もう一人の勇者   作:Katarina T

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少女、待ち望む

「良かったですね、ケイ。……ケイ?」

 

少女が反応がないことに不思議に思い、隣にいるケイに目を向けると、先ほどまでそこにいたはずのケイの姿がどこにもなかった。

 

少女は驚いて急いであたりを見回すと、少女たちが入ってきた扉の先の廊下を来た道を戻るように全力で走っている自分そっくりの後ろ姿を見つけた。

 

「あ、居ました。ケイ、待ってくださーい。」

 

少女は腰のホルスターから素早くUFGを抜くと、ケイが進んでいる方向へと射出した。

 

ぱしゅっん、という軽い音がなるのとほぼ同時に少女の姿がぶれると高速でケイの目の前へと移動する。

 

「わっ!?しょ、少女姉さん!」

 

いきなり少女が目の前に現れたことに驚いて、ケイは足を止めて固まってしまう。

 

少女は固まっているケイに向かって、両手を大きく広げるとそのまま飛びかかるように抱き着いた。

 

「少女姉さん!やめて!離して!!今すぐこの場から逃げないと!!」

 

「ケイ、落ち着いてください。どうして逃げなきゃいけないんですか。せっかくリオがケイの体を準備してくれたんですよ。」

 

「だからですよ!!リオが準備したという時点でもうすでに嫌な予感しかしません!!絶対にろくなことになりませんよ!!」

 

「そんなことありません。きっとケイも気に入るはずですよ。」

 

そんな夢物語あるわけありません!!!!

 

腕の中で暴れるケイをなんとかなだめようと少女は必死に声を掛けるが、ケイは聞く耳持たずと言った具合に一刻もこの場から離れたいのか、普段であれば絶対にしないであろう少女の腕からの脱出に全力を尽くしていた。

(ちなみにアリスは突然意識が切り替わった事や普段落ち着いているケイの必死な様子に驚いて、頭の中で目を丸くしている。)

 

そんな姉妹の攻防戦に割り込むように大量のAMASが二人を取り囲むように現れた。

 

突然現れたAMAS達に少女とケイが驚いていると、そのAMASの輪をかき分けるように現れたリオが若干困惑したように話しかけてきた。

 

「二人とも一体どうしたのかしら?まるで逃げるようにいきなり走り出して?」

 

「まるでではなく、実際逃げようとしているのですが………。それよりもなぜ私たちはAMASに囲まれてるのですか。」

 

「…………過去、私が犯してしまったことで貴方が私を信用できないのは、重々理解してるわ。…………それでも、今は私を信じて欲しい。」

 

リオは、普段の冷静な表情に若干の後悔の色をにじませながら、努めて真摯に少女たちに向き合おうと真っ直ぐ二人のことを見据えていた。

 

少女はそんなリオの想いが伝わったのか、もしくはリオの真剣な表情から何かを読み取ったのか、ケイを抱きしめる腕の力を強めながらリオのことを見つめ返す。

 

「リオ………。……大丈夫です。過去に何があろうとリオはリオです。私をアリスお姉ちゃん、そしてケイに合わせてくれたリオのことを私は信じてますから。私は仲間のことを絶対に疑ったりしません。」

 

「少女ちゃん………。ありがとう。」

 

「いえ、私は別にあの時のことでリオのことを疑っている訳ではなんですが………。あと少女姉さん、もう少し力を緩めて下さい……、さすがに貴方の力(怪力)で締め上げられと苦しくなってくるのですが………。」

 

「ミレニアムセミナー会長の名にかけて、絶対に後悔させない結果にしてみせるわ。」

 

「はい。ケイをよろしくお願いします。」

 

「ちょっと!いい加減、私の話も聞いて下さい!っていつの間にかAMAS達がすぐそばに!!まっ待って下さい!話はまだ終わってませんよ!!せめてどんな体を用意したのか教えてください!聞いてるんですか!!うえあああああ!」

 

そんなこんなで、ケイはAMAS達に担ぎ上げられリオと共に研究所の奥へと運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイとリオが部屋の奥へと進んで行くのを見送った少女は、二人が帰って来るまで部屋に置てある腕が四本ある奇妙な形をした人型の置物を不思議そうに眺めたり、部屋に散らかっている書類やゴミ袋などを片付けたり、武器の整備をしながら二人が帰ってくるの待っていた。

 

―――そうして待つこと数十分。少女がロボット犬を膝に乗せてじゃれ合っていると二人が出て行った扉が開き、そこから部屋に入ってくる()()()の足音が聞こえてきた。

 

少女はその音に気付くと膝上のロボット犬を抱きかかえながら立ち上がり扉の方を振り向くと、そこにはリオとアリス、そして……

 

 

「少し時間がかかったけど、無事に成功したわよ。」

 

「はい!少女ちゃんお待たせしました!これがケイの新しい姿です。」

 

 

 

「アリス姉さん……。少し恥ずかしいのですが。」

 

 

満面のアリスに背中を押された少女と同じくらいの体格の白髪の女の子。

 

「ケイ、ですか……。」

 

「……はい。ケイです、少女姉さん。」

 

自分達と瓜二つの見た目をしたケイが、恥ずかしそうにそこに立っていた。

 

「――っケイ!」

 

少女は目の前の人物がケイであることが分かると満面の笑みを浮かべながらケイたちの方へと駆け出すと、ケイをすぐ後ろにいたアリスごと飛びつくように抱きしめた。

 

「ケイ。ケイなんですね。凄くかわいいですよ。」

 

「はい!少女ちゃんの言う通りケイはとってもかわいいですよ!」

 

「あ、ありがとうございます///」

 

少女に呼応するようにアリスもケイと少女を抱きしめ嬉しそうな笑顔を浮かべ、中心にいるケイは二人から抱きしめられ少し苦しいやら恥ずかしいやらで顔を赤くしながら、それでも二人と同じように頬を緩ませていた。

 

そんな三人の様子を微笑ましく見つめていたリオに少女は明るい声で話しかける。

 

「リオ。本当にありがとうございます。こうして三人でいられるのもリオのおかげです。」

 

「その通りです!リオ先輩のおかげで、アリス今とっても嬉しいです!」

 

「……ええ。その通りですね。リオ、貴方には私もいろいろ感謝しています。」

 

「い、いえ、大した事ではないわ!そ、それより、体の調子はどうかしら、なにか不調があったらすぐに調整するわ。」

 

三姉妹の真っ直ぐな感謝に思わずたじろいでしまったリオは、赤くなる頬を誤魔化すように話題を変えようとする。

 

「いえ、今のところ不調らしい不調はありません。四肢の稼働も声の発音も問題なく行えてます。」

 

「そう良かったわ。以前エンジニア部が作った物を参考に作ったけど、どうやら正解だったみたいね。……でも本当にそのボディで良かったの?もっと機能的なものや性能のいいものもあったのだけど?」

 

「ええ勿論、この体で満足しています!というか最初にこの体を進めてください!!なんで初めに紹介されるのが四腕に足がキャタピラのロボットになるんですか!!」

 

「あれは最新型のアバンギャルド君(コーヒーメーカー付)よ。以前までのアバンギャルド君より性能が1.3倍上昇してる上に情報整理や炊事、洗濯などの様々なことをしてくれるわ。あと何時でも美味しいコーヒーを入れてくれる優れものよ。やっぱりあっちの方がいいんじゃないかしら。」

 

「機能がいいことは分かりましたけど、デザインが壊滅的に悪いじゃないですか!!なんなんですかあの頭!」

 

「……??実に前衛的(アバンギャルド)じゃない?」

 

知りませんよ!!?

 

―――と言った会話もあったが、一先ず無事にケイの新しい体を手に入れた少女達は、リオに再度お礼を言うと仲間たちの待つゲーム開発部の部室へ向かうためにリオの研究所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□

 

少女たちを見送ったリオは、無事に終えられたことに安堵したようで、モニター前の椅子に座りながら、ふーーっと息を吐き瞳を閉じる。

 

少しの間、閉じた視界に先ほどまでの三人の顔を思い浮かべつつ口元を緩ませていたリオだったが、再び目を開けた時にはいつもと同じかそれ以上に真剣な表情を浮かべ、目の前の端末を操作し始める。

 

いまリオが抱えている、一番大きなタスク。

 

―――――もしかしたらキヴォトス全体の危機に繋がるかもしれない問題を解決するために。

 

 

そんな時、捜査している端末に通信が入ってくる。

 

リオは通信相手を確認すると、直ぐに応答するするため通話機能を起動した。

 

「トキ、そちら側でなにかあったの?」

 

通信相手はC&Cコードナンバー4の飛鳥馬トキ。以前リオと共に行動しており、リオ直属のエージェントでもあった彼女は、いまリオから頼まれたとあることの調査の為、ミレニアムより離れた場所にいる。

 

そんな彼女からの突然の通信にリオは現地で何かあったとすぐさま予想を立ててトキの返事を待つ。願わくば何事も起きていないという淡い願いを込めて。

 

しかしそんなリオの願いを裏切るように現実は非情である。

 

トキは、リオの問いに肯定するように重々しい口調で返答した。

 

『……はい。それが現在、非常に厄介な事態になっています。実は―――――――』

 

 

 

『―――――という訳です。』

 

トキからの報告を聞き、リオは今事態が厄介な方向に傾いていることに気が付いた。

 

「……そう。……そちらの状況については概ね分かったわ。私も詳しく調べてみるけど恐らくヒマリの考えている通りね。」

 

『ッ!?ですが!』

 

通信越しでも分かるほどに珍しくトキが慌てているが、リオはそれに気にすることなく話を続ける。

 

「トキ……。悪いけど、()()()にも聞こえるようにしてくれないかしら。」

 

『……はい。了解しましたリオ様。』

 

トキの操作により通信方法を変更し、こちら声とついでに姿もあちらにいる全員に共有できるよに設定を変更した装置を見つめる。

 

リオの見る装置の画面には、あちら側の景色、分厚い雲のせいで薄暗い凍原ととある調査、デカグラマトンという未知の脅威の調査に赴いていメンバー。トキと特異現象調査部のヒマリとエイミ、そして先生の姿が写し出されていた。

 

リオは、画面に写っている面々の顔を一通り、見回すと重々しく口を開いた。

 

 

 

「……そちら状況は、たった今トキから聞いたわ。まだ情報不足な上分析中だからはっきりとは言えないけれど……今の状況を打開するには、……アリスとケイ、そして少女ちゃんの力が必要になるわ。」

 

 

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