守月スズミへ愛を込めて   作:Another2

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正義か悪か、そんな物は時代によって常に変わってきた、そんな中で変わらぬ信念が掲げたならばそれも正義であろう。

トリニティの竜騎兵、後に正義の体現者とまで謳われた者。


汝は怪物なりや?《トリニティの竜騎兵》

 本日はトリニティの治安維持組織でもある正義実現委員会の方や様々な生徒……所謂少々素行が悪い方々が数多く搬送されてきました、私がお世話になっている場所に沢山の人が搬送されると言うことはつまり怪我人が多く連れてこられたと言うわけで、今も救護騎士団の皆さん忙しなく動いておりかくいう私もサポート要員として駆り出されている。

 と言うのもセリナさんとそれなりにお付き合いさせてもらった結果、簡単な応急手当や必要となる道具を用いる程度の事が出来るようになったという経緯があります、これも日々セリナさんの教えの賜物ですね。

 あと……こればかりは誇れることでは無いのですが、あの場所での行っていた訓練のおかげで暴れる生徒をどのようにすれば押さえ付けれるのかが私自身理解しているので、消毒する際に特に駆り出されました、こんな形であの場での経験が役に立つとは世の中わからない物ですね、尤も人を傷つける様に教えた筈の技術が今現在人を、しかもトリニティの生徒達を助ける事に使用されているというのは皮肉な事ですが。

 

 まぁそんな事もありまして、今までの日々に比べたならばかなり刺激的な出来事と言えるでしょう。

 私たちが担当しているのはもっぱら正義実現委員会の方が多い、此方は比較的軽めの怪我で住んでいるのもあり、こちらに割り当てられている人数はそこそこ、逆に彼方は素行の悪い方々が多く搬送されており基本的にそこそこ大きな怪我をしている者が多い、曰く一部の正義実現委員会の方が徹底的に叩きのめしたらしく今も向こうから呻き声の様な物が聞こえる、セリナさんが言うには救護騎士団の団長とそれを補佐する副団長である蒼森ミネという人物が荒療治を行う為にあの様な声が聞こえてくるのだとか、これらの状況から察するにこの場は医療従事者にとっての戦場なのでしょう。

 

 此方側は一段落つき小休憩の時間となった、彼方はまだまだ忙しそうなので手伝わなくて良いのかと思ったのですがセリナさんが言うには重傷者の対応は2年生になってからとのこと、一年生の内は基礎的な知識や技能を収めつつ軽傷者の対応をして経験を積んでいくんだそうです。*1

 

──いつもこれだけの人数を?

 

「今回はいつもより多かった方ですが、それでも正義実現委員会が動くとなりますと必然的に多くなってしまいますね……」

 

──なるほど。

 

「失礼します、今回も処置をしてくれてありがとうございます、いつも助かっています」

 

「いえいえ、私たちに出来ることはこれくらいなので……あ、スズミさんこの方は正義実現委員会の羽川ハスミさんです、とても物腰柔らかな人で良い人ですよ」

 

──お初にお目にかかります、近頃セリナさんのお世話を受けている守月スズミと申します、今後ともよろしくお願いします。

 

「これはご丁寧にありがとうございます、私は先程ご紹介に与りました羽川ハスミと申します、トリニティ生として共に規律を守って活動していきましょう」

 

 おぉ、物凄く礼儀正しい人だ、それに規律を重視するタイプの人間でもある、こういう人は信頼できると思うのが私の最近の考えである、それにこの人……結構、いや大分強いですね……果たして今の自分で勝てるだろうか、いや、それよりもその奥にいる人物、此方の方には天地がひっくり返ろうと勝ち目は無い、そう断言出来るほどの規格外、恐らくこの人物がこの学園の最高戦力‼︎

 

「いつも悪いねセリナ、アタシが言えた義理じゃないがちょっとばかりやんちゃな奴が新しく入ってね、必要以上に相手をぶちのめしちまうのさ、全く問題児はツルギで懲りたってのに」

 

「ちゃんと反省させてくださいね、包帯や消毒液も無料じゃないんですから」

 

──……因みに聞きますが一度の補充でどれ程の資金を要するのでしょうか。

 

「えぇと、以前一緒に食べたあの店のパフェ、覚えていますか?」*2

 

 勿論だ、初めて食べたのもあってとても鮮烈に覚えている、物価に詳しい訳ではないがあれは結構な値段だったと記憶している、その意を込めて頷く。

 

「アレが凡そ三杯ほど購入できます」

 

 なんと。

 

──なんと

 

 しまった、つい思った事をそのまま口に出してしまった、しかしどうやら同じ事を思ったのはハスミさんも同様らしく虚を突かれた様な表情を浮かべていた、彼女もあの店のパフェを食したことがあるのだろうか。*3

 

「まぁ、アイツらにはアタシの方からキツく言っておくよ、それよりも、お前さんは何者だい?救護騎士団(ここ)の人間じゃないだろ?緊急のサポート要員かい?」

 

──ッ‼︎

 

 なんて事のない、ただの確認作業、それだけの行為なのにも関わらずこれだけの圧力が襲い掛かるなんて。

 大丈夫、落ち着いて、敵対はしていない、これはただの確認作業、ただ聞かれた事に対して応えるだけで良い、落ち着いて呼吸を整えなくては。

 

「ン……?あぁ‼︎悪い悪い‼︎別に怖がらせるつもりはなかったんだ‼︎ただ見ない面が居たから気になっただけでさ、別に取って食おうだなんて思っちゃいないよ‼︎」

 

──えと、私は──

 

「名前はさっき聞いた、何者かって聞いてるんだ、新入生なのはまぁ分かる、だけど普段ウチの連中が世話になってる救護騎士団の面々を忘れる程アタシは馬鹿じゃない、何処の組織の人間なんだい、お前さん」

 

 まさか見破られている……?そんな馬鹿な、先日お会いしたワイズさん程の情報網を持ち合わせた人間がまだいたというのか。

 

──私は、何処にも所属していません、今回については普段お世話になっている為、一種の恩返しのような物です、何処からの指示は受けていません。

 

「フゥン……?そうかい、つまりお前さん、今はフリーって訳だね……にしては大分強いが……よし、なら話は早い、お前さん、正義実現委員会(ウチ)の所属にならないかい?」

 

 ……前にもこんなやり取りをしたような気がする、*4確か文言的に表すならそう、デジャヴだった筈、つい先日にも全く同じやり取りをしたばっかりだと私は記憶している。

 

──いやあの、私はそういう物にはあまり……

 

「いいじゃないか‼︎義理堅い性格の様だし実力も十分‼︎それに試し期間で短期間だけ体験して肌に合わないなら抜けてくれてもいい、アタシとしちゃ残って欲しいけどねえ?」

 

「あの、スズミさんはかなり無茶をする方なのであまりそういう荒事には……」

 

「ん?そうなのかい?まぁセリナちゃんがそう言うなら確かなんだろうねぇ、これがサヨナの奴の言葉だったら信じなかったんだが……」

 

──サヨナ、さんとは?

 

「救護騎士団の団長ですよ、いつも駆け回って救護をなさってますからスズミさんはまだお会いした事ないと思いますけど」

 

 ふむ、セリナさんが所属する救護騎士団の団長か、さぞや心優しいお方なのだろう、率先して救護を行っているとの事だし。

 

「まぁ、今はあの馬鹿の事は良いんだよ、セリナちゃんの忠告は尤もだが、大事なのは本人がどうするかじゃないか?お前さんはどうするんだい」

 

──その前によろしいですか?

 

「おう、質問の類があればなんでも寄越しな」

 

──何故私なのでしょうか

 

「さっき言った事が全部だけども、強いて言うならアタシらみたいな治安を維持する組織ってのは人手不足なのが常でね、まぁそれは救護騎士団(ここ)も変わらないと思うけど……ウチが欲しいのは言ってしまえば即戦力なんだ、来年行われるっていう()()()()の影響か知らないが馬鹿どもが騒ぎ始めてる、大きな事になる前に鎮圧する必要もあるし、既に事が起きてるなら二度とやらない様徹底的に叩き潰さないといけない、それを成すためにはある程度の実力が備わってるのが最低条件、そして義理堅い性格があると尚良しって訳だ」

 

 むぅ…。組織の長足り得るたしかな理由があった、*5だが一つだけ引っかかった所がある。

 

──徹底的に叩き潰す必要はあるのでしょうか、そのせいで治療器具の類が不足しているのではないですか?それに要らぬ恨みを買ってしまうかも知れません

 

「あー……それを言われると耳が痛いんだよねぇ、徹底的に叩き潰すスタンスはアタシ独自の物だからあんまり他の奴等に押し付けるつもりはないんだけどさ、ただ……こういう組織は相手に舐められたら終わりなんだ、アタシは正義実現委員会(ここ)で三年間やってきたから言えるんだが、正義実現委員会(ウチ)は他の所より途中脱退する奴が多いんだよ、前線に出れない自分を恨んで抜ける奴、怪我によって戦線離脱を強いられる奴、そんな奴らが涙を飲んで去っていくのをアタシは何人も見てきた、だからアタシ達はそいつらの分まで戦わなきゃならない、正義が屈するなんであっちゃならないからね」

 

 去って行った者の為にも戦わなくてはならない……ですか、正直なところ今の私には理解しかねる、しかねるが……“納得”はする、その行為は素晴らしいものであると思うし尊ばれる行いでもあるのだろう。

 なら尚更私のような存在がいて良い場所ではないんじゃないだろうか、私は自身の為に同志を切り捨てられるのをとめることをしなかった愚物に過ぎないのだから。

 

「騒々しいと思えば何をしているのですか貴女達は、救護の邪魔です、健常であるならば早々に引き取る様に、ここは溜まり場ではありませんので」

 

「サヨナ団長、お疲れ様です」

 

 思考を巡らせている間にもう一人新しい人物が現れた、物凄く厳格な表情を浮かべ厳しい眼差しを向けている、セリナさんの反応から察するにこの人が救護騎士団の団長であるらしい。

 

「うげ……面倒なのが来たねぇ、絡まれる前にお暇するかね、あぁそうそう、ウチはいつでも歓迎してるから気になったら顔を出しな」

 

 そう言ってあの人は立ち去っていった、正義実現委員会に誘われるとは思ってもいなかった、トリニティに所属する組織の長は初対面の人間を組織に勧誘する決まりでもあるのだろうか、そう思うのと同時に私は思った事を口に出した。

 

──あの人、名乗りませんでしたよね?

 

 セリナさんと取り残されたハスミさんが『あっ……』という顔をした、やはり私の記憶違いではなかったらしい。

 

「申し訳ありません、後で私の方から伝えておきますので……」

 

──あぁいえ、別段怒っているわけでは、名前を知るだけならば本人の口からじゃなくてもいいですし。

 

「アレは赤盃ラヴァと言い正義実現委員会の委員長を勤めています、かつては大量に怪我人を増やす厄介者でした、ハスミさん達始め正義実現委員会の皆様の苦労が知れます」

 

 私の疑問に答えてくれたのはサヨナ団長だった、口ぶりから察するに二人はそれなりに親しい仲らしい。

 

「今は後進を育てる為にやや大人しく振る舞って居ますがあれでも以前は生傷を絶やさない荒々しい生徒でした、犠牲者を増やすだけの履き違えた正義程虚しい物はありません、貴女達もそれを理解しておくように、それから……思惑はどうあれ視野を広げるのは悪い事ではありませんよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()ですので、それでは私は他の救護者を診てきます」

 

 今のは背中を押してくれた……のだろうか、確かに今後の事を踏まえるならば視野を狭めるのは愚行と言えるだろう、それなら今私がすべき行動は……

 


 

「よく来たねぇ、一応体験加入って事らしいが……それでも歓迎するよ‼︎」

 

──はい、短い期間ではありますが、よろしくお願いします。

 

 あれから私は考えを纏めセリナさんと話し合った。

 結果少々揉めたもののなんとか許可を貰った、無茶をしないと言う条件付きではあるが。

 

「改めて赤盃ラヴァだ、いやぁ‼︎悪いねぇ‼︎アタシとした事が名乗るのを忘れるとは、いやまぁ自慢じゃないんだがアタシの名前なんてとっくに知られてると思ってたからさ、本当にすまなかった‼︎」

 

──いえ、それは本当に気にしていないのでお気になさらず……ところで、その……本当に良かったのですか?

 

「ん?なにが?」

 

──いえ、あの……

 

「あぁ‼︎()()の事かい?良いじゃないか‼︎とても似合ってるんだし‼︎」

 

 そう、私は仮にとは言え正義実現委員会に入団することになった、其処までは良い。

 問題は何故仮入団に過ぎない私に正義実現委員会の制服を渡され、しかもそれを着させられたのか、と言うのが問題だ。

 正直に言って、馴染まないし落ち着かない……後似合ってないと思う。

 

「じゃあ早速活動内容の説明からしようか、と言っても其処まで難しい事じゃない、大体はトリニティの自治区内の警護及び巡回だ、後は装備品の整備や備品の数の管理、上の連中に提出する書類整理なんかもあるが……まぁお前さんは其処まで気にしなくて良い、基本的に巡回作業を行って何かトラブルがあれば一報を入れる、各自対処が可能そうなら取り押さえる、概ねこんな感じさ」

 

 トラブルがあれば取り押さえる……やはり人を傷つけたりするのだろうか……いや、手段までは述べられていないのだから各々の方法がある筈……

 

()()()()()()

 

 人を傷つけず無力化する方法……そんな物存在するのか?

 

 もしもそんな方法があるのならあの子達は何の為に──。

 

「さてと、説明も済んだところで早速動こうか、一年は基本チームアップで動くから*6おまえさんにも誰かと組んでもらうよ、さて誰がいいかねえ……」

 

 考えを中断させる様に言葉が紡がれる、どうやら私は誰かと組んで行動をするらしい。

 

「あ、じゃあ私やります委員長」

 

()()()か……まぁ本人たっての希望だ、しっかりやりな!」

 

 丁寧で物腰柔らかな声がする方へ視線をずらすとそこには手を挙げた生徒が一人、彼女はイチカと呼ばれていたのでそう言うことだろう、背丈は私と殆ど変わらない様に見える。

 

「改めまして、私は仲正イチカと言います、えぇっと、あなたのお名前は……?」

 

──守月スズミと言います。

 

 当たり障りの無い挨拶で済ませておこう、あまり変な事を言うのも何か違う気がする。

 

「守月スズミさんですね、よろしくお願いします」

 

 しかし……何だろうか、優しい人なのは分かる、だけど、何か必死に隠している様な……

 

「それじゃあ行きましょうか、私達の範囲はこっちですよ」

 

 私はイチカさんに連れられ巡回任務に当たる、立ち姿や歩き姿である程度強さは察する事は出来るが、同年代にしてはかなり強い、油断も隙もないと言うべきか、これは心強い人だ。

 


 

「スズミさんって、元々何かやってたんです?」

 

 巡回中、不意にそう問いを投げられた、何かやってたとはどういう意味だろうか、私は特段何もやっていないが。

 

──特段語れる様なことは何もしてませんよ、それが何か?

 

「あぁいや、何処かに所属してたとか、趣味とかの話じゃないですよ、言い方を変えましょうか、()()()()()()()()()()()()()()()

 

──……はい?

 

「惚けないでいいですよ、この辺人通り少ないですし、この際隠し事は無しにしましょう」

 

──はぁ……

 

「私が考えるにスズミさんは昔どこかに所属してたと思うんですよ、それも軍隊としての側面が強い所、だから年齢に合わずそんなに強いんじゃ無いです?」

 

──年齢と強さが合ってないならあなたも同じでは?

 

「私はほら、先輩達に日頃から扱かれてますから、任務より訓練の方が辛いのが現状ですよ、同年代の子には理解されないんですけどね」

 

──……何が言いたいんですか、はっきり言ったらどうなんです?

 

「案外にも私たちは似た者同士なんじゃないかって話ですよ」

 

 似た者同士……私と彼女が?何を馬鹿なことを言っているのか、まるで意味がわからない。

 

「納得行ってないって顔ですね、だけど完全に的外れって訳でも無いと思うんですよね、だってあなた、()()()()()()()()()()()()()

 

 放たれた言葉を脳で理解するよりも早く、私の身体は動いていて、私の拳は相手の要所を正確に撃ち抜いていた。

 

「ゲホッ……ははっ、なぁんだ……やっぱりそっちが本性なんじゃないですか」

 

 あぁ、()()()()、どうやら自分は撒かれた餌に釣られてしまったらしい、そう認知した時には既に遅かった。

 それと同時に新たに知れたこともある、どうやら私は意外にも堪えが効かないらしい、何故なら今私は、自分でもわかるほどに頭に来ている。

 

──自分でも驚いてますよ、私は存外にも頭にきやすい性質だったんですね。

 

「今はそうでしょう、だけど次第に自分の本性のままで動く事に快感を感じる様になりますよ、特にトリニティの様な場所で活動すると尚更ね」

 

 いちいち癪に障る言い方をしますねこの人は……それにしてもこれが私の本性……?こんなに荒れ狂う性格が私の本当の姿とでも言いたいのか。

 ……否、それはない、それだけは認めてはならない、絶対に……認めては……

 

「時にあなた、自分と同じ学校、もしくは気に入らない生徒を傷つけた事はありますか?」

 

──……

 

「思ってたより、気持ちがいいものですよ」

 

 どうやらやるつもりらしい、此方に来てから荒事は避けていた為に身体がちゃんと動くか怪しいものだが、それでもやるしかない、いいや、やらなくてはならない‼︎

 


 

 この世は腐っている、物心がついた時には既にそんなことを考えていた、殴打・射撃等の暴行は当たり前であり息をするように裏切り等の智略謀略を仕掛ける、それがキヴォトスでの“普通”。

 従ってその輩に食い物にされるのはいつだって弱者でありそれで私腹を肥やすのはいつだって実力なり権力なりが強い者、弱肉強食とはよく言ったもので実際悪どい大人達はそうやって子供達を食い物にしている、問題なのは、そう言った行為を生徒もしてるって事だった。

 

 私は至って普通の家庭で生まれて優しい両親の元でちゃんと愛情を持って育てて貰えたと自負出来るし、理想的な家庭だったと客観的に見てもそう思える。

 両親曰く好奇心旺盛だった私は目についたものになんでも触れたがり、そして飽き性でもあった様ですぐに触るのをやめたんだそうだ、今思い返せば申し訳ないことをしたと思ってる。

 それでも両親は私がやりたい事をなんでもやらせてくれたし、すぐに飽きても何も叱ったりはしなかった、人には其々向き不向きがあってやりたい事もまた其々、私はまだ何がやりたいのか分かってないからなんでもやりたがる性分なんだそうだ。

 

 そんな生き方をして流れるままトリニティ総合学園に入学した、入試テストははっきり言って楽勝だった、得た知識をそのまま入力する作業に苦戦する理由など見当たらない。

 この学園に入学しても変わらず私は兎に角目に付いた物はなんでもやって見て、飽きたら辞める事を繰り返していた。

 変わった事と言えば……そう、少々周りが煩くなった事だろうか、興味を惹かれた物に手当たり次第に触れ、それなりにやって飽きたら辞める、それだけの行い、しかし周りからすれば違ったようで、なんでもそつなく熟すから周りは私の事を天才と褒め称えた、尤もその言葉は私に気に入られたいからと言う魂胆の元発せられた物であり虚飾に塗れた上辺だけの何も響かない物ではあったが。

 

 私は他の生徒より感受性が高いのか人がどう思ってるのか、何を考えてるのかが少し分かりやすかったりする、これは生まれつきの物らしかった、これのおかげで私は他人との会話をスムーズにこなす事が出来た、人の喜怒哀楽に合わせたり求めてたりする言葉を投げかけるだけで良かったのだから。

 仲良くなれた生徒も多いと思う、勉強を教えあったり、放課後や休日にはカフェでお茶したり、買った物を互いに交換なんかもしたっけ、そんなありきたりな学園生活、こうやって友好関係を深めていって、卒業してもずっと仲良く出来ると、少なくとも私はそう思ってた。

 

『イチカさ、私が所属してる派閥に来ない?イチカなら絶対先輩に気に入られるって‼︎』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 当時の私はなんて言ったっけなぁ……あぁそうだ、確かあの時はやんわりと断ったんだ、合わないからって理由を付けて、その子とはもうそれっきりだった、あの勧誘からなんとなく察してはいたけど、やっぱりあの子も私の能力目当て、側にいて美味しい思いがしたかったのか、それとも自分が連れてきたっていうか箔を付けたかったのかどうかは今はもう知る由もない。

 ただ分かるのは自分が仲良くしていたと思い込んでた子はその実私の能力目当てで、本当の私なんて求めてなかった、そんな経験をして中等部から高等部へ進級した、誰かと仲良くしようともあの時の苦い記憶が脳をよぎる、トリニティは中高一貫なのもあって仲良くするグループは大体統一されていて大きく様変わりする事はない、なのに関わらず私の能力を求めて寄り添ってくる奴は多い物だから嫌になる、普通学生間の交友関係ってもっとこう、こう……あれ?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 築けて……築けてたっけ?本当の自分を見せられる、そんな仲の友人なんて、居たかな?

 友人って、どういうのを言うんだろう。

 

『よぉ!湿っぽいツラしてんねぇ!お前さんが噂のルーキーかい!?』

 

 どの派閥にも所属することも無く、自分が所属する学園だと言うのに彷徨い続けたそんな日に、私はラヴァさんと出会った、その時は正実に目をつけられるような事はしてなかったと言う思いとか目の前の人がその組織の長であると言う思いより先に私についての噂を聞いてみたくなった、後なぜバイクに乗っているのか、そしたらあの人は。

 

『あぁ?なんでも有力派閥の勧誘を蹴ったっていう、イかれた性格の生徒で根無草やってるって言う噂なんだが……まぁどーせ無理矢理勧誘したんだろ、お前さんのその真っ直ぐした目を見りゃ分かる、後バイクは実益と趣味を兼ね備えた物だ、アタシの愛車だよ』

 

 愛車て、それにしてもなるほどね、情報源はアイツか、何処までもねちっこいと言うか執着が凄いと言うか……大方武力じゃ絶対勝てないから精神的に孤立させようって魂胆だろう、実に模範的なトリニティ生徒だ、感激のあまり喝采の一つでも上げてやりたくなる。

 

『まぁ、そんな出来事があった渦中のお前さんに言う事じゃないんだが……』

 

──いいですよ、入ります。

 

『そう、おまえさん正義実現委員会に──』

 

──入っても良いっていったんですよ、これ以上派閥勧誘されるの面倒なんで、そろそろどこかに落ち着きたくなってた所でもありますし

 

『……オッケー、そいじゃまぁ、ウチの詰所に行くかね、今年のルーキー達の良い刺激になればいいんだがね』

 

 そう言って私は半ば諦観的な気持ちを持って正義実現委員会に入った、事実どうでも良かった、何処に居ようと私の本心を知ろうとする奴は居ない、此処でもそれは変わらないだろう。

 変わった事……と言うよりかは自分の事を改めて認識した事があって、それは任務で不良グループの制圧をした際の時、自分の表情が歪んでいるのに気づいた、どうやら私の本質はトリニティと言うよりはゲヘナの方に近しい様で、相手を力で圧倒するのに高揚感を感じる気質なんだそうだ、それはいい、気質なんて人それぞれだ。

 

『え……ちょっとやりすぎじゃない……?』

 

『過激というか……ねえ?』

 

 私は先輩達のやり方を真似てやっているだけに過ぎない、なのに……何故私をそんな(怪物を見るような)目で見るんだ、手緩い正義執行は再犯の可能性を助長させる、ましてや治安維持組織が舐められるなんてのはあってはならない、それに準じて私は行動しただけなのに、漸く私の居場所を見つけれた、そう思っていた、だけど違った、ここでも私は疎外されてしまうのか、そう思っていた。

 


 

 先輩や委員長が言うには私のやり方は正しくはあるが過ちでもあるらしい、当時の私には理解できなかった。

 人間なんて生きていれば腹が立つ奴なんて腐るほど湧いてくる、そんな中で自分と同じ価値観や性質を持つ人間は砂漠で一粒の砂金を探す行為に等しい、無駄骨になる時もある、偽の砂金を掴まされる時もある、なのに──

 

「この世はいつだって腐ってる‼︎信じてた人に裏切られてしまうのが世の常なんだ‼︎」

 

──なのに、なんでコイツはこんなにも澄んだ目をしてられるんだ‼︎動きに無駄は一切ない、だから相当の鍛錬を積んでるのは目に見えてわかる、トリニティに入学してそれなりに経ってるのならここの在り方や人の本質も分かっている筈だ、それなのに……なんで‼︎

 

「人は皆弱くて醜い‼︎お前がどれだけ高潔な魂で事を望もうとも‼︎利用されて捨てられるのがこの世界だ‼︎」

 

──そう、人は皆弱く醜い、だけどあの時は……少なくともあの時(幼少期)までは……それこそが人の本性であり人を人たらしめる物だと、そう思ってたんだ‼︎

 なんで認めてくれなかったんですかスズミさん、初めて気が合う人と出会えたと思ってたのに、なんで……どうして……

 

 そう思ってた時には既に押し負けていた、どうやら私は殴り飛ばされたらしい。

 ハハッ、自分から仕掛けておいて負けるなんて体たらく、みっともないったらこの上ない、本当に、嫌になる……あぁ、惨めだなぁ……

 


 

──無事ですか、イチカさん。

 

「ゲホッ、殴り飛ばしておいてよく言いますね、全く……強すぎでしょ、アンタ」

 

──イチカさん、なんで最後気を抜いたんですか、あの時最後まで拳を振り切っていれば……

 

「い〜や、それでも結果は変わってないよ、それに、これ以上足掻いても無様なだけなんで」

 

──貴方は……恐らく同学年の中で一番穢れを見て、知った人なんでしょうね、そう言う意味じゃ私と貴方はある意味似ているのかもしれません、だけど……

 

「いいですよ、過程が違うって言いたいんでしょ?それくらい私にも分かりますよ、流石に」

 

──そうですか……

 

「スズミさん、自分の意思で他者を傷つけた事はありますか?」

 

──……あります

 

「そうですか……最悪の気分だったでしょう」

 

──……そうですね、私は、人を傷つけるのも傷つく所も見たくありません

 

「優しい人ですね、眩しくなる程に……そろそろ戻りましょう、その後はどうするかな、また別のところに移ろいましょうかね、ここは私にとって眩し過ぎる、ますます自分が嫌いになりそうです」

 

──待ってください、貴方が抜ける必要はないでしょう、少なくとも貴方に救われた人は数多くいる、ならそれでいいじゃ無いですか

 

「……一つの罵倒が、数多の感謝の言葉を上塗りする事があります、そんなことの積み重ねですよ、正直食傷になって止める子も少なくありません、正直言ってストレスですよ」

 

──なら私にぶつければいいじゃ無いですか、ストレス発散位には付き合いますよ、さっきの猛攻の貴方は本来の貴方らしいと思いましたし。

 

「いいんです?自分で言うのもなんですけど自分かなり過激ですよ?」

 

──構いませんよ、そう言う対人訓練は相当数積んでますので、それに、多少凶暴性があったところで誰かに失望する程私は人と交友があるわけじゃないですし

 

「随分と物好きですね、貴方も……それって、つまり、私とですよ?」

 

──構いませんよ、人の在り方はそれぞれです。

 

「はぁ〜……じゃあ、今日から私と貴方、言い方がちょっと良くないな、スズミさんと、友達って事で……その、ありがとうございます」

 

──それじゃあ戻りましょうか、もう時間も時間ですし、イチカさん?

 

「呼び捨てでいいんじゃないです?普通の交友関係ってそう言う物だと思いますよ?」

 

──そう言う物でしょうか、では、イチカ、とそう呼ばせてもらいますね、そちらも呼び捨てでいいですよ

 

「だったらこっちもスズミって呼ばせてもらいますね、口調も変えた方がいいのかな……?」

 

──自然な会話ができる方でいいんじゃ無いです?今更この口調を崩してくださいとか言われても無理ですよ私

 

「まぁその辺は追々やっていけばいいんじゃ無いですかね、今全部決める程の物じゃ無いでしょこれ」

 

 ふぅ、かなり一悶着あったが結果だけ見れば何もなかった、ただ仲を深める良い出来事だったと言える。

 

「あ……」

 

──どうしました?

 

「見回りだけの筈だったのにお互い傷だらけ……これ、どう報告した物かなって」

 

──あー……

 

「ど、どうしよう⁉︎どう誤魔化したらいいのかな⁉︎これ⁉︎」

 

 あぁ、この人はこんな風に焦ることも出来るのか、珍しい物を見た反面、思考を巡らせる、私の場合正義実現委員会をクリアできてもその後のセリナさんがどう足掻いても無理、ならいっそここは……

 

──イチカ

 

「何か良い案が思いついたの?」

 

──一緒に怒られましょう、それしかありません

 

「諦めてるじゃないですか⁉︎最後まで足掻きましょうよ⁉︎」

 

──潔く罪を認めるのも、強さですよ。

 

「先輩達の叱りは洒落にならないんだけど⁉︎そんな強さはいらなかったなー‼︎」

 

 この後二人仲良く怒られました、だけど確かに私とイチカの間には友情の様な物があったのだと思います。

*1
これは独自設定、実際は不明

*2
ミルフィーユの正統派パフェ

*3
ハスミは甘味が大好物

*4
偶然にもくしゃみをした図書館の白い賢者が目撃された

*5
失礼な気配を検知

*6
これは独自設定、実際は不明




 簡易プロフ
【赤盃ラヴァ】
身長:ハスミとツルギの中間ぐらい
体重:そこそこある、然して筋肉、脂肪ではない
特徴:正義実現委員会にて有翼族じゃない稀有な存在
武器:六発装填リボルバー二丁持ち(シングルアクションアーミー)
強さ:入り乱れる戦闘の最中でも跳弾を狙って当てる事が可能、この時のツルギよりは余裕で強い
備考:大型のバイクに乗りこなして高機動力を誇るのでついた異名が《トリニティの竜騎兵》
最近の悩み:バイクを動かすガソリン代の高騰に常に頭を悩ませている、経費では落ちなかった。
元ネタは赤犬なのに異名がドラゴンで、戦法が某蛇ゲー出演の山猫で姉御キャラとか言う属性全部盛りの奴、胃もたれするわ
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