Q. カードゲーマーは星の救世主になれますか?   作:上殻 点景

25 / 29
帝国警備編
裏切りの対価(25)


 いい朝だ。

 雲一つない青い空。

 

 帝国首都はたくさんの人で賑わう。

 

 遊びに行く若者。

 いつもの仕事に行く大人。

 散歩のついでに店による老人。

 

 だが俺は違う。

 

 「俺は家でごろごろするのだッ」

 「ここは貴方の家ではありませんが」

 「やっぱり向こうだと皇女様の愛が重くて」

 

 そんなわけで、

 今日も今日とで、

 いつも通りに、

 

 中将の執務室で寝転がってるって訳だ。

 

 目の前の中将は頭を痛めているが気にしない。

 

 「そろそろ追い出しますよ」

 「なら泣くことになるぜ」

 「面白い冗談ですね」

 「俺がな」

 

 泣き騒いで意地でもこの部屋からは出んぞ。

 

 「冗談ですよね」

 「俺はマジだぞ」

 

 ここは昼飯(軍人用)も出るし。

 

 味に気にしなければ普通に満足できるし。

 

 (住めば都という言葉がよく似合う)

 

 「末期ですね」

 「バナナって感じだ」

 

 俺の知性が下がった昼下がり、

 

 ドアは勢いよく開かれる。

 

 「ここに隠れるとは頭は回る奴だ」

 「どちらさまでぇ」

 

 軍帽、

 金髪の、

 おっぱい。

 

 所見の感想はこんな感じだ。

 

 「貴様の上司だ」

 「ほえ〜」

 

 あくびと共に言葉が出る。

 

 (俺はいつから会社勤めになったんだか)

 

 そんな馬鹿な思考が頭を回っていると、

 

 「これは噂以下か」

 「あい?」

 

 俺の視線は地面を離れ、宙に浮かぶ。

 

 すなわち首ねっこを掴まれた状態である。

 

 「上司に向かっての口調、看過できんな」

 「ぐェ」

 

 空中で素早く一回転させられ、

 

 腕と足が絡めとられ、頭部はホールドされる。

 

 すなわち、

 

 (ま、卍固めッ)

 

 肩・脇腹に致命的なダメージ。

 

 完全に決まった卍固めは相手を絶望に追いやる。

 

 「ほら警戒任務だ、いくぞ」

 「あ、あい」

 

 魂は口から抜けかけ、

 動くことすらできない俺は、

 引きずって連れていかれるのであった。

 

 ◇◆◇

 

 1人減った執務室、

 1分も立たないうちに、

 1人増えることとなる。

 

 ドタバタと入って来るは、軍服に身を包んだ赤髪の少女。

 

 「どうしました、皇女様」

 「どうしましたじゃありません、中将ッ」

 

 皇女は紙を見せつける。

 

 「何ですかこの人事異動」

 

 ──────── 

 辞令書

 

 少尉を警備課少佐の下に配属とする。

 

 ×月●日 ■■中将

 

 ────────

 

 「何か問題ですか?」

 「何故、私の配属指令が潰されているんですかッ」

 「貴方の下に彼女を付けると暴れそうなので」

 

 中将はコーヒーを飲みながら語る。

 

 すでに皇女が出した、

 配属指令は握りつぶし、

 自分が考えた物と入れ替えたと。

 

 「あいかわらずのクソ眼鏡」

 「なんとでも言ってください」

 「なら死ぬまで言わしてもらいます」

 「いったところで命令は変わりませんので」

 

 皇女様の額に青筋がはしる。

 

 「ま、まあ百歩譲るとして」  

 「ではお開きということで」

 

 皇女様は拳を必死に抑えている。

 

 「なら質問を1つ」

 「どうぞ」

 「どうしてかの少佐に配属を」

 「かの、ですか」

 「彼女が味方を売った話は有名です」

 

 帝国の東側には連邦という国がある。

 

 少佐は元連邦の将校で、

 自身の為に仲間を売り、

 帝国での地位を得た過去がある。

 

 「故に皆は彼女を嫌悪し、

  配属となった警備課でも部下は来ず。

  小隊とは名目上、実際は彼女一人です」

 

 たった一人の小隊の噂は帝国軍内部では有名である。

 「知ってますよ」 

 「知っているなら何故」

 

 中将は眼鏡を曇らす。

 

 私は常に最善の一手を打っています

 今回もその一手だと

 ご想像にお任せしますよ

 

 中将はコーヒーを取り、

 ニヤリと笑う。

 

 「それに、私はいい人ですから」

 

 皇女様からの視線は死ぬほど冷たい。

 

 ◇◆◇

 

 連れてこられたの帝国市街地。

 

 帝国中心部の繁華街ではなく、

 店と住居が混ざり合った地区だ。

 

 「んで、何すんだ」

 「貴様、まだそんな口を利くか」

 「えーと、ナニをするんでしょうカ」

 

 口調がカタゴトになる。

 

 (やっぱり敬語は慣れねェな) 

 

 「コ、コれで、大丈夫でしょうカ」

 

 音質も変わっているし、

 性格も変わっているが、

 深いことは気にしてはいけない。

 

 「ナにか、駄目でしょうカ」 

 「いや、ダメではないが」

 

 少佐にじっと見つめられる。

 

 その眼には一種の諦めが含まれていた。

 

 「元の口調で構わん。寒気がする」

 「ヒ、酷い言われようでス」

 

 この後、数分かけて元の口調を取り戻すことに成功した。

 

 ◇◆◇

 

 市街地を歩くこと数十分、

 特に何かをするわけではなく、

 少佐はひたすら周囲を観察していた。

 

 「市内の警備が任務ってことか?」

 「いやそれは表の業務だ」

 「表の業務?」

 

 少佐の足は一軒の民家の前で止まり、

 

 「私の任務はもう一つある」

 

 ドアは乱雑に叩かれる。

 

 「おいッ、部屋を開けろ」

 「なんだアンタ────ゴハッ」

 「帝国にいるドブカス共の粛正だ」

 

 男の襟首が掴みあげられる。

 

 「警備課だ」

 「ま、街を守ってるヤツが何の用だ」

 「帝国には五月蠅すぎるハエは不要でな」

 

 男は観念したような眼を向ける。

 

 「えっと、どゆこと」

 

 話が急展開でついていけない。

 

 「コイツはもともと他国のスパイだ」

 「我々が把握している情報を流す役目だが」

 「最近、ごたついた隙に余計な情報まで持ち出した」

 

 少佐は剣に手をかける。

 

 「故に消すしかなくなった訳だ」

 「───パパ、どうしたの?」

 

 家の奥から少女の顔が見える。

 

 「ほうなかなかの偽装だ」

 「俺の実娘だ。手は出すな」

 「それが本当ならの話だがな」

 

 少女に状況は理解できない。

 

 ただ不安に感じたのか、

 反射的に父親に駆け寄る。

 

 「パパぁッ」 

 「く、来るなッ」

 

 だが、

 

 娘がたどりつくより早く、

 少佐の剣によって、

 父親は消える。

 

 「お、お父さん......?」

 「悪いが独房の方に送らせて貰った」

 

 少女には現状が理解できない。

 

 「なんでお父さん消したの?」

 「お前の父親が失敗したからだ」

 「失敗したら次頑張ればいいんじゃないの......?」

 

 少佐は剣から手を離し、上を見る。

 

 「軍人に次はない───」

 

 少女に諭すように、

 自分に言い聞かせるように、

 

 「あるとしたら死か、屍の如く生きるかだ」

 

 今日の天気は快晴。

 

 だが室内は曇天のように暗い。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回はだいぶ頭を空っぽにした回となっています。
多分三話ぐらいの構成で終わると思っています。

以下補足です。

Q.少佐がプロレス技を使える理由。
A.それはアレですね。あまりにも一人で暇なので格闘技の研究を
 していた産物です。

Q.少佐が使った剣について
A.あれは帝国将校なら使える権限の一種です。帝国首都内部では許可さえあれば転移魔法が使えます。犯罪者には割と人権がない国なので秒で許可はおります。

以上補足でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。