つ よ つ よ 先 生 ( 廃 人 )   作:カンタレラ

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廃人、先生になる

――――――

 

あなたは新たなフィートを獲得した!

 

[フィート]あなたには大人としての責任と義務がある

[キヴォトスの住人をミンチに出来ない、あなたは★大人のカードを扱える]

[フィート]あなたは連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの先生だ

[あなたは★シッテムの箱を扱える、あなたは★クラフトチェンバーを扱える]

[フィート]あなたは生徒の味方だ

[生徒にダメージを与えられない。生徒を無条件でペットもしくは護衛対象として扱える]

[フィート]あなたは悪い大人を許さない

[悪い大人を発見時、一部のフィートを無視する]

[フィート]あなたは定められた運命に抗う

[フィート]あなたは最良の未来以外を許容しない

 

――――――

 

 あなたは現在、戦場に立っていた。

 銃弾が飛び交い、爆発音がそこらじゅうで鳴り響く。

 

 経緯としてはあなたの職場であるシャーレが占領されており、それを取り戻そう。

 というものである。端的に行ってしまえば1行で事足りる単純明快な経緯だ。

 詳しく言えば行政権だのヘリが使えないだの色々あるが、占領している不良をどうにかしてしまえばいいだけなのでそこは割愛する。

 

 あなたは目で追えない速度で突破しようとも考えたが、キヴォトスに来る際に獲得したフィートによって生徒に手を出せないため、占領している不良をどうにも出来ないということでその手は無しになった。

 そこで白羽の矢が立ったのが偶々連邦生徒会に訪れていた4人の生徒だ。

 ミレニアム全体の運営を行う、セミナーの早瀬ユウカ。

 トリニティの治安維持組織である正義実現委員会の羽川ハスミ。

 有志によって作られたトリニティ自警団の守月スズミ。

 ゲヘナの治安維持を担う風紀委員会の火宮チナツ。

 彼女らを連れてあなたは戦場に立つことになった。

 

 あなたはある程度戦場を俯瞰できる場所に立っており、作戦の立案を行う。

 

「ちょっと先生! 早くこちらの方へ隠れてください!」

 

 側にいた早瀬ユウカに腕を引かれ、物陰に引きずり込まれる。

 

”どうした?”

 

「どうしたも何も、ヘイローを持たない外の世界の人が銃弾の一発でも貰えば致命傷になるんですよ!? ですので、ここは私達に任せて先生は隠れていてください!」

 

”とはいえ、状況を把握できなければ作戦を立てることもままならない、それに俺は事情があってお前等や彼奴等生徒相手には基本的に無力だ、なら戦闘指揮と支援くらいはやらないとな”

 

 あなたはそう言いながら懐から三色の宝石が取り付けられた黒い杖を取り出す。

 

”煙幕やバリケードの敷設等妨害工作は任せてくれ。そして早瀬、お前には役割上どうしても負担が掛かる。だから火宮は早瀬を主に支援してやってくれ”

 

「わかりました、先生」

 

”守月の閃光弾を合図とし戦闘開始を行う、その間中央を分断するようにバリケードを敷設するから右方を早瀬に、左方を守月と羽川の二人で撃破殲滅を行ってくれ。いいか?”

 

「了解です、ですがどのようにしてバリケードを敷設するのでしょうか?」

 

 羽川ハスミの疑問も最もである。あなたが元いた世界と違い、ここキヴォトスでは魔法というものが一切使われてないのを道中で確認していた。それが身近にあった者としてはあまり想像ができないだろうが空想上の扱いだったのだろう。

 あなたは説明が面倒と思ったためとりあえず神秘の産物であると説明しておいた。

 

”というわけだ、以降の指揮は戦闘中に行う”

 

 ここからはあなたの戦術スキルの本領発揮、というよりは本来の使い方をする場面だ。

 とはいえ装備も性能も違う武器を持つ敵味方に対応するのは現時点では不可能に近い。射程、威力、精度。どれをとってもティリスの射撃武器と大きく違う。ならばやることに関しては至って単純。

 撹乱、分断、各個撃破。

 相手は不良生徒が寄り集まった烏合の衆だ。訓練された兵とは違うため、少し虚を付けば簡単に崩せてしまう。

 

 まあなんだ、つまりは語ることもなく完全勝利という形で終わった。

 

 鈍足、壁生成、闇の霧、蜘蛛の糸など嫌がらせに全振りした魔法を適当に撃ってるだけで終わってしまった。

 空を飛んでいたドローンというものにはグラビティの魔法で地面に叩き落として、途中出てきた戦車なるものも脆弱の霧を用いることで即座に破壊された。

 沈黙の霧の影響もあり、悲鳴もあげずに撃破される生徒も少なくない。

 あなたは生徒にダメージを与えられないが、与えられないなりにやりようは大いにある。

 というか、ダメージを与えられない分、より悪辣になっている節がある。

 現に

 

「うぅ……うわあああぁぁぁん!!」

 

「あんまりだぁ……あんまりだよぉ……」

 

 あっさりと武装解除及び無力化された(戦意を失ったともいう)不良生徒達が泣いている。

 攻勢に出ようとした瞬間に出鼻を挫かれ、やることなすことすべて裏目になったようなものだ。その上孤立させられ声もなく味方が減っていく恐怖に不良たちのプライドはボロボロ。

 

「先生……流石にこれは……」

 

 味方もドン引きである。

 

”えぇ……俺が悪いのかこれ……?”

 

 後に報告書や映像を確認した生徒達は口を揃えて

 

『人の心が無い』

 

『もっとこう……手心とかって……』

 

『正直不良生徒が可哀想だと思いました』

 

『先生が秩序側で良かったと思います、本当に』

 

 と言った。まあ廃人相手に人の心を求めるほうが間違っているが。そもそも人の心があったらティリスに来た時点で心が折れるし廃人になどなっていないのだ。

 あなたは内心(”状態異常を使わなかっただけ有情だろ”)と考えていたが周囲はそうでもなかったようだ。

 電車組も流石に苦笑い。

 

 とまあそんなこんながありあなたはシャーレを奪還し、シッテムの箱を入手した。

 途中、七囚人である狐坂ワカモと相対したか、顔を見た瞬間逃げてしまった。何をするわけでもないので特に追う必要も無いと判断し、あなたはそれを見送ったのだった。

 

―――――――

 

 あなたは現在シャーレのオフィスにて暇を持て余していた。

 発足して間もないシャーレは思いの外書類の量も少ない。サンクトゥムタワーの行政権を取り戻し、連邦生徒会に返還したその日の内に書類作業を終わらせており、その上あなたは速度が常人の約1400倍*1だ。慣れないものであるのは確かだが、それを処理するのがそこらのリーマンの2倍遅かろうが10倍遅かろうがあなたには一時間かかるかどうかの作業でしかなかった。

 

”どうしたものか”

 

 あなたはキャスター付きの椅子を回転させながら今後に置ける行動方針を考える。

 捻じれて歪んだ終着点、それを何とかするためにある程度計画を立てたいところだが、何が起こるか分からない以上下手に行動が出来ない。そも、シャーレと言うのは超法規的組織とは言うが何かしらの要請等、大義名分が無いと存外動けないものだというのも分かってきた。

 問題ごとに自ら首を突っ込めば心情的にもよろしく無く、その存在自体が危険視されかねない。

 あなたとしてはそれでも構わないがそれだと依頼主の意向に答えられなくなってしまう。

 

 それでも先人に轍を刻んだ者がいる。依頼主であり前任者の先生だ。

 可能性を潰さないためか情報は相当絞られているが、それでも5つ問題事が起きているというのが分かっている。

 前任者が先手を取ったのか後手に回ったのかどうかは知ないが、少なくともその先生は今のあなたと同じように自由に行動はできないが要請を受けてその対処に回ったのだろう。

 ならば今やることと言えば手元の書類を処理して要請が来るまで待機することになる。

 情報を集めるのもありだが、アビドス廃校対策委員会に関してはまだいいとして他の問題ごとに関しては抽象的すぎてよくわからない。ある程度調べれば出てくるものもあるがそれがどう問題になるのか予想がつかない。

 それを理解するにはある程度学園とその生徒を知る必要がある。だがこうも動けない以上今は無理だ。

 

 つまり暇だ。何もすることがない。

 暇が嵩じ過ぎて徐々に椅子の回転速度が上がっていき、ついには残像が見える程になってきた。

 

「先生! それ以上その椅子を早く回すと壊れてしまいます!」

 

 シッテムの箱から聞こえる声がそれを注意した。シッテムの箱のメインOS兼秘書こと超高性能スーパーAI、アロナだ。

 あなたは早々に椅子の回転を止め、アロナに問いかける。

 

”なにか要望とか要請とかは来てないのか?”

 

「そうですねー……現状噂が広まりつつある段階なので現時点では何も来てないですね。あ、でも以前ご一緒した早瀬ユウカさんからモモトークが届いておりますよ!」

 

”まじか”

 

 あなたは不慣れな手つきでタブレットの画面を切り替え、モモトークを開く。

 内容としては作戦行動時における弾薬等の請求についてだった。

 

”ふむ、弾薬の請求か……”

 

「先生、どうかされましたか?」

 

”ああいや、以前は一度買えばずっと使い続けられる代物だったからな。あまり馴染みがなくて失念していた”

 

 そう、イルヴァもといティリスでは矢弾というのは消耗品ではなく、あくまで装備品の一部であった。

 つまり継続して購入しなければならないものという意識がなかった。

 

”今思えば、一度薬室に弾を突っ込んだだけで無制限に使えたことのほうがおかしかったのか”

 

「一発だけ購入すればいいというのはたしかに素晴らしい技術ですが、一体どうやってそれを可能にしていたのでしょうか……?」

 

”いやわからん、遺物が良く発掘される場所だったから多分オーパーツのようなものだったんだろう”

 

「へぇー、そう聞くと先生が以前どの様な場所にいたのか少し気になりますね」

 

”碌な場所じゃねぇから知らなくていい”

 

 本当に碌でもない場所である。下手をしなくともキヴォトスより治安が悪い。

 

”それはさておきだ、請求書だ経費だって言われてもな。雛形がどれかわからん”

 

 辞典以上の厚みがある雛形をまとめたファイルをパラパラめくるが、似たようなものが多く判断がつかない。

 

「ユウカさんを頼ってみるのはどうでしょう、セミナーの会計業務を執り行っているのでこういった仕事では頼りになる方ですよ」

 

”……大人としてそれもどうかと思うが……それもそうだな”

 

 そういった旨を早瀬に送ると返信が返ってくる。

 早瀬からはミレニアムで使ってる雛形を持ってきてもらうことを約束した。

*1
NCによって『廃人』の称号効果が変更され、称号を取得した時点で主能力やスキルの上限が2000から99999に変更される、ちなみに一般的な人間に近いと思われるイェルスという種族の速度は70前後

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