以下、ピクシブ投稿時のキャプションを転用
導入なんだからそんなに長くともあれだろうとの判断からのこの文字数。ちゃんと3千字程度でまとめた自分が偉い。カフェのシーンは何だったのかって?あれは転換場面だったので導入ではないです。
何ならカフェ店員せらますみが書きたかっただけとも言える。
突然、高校のクラスメートからメッセージが来た。律儀にも大学の友人に真純を紹介していいかという相談だった。詳しく聞けば探偵として依頼をしたいそうで、メッセージ上でのやり取りではいまいち要領を得ず、先方からの申し出を受けてひとまず会う約束をした。話を聞かないことには、依頼を受けるかどうか決められないということは伝えたがメッセージでは話したくないのだという。××大学の最寄り駅の駅前にあるチェーン店のカフェが今回の待ち合わせ場所だ。店に入ってすぐ、レジの横にいた店員に待ち人の名前を告げるとすぐに席へ案内された。すでに年若い女性が待っているのが見えた。
「こんにちは。高瀬春子さんであってるか?」
「こんにちは。はい、あなたが世良真純さんですか?」
「そうだよ」
「今日は会っていただきありがとうございます。飲食の代金は私が払うので、何か頼んでください」
「いや、ボクの分はボクが払うからいいよ」
「いいんです。私が来てもらってるんですし、依頼の前金とでも思ってください。」
日に焼けた安っぽいソファに座る彼女は育ちがいいようで、綺麗な姿勢で紅茶を飲んでいた。挨拶を交わして真純が向かいに座る。押しの強い彼女の勧めるままに軽食と飲み物を頼み、注文が届いてから話は始まった。パンケーキを一口分切り取って口に含むと春子が話し出す。
「食べていてもらっていいので聞いてほしいのですが依頼というのは……友人――豊島実咲を探して欲しいんです」
「ング、失踪事件か?申し訳ないけど、それは警察にいった方が……」
ふわふわのパンケーキをしっかり飲み込んでから指摘する。警察に頼れるのならその方が範囲も広く解決が早い。捜索願をだしたとて自分の意志での失踪ならどうしようもないのだが。しかしそういうわけではないようで春子は首を振った。
「違います。実咲は学校に来てはいるんです。でもある時から様子が変わってしまって……すっかり人付き合いをしなくなってしまったんです」
「ある時って……何か心当たりがあるのか?」
「はい……パーティーに誘われたことがあって……私は日が合わなくて行かなかったんですが彼女は行くって言ってて。その次の週からおかしくなってしまったようでした。言葉数が減って、一人で行動することが多くなりました。避けられるようになっていって、もう私とは口も聞いてくれません」
うつむいてそう締めた彼女はその友人をずっと気にかけていたのだろう。会ったばかりの真純にもそれが伝わってくる。しかし、そこまで友人を想う彼女が行動していなかったというのが不思議に思える。
「そうか、じゃあ怪しいのはそのパーティーなんだな」
「はい……それは私にもわかりました。だから一度そのパーティーに行ってみようとしたんです。でもそれを聞きつけた実咲が久しぶりに話しかけてくれたと思ったらいきなり怒り出して、絶対に行くなと」
「それで、春子さんは行けないってことか。依頼はこのパーティーで何が起きるのかを調べてほしいってこと?」
ぺろりと話の合間にたべおわったパンケーキの皿にナイフとフォークを揃えておく。口直しのカフェオレはぬるく、口の中に苦味が残った。目の前の彼女の方はすでに冷えきったカップを両手で包んでいた。
「実咲がまだ通っている気がするんです。通う原因を、突き止めてほしいとは言いません。警察に通報するべきならそうしてください。私は、いまの追い詰められた実咲が見ていられない」
「実咲さんの話を聞けばいいのか?」
「そう……ですね、私では聞いてあげられないから」
ゆっくりとそう告げる春子は諦めたような笑みをたたえていた。真純は依頼を受けることに決めて、まずはパーティーに行くところから始めようと春子に声をかける。
「そのチケットはどこで手に入れたんだ?」
「サークルの先輩からいただきました。今回も一枚いただいています。日程は来週の日曜日で、近くて申し訳ないんですが……」
用意周到な彼女はそう言われるとわかっていたのか、カバンの中から取り出したスリーブを真純に渡した。素直に受け取り中身を取り出した。チケットは少し厚みを感じる紙質にパーティーの名前と思しき「ホワイトアウト」と「ご招待」の文字が印刷され、箔押しの縁飾りがきらりと光を放つ。素人目に見ても金がかかっているように見えた。裏にはざっとパーティーの概要と企画会社について、それとこのチケットを出すとワンドリンクサービスになる由が書かれていた。
「ん、ありがとな。これは……日程とかはないんだな、あくまで参加者であることを示すためのものか。じゃあ一枚につき一回?でも配るってことは継続との区別をするため?……なあ、その先輩は何回か行ってるのか?」
チケットをじっくりと検め、ひとり言をつぶやきながら推理をしていく。これだけでは変哲もない招待券でしかない。気になったことを尋ねれば、少し首を傾げながら春子が返答する。
「ええ。何度も行っていると聞きました。このチケットを配った数で本人にも優待があると言っていた気がします」
「ふうん?あぁ、この数字で管理してるのか。規模とかはわかるか?」
それを受け、細部を観察すると左上に数字が打たれていることがわかる。配布者の名前とこの数字が紐付けられているのだろう。あらかた見終わったチケットを紙のスリーブにしまい、テーブルに置いた。手を自分の腿に落とし、息を吐いてから真純は春子の目を見る。
「それで今度のパーティーは来週の日曜日、ね。わかった、この依頼を受けるよ。パーティーに実咲さんが出ているかを確認すること、出ているのなら話を聞くこと。この2点でいいのか?」
「あ、ありがとうございます。お願いします、実咲を見つけてください……」
深々と頭を下げた春子は慌てた真純が顔をあげるよう言うまで決して動かなかった。ほっとしてのどが渇いたのか彼女は残りの紅茶を飲み干した。
「メッセージに実咲さんの写真を送ってくれないか?それと、できればチケットを配っている先輩の連絡先がほしいな」
「はい、わかりました。写真は今送りますね。先輩は……本人に聞いてみないと……」
それから、必要な情報を得るための下準備を行う。誰か一人でも内部情報を聞き出せる人間がほしいところで一番確実なのがチケットの配布者だろう。そこまで仲がいいというわけではないのか春子は連絡先を教えていいかどうか悩んでいるようだった。
「あ、じゃあSNSのアカウントわかるか?そこからボクのほうで連絡取ってみるよ」
「あ、それなら……」
差し出された画面に映るのはキラキラとした日常の写真が上がるアカウント。匿名性などあったものではなく、仲間内で会話をしていることがみてとれる。遡れば件のパーティーの写真も載っていた。そちらのURLもメッセージに送ってもらい、報告の方法と報酬の話をしてこの日は別れた。
これが久しぶりに受けた浮気調査以外の依頼だった。このときはたちの悪い仲間に入れられて抜け出せなくなっているだけだと軽く思っていたが、調べていくとどうやらそれだけではなさそうだった。パーティーは大規模なインカレサークルのていをしていて、OBが幹部として名を連ねる会社によって開かれている。
写真の中で実咲は綺麗というよりは可愛い顔で春子と一緒に笑い合っていた。とても仲が良さそうな様子がわかり、春子はそんな友人の調子が優れないことを心配しているといったところだろう。簡潔にしてみると探偵に頼むまでもないように思えるが、パーティが今回の起点だということが怪しさを醸し出していた。あからさまな謎に好奇心が刺激されるのは探偵の
奥になにかがひそんでいる気配に誘われて真純は一人、捜査を開始した。