少女は廃墟の床で目を覚ました。
少女は、目覚める前のことを思い出す。
あの女の子から逃げ続け日が暮れて来た頃、人気のない廃墟に入り奥で膝を抱えてうずくまりながらただじっとして一夜を過ごした。
(どうやらそのまま眠ってしまったんですね。)
少女は起き上がり、服に付いた汚れを払いながら、自身の状態を確認する。
(あの時、あんなに頭が痛かったのに今はもう痛くないです。それどころか…これは……)
少女は、昨日の出来事を思い出す。
偶然の出会い、理解できない感情の暴走、そして頭の中を駆け巡ったぼんやりだが、強烈な“誰かの記憶”。あまりに多くの情報を一度に受けてしまいキャパシティーを超えたことによる危険信号が頭痛の本当の原因であることを理解した少女は、最悪の決断を下さずに済んだことに安堵するのと同時に、自分が“大切な仲間をまた傷つけてしまいそうになったこと”に顔を青くして怯えてしまう。
(い、いえ…私はあの娘とは、会ったことがない…知らない人のはずです…)
(でも…………暖かかったです…)
少女は胸の中にある確かな暖かさを思い出すように胸に手を当て息をはくと、気持ちを切り替えて廃墟の外に出る。
(本当ならまた会いたいですけど……いいんでしょうか……)
あの時一瞬とはいえ、本気で少女を■■そうとした事実が少女の中に未だくすぶり続けており、あの場所に戻ることをあの女の子に再び会うことを戸惑わせる。
……それにあの場所には、もう居るべき人がいます。
そしてそれは私じゃ……ないです…
私は……だれなんでしょう…
少女の疑問に答えてくれる人は、此処にはいない。
いや、もしかしたら何処にも居ないのかもしれない。
……私が見つけないといけないんですね。
見つけたいです……そしてその時もう一度……
自分の名前も、居場所も、絆も、なにもない……あるものは、全て他人から奪ったり、拾ったものばかり、未だ役職なしの独りぼっちの少女は、思い出す。
目が覚めたとき感じた疑問を、昨日確かに知った"もの(感情)"を…それだけは確かに少女だけの……少女自身で得た大切なもの。
……あ。これは……
少女の手にUFGが握られる。
それは、少女が初めて誰かに送られた……この世界でただ一つの……少女に向けられた贈り物。
その時、聞いた言葉と女の子の言葉を、少女は思い出す。
……AL-2B……王女……
…………そして………アリス………
私は……AL-2B?………王女?
それとも……アリス………?
……………………(フルフル)
少女は頭を小さく振るう。
今浮かんだ考えを否定するかのように…………
私が誰かは………私が決めます…………絶対に!
少女は、大きな瞳に強い意志を宿し、前を向き宣言する。
「私の冒険の始まりです!!」