もう一人の勇者   作:Katarina T

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少女、混乱中

「ああやっぱりアリスだ!変な格好してるから一瞬誰かと思ったよ!でも今日はシャーレの当番だからって朝から張り切ってたのにこんなところで何してるの?あ!もしかして先生に何か頼まれたからここに来たの?」

 

とても明るい声で目の前の女の子は、少女に話しかけてくる。

とても親しげに…………目の前の少女ではない…………違う誰かに向けた言葉を紡いでいく。

少女はまだ廃墟で目覚めたばかりで、女の子とは勿論初対面のはずだ。

………だというのに、どういうことか、胸の奥から湧き上がる今までとは全く違う“何か”が少女の頭をいっぱいにする。

 

 

 

………ああ……どうして……どうしてこんなに…………

 

 

 

…………“さみしいの”…………

 

 

 

 

……それはきっと本来なら持ってはいけなかったもの、キヴォトスを滅ぼす兵器(少女)には、決してあってはならない不純物(とても大切なもの)。

 

(ポロポロ)

少女の瞳から大きな水滴がこぼれ落ちる。

 

「アリス!どうしたの!」

 

目の前の女の子が心配そうな表情を浮かべ少女の顔を覗き込んでくる。

 

すると、突然少女の頭に激痛が走りだした。

 

「っ!うぅぅぅぅぅぅ………」

 

廃墟で経験した時より、もっと強い痛みに少女は頭を押さえてうずくまる。

 

(いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ痛い!!)

 

「アリス!!ねえ大丈夫!!しっかりして!!」

 

女の子が慌てたように少女に声を掛けてくるが、少女は襲い掛かってくる痛みで女の子の言葉を気にする暇がない。

 

少女は何とかしてこの痛みから逃れようと、痛みの原因を必死になって考える。

 

(なんで!なにが!どうして!なになになにナニナニなに!!)

 

頭の痛みは治まることなく、寧ろ強くなっているかのように増していく。それとは対照的に思考は冷静さを失いまともに考えることができなくなる。

 

 

そこでふと少女の頭にある考えが浮かんだ…………

 

痛みに耐え薄く目を開けると、相変わらず慌てた様子でこちらを心配する女の子が目に留まる。

 

 

 

………コイツだ…………コイツがアラワレテからダ…………

 

…………ならコイツを■■せば…………

 

 

 

少女は自身の背にある武器に手を伸ばそうとしたところで、胸の内から来る“強烈な何か”がその考えを吹き飛ばす。

 

(コノこをキづツケル・・・・・・?)

 

(…………イヤ……イや…………いや…………嫌…………嫌だ!!!)

 

少女はハッと我に返ると、頭の痛みに耐えながら立ち上がり目の前の女の子から距離をとる。

 

「アリス!!!」

 

女の子が知らない人の名前を叫びながらこちらに手を伸ばしてくる。

 

少女はそれを無視してUFGを使い高速で移動しながら女の子から離れるように距離をとる。

 

少女があの女の子を決して傷つけないように必死になって移動する。

 

もうかなりの距離が開いたというのにまるで何かから逃げるようにおびえるように少女は止まることなくがむしゃらに走り続ける。

 

 

…………その瞳から流れる涙に気付くことなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリス!!!」

 

才羽モモイは、苦しそうにうずくまっていた自分達の大切な仲間が、謎の機械を使い何故か自分から逃げるように行ってしまったことに驚き固まってしまうが、それも一瞬のことであった。

 

どんな事情があるか知らないけど、自分達の大切な仲間が困っているのにアレコレ悩んでいる暇がないとばかりにモモイは携帯を取り出し電話をかける。

 

「何はともあれ先ずはアリスを見つけないと!」

 

ピピッピ、ピピッピ、

 

「もしもしお姉ちゃん新作のモソアソ買えた?」

 

電話が繋がると落ち着きのある妹のミドリの声が電話から聞こえて来た。

 

「それどころじゃないんだよ!」

 

「お姉ちゃんどうしたの?かなり慌ててるようだけど」

 

「詳しい事情はあと!とにかく今すぐアリスを探さないといけないの!ミドリもユズと一緒にアリスを探して!!」

 

「え?アリスちゃん?アリスちゃんならここで先生と一緒にゲームしてるけど」

 

「…………え」

 

モモイはミドリの有り得ない言葉に今度こそ固まってしまう。

だって自分はさっきまで、確かにアリスと会っていたはずなのだから。

 

しかし改めて冷静に考えてみると、少女は一度も私の名前や自分自身の名前を言わなかったし、いつもより大人しい雰囲気だった。

何よりあの少女のヘイローと瞳の色は、アリスとは違い碧色をしていたことを思い出した。

 

ならさっきの娘は一体…………

 

モモイは再程まで一緒にいた “泣いて寂しそうにしている少女” のことが頭から離れず、少女が去っていった方をじっと眺めた。

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