もう一人の勇者   作:Katarina T

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【番外編】少女、夏休み その4よ…

シューティングゲームを終えた少女たちはその後、パンチングゲームやレースゲーム、格闘ゲームなどといった様々なジャンルのゲームをプレイしていった。

アリス以外の三人は初プレイの為、少し苦戦していたが、普段からゲームセンターに来ているアリスによる指導や元々コツを掴むこと得意なメンツであった為、直ぐに仲良くゲームを楽しめるようになっていった。

「アリスお姉ちゃん…あそこにあるあれは何ですか。」

その様に次にプレイするゲームを選びながら、ゲームセンター内を歩いていると、少女がある一画に興味をひかれたのか、指差しながらアリスに尋ねてきた。

少女の指さす方はゲームセンターでも奥の方に位置している……プリクラ機が並べられているエリアであった。

「あれはプリクラですよ!」

「ぷりくら……?」

「プリクラはですね………」

アリスはお姉ちゃんらしく自分に頼ってきた少女にプリクラがどういうものなのかを説明していく。

しかしアリスの説明は内容こそちゃんとしているのだが……アリス独自のゲーム風に物事を言い換える癖の影響で若干間違った覚え方をしそうになったが、そこはヒナとホシノのアシストによって、少女に正しい認識をさせることに成功した。

説明を聞き終えた少女は、案の定瞳を輝かせながら「皆で撮りましょう!」と言いながらホシノとアリスの手を引きながら、プリクラの方へと向かって行く。

……いや、よく見るといつも以上に興奮気味な雰囲気である。

「少女ちゃん…なんかいつもより強引な気がするよ~……。そんなにプリクラ撮りたいの?」

「はい。だって皆との思い出を残せるアイテムなんですよね。だったら私絶対にゲットしたいです。」

ホシノがそんな少女の様子を見て沸いた疑問に少女はそう答える。

そう、決して不思議なことではないのだ……

何時もの少女の様子から忘れているかもしれないが、少女は未だ目覚めて日が浅い。

その上、目覚めた時…暖かい場所にいた記録を持っているのに自分の周りには誰もいない一人ボッチという状況であった。

一時は、自分が何者なのか分からず、悲しい思いだってした。

そんな少女にとって今の現実は、本当に暖かくて、幸せな時間であり、そんな時間を………思い出を残せるアイテムとは、最も重要なものなのである。

少女に押し込まれるようにアリス、ホシノ、ヒナの三人はプリクラ機の中に入って行く。

「それで!どうやってアイテムを作成するんですか?」

「少女ちゃん…少し落ち着いて。先ずお金を入れて、その後設定を決めて………ええっと………」

少女たちは、思い思いのポーズをとりながら、プリクラを撮っていく。

ホシノはいつも通りだらけている様子で、アリスは少女に当てられたのか少しテンション高めにゲームの登場キャラのポーズをとり、ヒナは最初は硬くなっていたがほか三人の様子を見て、肩の力が抜けたのか最後の方は少し決めポーズをとれる様になっていた。

そして、一番テンションの高い少女はというと……基本的に誰かしらに抱きついており、偶に他の人と同じポーズをとったりしながら、プリクラに写っている。

その顔は終始眩しいくらいの笑顔であったことは言うまでもないであろう。

 

その後、プリクラを撮り終えた少女は入手した数枚のプリクラをじっくりと眺めた後、大事そうに肩にかけていたペロロ様ショルダーバッグにしまった。

 

 

 

 

 

「うーん……アリス何だかお腹が空いてきました。」

 

ゲームセンター内を一通り回り切った時、アリスがその様に言ってきた。

 

アリスの言葉に一同が設置されている時計を確認すると時刻はちょうどお昼ごろを指している。

 

「ん?ああ…もうお昼時だね~……。それじゃあ何か食べに行こっか~。」

 

「賛成です。補給はちゃんとしないと冒険を進めるのが困難になります。」

というわけで、少女達は小腹を満たす為にショッピングモール内にあるフードコートへと足を運んでいた。

 

フードコート内には、うどんや海鮮などの和食屋やパスタやハンバーグなどの洋食屋の他にもハンバーガーチェーンなどのジャンキーな店など様々な店が出店されていた。

 

「うわ~……色々な店がありますね。」

 

「そうですね!アリス選択肢が多くて、迷ってしまいます!」

 

「まあ、そんなに慌てて決める事もないんじゃない~。」

 

「そうね…折角だしゆっくり見て回りましょう。………でも人が多いからはぐれないようにね。」

 

時刻がちょうどお昼時なのもあって、フードコートには少女達同様、昼食を取ろうとしているお客さん達で賑わっていた。

 

少女達ははぐれないように全員で固まりながら、フードコート内のお店を見て回った。

 

その道中は、やはりというべきか……少女とアリスが見たことない食べ物などに興味深々な様子を隠しもしないで、あっちへフラフラ……こっちへフラフラ……とせわしなく歩き回り、ホシノとヒナが完全に振り回される形になっていた。

 

 

 

その様にフードコートを回っていると、唐突に少女の足がある店の前で止まった。

 

「うへ~少女ちゃん今度はどうしたの~……?」

 

「…私、ここがいいです。」

 

少女が指差しながらそう言う。少女が選んだ店は………クレープ屋であった。

 

「クレープ?少女ちゃんクレープ好きなの?」

 

「はい。私にとって始まりの味なんです。」

 

少女はホシノに笑顔でそう返すと、そのままホシノの手を取ってクレープ屋のカウンターへと向かって行く。

ホシノは先ほどの少女の回答の意味がよく分からなかったが少女の様子から特に気にするようなことではないことを悟り、そのまま少女に連れられてクレープ屋へと引きずられて行き、アリスとヒナも特に反対する理由も無いので少女と一緒にどの味のクレープにしようかメニュー表を見ながら首を捻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────

 

「楽しいわね…」

 

私は、手に持ったクレープを口に含みながら、何と気なしに感じていることを自覚するように……誰にも聞こえないような小さな声でそう漏らす。

 

何とも不思議な時間だ。

ゲヘナの風紀委員長である私には、ゲヘナを守る責任があり、面倒くさいけれどやらなければならないことが多くある。

 

いつもなら日頃から好き勝手やっているゲヘナの問題児たちの鎮圧や万魔殿からくる嫌がらせの数々の対処……そのれでなくても片づけなきゃいけない山の様に積み上がった書類と格闘しているはず。

 

………それなのに今はこの様な…………ある意味気が抜けている時間を過ごしているなんて………普段の私を知っている人が聞けば、きっと信じてもらえないことなのでしょうね。

 

今も私自身が不思議に感じているくらいだもの…………

 

私は同じ机に座っている三人の同行者達に視線を向ける。

 

一人は、私を連れ出した張本人である天童アリス…………

以前色彩との戦いの際に共闘したことがきっかけで知り合ったミレニアムの生徒。

時々言っている事がよく分からない時があるけれど、それでも………彼女がとても素直でみんなから好かれるような性格の持ち主であることが伝わってくる。

きっと彼女は、打算なく本当に私へのお礼の為に、今日連れ出してくれたのでしょうね。

 

もう一人は、クレープを片手に持ちながら、机の上でだらけきっている小鳥遊ホシノ…………

私が情報部にいた頃に知ったアビドスの生徒。

以前から彼女の持っている心の強さに興味を引かれていたけれど………今の彼女からはこの前アビドスであった頃とも2年前に調べていた頃とも違って見える。

上手く言葉に出来ないけれど、何というか余裕があるような……今を心から楽しんでいるような……そんな気がする。

一体彼女に何があったのか……何時か聞いてみたいものね。

 

そして最後は、瞳をキラキラとさせながらクレープを食べる、天童アリスそっくりな名前のない女の子………

自分の事を少女ちゃんと言う不思議な生徒。

アリスからこの子の事はある程度聞いているが………聞けば聞くほど本当に不思議な子だと思う。

言動はまさに幼い子供のようだと感じるが、よく見れば行動一つ一つに他人を思い合う心が見て取れる。

今日の行動も初対面の私と仲良くなれるように動いている部分が多々あった。

風紀委員の仕事上、普段の会話は現場での指示や報告の確認なんかが多く、どうしても砕けた会話というのが苦手な私に積極的に話かけてくれた。その上私に負担のかからない様に絶妙な間を開けるように会話を進めるようにしていた。

おまけにアリスとホシノにも積極的に絡みにいき、結果として4人での会話が成立するようになっていた。

お陰で随分楽に会話出来ていたし、三人と打ち解けるのが早かったと思うわ。

 

彼女は意識的にこれらの事をやっているのかしら…………それとも無意識にやっているのかしら。

もしそうなら、彼女は人の心の機微を読むのが得意みたいね。

 

 

まあ、何はともあれ今、この時間は居心地が良いわ。

風紀委員長ということもあってゲヘナ内では、私のことを警戒する生徒が多かったけれど、D.U区内では私のことを警戒する生徒もいないみたいだし。

三人とも私に気を遣わずに普段どうりに接してくれているようで、こちらも変に気を使わなくていいからね。

 

 

そんな事をヒナが考えて残りのクレープをたべていると…………

 

ドカァァァァァァァァァン!!!

 

突然下の階の方で爆発音が鳴り響いた。

 

「はぁ……この店のたい焼きは全くもってなっていませんわ。生地の甘さも大味ですし、尾びれにまで餡子が詰まっていないなど、話になりませんね。」

 

見ればどうやら美食研究会が一階で販売していたたい焼き屋を爆破した直後のようで、黒煙が上がっているところからハルナ含めた美食研究会が無駄に優雅な佇まいで店の文句を語り合っていた。

 

またすぐ近くでは、数十人からなる生徒たちが何故かつるはしやシャベルを持ちながらテンション高くショッピングホール内に入って来ていた。

 

「ハーハッハッハッ!!感じる!感じるぞ!!ここから温泉の気配が感じる!さあ温泉開発の時間だ!!」

「でも、カスミ部長こんな室内で温泉掘ってもいいの?」

「なーに問題ない。寧ろ温泉がある方がこのショッピングモールにもっと客が来るはずだ。何せ温泉だからな!」

「そっか!そうだよね!買い物ついでに温泉に入れた方がいいよねきっと!」

「その通りだ。さあ皆、温泉を掘るぞ!」

 

「「「「おお!!!!!」」」」

 

言っている事が意味不明過ぎて何処から突っ込んでいいのかわからないが…………

どうやら温泉開発部がこのショッピングモールに温泉の気配を感じ、温泉を掘りにきたらしい。

部長である鬼怒川カスミの号令から温泉開発部のボルテージがドンドン上がっていっている。

 

 

 

ドカーーーーーン!!!

 

また更に反対側で爆発が起きた。

如何やら一階の奥に設置されてあった広間から爆発がおきたようで、奥から爆炎が立ち上っている。

そんな爆炎の中から十数のロボット兵達と四人の生徒がホール内へと駆け込んでいた。

 

「貴様便利屋ーー!!なぜ裏切った!!!」

「う、うるさいわね!あんな依頼私たちが受けるはずがないでしょう!」

「だったら何故一度うけたんじゃあああああ!!このクソどもがあああああ!!」

「そ、それはその~…………。」

「くふふ。アルちゃん久々の依頼でまともに内容聞いて無かったもんね。」

「はぁ……。」

「ア、アル様に何て口の聞き方を………ユルシマセン。ユルシマセン。ユルシマセン。ユルシマセン。ユルシマセン。死んでくださーーーーーーーい!!!!!」

 

ドカーン!!!ドゴー――ン!!!バアアアアアアアアン!!!!!

 

一体なにがどうなっているのか、ショッピングモール一階は先ほどのシューティングゲームのような世紀末の戦場へと姿を変えており、買い物に来ていたお客さん達は戦闘に巻き込まれない様に逃げようとして大混乱が起きていた。

 

 

 

そんな一部始終を上の階で見ていたヒナはというと…………

 

「はぁぁぁぁぁーーーーー………。」

 

たっぷりと長いため息を吐きながら、自身の武器であるデストロイヤーを担いでいた。

……その瞳からは光がなく、若干死んでいた。

 

「ごめんなさい。少し用事が出来たみたいだから………今日はこの辺で。」

「私も手伝いますよヒナ。」

 

ヒナがそう言いながら席から立ち上がろうとすると、それよりも先に少女が立ち上がりながらそう言った。

少女は既にアポカリプスを展開し、UFGを構えて準備完了といった具合でやる気を漲らせていた。

 

「おお!それならアリスもです!アリスも手伝います!」

「ううん……しょうがないなぁ~……こうなったら私も手伝っちゃうよ~」

 

また少女に続くようにアリスとホシノも自身の相銃を手に取りながらヒナに協力するよう言って来た。

 

「ちょっと待って、これはゲヘナの風紀委員の私の問題で…………貴方たちを巻き込むのは…………。」

それに対してヒナは、元からの責任感と折角の休日を台無しにしてしまう申し訳なさから少女たちの申し出を断ろうとする。

 

しかし少女はヒナの言い分に対して聞く耳持たずであり………ヒナの方に近付きながら話を進める。

 

「私は嫌です。折角ヒナとフレンド登録したというのにイベント戦に参加できずに、このままヒナが離脱なんて。私まだまだヒナとこのイベントを進めたいです。」

 

少女の真っ直ぐな瞳と純粋な言葉がヒナの決断を鈍らせる。

少女は更に追撃をするように言葉を続ける。

 

「それに今日の私たちは臨時ですがパーティメンバー何ですから、存分に頼っていいんですよ。」

 

「少女ちゃんの言う通りです!今日のアリス達はヒナさんのパーティメンバー……そしてアリスは風紀勇者にジョブチェンジしています!ですからヒナさんのクエストを全力で支援します!」

 

少女とアリス………二人の勇者は仲間の助けとなるべく、一階の敵を見据えながら逸る気持ちを抑えるように体に力をためている。

 

「でも………やっぱり貴方たちを巻き込む訳には………」

 

……しかしやっぱり申し訳ないのかヒナは今だ少女達を制止しようとするが………

その前に横から声が掛かった。

 

「まあ、こうなったらしょうがないよぉ~」

 

「ホシノ………。」

 

「少女ちゃんもアリスちゃんも多分もう止まらないし、止められないだろうからね~。……ここは潔く諦めるしかないんじゃないかなぁ~。」

 

「………貴方もやる気なの。」

 

「そりゃあ皆が頑張っているのに………私だけ仲間外れっていうのは……ねぇ。」

 

そんなホシノとのやり取りをすると、いつの間にかヒナの目の前に立っていた少女とアリスが、先程までのような眩しい笑顔を向けながらヒナを向きながらこう言った。

 

「「さあ!行きましょう!ヒナ(さん)!!」」

 

そんな二人の笑顔と隣のどこかのんびりとした視線を受けたヒナは……

 

「…はぁ………。ええ、行きましょう。ホシノ、アリス、少女ちゃん。」

 

小さく息を吐きながら若干呆れたような、諦めたような…………

 

 

…………嬉しそうな声でそう言った。

 

「はい。全力で行きます!」

 

ヒナの号令に合わせて4人は一階にいる問題児たちへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数十分後…………問題児たちは全員床に転がっており、事態は沈静化していた。

おまけに周りへの被害も最小限に抑えられており…………とてもじゃないが大規模な戦闘があったとは、思えない様子であった。

 

 

その戦闘を見ていた一般生徒はこのように語った。

「あまりに一方的過ぎて…………何がおきているのか分からなかった。」

「なんか…………とにかくすごかった…………」

「あれって、一応戦闘なんだよね…………リンチじゃなくて」

「なにあれコワイ…………」

 

 

またその後…………不良生徒の間でこの様な教訓が伝わることになる。

 

曰く、

 

 

「あの4人が一緒の時は、決して問題を起こしてはならない。」




タンク:ホシノ
攪乱:少女ちゃん
後方火力:アリス
リーダー:ヒナ

VS

美食研究会
温泉開発部
便利屋と数十のロボット兵

レディー……ファイ!!!
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