ダスクユートピアの2000ギニー勝利の報せは世界中で話題になった。それはもうすさまじい速さで。
【ジュニア級チャンピオン達を一蹴!2000ギニーを制したのはダスクユートピア!】
【6バ身差の圧勝!有無を言わさぬ逃走劇!】
【クラシック三冠はほぼ確実!?南雲トレーナー「三冠全て走ります」】
先頭からずっと逃げ続け、他を寄せつけぬ強さ。完全な実力勝負によってもぎ取った圧巻の6バ身差勝利。疑いようのない勝ち星に日本は熱狂した。
ごく一部の記事ではダスクユートピアの勝利をまぐれ扱いするものもあったが見向きもされず。ダスクユートピアは2000ギニーの勝利で一躍イギリスクラシック最有力候補になったのだった。
「最近の新聞記事でダスクユートピアの強さを疑問視する声があったけどとても素晴らしいわね!彼女の強さは疑う余地のない本物だったわ!」
「痺れるレースだったぜ、ダスクユートピア!彼女を批判した記者はまだ仕事をしているのかい?余程素晴らしい環境なんだろうね」
「ダスクユートピアの才能は素晴らしい。100人がいれば100人が天才と答えるだろうさ」
ダスクユートピアを批判した記事を書いた記者達は、現地民から暗に「お前ら節穴だろ」の烙印を押されることになったのは別のお話。
◇
欧州内において一躍有名となった俺達……というよりはユートピア。いや、大分前から名前は知られていたが、基本的に悪い噂ばかりだったのでちょっと嬉しかったりする。
ユートピアは現在、ソファでだらけながらフライドポテトを貪っている。何かのカタログを広げながら、取材のスケジュールを組んでいる俺に告げやがったんだ。
「南雲~。エクリプスステークスとキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに出るよ~」
「ちょっと待てや」
お前はさぁ……本当にお前さぁ!
「イギリスのクラシック三冠だけじゃねぇのかよ!?どんなレースかちゃんと分かってんのかテメェ!?」
「え~?別にいいじゃん。ダービーステークスからセントレジャーまで期間空いてんだからさぁ。夢つかみに行こうぜ?ドリーム大事よドリーム」
「んなちょっと出かけるついでにコンビニ行こうぜ見たいなノリで挑むもんじゃねぇんだよG1はよぉ!」
しかも、それで勝てるんだからタチが悪いんだよコイツ!
「てかお前!2000ギニー以降取材の依頼がひっきりなしに来てんだぞ!お前のことなんだからちょっとは興味持て!」
「そうなん?なんて答えようか……どうも、砂遊びの方が向いてるんじゃないか?と言われた2000ギニーの勝ちウマ娘ですとでも言おうかしら?」
「そんなこと言ったらぶっ飛ばすからなテメェ!?」
この前の記者共への意趣返しのつもりなんだろうが、また俺が頭下げる羽目になるだろうが!あの後も無茶苦茶大変だったんだぞ!
「冗談ですよ冗談。ま~ダービーステークスまでの間に考えないといけませんねぇ。なんでも私、現時点の最有力候補ですし」
「……まぁな。それも当然だが」
急に真面目になったなコイツ……いいけど。
ユートピアが走った2000ギニーは結構な豪華メンバーだった。なんせ、ジュニア級G1を取ったウマ娘が最低人気になるようなハイレベルなレースだったからな。特に注目を集めていたのはクラシック三冠候補とも言われていたコンドルフェザー。ユートピアはというと、豪華メンバーの中では高めの5番人気を誇っていた。
肝心のレース内容はというと、内側で逃げていたダスクユートピアが後続を突き放していく6バ身差の圧勝劇。ジブラルタルガイアやコンドルフェザーが猛追するが、全く寄せつけることのないレース運びをするという異次元の強さを見せたレースだった。
(実況からもけた違いの才能、格が違うなんて言われてたしなぁ。それだけのことをやってんだけど)
本当にやべぇなコイツ。まぁこの勝利で向こうもさらに本腰を入れてくるだろう……何故だがユートピアが負ける気は全くしないが。
っと、そうだ。ユートピアの耳に入れておかなきゃいけない情報があるんだった。
「そうだユートピア。マンハッタンカフェがトレーナーと一緒にこっちに来るぞ」
「はい?カフェさんがどうしてここに?逃げたのか?自力で脱出を?」
「何言ってんだお前。向こうは凱旋門賞に出走するつもりらしくてな。早いうちにこっちの芝に慣れておきたい、ってことらしい」
マンハッタンカフェが凱旋門賞に出走するため、欧州に遠征しに来るらしい。一応、俺とユートピアも遠征している身、一緒にどうか?と持ち掛けられた。
ユートピアとマンハッタンカフェは友達だし、ユートピアにとっても嬉しいんじゃないだろうか?こちらとしても断る理由はないので了承。あと数日でこちらに到着するマンハッタンカフェと合流することになる。
「へ~カフェさん
「そうだ。凱旋門賞に出走する……待て、“も”ってなんだ“も”って」
まさかとは思うけどコイツ……!
「あぁ、凱旋門賞も登録よろよろ~」
「……」
コ・イ・ツ・は~ッッ!!
「ふざけんじゃねぇぇぇぇぇ!!」
「おぉ、南雲っち魂の咆哮だ」
誰のせいだと思ってんだよ!
◇
2000ギニーも終わったので次なる戦いはダービーステークスへ。その前にカフェさん達がこっちに来るらしいですよ。
“あの子もこっちに来るんだねぇ”
「らしいね。つっても、凱旋門賞まで結構期間あると思うんだけど」
“ま~芝に合う合わないとかあるからねぇ。しゃあない、いっちょこの僕が手ほどきしてやりましょうか”
おぉ!お芋さんが私以外の子を指導しようとしている!指導するのか?俺以外のヤツを……!私とカフェさん、どっちが大事なのよ!?
“あぁ!?大丈夫だよユーちゃん!僕にとっての一番は変わらずユーちゃんだから!”
「……」
“お願い!信じてよユーちゃん……!”
ふっ、勿論信じますぜお芋さん。これも冗談ってヤツですよ、冗談。
“ゆ、ユーちゃ~~~んッ!”
お芋さんと私はズッ友を超えたズッ友よ!大親友、無二の友!私とお芋さんは、ズッ友だょ!
「にしても珍しいね。お芋さんが他の子を教えようとするなんて」
“ま~ぶっちゃけどうでもいいんだけどねぇ。ユーちゃんと似てるし、たまには気分転換で良いかなって。それに、私が見えるし会話もできるから楽だしね”
確かに楽そう。カフェさんはお芋さんが見えてるし、会話もできるし。お芋さんとしてもちょっと興味があるのかもしれない。カフェさんが来るまであと数日。楽しみだぜい。
それはそれとして通話じゃ通話。ミラ子ちゃんがトレーニング休みだから通話しようぜってことで始まるぜ。
「あ、あーテステス。ミラ子ちゃん聞こえる~?」
《バッチリ聞こえるよ~、ユーちゃん》
ミラ子ちゃんことヒシミラクル。私と一緒にゲームしたりする友達だ。ゆる~くふわふわとした雰囲気なので癒される。
「ふふん、ミラ子ちゃんや。私、2000ギニーを勝ちましたぜ」
《知ってる~。日本で応援してたよ~。やっぱりユーちゃん強いねぇ》
それほどでもある。てかミラ子ちゃんは出走したのだろうか?え~っと、確か。
「ミラ子ちゃんは皐月賞出れたん?」
《いや~、わたしなんかがあそこに出れるわけないですって~。わたし、ふつ~のウマ娘だよ?》
「ほ~ん。まぁミラ子ちゃんはミラ子ちゃんのペースがあるからね」
私が口出しすることでもないでしょう。ですがミラ子ちゃんはいつかでっかいことをやり遂げる、気がする。なんとなく、勘で。
《皐月賞はノーリーズンちゃんが勝ったよ》
「ほほう、ノリちゃんが勝ちましたか」
《うんうん!もう凄かった!15番人気だったんだけど、中団からビューン!って抜け出して勝っちゃったんだから!》
ノリちゃんもなんだか懐かしいですねぇ。言うほど時間は経ってない気がするけど。その後も日本の様子を教えてもらい、通話は終了。ミラ子ちゃんとの通話は楽しかったぜ……ハッ!?
“随分楽しそうだったね?ユーちゃん”
し、しまった!お芋さんが不機嫌に!ジェラシー感じちゃってる!
“ユーちゃんは僕なんかよりもヒシミラクルと話してる方が良いんじゃない?”
「ち、違うんだよお芋さん!確かにミラ子ちゃんとの会話は楽しいけど、私にとっての一番はお芋さん!」
“……”
「ガチのマジ!信じてください!」
お願いだよお芋さん!信じてくれメンス!
“……ふっ、勿論信じてるよユーちゃん!”
お、お芋さん!
“さっきのお返しだよ、ユーちゃん!これでおあいこだね!”
「ふっ、これはしてやられたぜ……!」
私とお芋さんの友情を再確認したところで、今日も寝ますよ。明日からはまたトレーニングです。
ユーちゃん
2000ギニー勝ってご満悦。お芋さんとの友情は不滅だぁ!
お芋さん
ユーちゃん大好き。友情は不滅。
南雲トレーナー
今日も胃が痛くなる。
ミラ子
皐月賞には出れんかった模様。