東方巡遊録   作:九櫻

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第七話 入隊試験

 

入隊試験当日。ついにこの日がきた。この1ヶ月の成果を見せるときだ。試験は会場を二つに分けて行われるようで俺は試験会場Aに向かっていた。途中で依姫と出会ったが彼女は試験会場Bだそうですぐに分かれることになった。

 

「じゃあ、お互い頑張ろうぜ」

 

「ええ、ではまた」

 

 

試験会場に着くと俺以外にもすでに何人か来ていたようで話し声が聞こえてきた。そのまま少し待っていると試験官らしき人達がやってきた。

 

「それではこれより警備隊への入隊試験を行う!」

 

いよいよ試験が始まった。改めて意識すると緊張してきたな…。

 

「試験内容は大きく分けて二つだ。まず初めに筆記試験を受けてもらう、その後休憩を挟んでから実技試験だ。皆心して取り組むように!」

 

試験監督がそう言うと試験用紙が配られた。

 

「制限時間は50分だ。それでははじめ!」

 

開始を告げられると同時に周りの受験生たちが一斉に問題を解き始める。俺も急いで解き始めたが幸い永琳が教えてくれた問題ばかりだったので難なく解き進めることができた。都の歴史についての問題はまったく分からなかったがほかの部分でリカバリーできているだろう。

 

そんな調子で何とか最後の問題まで解き終わったところで終了が告げられた。

 

「そこまで!今から20分ほど休憩を挟んだ後実技試験を始める!」

 

 

ささっと食事を済ませた俺は実技試験にむけて霊力操作の最終確認をしていた。昨日はいつもより早めに寝たのもあっていつもよりはっきりと霊力を感じられる。この調子なら問題ないだろう。

 

 

 

「では実技試験を始める!内容は単純だ、これから一人ずつ試験官と10分間の模擬戦をしてもらう。10分間生き延びるか一撃でも当てられれば実技試験は合格とする。またこちらが続行不可と判断した場合はその時点で終了とする。それでは実技試験、はじめ!」

 

ふむ、模擬戦なら今まで依姫と何度もやってたし問題なさそうだな。霊力操作による身体強化もありらしいし、呼ばれるまで作戦考えておこうかと思ったが試験官の動きを観察したほうがよさそうだな。

 

そうして実技試験が始まり一人ずつ模擬戦を始めていった。あの試験官のおっさんはかなり強いようで俺の前に呼ばれた受験生たちはほとんどが防戦一方だった。10分間耐えれば合格なのでわざわざ一撃を狙いにいくよりもそっちのほうが確実だしな。

 

それでも何人かは試験官の猛攻に耐えられなかったようで降参か場外にでて失格、ひどいやつだと気絶したりしていた。

 

そしていよいよ俺の番になった。

 

「次!月雅奏、前へ!」

 

呼ばれた俺は木刀を渡され試験官と対峙する。見ただけでかなりの腕だと分かった。霊力もかなりの量だしなによりまったく隙が見当たらない。まるで初めて依姫と修行したときみたいだ。

 

「それでは…始め!」

 

試験官の合図と共に俺は相手に向かっていき一撃を食らわせようと剣を振りぬいたのだが簡単に止められてしまった。

 

「ほう?今度の相手はなかなか骨がありそうだな。ちょうどいい、さっきから誰も自分から攻めようとするやつがいなくて退屈していたんだ。少しは楽しませてくれよ?」

 

そう言っておっさんが俺の剣を弾いたかと思うと次の瞬間には横っ腹に一撃叩き込まれた。

 

「がはっ…」

 

「どうした?まさかたった一撃で終わるなんて言わないだろうな」

 

(上等だ、こうなったら何がなんでもその顔に一発ぶち込んでやる)

 

俺は身体強化を行いさらに自分の周りに霊弾を生成した。身体強化と霊弾の制御の並列操作はかなり霊力を消費するがそれぐらいのことをしなければこいつには勝てないと確信に近いなにかを感じていた。

 

「ほう、もうすでに霊力操作を習得しているのか。しかも身体強化まで…、いいな、ますます楽しみになってきた!」

 

おっさんがなにやら喋っているがどうでもよかった。俺は再びおっさんに突っ込み攻撃をしかける。さっきは一発当てるつもりだったのが防がれたので今度は手数で勝負することにした。居合からの斬り返し、さらに繋げて横一文字…、相手に反撃の隙を与えず一方的に斬り続けろ、依姫から教わったことだ。さらにそこに加えて相手の死角から霊弾を飛ばす。俺の斬撃を躱そうとすればその方向から霊弾が飛んでくる、かといって霊弾に気を取られると今度は剣が迫ってくる、今の俺にできる最大の攻撃だ。

 

昨日の依姫との模擬戦では霊弾は使わなかったがあれはあくまで剣術の修行なので使っていいのは身体強化までと決めてあった。しかし今回はなんでもいいから相手に一撃当てるというのがルールなので霊弾も使いまくる。しかし…

 

「ふはははは!!なるほど、剣と霊弾による挟み撃ち、さらに身体強化で剣速も限界まで引き上げるか!これは思った以上だ!いいだろう、ここまで楽しませてもらったんだ、俺も少しばかり本気を出すとしようか!」

 

俺の攻撃はおっさんには一歩もとどいていなかった。まさかあれを防ぎ切ったっていうのか?だとしたらこのおっさんどれだけ強いんだよ…?

 

「ではいくぞ小僧…簡単に終わってくれるなよ?」

 

そうしておっさんは剣を構えた。いままでまともに構えなかったこいつが初めて剣を構える、その瞬間周りの空気が変わった。さっきまではとんでもなく強いおっさんだったのがただ剣を構えただけで百戦錬磨の武人のような気迫を見せた。

 

「小僧…この一撃、防いで見せろ!!!!」

 

そういっておっさんは剣を振り下ろした。俺はその一撃を弾こうとするが触れた瞬間剣にとんでもない重さがかかった。

 

だめだ、まったく動かない。こうして持ちこたえるだけで精一杯だ。身体強化の術を使った状態でこれが限界なんてこのおっさん何者なんだ!?

 

だが俺もこのままやられるわけにはいかない。逆に考えればこの状況は俺にとってもチャンスだ。こうして俺が持ちこたえている間は相手も動けないのだから躱すことも剣で防ぐこともできない。

 

俺はあらかじめ生成しておいた霊弾をさらに分裂させおっさんに気づかれないようにしながら囲うようにして配置する。あと少し、あと少し持ちこたえれば…

 

「どうした、このまま時間切れまで耐えるつもりか?いいだろう、ならばやってみせろ!」

 

そう言っておっさんはさらに力を込めた。体中が悲鳴をあげている。だがここで折れるわけにはいかない。霊弾の準備もできた、今度こそきめる!!

 

「いっけええええええ!!!」

 

「なに!?」

 

おっさんめがけて配置した霊弾を放つ。おっさんもさすがにあの状況で俺が霊弾を準備しているとは思っていなかったようで初めて焦りの顔を見せた。

 

「くっ、だがまだだ!」

 

おっさんは俺への攻撃をやめ即座に霊弾を弾き飛ばしそのままの勢いで俺を抑えていた場所に剣を振り下ろす。

 

 

だがそこに誰の姿もなかった。

 

「なに!?いったいどこに…」

 

「もらったああああああ!!!」

 

「!?」

 

おっさんが辺りを見回すがそこに俺の姿はない。なぜなら俺は…

 

「!?上だt」

 

おっさんは最後まで言えなかった。顔面に俺の一撃が直撃したからだ。

 

「はあ、はあ…一撃、当てたぞおっさん…!」

 

「そ、そこまで!月雅奏合格!」

 

終了の合図を聞いた瞬間俺はその場に座り込んでしまった。体にまったく力が入らない。さすがに無理しすぎたか…。

 

「いやあやられたやられた!まさか本当に一撃当ててくるとは!」

 

そう言いながらおっさんが近寄ってきた。

 

「見事な戦いだったよ、まさか君が飛行まで習得しているなんてね」

 

そう、おっさんが霊弾を弾き飛ばした瞬間に俺はおっさんの頭上に飛んだのだ。霊力操作による技術のなかでも最も難しいとされる飛行の術、俺がこれを習得できたのは一昨日のことで永琳以外にはまだ誰にも言っていなかった。まあ永琳以外の知り合いは依姫しかいないのだが…。

 

「総隊長!やりすぎですよ!今回はあくまで試験なんですから少しは加減してください!」

 

「はは、悪い悪い。彼が思った以上だったのでつい…」

 

まて、今何と言った?総隊長?いったい誰が…

 

「改めて自己紹介といこうか、私は警備隊総隊長の綿月克矩だ。警備隊の一員として共に頑張ろう!」

 

「え、総隊長って…それにいま綿月って言いました?ってことは依姫の…」

 

「ああ、依姫は私の娘だ」

 

まじか、でもそれならあの強さにも納得だ。依姫があんなに強いのにも納得がいった。

 

「おっと、では失礼するよ。まだ試験は終わっていないからね」

 

「あ、はい。では」

 

そのあとも試験は続いたが俺は疲れて眠ってしまったのか気づいたらもう試験は終わって合格者発表の時間になっていた。

 

 

 

 

幸い俺は試験に受かっており明日から正式に警備隊への入隊が決定した。試験を無事通過できたことに安堵しつつ帰ろうとしたら綿月総隊長に呼び止められた。

 

「いやあ、さっきはすまなかったね。試験というのを忘れてつい本気で挑んでしまったよ」

 

「いえ、それなら全然大丈夫ですよ。それよりなんで俺は今総隊長殿と一緒に帰ってるんですかね…」

 

「ああ、それなら「奏さーん!」ああ、噂をすれば…」

 

「奏さん、試験はどうでしたかって…父上!?」

 

「よお、依姫。試験なら無事受かったよ。結構危なかったけどな」

 

「そ、そうですか。それならよかったです。あ、私ももちろん受かりましたよ。明日からはお互い警備隊の一員ですね!ところでなんで奏さんと父上が一緒に?」

 

「ははは、簡単なことだ。奏くんのほうの試験官が私だったからだ」

 

「え、父上が!?奏さん、本当ですか?」

 

「ああ、ホントにこの人だったよ。ボコボコにやられた」

 

「何を言うんだ、私に本気を出させてその上でしっかり一撃当ててきたじゃないか」

 

「ち、父上に一発入れたんですか!?初見で父上に一発入れた人なんて初めて見ましたよ…」

 

「あれが本気だなんて絶対噓ですよね…」

 

「まあいいじゃないか。とにかく、二人とも入隊おめでとう!これからは警備隊の一員としてしっかり励んでくれたまえ!」

 

そんな感じで総隊長から激励の言葉をもらい綿月親子と別れた俺は家に帰り永琳に結果を報告するのだった。

 

「合格?そう、おめでと」

 

「まさか入隊前から総隊長とやりあうとは思わなかったよ。というかあんなんでよく受験者が減らないな」

 

「総隊長が試験に出てくるなんてしょっちゅうよ?あの人戦闘狂のきらいがあるから。それに一発入れたんですって?なら入隊してからは今日以上に絡まれるんじゃないかしら。あの人自分より強い人がいないっていつも嘆いてるから」

 

「うへえ、勘弁してくれ。今日みたいなことがこれから毎日だなんて想像もしたくない」

 

などと話しながら夕食を済ませてからは特にすることもないのでさっさと寝ることにした。明日からは警備隊としての任務などをこなさなければならない。今までより忙しくなるだろうが頑張らないとな。

 

 

 

 

 

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