。大体悪いのはあのカイザーであってあなた達じゃないんですから………それに最終的にはあなた達もカイザー兵達を倒すのに協力してくれましたから、私はそれでいいです。」

 

“サオリ…シズコもこう言ってくれてるから、もう気にしなくていいんじゃない?”

 

「………………。」

 

責任感の強いサオリは、少し納得できていないようだったが、先生とシズコの言葉を聞き少し悩んだ末………

 

「……分かった。その気遣い感謝する………ありがとう。」

 

と、自分を納得させることにしたようだ。

 

サオリは最後にシズコにお礼を言うと、それ以降は頭を切り替えるように今後のことを考え始めた。

 

「………ええっと……それはそうと…いい加減止めに行った方がいいんじゃないですかね………あれ」

 

サオリとの会話にひと段落付くと、シズコはある一角の方を指さしながら、若干戸惑いながらそう言ってきた。

 

 

 

「ひぃ~ん……ホシノちゃんごめんなさ~い。」

 

「そう言ってユメ先輩は、何度も何度も騙されて………もう少し相手のことを疑って下さい!少女ちゃんとシロコちゃんも変な依頼をホイホイ受けたりしないこと!!」

 

「はい。分かりました……ホシノ……」

 

「………ん。反省してる。」

 

シズコが指差した先には、少女、ユメ、シロコの三人が揃って正座させられており、三人の眼前には後輩の前ではほとんど見せない“暁のホルス”モードのホシノが仁王立ちで説教をしている姿だった。

 

どうやら今回の依頼で危うく騙されかけた事から今後の彼女たちの万事屋としての活動が不安になってしまったようで、ホシノは結構大真面目に三人に説教しており、カイザーとの戦闘が終了してからずっとこの調子であった。

 

怒られてる三人は余りの長時間の説教に皆、元気を無くしており、普段元気な少女も今は、見る影もなく呆然と虚空を見ている。

 

先生も流石に可哀想と思っていたので取り敢えずホシノを落ち着かせて、少女たちを解放してあげた。

 

漸く解放された少女達は、各々体を大きく伸ばしながら先程まで正座させられていたため、凝り固まっていた体をほぐした。

 

そんな少女達の下にサオリがやって来て、先生から聞いた話をかいつまんで説明していった。

 

「………というわけだ。」

 

「へぇそんなことになってたんだ……はっ!シロコちゃん、まさかそれに気付いたからいきなり襲い掛かったの!?」

 

「………いや違う。ただカイザーにムカついてただけ………」

 

「あっ………そうなんだね………」

 

「いいじゃないですか。シロコのおかげで私達も先生達と戦わなくて済んだわけですし。シロコ、ナイス判断です。」

 

「んっ。」

 

少女とシロコは互いにサムズアップしながら健闘を称え合っており、ユメはそれでいいのかなぁと思いながら頬を抓っていた。

 

「…とにかくもうこの島にいる理由はない。先生達の問題も無事に解決しているらしいから、これ以上面倒なことになる前にこの島から離れた方が良いだろうな。」

 

「ですが、カイザーコーポレーションはもう撤退したんですよね……だったらそんなに急いで離れる必要もないんじゃ………ん。あれは……」

 

少女とサオリがそう話していると、少し遠くの空から一機のヘリが少女達の居る方へとやって来ていた。

 

少女が最初にそのヘリに気付き声を出すと、他の皆もそのヘリの存在を認識する。

 

さらにサオリは、そのヘリに描かれているシンボルからそのヘリが何処に所属しているものなのかまで、ハッキリと理解した。

 

「あれは………まさか連邦生徒会の連中か!だとしたら不味いな!少女ちゃん、ユメ、シロコ今すぐにこの場をはなれるぞ!」

 

「えっ急にどうしたのサオリちゃん?その連邦生徒会の人たちが来るのが、何で不味いの?」

 

「説明は後だ!兎に角急げ!」

 

少女達、フェリクスのメンバーはサオリにせかされるまま急いで身支度を整えると先生や対策委員会、お祭り運営委員会の皆へのお別れの挨拶もそこそこに足早に自分たちが乗って来たヘリに戻ってきた。

 

「全員乗ったな。……離陸するぞ。」

 

サオリの言葉に合わせて少女達を乗せたヘリが空へと飛びあがり、ロスト・パラダイス・リゾートより離れていく。

 

距離が離れてドンドン小さくなる島をヘリの窓から眺めながら、少女はサオリに対して質問を投げ掛けた。

 

「サオリ、どうしてあんなに急いであの場所から離れる必要があったんですか、私達特にスケジュールも入って無かったと思うのですけど。」

 

「………私とシロコは連邦生徒会に会うと面倒なことになるからな…だから急いで出発したんだ。」

 

サオリはそう言うと、一呼吸置いた後、少女とユメに話しかけて来た。

 

「少女ちゃん、ユメ、……すまない本当なら二人は関係ないことの筈なのに巻き込んでしまったな……」

 

サオリは申し訳無さそうにそう謝ってくる。

 

サオリの言葉にシロコも自分に責任があると感じて、表情を暗くしてしまう。

 

そんな中少女とユメは何でも無いような雰囲気で二人に話しかける。

 

「そんなことありません。仲間の問題なら、私にとって関係なくないです。だから気にしなくていいですよ。むしろ遠慮なく巻き込んで欲しいです。」

 

「少女ちゃんの言う通り私たち仲間何だし、全然大丈夫だよサオリちゃん!シロコちゃん!」

 

そんな二人の言葉に安心したのか、サオリは一言「……ありがとう。」と言いシロコは黙って少女のことを抱きしめた。

 

少女たちを乗せたヘリが青い海の上を飛んで帰路について行く。

 

こうして、少女にとって初めての長い夏は、素敵な思い出と共に幕を閉じるのであった。

 

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