東方巡遊録   作:九櫻

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第八話 一年後

 

俺が警備隊に入隊してから一年が経った。入隊してからはいろんなことがあった。訓練中に総隊長が乱入してきて急に100人組手みたいなことが始まったり任務中に妖怪の群れと出くわしたりなど上げだしたらキリがない。

 

そんな感じで気づけば一年が経過し今では俺は警備隊の部隊長に任命された。なんでも妖怪の群れを一人で制圧したのが評価されたらしい。一緒に任務についていた隊員が援軍を呼んでくるまでの時間稼ぎをするつもりが思ったより弱かったのでそのまま制圧しただけなんだけどな。ちなみに依姫は警備隊副総長に任命された。依姫は最初辞退しようとしていたが総隊長に説得されて最後には引き受ける気になったそうだ。俺も依姫は副総長にふさわしい実力だと思う。

 

そんなわけで部隊長となった俺は自分の部隊の訓練の指導中というわけだ。

 

「はいそこー、だらだら走るなー。あと10周追加なー」

 

「「「勘弁してください隊長ー!」」」

 

ああして文句を言いながらもなんやかんやちゃんとこなすんだから根は真面目な奴らである。なら最初からちゃんとやれとも思うが。

 

「ああそうだ、さっき豊姫さんからクッキーの差し入れもらったから終わったやつから食っていいぞー」

 

「うおおおおお!!豊姫さんのクッキーは俺のものだー!」

 

「「抜け駆けすんなああああ!!」」

 

…自分で焚きつけといてなんだがちょろいやつらだ。

 

 

 

豊姫さんは依姫のお姉さんで永琳の弟子だ。この前休暇をもらい永琳の家でくつろいでいたところ急に駆け込んできたのが初めての出会いだった。

 

「助けてえーりん!」

 

「…えっと、どちら様?」

 

「あれ?永琳さんは…」

 

「永琳なら月夜見様の屋敷に行きましたけど、あなたは?」

 

「あ、ごめんなさい。私は綿月豊姫と申します」

 

「綿月、ってことは依姫のお姉さんですか。俺は月雅奏といいます。依姫には色々とお世話になりまして…」

 

「ああ! あなたが奏くんですか!こちらこそいつも妹と父がお世話になっています。二人とも家ではあなたのお話ばかりしていますよ」

 

「へえ、あの二人が…、ところで本日はどういった御用で?」

 

「あ、実は「見つけましたよお姉様!」…どうしようかしら」

 

なんとなく読めた気がする。

 

「お姉様仕事中に逃げ出すのは止めてくださいと何度言えば…って奏さん!?」

 

「よお依姫、久しぶりだな。副総長の仕事はどうだ?」

 

「ええ、なかなか大変ですがその分やりがいもあって…って今はそれどころじゃないんです! お姉様!早く戻りますよ!」

 

「ええ~、朝からずっと仕事じゃない。少しぐらい休憩してもいいじゃないの」

 

「それは今までお姉様が仕事をサボった分が溜まっているからです!私の目が黒いうちはサボりは許しませんからね!」

 

そう言って依姫は豊姫さんを引きずっていた。

 

「ああ~、それじゃあまたね~奏くん~」

 

「すみません、奏さん。お姉様がご迷惑をおかけしました。それではまた」

 

「お、おう。じゃあな」

 

 

 

 

今考えたら最初の出会いが強烈だったなぁ。

 

それからも豊姫さんは割と頻繫に訪ねてきた。最近は俺の部隊に差し入れを持ってくるという理由でよくこっちにやってくる。部隊の奴らは豊姫さんの差し入れが日々の活力になっているようだ。豊姫さんの差し入れはどれも美味いから気持ちはわかる。

 

そんなことを考えながら俺は訓練の様子を横目に豊姫さんとお茶会中だ。

 

「あら、どうしましたか奏くん?さっきからボーっとして」

 

「初めて豊姫さんと出会ったときのこと思い出してたんですよ。ほら、いきなり駆け込んできて…」

 

「ああ、そんなこともありましたねえ。あのときも確か依姫に追いかけられてましたっけ」

 

「今頃また豊姫さんのこと探し回ってるんじゃないですか?」

 

「今日は大丈夫ですよ~、ちゃんとバレないように気を配りながら「誰にバレないようにしてたんですか?お姉様」…」

 

いつの間にか豊姫さんの後ろに依姫が立っていた。豊姫さんと向かい合って座っていたのに気づかなかった…。

 

「あ、あのね依姫?これはちがくて」

 

「言い訳無用! さあ帰りますよお姉様! すいません奏さん。訓練の邪魔をしてしまって」

 

「いやいや、邪魔なんかじゃないよ。むしろ毎回差し入れもらっちゃって申し訳ないぐらいだ」

 

「おや、そうですか。邪魔でなければそれでいいんですが…」

 

「そうよ依姫! 私は訓練の邪魔なんて「お姉様は黙っててください」はい…」

 

このやり取りもすっかり見慣れて今では日常になりつつある。しかし毎度毎度逃げ出すとはよほど仕事が嫌なんだろうな。しょうがない、差し入れの恩もあるし助け舟をだすとするか…。

 

「なあ、依姫。今時間大丈夫か?」

 

「今ですか?ええ、この後は1時間ほどなら空いてますが」

 

「もしよかったら俺の部隊の奴らに稽古つけてやってくれないか?あいつらもたまには俺以外と訓練したほうがタメになると思うんだ。それに副総長の訓練ならいい刺激にもなるだろうし」

 

「ふむ、確かに一理ありますね。分かりました、では早速始めましょうか」

 

「ありがとう、じゃああいつら呼んでくるよ」

 

そういって俺は席を離れ連中を呼び集める。

 

「お前らー、今から副総長どのがお前らのために直々に稽古をつけてくださる。気を抜かずにしっかり励むように」

 

「「「はい!隊長!」」」

 

「じゃあ依姫、あと頼むよ」

 

「はい、分かりました。ではこれより特別訓練を始めます。皆心して取り組むように」

 

「「「お願いします!!」」」

 

そんな感じであとは依姫に任せた俺はお茶会の席に戻った。

 

「これであと1時間はここでゆっくりできるんじゃないですかね」

 

「うう~、ありがとうございます奏くん」

 

「いいですよこれぐらい。いつも差し入れもらってるお礼だと思ってください」

 

それから一時間、俺たちは訓練の様子を眺めながらお茶会を満喫した。

 

ちなみに依姫の訓練を受けた部下たちはみな口をそろえてこう言った。

 

「もう副総長の訓練は二度と受けたくない」

 

…そんなにきついかあ?

 

 

 

 

 

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