メモロビ 名無しの少女の贈り物
何時ものようにシャーレで大量の書類に追われていると、唐突にモモトークにメッセージが入ってきた。
誰からだろうと送り主の名前を確認すると、名前欄には少女ちゃんと表示されていた。
急いで内容を確認すると
『軍師よ……少しばかり其方の知恵を貸してはくれぬか…………』
『もはや私ではどうすることも出来ぬのだ…………』
『だからこそ恥を忍んで頼む……軍師よ』
『かの駄菓子屋で其方が来るのを待っておるぞ。』
このような内容が書かれていた。
何が何だか分からないが、何やらただ事ではなさそうだ。
私は急いで駄菓子屋へと向かった。
…………駄菓子屋に駆けつけると、店の前で少女ちゃんがこちらに向かって手招きをしていた。
「あっ先生ー。こっちです。こっち。」
“やあ、少女ちゃん。何か困り事があるみたいだけど、どうしたの?”
私が少女ちゃんの近くまで行きそう訊ねると、少女ちゃんは少し恥ずかしそうに体を揺らしながら話し出した。
「実はですね。………パーティメンバーに内緒で贈り物をしたいんです。」
“贈り物?それってユメやサオリ、シロコに対して?”
「はい…。いつも皆にはたくさんのものを貰っているので……偶には私からそのぉ……何か報酬を用意したいと思ったんです。」
どうやら少女は、いつもの自分と一緒にいてくれるお礼をする為、パーティメンバーにプレゼントを贈りたいらしい。
しかし、プレゼントを送るのが照れくさいのか、いつもよりも声に勢いがない。
“それは分かったけど、皆には内緒なの?”
「はい。こういうのは内緒にしていた方がいいとおばあさんが言ってました。ですのでこれは、シークレットミッションです。」
少女は先程までの照れたような顔から一変して少し真面目な表情になると、唇に人差し指を当てながらやる気を出していた。
「ですので、本来は私一人の単独クエストの予定でしたが…………あいにく私には経験値不足なようで、何を送ればいいのか分からないんです………」
少女は、今度は落ち込んだように下を向いてしまった。
まあ無理もないだろう。この子は目覚めてまだ数ヶ月もたっていないのだから、いきなり一人でプレゼントを選ぶのは厳しいものがあるのだろう。
「ですので先生………私に力を貸してください。」
少女ちゃんの話を聞き、そう言うことならっと私は、少女ちゃんの方を向きながら応えた。
“もちろん!協力させてもらうよ!”
「わぁっ本当ですか。ありがとうございます先生。ぱんぱかぱーん、先生が仲間に加わりました。では、早速行きましょう。」
…………少女ちゃんに手を引かれて私は、ブラックマーケットの商店が並ぶ通りにやって来ていた。
商店に並べられている物品は銃火器や胡散臭そうな置物、果ては毒々しい色をしたよくわからない食べ物など、とてもじゃないがプレゼントに適したものが置いてあるとは思えなかった。
「ううん。やはりこのエリアで目的のものを発見するのは困難です。」
少女ちゃんはざっくりと商店に並べてある商品を見て回った後、肩を落としながらうなだれていた。
「しかし、どこに行けばいいんでしょう。」と悩んでいる少女ちゃんに向かって、一つ提案をしてみることにした。
“だったらいい所があるよ。”
「それは本当ですか。」
“うん。デパートに行ってみない?”
「デ、デパート……ですか。」
私は近くに大きめのデパートがあることを思い出し、そこなら皆へのプレゼントの選択肢も増えて良いだろうと思ったのだが、何やら少女ちゃんの様子がおかしい。
何処か緊張した様子の少女ちゃんが何故か覚悟を決めた眼差しで私を見てきた。
「デパート……よもやあの戦場へ足を運ばなくてはならないとは…………しかも今回の私は単独クエストに加え、先生と言う警護対象が一緒に行動するというこの状況…………これは高難易度ミッション………準備も万全とは言えませんが…………仕方ないです。先生、行きましょう。」
その様に気合をにじませて私の方を見つめている少女ちゃんに私は慌てて、先の言葉の意味を問いかけた。
“いやいや少女ちゃん!一体何処いこうとしてるの!?”
「デパートですよね。前に皆と一緒に行きました。………確かにあそこは聞いていた様に戦場でした。
…………ですが心配いりません。例え私一人でも、先生のことは私が絶対に守って見せます!」
少女ちゃんが決意の籠った瞳で堂々と私を見てくる………そこには必ず私を守るという強い意志が感じられた。
やだ…少女ちゃんカッコイイ…………
なあんて馬鹿なことが一瞬脳内を横切ったが、直ぐに正気を取り戻し少女ちゃんの認識を修正する。
“しょ、少女ちゃん、デパートはそんなに危ない場所じゃないんだよ……”
「先生、油断は禁物です。サオリがいつも言っています。どんな時でも不測の事態を予想し、心構えをしておかなければ、戦場では生き残れないと。」
“うーん。でもほら、せっかく皆のプレゼントを選ぶんだし……戦闘よりそっちの方に集中した方がいいんじゃないかな?”
私の言葉に少女ちゃんが少し考え込むと、ハッとした表情で私を見てきた。
「確かにその通りです。今回の優先事項は戦闘ではなく探索………つまり極力戦闘を避けて行動しなければならない…………そう言うことですね先生。」
“ま、まあそういうこと……なのかな?”
「おお。流石先生、見事な判断です。………ではスニーキングミッションで行きましょう。レッツゴーです。」
“じゃあいこっか。”
私は少女を連れてブラックマーケットから、デパートへと移動した。
デパート内は休日ということもあり、まあまあの人で賑わっていたが、混み合っていると言うわけでもない為、私と少女ちゃんはゆっくりデパート内を物色していった。
デパート内を移動している時に、少女ちゃんが前回デパートに来た時のことを楽しそうに話してくれた。
例えば、ユメと一緒に美味しそうなお菓子を見て回ったとか、
例えば、サオリに似合う化粧品を皆で選んで買ったとか、
例えば、シロコにアウトドア用品の解説をしてもらって少し詳しくなったとか、
本当に楽しそうに話す少女ちゃんに何だかこちらまで嬉しくなってしまった。
…………ただ、いくら人でごった返していたとしても、安易に制圧しようとしたことは注意しないといけないなぁと私は心の中で思った。
………えっ警護ロボットが暴走して、本当に戦場になったことはどう思うかって?
……………………まあ、キヴォトスだし………そんな事もあるよね……
その様にしばらくデパート内を歩いていると………少女が突然ある商品ケースの前で止まり、置かれていた品物をジッと見ていた。
「うわぁ…これすっごく綺麗です。」
少女ちゃんが見ていたのはブレスレットであり、どうやらここはアクセサリー売り場のようだった。
そのブレスレットは薄く鮮やかな黄緑色を基調としたバングルタイプの物であり、頭に星型の飾りが付けられ、星の中央には少女の瞳と同じ“碧色の宝石”がはめ込まれていた。
「先生。私これがいいです!」✨
少女ちゃんが目をキラキラと輝かせながらそのブレスレットを指差している。
よく見ると珍しく四つセットの物のようで、説明欄に大切な人に送る贈り物にぜひ!!と書かれていた。
“大丈夫?結構な値段みたいだけど…良ければ私が買おうか?”
私の財布もそこまで余裕があるわけではないが、大切な生徒のためならと財布を出そうとしたが、その前に少女ちゃんが止めてきた。
「ダメです。これは、私が皆に贈るものなので、自分で入手しないと意味がありません。………それに軍資金はちゃんと用意してきたので問題なしです。じゃじゃじゃじゃーん。」
少女ちゃんが財布の中を私に見せてくれた、確かにかなりの額が入っているようだ。
思い返せば、少女ちゃんはブラックマーケットでは結構有名な賞金稼ぎとして活動していたことを思い出し、私は一人納得していた。
そう考えているうちに少女ちゃんはブレスレットを購入しようと、店員のロボットに話しかけていた。
「こちらの商品には、裏に名前を彫り込む事が出来ますが、いかがいたしましょうか?」
「名前ですか。」
「はい。そうすることで世界でただ一つの贈り物になると好評です。」
「世界で一つ……つまりすっごくレアなアイテムになるってことですか!ぜひお願いします!」
「はい。でしたらここに彫り込む名前の記入をお願いします。」
少女ちゃんは渡された紙に、かけがえのない仲間の名前を書いていく。
が、最後の一行……少女ちゃんの分に書く欄で手が止まってしまう。
……そうだった、この子には、まだ名前が無かったんだった。
「お客様いかがされましたか?」
“少女ちゃん……”
突然止まってしまった少女ちゃんを心配した私と店員が呼びかけると、少女ちゃんは店員の方を向いて話しかけた。
「すいません。少しワガママを言っていいですか。」
…………デパートで買い物を済ませ私は、日も傾き始めて夕暮れの道を少女ちゃんと一緒に歩いていた。
「今日は本当にありがとうございました先生。おかげで無事にミッションコンプリートです。」
“ううん私も楽しかったから、気にしないでいいよ。”
「先生も楽しかったですか。私も先生との冒険とっても楽しかったです。」
少女ちゃんの明るい笑顔を見ながら、私は気になっていたことを問いかけた。
“ねえ、少女ちゃんは名前が無いことは辛くない?”
「うん?どうしたんですか。突然。」
“いやさっきの事があったから、少し気になっちゃってね。”
本来ならこんなストレートに聞き出すような事はしないのだが、私はどうしても今目の前にいる少女の本心を知りたかった。
もしかしたら、外には見せないだけで、本当は悲しんでいるとしたら……私は先生として彼女の力になってあげたい…………
…………しかし、そんな私の考えとは裏腹に少女ちゃんは全く変わらず楽しそうな笑みを浮かべていた。
「全く辛くなんてないです。」
“それは本当かい?”
「はい。本当です。」
少女の笑みが更に輝きを増していく。
「確かに独りぼっちの時は、とっても辛かったですし、寂しかったです。」
過去の辛さを吹き飛ばすように、
「でも、今の私は独りぼっちじゃありません。」
今をちゃんと生きていることを証明するように
「ユメ、サオリ、シロコそして先生……他にも私には沢山大切な人が出来ました。」
夕日よりも眩しい笑顔を浮かべて名前の無い少女は…………
「だから私、今とっても幸せです!!!」
自分がこの世界の誰よりも幸せであるかのようにハッキリと応えた。
“そっか……うん!それなら良かった。”
その姿を見て満足した私は少女ちゃんと話をしながら帰路について行った。
…………後日ブラックマーケットで噂の黄緑色のヘルメット集団の手首にお揃いのブレスレットがはめられていたという。
中心にはめ込まれた“ブルーダイヤモンド”がきらりと輝いていた。
-少女のブレスレット-
少女が皆に贈ったお揃いのブレスレットであり、仲間のしるし
裏には各々の名前が彫りこまれており、世界でただ一つの貴重なアイテム
しかし少女が持ってるものには皆とは、違いパーティメンバーの頭文字が、彫られている。
それは皆とずっと一緒にいたいと言う少女の内なる思いの証。
知ってか知らずか付けられた宝石にもその気持ちが籠っている。
後書き ※読み飛ばしてもらって大丈夫です。
皆様、もう一人の勇者を読んで頂き誠にありがとうございます。
KatarinaTです。
いかがだったでしょうか?
今回は以前からアンケートをさせて頂いておりました。メモロビ回です。
予想よりも多くの方が投票して頂いて、本当に夢なのではないかと思い嬉しくなりました。
投票してくださった方々には感謝してもしきれません。
その他にも、コメント、お気に入り登録、高評価、誤字報告などありがとうございます。
大変励みになり、私のモチベーションに繋がっています。
それにしても、今回少女ちゃんが結構ぶっちぎりで多かった事が以外でもありましたが、それだけ皆様が少女ちゃんのことを好きになって頂いたことが嬉しく思います。
長くなってしないましたが、宜しければ今後ともこの子の物語を見守って上げてください。
最後にもし少女ちゃん以外のメモロビはどうなっていたのかを供養の為においておきます。
ユメ……
記憶の手がかりを探して先生を歩いていると、迷子の子供を発見!自分の記憶の事など後回しに迷子の為に奔走する!自分の事など後回しに誰かを助けようとする姿に少し問いかける
…………私は例えどんな状況でも目の前で誰か困って居たらその手を取ってあげたいな……だってそれは、私が私であるために大事なことだから。
サオリ……
先生が一人歩いているとバイトの帰りのサオリと偶然あった、どうやら何か話があるらしい、話とはエデン条約の事や未来のことだった
…………今だ私には、やりたい事が分からないが、今は共に考えてくれる奴らがいる。だから…いつかちゃんと見つけたい……そしてあいつらに教えてやりたい……私の見つけた答えを…………
シロコ(テラー)………
夜何やら話があると呼び出された先生は、公園のベンチでシロコから別世界のみんなの話を聞いた、少し悲しそうにみんなのこと話す姿に先生は、君は幸せになっていいことを伝えたが、シロコから返ってきた意外な答えは…
……………ん。確かに皆の事は今でも大事だから会えないのは寂しい。だけど今の私には、ちゃんと居場所がある。私はもう、とっくに幸せだよ。