わたし、ヒシミラクルはどこにでもいるふつ~のウマ娘です。
「ミラ子ー、英語の宿題やってきた~?」
「え?……あ、あったっけ?」
「あったあった。もしかしてミラ子、やってないな~?」
「やってないよ~!お願い見せて~!」
「しょうがないなぁミラ子は。んじゃ、今日の飲み物奢りで!」
トレセン学園はガチめなアスリートの子が多いけど、その中でも私は普通寄り。学園に入ったのも良い大学や企業に就職できるから~なんて理由。いわゆるモブ?って感じの子。
(トゥインクル・シリーズに出走するような子達ってみんな凄いよね~。本物のアスリートって感じ)
向上心の塊で、自分を磨くことに余念がない。カッコいい!とは思う。けど、いざ自分がってなるといやいや、ご冗談をってなっちゃうのがわたしなのである。
「聞いたか?クリスエス。
「──あぁ。ユートピアが、ダービーステークスを勝った。喜ばしい、ことだ」
「愉快愉快!遠い異国の地であろうとも、彼奴は元気にやっているようだのう!」
あそこにいるギムレットちゃんやクリスエスちゃん、ノーリーズンちゃんは今もクラシックで活躍している超アスリート系ウマ娘。対してわたしは、未勝利戦をやっと抜けたようなモブっ子。
(住んでる世界が違うよね~。わたしなんかとは大違いだよ)
「ほらミラ子~?早く写さないと授業始まっちゃうよ?」
「わわわ!?そうだったそうだった……!」
ま~わたしみたいなのを担当してくれるトレーナーがいるだけでも御の字って感じ。トレーナーさんはわたしには凄い才能がある~なんていうけど、そんなことはない。だってわたしはふつ~な子なんだから。
そんなわたしにも、普通の子とはちょっと違う特別なことがある。それが、ギムレットちゃん達が話題に上げていたユーちゃん──ダスクユートピアの友達だってこと。
ユーちゃんとの出会いは衝撃的だったな~。プールから逃げている時に偶然出会ったんだっけ?
「1つ耕しては芋のため~、2つ耕しては芋のため~、3つ耕しては……おや?どうしました?」
「え、え~っと……農園でなにしてるの?」
「なにって……芋を植えようとしているだけだが?」
畑を耕していたユーちゃんに匿って貰って、そこから付き合いが始まったんだよね。なんというか、居心地がいい関係。お互いがお互いのペースで過ごせる、そんな相手がユーちゃんだ。
ユーちゃんは、レースがものすごく強い。わたしなんか比較にならないし、ギムレットちゃん達よりも強いと思う。
「ユーちゃんって、いつも凄い量のトレーニングやってるよねぇ。わたしにはとても無理だ~」
「そうですかね?小さい時からずっとやってるから、慣れですよ慣れ」
「わたしは一生慣れなさそう」
「ま、ミラ子ちゃんにはミラ子ちゃんのペースがありますから」
いつも凄い量のトレーニングやってるし、ギムレットちゃん達みたいなアスリート側の人間。しかも、ユーちゃんは生い立ちからして凄く壮絶だ。ダスク家?っていう家の当主の娘で、ユーちゃんの親は色々とやらかして捕まって、今は牢屋の中だって言ってた。ユーちゃんは他人事みたいに言ってたけど、とんでもないこと過ぎて目玉飛び出ちゃった。
そしてユーちゃんはトレセン学園の理事長さんの養子になって、学園にも通うことができている。アニメやドラマでしか見たことがないような人生を歩んでる子なんだよね、ユーちゃん。でも、当の本人はお芋が大好きでマイペースな子。わたし達とあんまり変わらない。
「ユーちゃんってス〇ラやったことある?」
「ス〇ラ?なんですかそれ?」
「やったことないの?じゃあじゃあ、教えてあげるからいっしょにやろーよ!」
ふつ~に仲良くなって、ふつ~に友達として過ごして。とても楽しく過ごしている。
そんなユーちゃんなんだけど、今は海外遠征真っただ中。
「前々から強いとは思ってたけど、海外にまでいっちゃうんだもんね~。今度サインちょうだいサイン」
《フッ、任せてくださいよミラ子ちゃん。スペシャルでオンリーワンなサインを書いてあげますよ》
「本当?やったやった~!」
しかも、あっちの皐月賞と日本ダービーを勝っちゃったんだ!なんて言ったっけ?え~っと……なんとかギニーとダービーだったのは覚えてる。やっぱユーちゃんは強いな~。
「いつかわたしも、ユーちゃんの友人としてテレビデビュー果たしちゃったりしちゃうのかな?」
《されると思いますよ。ミラ子ちゃんもテレビデビューする日が来るかもしれませんよ?》
「どうしよ~、今から緊張してきちゃった~!」
ユーちゃんの友達として、わたしもテレビに出演するかもしれないのか~。ちょっと楽しみだ。
《そういえば、ミラ子ちゃんは今どんな感じで?ダービー出れたりしたんですか?》
「わたしが?無理無理!ようやく未勝利戦を抜けたばっかりなんだから!」
《は~、そうなんですね》
わたしはユーちゃんと違うからな~。ユーちゃんは海外でも結果を残すアスリートだけど、わたしはやっとこさ未勝利戦を抜け出せたウマ娘。クラシックなんて夢のまた夢って感じだ。
《ちなみにダービーはどなたが勝ったんです?》
「ダービーはギムレットちゃんが勝ったよ。凄い末脚だったって聞いてる!」
《ほ~ん》
自分から聞いたのにユーちゃんの反応は薄い。ま~元からこんな子だしね、ユーちゃん。マイペースに付き合うわたしなのでした。
《にしても、ミラ子ちゃんもアレですね》
「ほえ?何が?」
唐突に話を切り出してきたユーちゃん。一体何だろう?
《私的には、ミラ子ちゃんも凄い才能あると思うんですけどね。勘ですけど》
「勘って!も~、わたしにそんな才能はないよ~」
急に何かと思ったら、わたしに才能があるなんて。お世辞が上手いなぁユーちゃんは。
……でも、トレーナーさんからも言われたんだよね。
「君に『期待』しているから」
ふつ~なわたしに期待してくれて、勝てるって言ってくれて。だからまぁ、頑張ってみるか~って感じで。トゥインクル・シリーズを走っている。あわよくば、ちょっと有名になれたらいいな~、って感じで。ほら、大学とか就職で有利になるかもしれないじゃない?もしかしたら、専属モデルなんて線も……それは高望みし過ぎかぁ。
《ミラ子ちゃんはやればできる子ですからね。この私がミラ子ちゃんの才能を保証してあげましょう》
「ありがとね~ユーちゃん。ちょっとやる気でてきたよ」
ユーちゃんがわたしには才能があると保証してくれた。ま~友人間の冗談みたいなものだよね。ユーちゃんも本気で言ってるわけじゃないだろう。その後も時間の許す限り楽しく通話をしていたわたしたちなのであった。
後日。トレーニングの時間。
「……トレーナーさん。どうしてこの点Pは動くんですか?動く必要なくないですか?ジッとしててくださいよ!」
「問題文に文句を言わないで欲しいかな」
だってだって~!動かなかったら問題超楽勝なんだも~ん!動く必要ないじゃん!は~あ、宿題早く終わらせないとなぁ。
「そうだミラクル。ミラクルはダスクユートピアと友達なんだよね?」
「ユーちゃんのことですか?そりゃあもう!学園で一番仲が良いって言っても過言じゃないですよ!」
こればっかりは自信がある!わたしとユーちゃんは凄く仲が良いって!
「そうなんだ。ダスクユートピアってどんな子なの?」
「う~ん……お芋が大好きな、マイペースな子ですよ。後レースがすっごく強いです」
「あ~、じゃあ芋料理を好んで食べてるだけ、なんだろうか?」
うん?トレーナーさんどうしたんだろう?神妙な顔をしてるけど。あ、そうだ。
「そういえばわたし、
「ッ!?」
あれ?なんかトレーナーさん凄くビックリしてる?そんなにビックリするようなことかな?
「いやぁ、もしかしたらわたし、凄い才能を秘めてたり?な~んちゃって」
「……」
「あ、あの、トレーナーさん?冗談だから無言は悲しいかな~って」
い、良いじゃないですかちょっとぐらい良い思いしたって!ユーちゃんみたいな強い子から才能あるって褒められたの自慢したっていいじゃないですか!
「……ミラクル。それは本当のことかい?」
「へ?ま、ま~言われたかな?うん、言われました言われました」
「そっか……」
もしかして、疑われてるのだろうか?いや、そんな感じはしないな。
「いや、この情報を出すのは時期尚早。出すならもっと先の方で……その方が警戒されないし……」
なんかブツブツ言ってるトレーナーさんを無視して宿題をする。数学苦手だよ~。
この時の私は知る由もなかった。まさか、この時の発言が原因であんなことになるなんて。冗談交じりの言葉が、まさかとんでもないことを引き起こすなんて思いもしなかった。
ミラ子
ふつ~のウマ娘。ユーちゃん一番の友人である。新たなる犠牲者。
ギムレット
息子よ……父さんはな、エミュが難しすぎて出番はほぼないらしい……。
クリスエス
ユーちゃんと仲良かったかは不明。ただ、LANEで祝福のメッセージを送っていた。
ノーリーズン
にゃ~っはっはっは!
ミラ子のトレーナー
よからぬことを企んでる。なおこの企みが後にミラ子に災難をもたらすことになる。