Q. カードゲーマーは星の救世主になれますか?   作:上殻 点景

19 / 29
用語
ブロックオリパ……カードをひとまとまりにした束。
         レアやコモンカードまで雑に入っており、
         よく夢を見てカードゲーマーはコレを買う。

雑パン……雑に殴ること。別名チンパン。


Bazaar of Baghdad(19)

 町の探索後、俺達は駐車場に戻り、多数の馬車やトラックの間を歩く。

 

 荷台からは陶器や食材が出されており、商品の種類は多種多様という言葉が似合う。

 地面に簡易的なシートを敷いて商売をする様子は、ここまでくれば露店通りと見間違うほどである。

 

 そんな中を歩くは、

 銀髪の姫と眼鏡の男、

 つまり俺と中将である。

 

 「中将、見てみろよ」

 「あれは古物商ですか」

 

 地球では見たことのない商品が並ぶ。

 文字が掠れた本、表面が消えたコイン、

 禍々しくて触れたら呪われそうな物とかもあるな。

 

 (こういう店大好きなんだよな)

 

 リサイクルショップとかで無駄に漁ってしまう性分である。

 

 「これとかスゲーな」

 

 目に付くは表情が変化する仮面。

 仮面の表情が怒ったり笑ったりと、

 普段、仏頂面の奴に付けたら面白そうだ。

 

 「嬢ちゃん、お目が高いな。そいつは───」

 「───ただのガラクタです」

 

 触ろうとした手を中将に制止される。

 

 「なんだ、アンタ」

 「しかも、法に規制されているモノとはなかなかです」 

 

 今回は劣悪なコピー品なので見逃しますが、と中将は話を終える。

 

 (よく知ってんな、おい)

 

 俺には仮面のどこが法に触れてて、

 どこがコピー品なのかすら分からんが。

 中将もこういうのを集めんのが好きなのか?

 

 「実は中将は仮面が趣味......?」

 「ただの仕事のせいです」

 

 違法品の取り締まりも軍の仕事だそうです。

 

 ほえーと俺が納得していると、

 露店のおっちゃんに小言を言われる。

 

 「おいおい、彼氏持ちなら先に言いな」

 「これ見て彼氏って言えるか?」

 

 手につないである手錠を見せる。

 もちろん紐の先は中将がしっかり握っている。 

 

 おっちゃんは俺と中将を交互に見つめ。

 

 「そういう趣味なのかと」

 「冗談でも殺───もぐッ」

 

 思わず決闘しそうになるが、

 素早く中将に口を押えられて、

 俺はもごもごするのみであった。

 

 (クソッ、口を押えられなければ〇れたのに)

 

 手をじたばたする俺をしり目に2人は話す。

 

 「目を離すとこれですから」

 「分かるぜ、息子がそんな感じだ」

 「お互い苦労が絶えませんね」

 

 うんうんと頷く2人。

 

 「いや、何納得してんだよ」

 

 納得できる要素0だろ。

 カワイイ少女が手錠に繋がれてんだぞ。

 ちょっとは危機感持ってくれおっちゃん。

 

 「つったく商品買わねーぞ、おっちゃん」

 「なら口止め料もかねて値引いてやるよ」

 

 どうだと言うおっちゃんに、

 俺はニヤッと笑う。

 

 「上等だ、商品見せやがれ」

 

 気前がいいのは嫌いじゃねぇんだわ。

 

 ◇◆◇

 

 おっちゃんが商品を取り出し始めて数分。

 中身は先ほどと変わらず訳が分らんものばかりだが。

 

 中には気になる商品もある。

 

 「これはカードか?」

 「ああ、一部の層に人気でな」

 

 ケースに入ったものもあれば、

 籠の中に乱雑に詰められたカードもある。

 

 「ケースのは凄くたけーな」

 「そりゃ一級品の商品だからな」

 「休憩地だから吊り上げてるだけです」

 

 中将に言われ、

 目を背ける商人のおっちゃん。

 へたくそな口笛まで吹いてやがる。

 

 (まあ、露店なんてそんなもんだろ)

 

 俺は思案しつつ、

 カードを眺めていると、

 おっちゃんは一枚のカードを見せる。

 

 「鑑賞用ならコイツとかどうだ」

 

 提示されたのは、

 イラストが綺麗なカード。

 だが肝心の効果は微妙である。

 

 (それよりもカードゲーマーならコイツ一択だろ)

 

 【ブロックオリパには浪漫がある】

 

 かの先駆者たちもそう言って爆死していった。

 

 まあ俺がいた世界の話だし、爆死したのは友人だが。

 

 昔を懐かしみつつ、

 俺は籠のカードに目を向ける。

 

 「籠のカードはいくらだ」

 「そいつらは重量で売ってる商品だが」

 

 (量り売りとは景気がいいな)

 

 おっちゃんの言葉に思わず、

 俺は笑みを浮かべて言葉を発言する。

 もちろん、言うべき言葉はただ一つ。

 

 「なら、全部よこせ」

 「はッ?」

 「支払いは勿論中将だ」

 「えぇ......」

 

 おっちゃんと中将の呆れを無視して、

 

 銀髪少女の手には山盛りのカードが追加されるのであった。

 

 ◇◆◇

 

 車内にて、

 

 山盛りのカードを漁る少女、

 あーでもないこーでもないと、

 カードの確認に夢中である。

 

 横に座る中将は、

 流れてくるカードに埋もれ、

 無言で眼鏡を曇らしている。

 

 「この《聖なる次元》とかおもろいな」

 「こんなピーキーなカードいつ使うんですか」

 「そりゃいずれ合いまみえる陰キャ対策にだな」

 

 刺されば強いカードだぞ。

 

 まあ刺さらないと雑魚カードなんだけど。 

 

 「個人的にはいい効果だと思うんだが」

 「初手に持っていることが前提のカードです」

 「右手が強ければ問題ないだろ」

 

 右手をぶんぶんするが、

 

 中将には冷えた目で見られる。

 

 「後手で引いてキレているのが目に浮かびますが」

 「そん時はそん時よ」

 

 そんな感じで、

 カードに目を通し終えた後、

 俺は中将に提案する。

 

 「この紙束使って、対戦しねーか」

 

 俺の手には乱雑につかみ取った2つの束。

 

 「そして負けた方は昼飯を奢るってのでどうだ」

 「私は構いませんが、お金は大丈夫ですか?」

 「当然、中将に奢らせる前提よ」

 

 俺の言葉に、

 中将はニヤッと笑う。

 

 「「いざ、勝負ッ」」

 

 こうして、

 車内で昼飯を賭けた、

 絶妙に負けれない一戦が始まるのであった。

 

 ◇◆◇

 

 「ぐ、ぐぎゅー」

 

 俺の喉から変な声が出る。

 

 (紙束最強を誇った俺が3連敗)

 

 「まだやりますか?」

 「ま、まだ負けてねぇから......」

 

 いやもう3連敗してんだけど。

 心が強ければ負けてないって言うし、

 もはや勝ち負け関係なく、一勝ぐらいしたいのが本心だ。

 

 そして、数分後。

 

 「ば、ばぶー」

 

 再びの敗北を経て思わず幼児退行してしまう俺。

 

 ばぶった後、

 数度の深呼吸を経て、

 ようやく本来の感情を取り戻す。

 

 「中将、強すぎんか」

 「あなたが雑すぎるだけです」

 

 おかしい、紙束において雑パンは正義なハズだが。

 

 (昔からコレで勝ってきたんだが)

 

 中将にはことごとく妨害されるし、

 

 手札の札だいたいケアして殴って来やがる。

 

 「中将、本当に紙束使ってるか?」

 「先程文句をつけてデッキ交換したばかりですが」

 

 ならば使っているデッキに不備はない。

 

 そして俺は最強のハズだ。 

 

 なのに俺が負けている。

 

 「つまり、中将は運だけのカス?」

 「プレイングで負けているのを認めてください」

 「ちょっとよくわからないな」

 

 俺が認めたくない事実を言ってくれるな。

 

 ここで負けを認めると昼飯代を払わないといけないだろ。

 

 (財布に金が無いとかじゃなくて、財布自体がないからな)

 

 支払いで泣きをみるのだけは避けたい。

 

 「ここは運だけのカス証明の為にもう一回だな」

 「さっきも同じ事言ってませんでした?」

 「さっきは引きだけのカス証明だ」

 「同じじゃないんですか」

 「これだから素人は」

 

 中将の呆れた視線を避けて、

 

 俺は素早くデッキの準備をする。

 

 仕方ないとばかりに用意する中将。

 

 「次に勝った方は100億点で」

 「それはどういう事ですか?」

 「次負けたら方が飯を奢るってことだよ」

 

 そんなこんなで、

 車の中でワイワイと決闘は進む。

 結果? それは聞かないお約束だ。

 

 「要は楽しんだもん勝ちってな」

 

 ふっと微笑む俺に対して、

 いつもと同じ仏頂面の中将。

 昼飯の天丼はおいしかったぜ。

 

 「で、飯代は」

 「金を貸してくれ」

 「ツケということで」

 

 天丼にちょっとだけ塩味が効きすぎてたのは内緒だ。




ここまで読んでいただきありがとうございます。
投稿が遅れた言い訳としてモダホラ3が楽しすぎたという言い訳を置いておきます。プレリから対戦まで楽しみ尽くせたので満足です。皆もしようマジックザギャザリングってな感じですね。

最後に感想をいただけると投稿頻度が上がります。

以下補足となります。
Q.カードってそんな雑に売られているの
A.この世界だと古物商がオマケで取り扱っています。
 ぶっちゃけカードは観賞用の方が多く実戦で使おうと考える
 人間は少ないです。

Q.馬車とトラックについて
A.この世界では舗装されてない道が多く、帝国の外に出て商売する
 人間には馬車が好まれます。そんな感じで使っている人は半分半分です。

以上補足でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。