【オリウマ・オリトレ】へっへっへっ…俺は闇のトレーナー 作:ゴールド@モーさん好き
「そのスーツを再び着込んだと言う事は、そういう事でよろしいのだな」
「はい、今迄俺のワガママを聞いて下さりありがとうございました理事長」
「よい、トレーナーには時間が必要と思いこうしたまでだ……〝コレ〟を返却すれば晴れて貴殿はトレーナーに戻る、再び問うて申し訳ないが覚悟は決まったのだな?」
理事長は引き出しから小さな小箱を机に出した、それこそが理事長室に来た理由だ。
「はい! ……今でもホープの事を考え、全て投げ捨てて消えてしまいたくなります。ですが、それでも俺はアイツのトレーナーです。その責任は誰にも渡したくないです」
「うむ! よう言うたトレーナー殿! それでは汝に、〝トレーナーバッジ〟を返却する!」
俺はホープを傷つけてしまった数日後に、理事長へ退職願を出していた。しかし彼女はそれに待ったをかけたのだ。
『トレーナー、貴殿の痛みは察するに余りある。故にこのような事をするのも分かる、だがそれでも待っては貰えないか』
『俺は、俺はもうここに相応しくありません。俺は大事な愛バに取り返しのつかない事をさせてしまった……もうここに居てはいけないんです! 俺は!』
『トレーナーさん……』
『…………』
たづなさんは悲しそうな、理事長は思い詰めた顔で俺を見る。しばし沈黙が続いた後、それを理事長が破る。
『分かった』
『理事長!? いいのですか……』
『いいんだたづな、こればっかりは彼の意志を尊重する他無い』
『それではこれよりトレーナー室の撤収準備を──』
『ただし! 貴殿は退職よりも先に休暇を取ってもらう』
『休暇ですか?』
詳しく聞くと、トレーナー業務を続ける上で不慮の事故やオーバーワークといった事でウマ娘が怪我を負う事は少なくない。それに対してウマ娘にケアするのは当然の事、その担当トレーナーへのケアも欠かしてないとの事。最小で1ヶ月、最大で半年の休暇と少なくない金銭面の手当が着くらしい。
『今の貴殿は心身ともにボロボロの状態だ、今貴殿から〝責任〟を取り払ったら何をするか……最悪を考えるとコレをスグに許諾する事は雇用主として、何より1人の人として最善とは思えない。故に貴殿にはまず休む事を命じる!』
期限は3ヶ月! 今年度最終日までとする! その後トレセンに残るかどうか、また聞かせてほしい。
俺は休暇期間である3ヶ月の間、毎日ホープの見舞いに行った。俺が今出来る数少ない事なのもあった、けれど本当はもっと単純にホープが辛い時はどんな時だってあいつを支えたかった。
『では、キミの答えを聞いてもよいか?』
『はい……』
4月1日、理事長と約束していた日だ。俺は今日までできうる限りの時間をホープに費やした……ホープと接している内に、俺は揺らいでいた。
『正直に話しますと、辞めるかどうか悩んでいます。この3ヶ月間、ホープと接し彼女が今でも俺を信頼してくれている事が分かりました。きっと、俺は辞めるべきでは無いです』
『ふむ、それで?』
『ですが俺は自分で自分を許しきれていません、このままトレーナーを続けようとも思えないのです』
トレーナーを辞めるべきでは無い、けれどもトレーナーを続ける自分を許せない。解を出せていないそんな俺を見越していたのか、理事長は悩む俺に向かって話しかけてくれた。
『トレーナー、しばしの間教官としてここで働いてみてはどうか?』
『教官として、ですか?』
『あぁ、貴殿は続けたい気持ちと辞めたい気持ち、信頼に対し報いたい気持ちと自責の念で板挟みになっている。
それは決してすぐ答えを出せる物では無いだろう、ならば先送りにする他無いだろう。トレーナーを辞めず、けれども続けずに居られる。悪くは無いと思うのだがどうだろうか?』
それに俺は了承した、コレがトレーナーとしてでは無く教官として働いていた経緯だ。
俺は理事長からトレーナーバッヂを受け取り、スーツへ取り付け理事長とたづなさんに礼を言って理事長室を後にした。