諏訪子の案内でしばらく進むと目の前に立派な町が見えてきた。
「じゃーん!ここが私の誇る諏訪の国だよ!」
諏訪子は誇らしげに町並みや店を紹介し始めた。一通り見て回るころには日も傾きかけていた。
「いやー、ごめんごめん。普段は客人を案内することなんてないからさ、ついつい連れまわしちゃったよ」
「いいよそれぐらい。この国のこともいろいろ知れたし、諏訪子がどれだけこの国を大切に思ってるのかも分かった」
「あははー、嬉しいこと言ってくれるじゃん。あ、ついたよ、ここが私が普段すごしてる神社。守矢神社さ!」
そういって案内されたのは町を見下ろせる位置にある巨大な神社だった。
「へえー、かなりデカいな。ここに一人で?」
「いや?普段はここの巫女と一緒に「諏訪子様ー!」お、噂をすれば」
神社に着くと誰かがこちらに駆け寄ってきた。
「諏訪子様今までどこに行ってたんですか!? 少し目を離すとこれなんですから…」
「いやーごめんごめん。例の洞窟に異変があったていうから見に行ってたんだよ」
「洞窟って…あそこに行ってたんですか!? あそこにはとんでもない邪神が潜んでるから近づくなって言ったのは諏訪子様じゃないですか!」
おいまて、なぜ俺が邪神扱いされてるんだ。
「おい諏訪子、お前なに人のこと邪神呼ばわりしてくれてるんだ…?」
「い、いやあ、もし誰かが興味本位で入っちゃったりしたら大変だし?そうならないために仕方なく邪神がいるってことにしたっていうか~?」
言いたいことは分かるがだからって邪神にする必要はないだろう。道理で町を歩いていたら怯えた目で見られるわけだ。
「あの、ところで諏訪子様。そちらの方は…?」
「ああ、さっき言った邪神「…」じゃなくて! 洞窟からでてた神力の正体だよ」
「月雅奏だ。俺の神力が漏れ出てたせいで迷惑かけたみたいだな。ごめん」
「いえいえ、気になさらないでください。普通の人間は神力を感知できませんしこれといった被害があったわけでもないので。あ、私は東風谷翠と申します。この守矢神社で巫女をさせていただいております」
そのあと翠さんと諏訪子に案内されて神社にお邪魔することになった。途中で諏訪子に服を渡されそれに着替えるよう言われた。なんでも
「ボロボロすぎて見てられない」
とのことだ。たしかにぼろきれみたいになってたしなあ。翠さんが直してくれるようなので渡された服に着替えてぼろきれみたいな服を預けた。
「じゃあなんであんなところで寝てたのか話してもらおうじゃん」
「いいけど、結構長くなるぞ?色々あったからなあ」
――少年説明中――
「ううっ、奏も大変だったんだねぇ~」
一通り話し終わるころにはなぜか諏訪子は号泣していた。
「な、なんで泣いてるんだよ」
「そりゃあ泣くさ!仲間のために命かけて時間稼ぎしたのに結局置いて行かれるなんて悲しすぎるよ!」
「だからあれは自分でやったことだし置いて行かれたとも思ってないって」
「うーん…まあ本人が納得してるなら口を挟む気はないけどさあ。というかそんな化物と戦ってよく生きてたね?」
「それは自分でも思う。ほんと奇跡だったよ」
「でも神力と霊力を同時に使うなんてねえ。現人神だからできることだね。ということは奏のその見た目もその影響なのかな?」
「見た目?別に普通だろ。黒髪黒目なんて別に珍しくもなんとも…」
「何言ってんのさ。もしかして気づいてないの?今のあんた白髪だよ?目の色も左右で違うし。珍しすぎて最初見たときはそれこそほんとに邪神かと思ったよ」
なんだと?白髪のオッドアイだって?
「な、なあ、ここ鏡あるか?今の俺どうなってるんだ!?」
「ほんとに気づいてなかったんだねえ。はい鏡、信じられないなら自分で見てみれば?」
鏡を渡された俺は自分の顔を確認する。
そこには以前のどこにでもいる黒髪黒目の姿はなく、白髪に赤と青のオッドアイの現実離れした姿の自分が映っていた。
「な、なんじゃこりゃああああ!?」
「もともと黒髪黒目だったんでしょ?いやあ、不思議なこともあるもんだねえ」
「不思議すぎるだろ!なんで髪どころか目の色まで変わってるんだよ!?」
「そんなの私が知るわけないじゃん。神力を解放するまではずっと黒だったんでしょ?じゃあ神力の解放が原因なんじゃない?現人神の神としての側面が体に馴染んだとかそんな感じだと思えばいいよ」
こんな見た目になってたのか…。もしかして町の人が俺を見てたのってこれが原因なんじゃ…
「まあまあ、変わっちゃったもんはしょうがないじゃん。いつまでもそんな暗い顔してたら幸運が逃げるよ?」
「他人事だからって…、まあたしかにどうしようもないしなあ。しょうがない、切り替えていくか」
「うんうん、そのほうがいいよ。ところでこれからどうするの?聞いた感じ帰るあてとかもないんじゃないの?」
「今翠さんが服直してくれてるからそれまでは世話になるしかないな。そのあとのことはその時考える」
「行き当たりばったりな生き方だねえ。ま、退屈しなさそうだからいいけどさ。じゃあ部屋貸すよ。いっぱいあるし、好きに使ってくれていいから」
というわけで俺はしばらく諏訪の国の世話になることになった。