男の娘が異世界転生したので豊かな暮らしを目指す   作:レイサン

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転生して手に入れたスキルは「努力」だった。

突然だが夏希は死んだ。

死ぬ瞬間の事は全く覚えてないようだが、恐らく怖すぎて脳みそからすっぽ抜けたのだろう。

そして彼は今、転生を司る女神と対面していた。

 

「夏希くん可愛そうにねぇ〜、せっかく男の娘系配信者として一歩踏み出そうって所だったのにねぇ〜。」

 

「いや〜…スゥ-…全部見られてるんですね…。」

 

「ぜーんぶ見てるわよ?可愛いお洋服選んだりメイク練習したり、とにかく色々努力してたわよね?ホント可愛いわぁ〜。」

 

「第三者からそういう舞台裏見られるのって恥ずかしいですね……。」

 

「まぁ私好みの可愛い子だから今回は特別に色々要望聞いちゃおうかしらね。あ、種族とか転生先とかは選べないからそこは我慢して頂戴ね?」

 

「うーんそう言われてもなぁ…とりあえずは、せっかく覚えたお化粧とか役立てたいので可愛い感じの姿で転生お願いします。性別は今のままで。あ、それと物を運ぶのに適した力とか貰えたら嬉しいです。前世ではヒョロヒョロすぎて引越しに苦労したので。あとは努力でなんとかします。」

 

「謙虚ねぇ、もっとこう「大富豪の家に転生!」とか「最強チートスキルで無双!」とか「ハーレムパーティでイチャラブチュッチュ!」とかあるじゃない?」

 

「うーん…親の七光りに頼るのは何か嫌だし、転生してそのまま最強じゃつまらないし、ハーレムとか揉め事起きそうなので。」

 

「ロマンとか追い求めないタイプなのね。まぁそれもそれで良いわよ。富も名声も力も努力でつかみ取りましょう!って感じで頑張りなさい!」

 

「えっと、ただの人間なのに女神様にこんなに良くしてもらって本当にありがとうございます。僕異世界に転生しても頑張ります。」

 

「フフッ、気にすることないわよ!……私が勝手にやってる事だし。」

 

「え、何か言いました?」

 

「なんでも無いわ〜!行ってらっしゃ〜い!」

 

「わぁ〜……。」

 

「……さて、あの子どこに転生したかしら。あら、魔法は発展してるけど化学は全然進んでないわね?しかも魔物とかいるみたい…不安だからたまに声かけてあげようかしら。」

 

 

─────────────────────

 

 

異世界

どこかの国の平原

 

「うぅうん…ここが異世界?ファームステイした時を思い出すなぁ、辺り一面ひたすら緑色の目に優しい景色だ。街とかあんまり無い世界なのかな?というか転生といってもある程度成熟した姿で放り出されるのか。文無し家無しひとりぼっちって辛くない?」

 

ブツブツと独り言を言いながらも、視界に入った道のような場所をまっすぐ歩いていった。

 

「そういえば何て名乗るのか考えておいた方が良いか。夏希という人間は一度死んだワケだし、親からもらった大事な名前だけど、ここは第二の人生って事で思い切って改名しよう!今日から僕はハルだ!夏じゃなくて春になったよって感じ!逆行してるけど。」

 

『良い名前じゃないのハルくん。』

 

「はぅあ!?女神様まだ見てたんですか!?」

 

『ちょっと心配になったから二〜三日に一回くらいは様子見しようと思ったのよ。スキルの使い方も分からないでしょう?』

 

「た、確かに。どうやって使えばいいんですか?」

 

『スキルによって使い方が違うけれど、あなたに与えた初期スキル二つのうち一つは目の前に出て来い!って思えば出てくるはずよ。』

 

「なるほど……いやなるほどなのか?ええっと……むん!」

 

目の前に出て来い!と思って手を前に向けると、ゲームのステータス画面のようなものが出てきた。

 

と言っても、自分の筋力や体力が確認できるわけではなく、身につけている服や持っている道具等を確認し、ワンタッチで取り出したり脱いだり収納したりできるようだ。

 

オマケで自分の姿や習得スキルの名前、そして自分が把握している範囲で、道具やスキルの使用用途が確認できるようだ。

 

「え〜便利〜。これ僕の見た目かな?結構可愛いかも。服はいかにも異世界転生始めました〜って感じの初期装備だけど。可愛い服とかあったらいいな〜。」

 

『アイテムインベントリのスキルは扱えるようになったわね。それを見せれば街に入っても悪い様にはされないでしょう。何せそのスキルは女神から与えられた力だから悪人は絶対に扱えないスキルよ!まぁ家もお金も無いという点はどうにもならないけど……。』

 

「うーん…都合良く助けてくれそうな人とかいたらいいんだけどなぁ…。」

 

そんな話をしていると、遠くから人の気配を感じた。

気配を感じたと言っても魔法的なものではなく、物音のような、或いは叫び声のような音が聞こえたのだ。

 

「何か近づいてきてるのかな?一体何が……」

 

「ヒーン!誰か助けてくださいー!」

 

「デッカ!?じゃなくて女の人が何かに追いかけられて……追いかけきてるやつちっちゃいな!?」

 

小さなキノコに足が生えたものが、見た感じは身長180cmぐらいの女性を追いかけてきている。

どうやらあの小さなキノコから逃げているようだ。

 

「大丈夫ですかー?」

 

「大丈夫に見えますかー!?」

 

「見えないでーす!」

 

「じゃあ助けてくださいよー!!」

 

「はーい!」

 

助けてほしいとのことなので、後ろからキノコを追いかける。

元サッカー部の経験を活かして、歩くキノコをはるか遠くへ蹴り飛ばした。

 

「助けましたよ!」

 

「あ、そこを離れてください!ハシリキノコは危険な胞子を撒き散らす危険性があります!」

 

「え!?……大丈夫みたいですよ?」

 

「ああ、なら大丈夫です!多分似た性質のアルキキノコだったみたいですね!ていうかハシリキノコってあれよりも早いんだ…怖いなぁ…。」

 

「えっと、なんであんな珍妙な生物に追いかけられてたんですか?」

 

「あ、はい。私さっきまで薬草探してまして、それで森に入ったらアルキキノコを踏んでしまったみたいで、それで怒ったアルキキノコが頭突きしてきたのが怖くて逃げてきました。」

 

「薬草?」

 

「あ!私はいわゆる魔女という者で、名前はリアナといいます!」

 

「魔女?」

 

「あの、一応言っておくと魔女は怪しい者ではありませんよ?魔法の研究で生活を豊かにする素晴らしい職業です!危険な薬とか作ったりするのは黒魔術とかなので私は専門外です!」

 

「なるほどね〜?多分理解した!」

 

「そういえば貴方は何者なんですか?子供が一人でこんな所を歩いていたら危ないですよ?」

 

「いや僕はこう見えても大人……あれ?大人だよね?まぁとにかく子供では無いですよ。名前はハルです。種族というか職業というか、自分がどういう立ち位置なのかはよく分かってません!」

 

「あはは…だいぶ変わった人ですね?でもそれなら丁度良かったです。一人では心細くて…。」

 

「仲間とかいないの?」

 

「はい……お金が無いので冒険者の方を雇う事も出来なくて……仕方ないので一人で来ました。」

 

「戦ったりはできるんですか?」

 

「戦闘向きの魔法は使えませんが…応用すればこの辺りの魔物なら何とか倒せるかと…。」

 

「……ほおっておくのは不安だからついていこう。」

 

ハルはリアナについていくことにした。

 

 

─────────────────────

 

 

「はい、到着しましたよ。ここが薬草の群生地です。」

 

「なるほど、どれくらい必要なんですか?」

 

「ええっと…まぁ持てるだけ持って帰れば報酬がいっぱいもらえるのでとにかく沢山持って帰りましょう。カゴひとつに入れられる量なんてたかが知れてますけどね…。」

 

「ならアイテムインベントリのスキルを使いましょう!」

 

「アイテムインベントリのスキルを持ってるんですか!?では女神様の加護を受けているんですね!」

 

「え?ああ、そういえば女神様がそんなこと言ってたね。」

 

「会話したんですか!?」

 

「直接会って話したよ。結構フレンドリーな神様でした。」

 

「なんと!?可愛い物が好きという言い伝えは本当だったんですね…。アイテムインベントリのスキルが使えるなら話は変わってきますね。取りすぎて数が足りなくなったら大変なのでここにある分の3割程度で我慢しましょう。」

 

「はーい!」

 

リアナの指示に従って薬草だけを回収し、アイテムインベントリに収納していく。

雑草と薬草の違いは若干分かりにくいが、リアナの知識のおかげですぐに見分けが着くようになった。

恐らく「努力」スキルの効果だろう。

心做しかさっきアルキキノコを蹴り飛ばしたり、薬草集めのために中腰を維持したからか体も少し強くなった気がする。

努力スキルの効果が極端すぎるのでは無いだろうか?

 

「こんなもんかなぁ。軽く10kgはありますよコレ。アイテムインベントリが無かったら持ち帰るだけで筋肉痛確定です。」

 

「ちょっと張り切っちゃいました。それじゃあ帰りましょうか。」

 

こうも順調だと帰り際に一悶着有りそうな感じだが、ラッキーな事にこれといって事件は起こらなかった。

まぁアルキキノコを踏んでしまって体当たりされたが、それは先程と同様ハルが蹴り飛ばして対処した。

 

 

─────────────────────

 

 

「さあ着きました、ここが冒険者ギルドです。様々な依頼がこの冒険者ギルドに届き、依頼料と払えばギルドの建物内の掲示板に掲示されます。その依頼を冒険者が引き受け、ギルドは依頼を達成した冒険者に報酬を支払います。」

 

「なるほどねぇ〜、それでお金のために依頼を受けたってわけか。つまりリアナは冒険者なのかな?」

 

「まぁ…そうですね、一応ギルドで正式に冒険者の資格を与えられた冒険者です。ただ、つい先日登録したばかりの駆け出し冒険者でランクはブロンズ以下のウッド級です。ほら、手首に木の飾りをつけてるでしょう?これがウッド級の印です。」

 

「ウッド級の上にブロンズ級があるって事は、飾りも銅の飾りになるのかな?十円玉みたいな匂いしそうだなぁ…。」

 

「ジュウエンダマ……?何でしょうかそれは。一旦話を戻すとして、ウッド級は一つでも依頼を達成すればブロンズ級昇格なんですけど、問題なのはウッド級をタダで助けるような冒険者はいないって事なんですよ。」

 

「え、そうなの?ブロンズ級の人とか助けてくれそうなもんだけどなぁ。」

 

「ウッド級からブロンズ級へ昇格するための試練のようなものらしいです。冒険者ギルドの依頼は厳しい仕事も多いので、問題を自力で解決する方法を考えられないなら、冒険者なんてやらない方が良いという風潮があるらしいです。」

 

「なるほどねぇ、洗礼を浴びるってやつかな。まぁ今回の依頼を達成したって事で、リアナもブロンズ級に昇格かな?」

 

とりあえずギルドの受け付けの人に依頼完了を伝えた。

本当は依頼人に薬草を届けるまでが依頼内容だったが、今回はウッド級に免じて達成扱い。

後でギルドの職員さんが依頼人に届けたそうだ。

 

「量が多かったからボーナスいっぱい出ましたね!」

 

「うんうん。ブロンズコインをいっぱい貰ってたね。ブロンズコインがどれぐらいの価値なのか知らないけど。」

 

「うーんと、例えばパンを一つ買うならブロンズコインが10枚は必要ですね。他にも水とか合わせるなら一人あたり最低でも毎日50枚のブロンズコインが必要ですね。」

 

「え!?さっき200枚くらいしか貰ってないじゃん!お金足りるの!?」

 

「足りませんね。ウッド級やブロンズ級の受けられる依頼は基本的に副業程度の稼ぎしか得られません。だから別の本業と一緒に行うか、数をこなして早くシルバー級に昇格しなくてはならないんですよ。ちなみにブロンズコイン100枚でシルバーコイン1枚分の価値です。シルバーの上はゴールドで、ゴールドの上はプラチナ。プラチナが一番上位のコインで、冒険者のランクも同じくプラチナが最上位です。」

 

「説明助かる〜。っていうかブロンズ200枚じゃ宿代にもならないんじゃないの?報酬は山分けで100枚として、僕は今夜何処で眠ればいいんだ…。」

 

「あの、私の家で良ければ泊まっていきますか?」

 

「ええぇ!?良いんですかぁ!?やった〜!」

 

「ただ、ベッドが一つしかないので寝る時は狭いかもしれません。」

 

「え、一緒に寝る前提なんですか?」

 

「えぇ、まぁ、はい。ハルさん小さいので一緒に寝ても入り切るかと。」

 

「小さ……まぁ小さいか……まぁ……はい……。」

 

「と、とにかく!お家まで案内しますね!」

 

そういう訳でハルはリアナの家に泊めてもらうことになった。

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