5/11 ラップタイムを修正
トレーナーを捕まえてから早いもので、デビューの時を迎えましたよっと。
「ま、かる~く勝っちゃいますか」
“いよっ!ユーちゃん大胆不敵!自信満々だね!気合も入ってるよ!”
そりゃあね。気合が入るってもんですよ、フンスフンス。これが私のデビュー戦、東京の芝1800mでござい。レース前にブラザー兼トレーナーの南雲が青い顔してたけどま~気のせいでしょう。トイレに行き忘れたとか、担当の初レースに緊張しているとかそんなところですね間違いない。そういえば理事長も来るって言ってたな。お仕事大丈夫なのかね?
「勝って弾みをつけて~、三冠は獲りたいよねぇ」
“分かりやすい最強の称号ですからねぇ。とりま三冠は確定でしょう”
「見た感じ警戒すべき相手も特にいなさそう……ま、頑張りますかい」
身体をほぐして~、万全の状態でレースに挑めるようにってね。
《雲一つない快晴、ここ東京レース場メイクデビュー、芝1800mが今始まろうとしています。絶好の良バ場日和、13人の原石が集いました。そして、このメイクデビューには
《はい。なんといっても
《噂によりますと、彼女の実力は一族でも飛び抜けているのだとか。本レースでもダントツの1番人気、ダスクユートピア!是非、彼女のレース展開にも注目したいですね!》
お、懐かしいね黄昏一族。なんでも私の家がそういう風に呼ばれていたらしいですぜ。すでに没落してるけどな!ハハ、ワロス。
「アレがあの、
「あそこのウマ娘達、見てて可哀想になるくらい痛々しいのよね」
「あの子も可哀想だよな。両親に虐待じみたトレーニングを強要されてたんだろ?」
アッハッハ!悪名高いって言われてますよ!
「さながら私は亡国のお姫様、ってヤツか」
“とっくに廃れてますからね。知ったこっちゃありませんが”
ただま~権威はそれなりにあったからね。注目はされてるよっと。しかも、一族の中でも突出しているという触れ込みだからね。他の子達は殺気だった目で私を見てらぁ。可愛いね。
「どうすっぺ。とりま逃げるか」
“それでいいんじゃないですか?”
おっしゃ、作戦決まり。ゲートに向かいますかい。
《準備を終えたウマ娘達がゲートへと入ります。トコトコが少しゲートを嫌がっているか?係員に誘導されてゲートへと向かいます》
《ギラついた目をした子が多いですね。闘争心は十分、レースで発揮するだけです》
《最注目のダスクユートピアは7枠からの発走となります。2番人気はスペシャルパルフェ、勝利を掴み取るのはどのウマ娘か?》
ゲートの中で気持ちを落ち着ける。ゲートが開いたらダッシュと。スタートダッシュでハナを奪ったらリードをキープ、後は流れでオナシャス。
《最後のウマ娘がゲートに入りました。東京レース場芝1800mメイクデビューが今っ》
──っ、お、ゲートが開いたね。んじゃ。
「いきます、かいっ」
飛び出して、逃げる!
《スタートしましたッ!スターの原石達の登竜門、メイクデビューが幕を開けます!ハナを奪ったのは──ダスクユートピアだ!》
ふむ、追ってくるのは~っと。成程成程、2人ですか。ま、問題ありませんね。このまま逃げましょうか。
《ダスクユートピアが逃げる展開。それを追うようにキュラキュラとエレクトリファイドが追いかけます!好スタートを切ったキュラキュラとエレクトリファイドがダスクユートピアを追いかける!》
それにしても私に対して鋭い眼光を向けてますね。可愛いですね。
(さ~て、
れっつらごー。GOGO!
◇
逃げるダスクユートピアを追う12人のウマ娘。1000mを走って残り800m。ダスクユートピアと2番手との差は──4バ身程。
「いけいけー!」
「頑張れー!」
《ダスクユートピアが快調に飛ばします、先頭はダスクユートピア!2番手キュラキュラとの差は4バ身、3番手エレクトリファイドはキュラキュラから遅れること1バ身!レースは縦長の展開になりました。まもなく第4コーナー、スペシャルパルフェが前を狙っているぞ!》
ダスクユートピアに疲れは見られない。とても気持ちよさそうに逃げている。
「うむっ!元気に走れているようで何より!」
「帰ったらちゃんとお仕事してくださいね~?」
「わ、分かっているぞたづな!」
ニコニコと笑顔で圧をかけるたづなにやよいは恐怖を抱くが、レースの観戦は怠らない。ダスクユートピアのレースを見守っていた。
第4コーナーでさらに差を広げるダスクユートピア。キュラキュラとエレクトリファイドは少しばかりキツそうな表情をしており、それでもなんとか食らいつこうと頑張っている。
「うっ、く!」
「ぜ、全然追いつけない……ッ!」
ダスクユートピアは──
(えげつねぇことやってんなぁ。まさかスタートからほぼ変わらず、
ダスクユートピアは12秒台のラップタイムを刻み続けている。さらに、誰よりもマークされているというのに本人は全く意に介してないのだ。恐ろしいという他ない。
(選抜レースでとんでもない実力の持ち主だと分かってたし、トレーニングでもすげぇ数値を叩き出していた)
「まさに、天賦の才ってヤツなのかね」
先程まで青ざめていたことも忘れて再度溜息を吐く南雲トレーナー。ダスクユートピアの強さを改めて実感していた。
最後の直線へと入る。先頭は変わらない。
《ダスクユートピアが逃げる逃げる!勢いは全く衰えない!キュラキュラとエレクトリファイドの2人はちょっと苦しそうだ!東京の坂を上るダスクユートピア、これは凄い!》
《いや~、前評判通りの強さ!お見事ですねダスクユートピア!》
《さぁダスクユートピアを捕まえることができるか後続のウマ娘達!キュラキュラはここで脱落したか、勢いが落ちているぞ!スペシャルパルフェが上がってくる、前を走るダスクユートピアとの差は8バ身はあろうかという差!ダスクユートピアは楽に逃げる!これは楽勝かダスクユートピア!気持ちのいい逃げっぷりだ!》
最後の直線に入って応援の声は一層大きくなる。決着はもうすぐだ。
◇
さ~てさて、南雲はちゃんと気づいていますかね?私の逃げに。
(ま~さすがに気づいてるでしょ。さっきから一定のペースで逃げていることにはね)
今回選ばれたのは、逃げは逃げでもラップ逃げでした。別に最初から飛ばして逃げてもいいんだけど、これくらいはね?
“いけいけ~ユーちゃーん!かっくいー!ヒュー!”
ふ、そう褒めるでねぇやお芋さん。褒めてもお芋ぐらいしか出せませんよ?
さて、すでに坂を越えて残り200mってところですね。標識を通過しましたよっと。後ろは……大分離れてんな。ただ10バ身以内にはいるかな?関係ないか。
(私のペースは崩れないし、
ま、そうなったらそうなったでこっちもペース上げるだけなんだけど。
ただ、後ろからの気合は凄いもので。頑張っているのが分かる。可愛いね。
《残り100mを切って、ダスクユートピアこれは楽勝ムード!スペシャルパルフェとカラフルパステル、コンフュージョンが追い上げてくるがこれはもう無理!ダスクユートピア楽勝だ!》
ほい、ゴールっと。
《そして今!ダスクユートピアがゴールイン!大楽勝だダスクユートピア、メイクデビューを圧勝で飾ります!2番手以下を7バ身差突き放しての圧勝!一度もペースを緩めることのない、凄まじい逃げを披露してくれました!》
《これは見事な貫禄。彼女の今後が楽しみですね!》
《2着はコンフュージョン、3着はコンフュージョンのアタマ差でスペシャルパルフェ!》
お芋さ~ん。タイムどうだった?ラップタイム。
“きっかりきっちり12秒台だったと思うよ!えらいよユーちゃん!”
ふふん、それほどでもある。さて、観客の声に応えますかい。応援あざまーす!
「凄かったぞー!ダスクユートピアー!」
「次も頑張れー!応援しに行くからなー!」
お、嬉しいこと言ってくれますねそこのファンの方。贈り物はお芋を所望します。さすがに気が早いか。お、理事長発見。手を振りましょう……あ、気づいた。めっちゃ嬉しそうに手を振ってる。たづなさんもニッコニコで手を振っていらっしゃるわ。あ~こっちも笑顔になるんじゃ~。
「あの子、今までの黄昏一族とは違うな」
「本当。ちゃんと笑顔も見せてるし」
「な、なんだか気になって来たぞあの子」
おっと、忘れてはいけない南雲っちはどこにいるのやら。え~っと……発見!なんか顔が青ざめてますね。お腹でも壊したんですか?とりま手を振っておきましょう。
“結果は上々、気分も上々!これから進むぜ連勝街道!無敗のウマ娘!”
「やったりましょうぜチェケラぁ」
ちなさっきからレースに出走してた子達が私を凄い目で見ている。負けた悔しさか、親の仇みたいな目で睨んでる。次こそは勝とうって気概を感じさせるよ。可愛いね。頑張ってね。
こうして私のメイクデビューは7バ身差勝利という形で終わりましたってことで。南雲と今後のことを打ち合わせましょう。
「とりま(英国)クラシック三冠を獲りましょうかい」
「軽々しく言ってくれるなお前……(日本)クラシック三冠が目標な?」
「オウイエス。あ、次のレースも選定よろよろ。重賞だと嬉しみ。ダートも忘れるんじゃありませんよ」
「はいはい……はっ?」
次のレースも頑張りましょうぜい、チェケラッチョ。
ユーちゃん
メイクデビュー7バ身差勝利。他の子から睨まれてるのに可愛いねで済ませる。自分の家没落したのにワロスで済ませとんちゃうぞ。
お芋さん
地味に走ってるユーちゃんに併走している。併走しながら応援とか器用な真似してんな。
南雲トレーナー
青ざめてた理由はダスクユートピアの家のことを思い出したため。ついでに理事長とのお話も思い出した。なおこれからもっと胃が痛くなる。
黄昏一族
ダスクユートピアの家の別称。ダスク(dusk:黄昏)の意。重賞ウィナーもいるので結構な名家ではある。なお海外で勝ててない。