もう一人の勇者   作:Katarina T

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【番外編】少女、夏休み

「う~ん……これは、困ったねぇ~」

 

とある休日の朝。現アビドス3年生の小鳥遊ホシノは………今自分の部屋でとある問題に直面していた。

 

その日は雲一つない晴れ間であり、暖かな陽の光がとても心地良い。

 

ここ最近の彼女であれば、ベッドから起きず直ぐに二度寝を取るところであるが、今の彼女は寝間着姿ではあるが、部屋の中央で、何やら考え込む様に腕を組んで突っ立っている。

 

「これはもう……私だけで解決するしかないか~」

 

ホシノはそう言うと、寝間着姿からいつものアビドスの制服へと着替え、バックの中に財布やハンカチなどを詰め始めた。

 

どうやら何処かに出掛けるようだ………

 

ホシノは出掛ける準備を一通り済ませると、ちらりと壁に飾られたポスターに目を向けた。

 

「………急がないとね。」

 

ホシノがバックを手に持って、部屋を出ようとしたところ……ピロリン♪とスマホの着信音がなった。

確認してみると、どうやらモモトークのアビドスグループからの着信だったらしく、送り主は、後輩のシロコであり、確認してみると、シロコと別世界のシロコ2人が自分の自転車にまたがっている画像が送られて来ていた。送られて来た内容によると、今日二人でライディングの競争をするらしい。

 

仲の良さそうに画面に写っている二人を見て、無意識に優しい笑みを浮かべたホシノは、一言『楽しんでおいで♪』と送り、そのままモモトークを閉じようとした。

その時ある一つの名前欄が目に留まった。

 

その人は………

掛け替えのない大切なものを取り戻してくれた恩人であり、

大事なことを思い出させてくれた勇者であり、

 

 

自分にとって初めて出来た…………友達、

 

 

『少女ちゃん』

ホシノは、そう表示されているモモトークの画面を眺め、少し迷ったが少女に電話を掛けた。

 

『はい。もしもしホシノですか。おはようです。』

 

少女は、直ぐに電話に出て、いつもの明るい声でホシノに挨拶をした。ホシノはいつも通り元気な少女の様子に嬉しくなりながら、少し緊張した様子で少女に話しかけた。

 

「おはよう~少女ちゃん。朝早くからごめんねぇ。急で悪いんだけどさぁ、今日って空いてる?」

 

 

 

 

 

 

アビドス学区内にある駅前の広場で、制服姿のホシノが一人ベンチに座っていた。

ホシノは、駅のホームへと歩いて行く獣人やロボットのアビドスに住んでいる人たちのことをぽけ~っと眺めて、まだアビドスにはこんなに人がいるんだな~っとしみじみ感じながら時間を潰していると、遠くからこちらに手を振りながら向かって来る一人の女の子がホシノの視界に映った。

 

「お~い。ホシノ~。」

 

やって来た、ホシノがよく知る人物であり、来るのを待っていた子……少女ちゃんである。

 

少女は、ホシノの傍まで、走ってくると明るい笑顔を向けながら話しかけた。

 

「私、目的地に無事到着です。ホシノお待たせしてすいません。」

 

「ううん。ぜ~んぜんだよ、少女ちゃん。私こそ急に誘ってごめんね~。」

 

「それこそ私は問題ありません。ホシノと冒険に出かけられて、私とっても嬉しいです。」

 

「………。……うへへ///ありがとうね少女ちゃん。それじゃあ……いこっか♪」

 

「はい!ミッションクリア目指して、レッツゴーです!」

 

少女とホシノは、そう言うと楽しげに駅のホームに向けて歩み出した。

 

 

 

ガタン……ゴトン…………ガタン……ゴトン…………

少女とホシノは電車に揺られながら、目的地であるD.U区内に向かっている。移動中、電車内では少女とホシノが最近あった出来事や楽しかった事、仲間達に関わる面白エピソードからちょっぴり恥ずかしい㊙秘話などたわいない話に花を咲かせていた。

 

パーティメンバーや姉妹たちの話をするときの少女は終始笑顔であり、話の内容も相手を馬鹿にした発言は一切なく、寧ろ相手のことを思っていないと決して出て来ないような言葉だらけであり、聞いているだけで少女が如何に相手のことを大事に思っているのかよく伝わる内容であった。

 

ホシノは、その様に無邪気に話す少女に癒されながら、自分も対策委員会の皆のことを話している。

少女は、ホシノと対策委員会のエピソードを聞くと周りに迷惑にならない程度の声で、「あはははっ」と楽しげに笑っていた。

 

その様におしゃべりを楽しんでいると、ふと少女はホシノにあることを聞いてきた。

 

「そう言えば、ホシノ。今日は一体どういうクエストに行くんですか。」

 

「んぇ。ああ、そう言えば………誘っただけで、何しに行くか言ってなかったね……」

 

うへへ~と言いながら頭を掻いているホシノは、漸く自分がまだ少女に今日時間を取って貰った訳を説明していない事に気付き、若干申し訳なさそうに少女に説明し始めた。

 

「いや~実は私ね………ちょっと困っている事が合って……少女ちゃんにお願いしたいことがあるだけど………聞いてくれる?」

 

「はい勿論です。フレンドのピンチなら全力で助けるのは、当たり前です。何でも言って下さい。」

 

少女は胸を叩きながら、ホシノの悩みを聞く姿勢に入った。その様子は自信に満ちており、どんな悩みも絶対に解決して見せると言う決意が感じ取れた。

ホシノはそんな少女に安心したように顔を綻ばせながら、お願いを話し始める。

 

「うへ~ありがとう少女ちゃん。それじゃあ、言うけど………ええっと実は………

 

 

私と一緒に服を買いに行って欲しいんだ~

 

 

ホシノは若干照れくさそうに指をいじりながらそう言った。

それを聞いて、てっきり最もスリルのある依頼かと思っていた(一体何を想像したんだ……)少女は、少し首をかしげながら、ホシノに聞き返した。

 

「……服ですか。」

 

「うっうん。ほらっもう直ぐ皆でアクアリウムを見に行こうって言ってた日だよね!実は私、当日は皆私服で行くって事になってたのすっかり忘れてて、慌てて今朝部屋の中ひっくり返してみたら、出てきたのは今の制服の予備や体操着や中学校の頃の制服や体操着に……一年生のころ使ってた防弾チョッキばかりで…………とてもじゃないけど遊びに来て行ける服が無かったんだよねぇ~」

 

後は皆寝間着だったし…………と、いつものホシノとは違い、早口でまくし立てる様に話していたかと思えば、最後の方に連れてドンドン声のトーンが落ちていき、最後の方は最早ぼそぼそとつぶやくくらいの音量になっていた。

 

「そう言うわけで、家には、遊びに来ていけるような服が一着もなかったんだよねぇ。」

 

「なるほど、だから新衣装の入手が必要だったんですね。」

 

「うん。私一人制服で行くわけにもいかないからね~でも流石に情けなくて、後輩の皆に相談出来なかったから、一人で買いに行こうかと思ったんだけど………服なんか選んだことがあんまりないから、センスに自信なくて……だから一緒に選ぶの手伝って欲しいんだ。」

 

ホシノは少女に向かって、(人ω<`;)お願いだよ~と言いながら、手を合わせている。少女は、それに対して、全く迷うことなく頷きながら応える。

 

「勿論です。さっきも言いましたが、ホシノが困っているなら、私は全力で力になって見せます。」

 

「おお~少女ちゃん。頼りにしてるよ~。」

 

「任せて下さい。ホシノの探し物は、私がバッチリと見つけ出して見せます。」

 

(キキーーー、)

そう話し終えたところで、D.U区内に到着したようで、電車が停車し、開いた扉から大勢の人が電車に乗り込んでくる。

少女とホシノは、乗り過ごさないように急いで電車を降りて、改札口を通った。

 

そして、駅から出ると、少女は右の人差し指をピンっと前に突き出し、左手でホシノの右手を掴み意気揚々と歩き出した。

 

「それじゃあ、いざ決戦の地に向かって、全速前進です!」

 

「おお~//……少女ちゃん少し恥ずかしいよ~」

 

そのように二人が探索クエストに向かおうとしていると、突然後ろから声が掛かって来た。

 

「あっやっぱり少女ちゃんです!遭遇イベント発生です!」

 

「ふえっアリスお姉ちゃん!」

 

突然声をかけられて少し驚いた少女とホシノが後ろを振り向くとそこには、少女の姉であるアリスと…………

 

「あなたは、小鳥遊ホシノ。こんな所でなにしてるの?」

 

「うへっ風紀委員長ちゃん!?」

 

ゲヘナ最強の生徒…………空崎ヒナが何故かアリスともに立っていた。

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