【オリウマ・オリトレ】へっへっへっ…俺は闇のトレーナー 作:ゴールド@モーさん好き
今日も俺の教育によって人生を狂わされた元担当の夢を見るぜwwww
『トレーナーさん、私後悔してません』
嘘だ
『私にとって、トレーナーさんと駆け抜けたあの1年間は宝物です』
だまれ……
『才能の無い私がG1を取れた、諦めたかった私に夢を見せてくれた。誰よりも私を思ってくれた』
そんなのバカな俺の出世欲だ……
『だからどうか』
そんな事──
『貴方自身を、許してあげてください』
「言うわけないだろうが!!!!!」
G1ウマ娘:ユアホープ
主な勝ち鞍:ホープフルステークス
「はぁっはぁっ……クソ」
はは、笑っちまう程〝最高〟な朝だ。ココ最近俺にピッタリな朝が続き笑いが止まらない。震える手を抑える為に人差し指を噛みながら洗面所へ向かう。
「…………今日も最高にキマってるぜ、相棒」
見るだけで笑いが起きそうな自分の顔を水で洗いながら身支度し、俺は出勤した。
今日も俺は辞表を家に忘れてしまった……
闇のトレーナーの仕事は大変だ、闇のトレーナーは基本的に人望が無い。何故なら闇のトレーナーだからだ。
人望が無いという事は担当が作れないということ、担当が無いトレーナーなんぞ使用者の居ない杖も同然。
だが、使用者は居なくても持ち主は居るので〝必要な奴に貸し出される事〟で存在意義を保っている。つまり俺が今何をしてるかと言うと──
「はいそこー、A班を練習一旦終わり! 待機してるB班と交代してクールダウン! B班はA班と同じメニュー開始!」
教官殿のサポートをしている。
中央トレセンは質を求められた結果人材がどこも足りない、手が空いてるのなら穴埋めされるのは自明の理である。
俺は闇のトレーナーだ、人望が無ければ評判も悪い。未来あるウマ娘の選手生命を折ってやったのだ、当たり前である。だが今教導してる奴は今年入ってきたばっかの奴らだ、そういう奴らだとたまに俺の評判を知らねぇマヌケも出てくる。
「トレーナーさん、来週選抜レースがあるので貴方に見て欲しいです」
この、世間知らずみたいにな……
コイツは今年俺が担当している班の1人で、何故か懐かれてしまった。コイツは〝不安どころ〟があるが才覚ある良い素材だ、あっちからアプローチを掛けてくれるなんて願ってもないチャンスだった。
「…………お前、俺を知らねぇのか」
「私たちの教導官を進んでやるような物好きのトレーナーさん」
「違うしそういう事を言ってるんじゃない、俺がどう言うトレーナーだったか知ってるのかって言っているんだ」
…………だがやはりアレは不安材料過ぎる、これ以上悪評が募ると退職になりかねない。こいつはやめとこう。
「ええ知ってますよ、確か……ホープクラッシャーって名前でしたよね?」
「!?」
「有望株と思われたウマ娘ユアホープ、実際本当に才覚が開花し彼女は現クラシック2冠を果たし、これから3冠目に向けて調整中の彼女と競り合い──ハナ差で勝利した」
「そうだな」
「クラシック3冠にも挑むと思われていた彼女だったが……ホープフルステークス後のライブで突然倒れ緊急搬送。原因は足の脆さに対してそれを凌駕仕切ってしまった末脚の才能、勝ちたいと願うあまり彼女は脚を壊す程の末脚を発揮してしまった」
「詳しいんだな」
「あの時のニュースはこれで持ち切りでしたからね」
「そこまで知っていて、俺がユアホープの元トレーナーだと分かった上で、なんで逆スカウトなんてした」
そうだ、こんな悪評あるトレーナーに教わりたいなんて誰が思うんだ。何で此奴は俺なんかを選んだんだ。
そう思い言い返したら、此奴は泣きそうな顔をしながら口を開いた。
「そんな事、あなたが言わないでくださいよ……」
「あ?」
「ユアホープの〝元〟トレーナーなんて、言わないで下さいよ……彼女にとって貴方は今でもトレーナーなんですよ!」
「!」
何を言い出すかと思えば、訳の分からない事を。
「そう思う訳ないだろ、何言ってんだお前」
「本当の事です! 私は貴方が訂正しない限り、私も訳を話しません!」
「はぁ?」
会話をしてこんなにも頭が痛くなったのは久しぶりだ、変な所で頑固になりやがって……あーもうめんどくせぇ!
「あーそうだな、確かに俺は今でもユアホープのトレーナーかもなうんうん……これでいいか?」
「……良くないけど、とりあえず今はそれでいいですよ」
ったく手間取らせやがって。
「それで、結局お前は何が理由でこんな事してんだ?」
「そうですね、それを話す前に自己紹介からいいですかね」
「ん?」
そういや俺此奴の名前知らないな……まぁ別に教導は班ごとだったから困りはしなかったからいいがなんで急に──
「私の名前はユアメモリー、ユアホープの妹です」
「は」
俺は、手に持っていた荷物を手放してしまった。
「な、なんっだと」
「お姉ちゃん言ってました、トレーナーさんは誰よりも自分の事を見てくれて、誰よりも私を信じてくれてたって」
「そ、そんなの!」
《あっうぅがぐ……かはっ》
当たり前だ! そう叫びたかった、だけど俺はホープの事を思い出し、言葉が詰まる。当たり前で俺にはできなかった事だから。
「お姉ちゃん、あの日からずっと落ち込んでるんです」
そんなの当たり前だ、自分の夢を愚鈍な奴にめちゃくちゃにされたんだ。落ち込まない訳が無い。
「自分は、トレーナーさんを裏切ってしまったって」
今度こそ俺は体全身から力が抜け、膝から崩れ落ちてしまった。ホープの妹の言葉に、〝納得〟してしまったからだ。
「トレーナーさんと見つけた夢を、私自身が真っ先に壊してしまったって」
「違う、ホープに落ち度なんか無かった」
「トレーナーさんと追う夢が心地好くて、トレーナーさんに喜んで欲しくて忠告を無視して気持ちを優先してしまったって」
「違うッ! 俺があいつにエゴを押し付けたんだ! あいつは悪くなんか無い!」
夕暮れ時の3女神像の前で、耳に手を押し付け頭を振った。
「違うわけないだろ!」
「うぐっ」
俺はユアメモリーに胸ぐらを掴まれ、無理やり顔を上げられた。
「お前が考えてる事が違う事くらい、〝退院するまで毎日足を運んでいた〟トレーナーさんなら分かってるはずだ!」
「おまえ、何でそれを」
「私だって時間があれば会いに行ってた、時間は合わなくても貴方の事位幾らでも聞いた……脚が折れても、夢が消えて無くなっても、お姉ちゃんにとって貴方は今でも心の支えなんです」
「お姉ちゃんは! 今でも貴方の事を想っているんです、自分の事で貴方が貴方自身を傷つけてる事なんか望んでないんです!」
「──」
俺はとうとう何も言い返せ無かった、ユアメモリーの真っ直ぐな瞳が〝あの瞳〟と同じで……俺が好きだったホープのひとみと同じで……
「条件がある」
ホープを思い出した、だからって訳じゃないが逆スカウトしてきたユアメモリーに担当する為の条件を言い渡した。
「条件?」
「あぁ、選抜レース……見に行ってやる」
「え! 本当ですか! やったー!」
「ただし! 勝敗に関係無く、俺を魅せれる事が出来たらだ」