【オリウマ・オリトレ】へっへっへっ…俺は闇のトレーナー 作:ゴールド@モーさん好き
来たる決戦の日、選抜レース。
周りはオレと同じく担当を持てず、不安と焦り、勝利への憧れを持ち荒ぶるウマ娘が沢山いる。
オレが走るレースは最後なので、とりあえず着替えてから観客席に座っている。
「サタケン……見に来てくれてたら嬉しいんだけどな」
「俺が見に来てたらなんで嬉しいんだ?」
「うひゃあ! サタケン!? どうしてここに!?」
俺が独り言を零すと、後ろから思っていた相手本人の声が聞こえて来た。
周りはオレと同じく担当を持てず、不安と焦り、勝利への憧れを持ち荒ぶるウマ娘が沢山いる。
オレが走るレースは最後なので、とりあえず着替えてから観客席に座っている。
「サタケン……見に来てくれてたら嬉しいんだけどな」
「俺が見に来てたらなんで嬉しいんだ?」
「うひゃあ! サタケン!? どうしてここに!?」
オレが独り言を零すと、後ろから思っていた相手本人の声が聞こえて来た。
「なんでって、そりゃ俺はトレーナーだぞ? 選抜レースくらい見に来るさ」
「で、でも担当が2人も居るんだからスカウトしないんじゃなかったのか?」
「いや、まぁその事なんだけど……チーフトレーナーと話し合った結果もう1人スカウトしようってなったんだ」
「え!?」
きた! きた!! きた!!! オレの春が来た!!! この選抜レースでサタケンに良い所見せりゃサタケンの担当に──
「最終的の決断は全部のレース見てからにするつもりだが、キクノツルギ……俺はお前をスカウトしたいと思ってる」
ッたっはー! 見えちゃいました、春超えて夏のバカンス楽しんでる俺とサタケンが……
「ほんとうか!」
「あぁ、お前の強さを知れば誰だってお前をスカウトしたいと思うさ」
「そ、それはちょっと褒めすぎだってよサタケン」
「はははそう照れるなって本心だよだからそう思いっきりバシバシしないでって痛い! 痛いよキクノツルギ!? キクノツルギさん!? あれ、聞いてる!?」
ったく、ここまでお膳立てされちゃしょうがねぇな
「見てろよサタケン、オレがこの選抜レースで1着取るところをよ!」
「あぁ! 見させて貰うよ」
取りに行くか、サタケンの1着。
「キクノツルギは何時出走?」
「最終レースだから出番はまだだよ」
「それならゆっくり話せそうだね……最近調子はどう? 〝ちゃんと食べてる? 〟〝爪のケアはやれてる? 〟」
「うん……サタケンのおかげでさ、悩んでた事が少しずつだけど上手くいってるよ」
「そっか、なら良かった……」
キクノツルギの事は教官を始めて直ぐに気にかけていた。
『キミ、隠してるようだけど足をかばってるな? 少し見せてみなさい』
『え? だ、大丈夫だよオレは!』
『大丈夫な訳ないだろ、さっきの模擬レース……最後のスパート、初速は良かったのに唐突に減速した。痛みに耐えられなかったんだろ』
『それ、は……』
『男の俺に肌を見せたくないというのなら他の教官なり、保健室の救護員を呼ぶ。とにかく、知識を持った人に適切な処置をされるべき状況だ』
『いや! 男に見せられないという訳じゃない! だから、その……わかりました、診てもらっても良いですか?』
『いや、これはそのえっと』
『亀裂がギリギリ中心に行ってない位か、ひどいな……こんな状態じゃ末脚なんて発揮できない、寧ろ最初だけとはいえ溜めていた脚を解放できたもんだ』
『その、ご──』
『すまなかった、すぐに気づいてやれなくて』
『え、え?』
『こういう所にすぐ気づいてやるのも俺達の役目なのに、ここまで放置してしまった』
『いえ、それはオレが相談しなかったからで』
『それでもだよ……とりあえず応急処置はするから、後で保健室に一緒に行くよ』
『はい……すんません』
コレが俺とキクノツルギの初会合だった。
それからというもの、俺はキクノツルギに対して指導をおこなっていた。
『食事の量を増やせないか? ですか』
『あぁ、君の才能に君の体が追いついてないんだ。だからこそ器を大きくする為に食事を増やすべきなんだ』
『でもオレ、結構今でもしんどくて……』
『なら、補食という形で1度にたくさんじゃなく、複数回に分けてみないか。最初は少ない量を補食で挟んで、少しずつ増やしていく感じで』
『……うん、やってみるよ!』
『こういうのは栄養科の鈴木先生が詳しかった筈だ、俺の方から話を通してみるから相談してみて』
『はい! 何から何までありがとうございます!』
『いや、いいんだよ……怪我なんて、無い方がいいんだからさ』
『サタケン……』
そうだ、競技と怪我は切っても切り離せない関係なのは分かってる。けど、そうだとしても怪我なんてないのが1番いいに決まってる。
「そういやオレ爪の補強の為にネイル教えて貰ったけど、サタケンはなんでネイルに詳しかったの?」
「ん? あぁ俺の兄さんがトレーナーだった時の担当がキミみたいに爪が弱くてな、その補強の為に勉強した資料を引き継いだんだ」
「へぇー……ん? トレーナーだった?」
「今はそのウマ娘が開いたネイルショップの経理をしてんだよ」
「そうなんですか」
「てかそろそろ時間じゃないか?」
「え? あっ本当だ、そろそろ集合の時間だ。それじゃあサタケン、行ってくるわ! ちゃんとオレの事、見ててくれよな!」
「おう、任せろ」
そうして俺はキクノツルギを見送った
「お前の兄貴って、あの有名なバカコンビだったよな。そういや」
「あれ? 剣人いつの間に来たんだ?」
「ちょっと軽食買いに言ってたらお目当てのウマ娘と話してたからな、お邪魔かなって……ほれ、ホットドッグとコーラ」
「チョイスが昼下がりの観戦してるおっさんだぞ……美味いからいいけどさ、幾らだ」
「コーラセット500円」
「ほい」
「よしきた」
俺と剣人はホットドッグにかぶり付きながら選抜レース最後の出走を見守っていた
「勝てると思うか?」
「それはわからん、教官として担当してた娘の事は多少知ってるだけで、他の娘の事は全く知らねぇんだぞ」
「じゃあ勝って欲しい?」
「…………次俺に〝ソレ〟を聞いたら、お前でも本気で殴るぞ」
「悪いな、けどお前がトレーナーに戻って決めたんだろ……なら俺は何度でも聞くぞ」
「…………ごめん、ありがとう」
♢
さて、大好きなサタケンも観てくれてる事だし
「……」
扉が開く
「フッ!」
勝つか!
♢
「彼女すごいな、そんな丈夫じゃない事理解してあんな走り出来るなんて」
「その為の体づくりや補強は欠かせてないからな」
さっさと結論を述べてしまうのならキクノツルギが1着を勝ち取った、先行策で先頭の斜め後ろをしっかりキープしつつ『皆がスパートを掛ける一拍前』にスパートをかけた。皆もソレに、呼応するかのように行くが、末脚の初速でギアを一気に最大まで上げれるキクノツルギに対しては文字通り1歩遅い。そのままリードを切り開きゴール板を超えた
「いや、それもそうだが痛みってのはそもそもとして体に対する危険信号だ。もし同じ事をもう1回やって痛くならないと分かっていても、〝前やった時の痛み〟が体を鈍らせる」
「…………」
「なのにあの嬢ちゃんには無い、ソレは確かに強みだが体が弱いのなら〝踏み出していいかどうかの判断〟を見誤る訳にはいかない……今回は俺とお前2人で手綱を握るぞ」
「……たすかる」
「言ったろ、お前らの為じゃない、オーガナイトの為だ」
「まぁいい、行くぞ」
「おう」
♢
「はぁっはぁ……」
俺は肩で息をしながらしきりに片足ずつ地面にトントン、トントンっとその場で踏みしめた
(痛くない、アレだけ思いっきり踏み込んだのに大丈夫だった)
「ははっやっぱりすげーや、サタケン」
「1着おめでとうキクノツルギさん」
「ん?」
♢
「おん?」
「あーやっぱりスカウト始まってるな、一応唾付けてたんだろ? 平気そうか?」
「言い方やめろ! そんなん知らねぇよ、俺らより腕のいいトレーナーなんて山のようにいんだからそっちに行ってもおかしくはねぇ」
「そうかよ、急ぐぞ!」
「キクノツルギさん、是非ウチのチームに入ってみてみないか!」
「ごめんなさい! オレ、入りたいチームは決まってて……」
「なら〝俺達〟のチームに入らないか」
「あっサタケン! って宵月トレーナーも一緒!?」
「言い忘れてたけど、宵月トレーナーが今所属してるチームのチーフトレーナーなんだ」
そこまで話して、周りがどよめき出す
《ホープクラッシャーと〝金棒〟が同じチームだってよ》
《良くも悪くもデカい奴らがタッグを組んだって事かよ》
《キクノツルギは諦めるしかないか?》
「オレ、そんな凄いチームに入れるんすか!」
「ソレはお前の覚悟次第だ、キクノツルギ」
「宵月トレーナー、覚悟と言うと?」
「お前の資質はとても素晴らしい、故にお前にはなって欲しいものがある」
「なんですか? G1バとかそういうアレっすか?」
「ソレも良いが違う、1番の目標は〝オーガナイトを倒す事〟だ」
「──ッ! 」
剣人のその言葉に周りは一層驚愕の声を上げた、それは当然だろう。今手塩にかけ、世代最強とすら呼ばれている愛バを倒せ、なんてスカウトする時の条件に組み込んでるんだ。無茶や無謀、何より愛が無いとも取れる台詞だ。
「保証は、出来かねます」
「それでもいい、今俺が求めているのは結果の予知ではなく、結果を求め続けられるかという貪欲さと諦めの悪さだ。お前にソレがあるか?」
「ふっ誰にもの言ってやがる……オレには〝春の冠〟を制覇したお袋の血が流れている! この血に掛けて! あんたんとこの鬼は倒してみせるよ!」
「おうよく吠えた! それじゃあ手続きを今なんて言った?」
「ん?」
「いや、え? 春の冠を制覇? え? 〝あの伝説のウマ娘〟の娘さんなの? え?」
「あ、これ言っちゃ色々とめんどくさくなるんだったっけ? 今の無し!」
剣人は俺の方に視線を向ける、うん、分かるぞ次やるべき事は
「キクノツルギ」
「悪いな」
「ん? どうしたんだ2人とも? オレの事担いで? 下ろして?」
「「はしれー!!!!!!!!!!!」」
《あっお前ら待て!?》
《やっぱりキクノツルギ! キミはウチに来るべきだ!》
「うるへー! もうウチの娘だキクノツルギは! おい優斗! なんで話さなかったこの事!」
「俺も知らなかったんだよ!」
「いやぁ、お袋が言った通り騒ぎになっちまったな。こりゃ今まで黙ってて正解だったな」
「「呑気に喋ってる場合か!?」」
俺たちはなんとか追っ手を撒き、トレーナー質へと避難できた。
「「はぁっはぁっはぁっはぁっきっつい」」
「大の大人がだらしないなぁ」
「元はと言えばお前があんな爆弾をよりにもよってあそこで着火したから追われまくる事になったんだろうが!」
「まぁまぁ、それに関してはキクノツルギは悪くない……というか悪いかもだけど気持ちを抑えれないトレーナーサイドに問題があるからさ」
「ったく、とにかく書類を書いてさっさと提出しちまおうぜ。それならアイツらも下手に手を出せないだろ、口約束をしたとはいえ今はまだキクノツルギはフリーだからな。さっさと担当登録して口挟めないようにしてやれ」
「そうだな……キクノツルギ、これ書類。俺が書く所はもう書いてあるから、確認してよく考えた後に書いてくれ」
「うん! ありがとうサタケン! …………」
「おいおいおい!? 書くのはや過ぎない!? いいの!? 俺なんだぞ担当!?」
「おいコラ優斗」
「オレはさ、ずっとサタケンに担当して欲しいと思ってたからいいの……はい! 書いたよ!」
「本当にぱぱっと書きやがって……これからよろしくなキクノツルギ」
「うん! サタケン! あと、オレの事はツルギって呼んでくれ! そっちの方が嬉しい!」
「そ、そうか? それなら──ツルギ」
「うん!」