Q. カードゲーマーは星の救世主になれますか? 作:上殻 点景
漆黒の機関部から吐き出される噴煙は車体に纏わり付き、窓から見える景色をモノトーンに見せる。木製のシートには傷とひび割れが見られるにも関わらず、新品如く磨かれている。
対面して座るは、
銀髪少女と金髪おっぱい軍服。
つまり、俺と少佐である。
「あー観光したかったなー」
「残念だが今回の出張は仕事でな」
「そんで帰りはとんぼ返りってのはなァ」
現在東部で合った任務を終え、鉄道に乗って帰宅中である。
「人手が足りんのだ、文句を言うな」
少佐の発言は嘘くさい。
どうせ面倒がって誰もやらないとかだろ。
(今日の任務とかクソ熱い部屋の中で立っているだけだったし)
「どーせ、押し付けられただけだろ」
「ほ、他の部署が困っていたからだ」
うぐっとする少佐。
またかと思う俺。
仕事を押し付けられるのは、今月ですでに5度目である。
(最近よく思うが、この少佐───)
無駄に仕事を引き受けるのである。
別に少佐だけが苦労するのは構わんのだが、
それに付き合わされる部下はげんなりである。
「せめて車ぐらい出して欲しいぜ」
3度を超えたあたりから、少佐の悪い癖を止めるのはもうあきらめた。
だが毎回移動するのが鉄道なのは本当に納得いかない。
木製の座席は揺れるたび、
俺のケツにダメージを与え、
直角な背もたれが血流を悪くする。
つまり、腰が死ぬほど痛くなる。
「やっぱり鉄道はクソだな」
一部の人間に聞かれたら殴られそうだな。
と思いつつ、
思ったせいで、
現実に成りえるのである。
「──父ちゃんの鉄道の悪口をいうなッ」
「あぶねェな、坊主」
突っかかってきたのは坊主。
年齢は子供、服装は一般的。
手には小包を大事そうに抱えている。
「父ちゃんはこの鉄道を必死に動かしてんだぞッ」
「いや、別に他人の悪口をいったつもりはねぇんだが」
父親が運転士かは知らんが、
ケツが痛くなければ何時間でも乗ってやる。
俺の心境はそれだけである。
「坊主、お前にはこの痛みが分らんだろ」
「何意味の分からん事言ってんだッ」
「若いな。だがその若さは今だけだ」
若いころは気が付かなかった痛み。
筋肉の衰え、肉体の疲労、感覚の低下。
お前も俺の様にケツの痛みを感じる時がくる。
「いや、貴様もまだ10代だろ」
少佐のジト目が刺さる。
「そもそも貴様の体が痛いのは変な姿勢で寝てたから───」
「正論は聞きたくねェ」
全く誰が正論を言えといった。
てかそもそも俺が寝違えたのもこの鉄道が狭いからであってだな。
(まあ、値段をケチって寝台車両を取らなかったのは自分のせいだが)
「結論、鉄道はクソッ」
「なんだとォッ」
そんなこんなで坊主といがみ合っていると、
視界の隅に女性が現れる。
服装は坊主のセンスと似たようなモノ。
「あっ、すいませんっ、ウチの子が」
「問題ない、どう見てもウチの馬鹿が悪い」
いや、どう見ても突っかかってきた坊主が悪いだろ。
「そもそもな坊主────」
「誰が、坊主だ、けっとうするぞ。俺はデッキだって持ってるんだッ」
坊主は輪ゴムで束ねたデッキを見せてくる。
「奇遇だな、俺もデッキを持っている。決闘しようぜ」
俺も腰からデッキケースを見せる。
「え......いや、あの」
「んっ? どうしたやらんのか?」
なぜか急におとなしくなる坊主。
なんだその本当に決闘をするとは思っていなかったみたいな顔は......
(こっちもやる気が抜けるというか──)
「馬鹿ッ、人様に何言ってるのよ」
坊主は母親に引っ張られる。
「本当にすいませんッ、ウチの子が」
そう言って親子は別の車両に行くのであった。
◇◆◇
「なんだったんだ、アレ?」
「やはり子供はいいな」
おかしい、少佐と会話がかみ合っていない。
「な、生意気な坊主の癇癪ってやつだな」
「そうだな。やっぱり子供はいいな」
「あ、あれじゃ躾ける母親も大変だな」
「ああ、子供はいいぞ」
「ええい、会話しろォッ」
ドッチボールみたいな回答しやがって。
「少佐、子供が好きなのか?」
「いや、子供は嫌いだが」
なら、さっきの発言は何なんだ。
「五月蠅い、面倒くさい、邪魔くさい。
理を度外視して、己の本能で向かってくる。
だが、その無垢さは我々が失ったものだと思わんか」
「めんどくさいオタクみてーな思考しやがって」
好きではないが、愛おしいから妬ましいって事だろ。
(子供の無垢さには2割ぐらいは同意してやる)
俺も性根はおっさんだからな。
「そういう点では貴様もまだ子供だな」
「どう意味だ」
「喧嘩は同類レベルでしか発生しないともいう」
「つまり」
「貴様も子供だ」
少佐はうんうんと頷く。
なら俺はバブった方がいいのかね
ならもう少し甘やかして欲しいものだが。
「子供にはもっと優しくしろって習わなかったか?」
「子供にはしつけも必要だろ?」
自信満々の瞳には偽りというは気持ちなさそうだ。
「結構だ、寝る」
硬い座席は体には悪い。
◇◆◇
スース―と寝息を立てようとしていたところ、
ドンッという乾いた音が耳を貫く。
(銃声? ここは車内だぞ)
思考の疑問は、その後の声によって解決される。
「静かにしてもらおうかァ」
「この列車は俺達、『ワルイーズ』が占領したァ」
「殺されたくなかったら金品をよこしなァ」
乗り込んできた男たちは3人。
ボス格1人の部下2人だ。
「ほう、いい度胸だ」
少佐は軍服を靡かせ立ち上がる。
「兄貴、なんかヤベー気がしますァ」
「安心しろ、俺もヤベー気がしてらァ」
「兄貴、そいつはどうするんですかッァ」
「俺に策がある、お前ら命令だァ」
アイアイサーと子分共が後ろに消えていく。
残されたのは少佐とボス格の強盗。
「真昼に堂々と蛮行とは。
首都外での監獄送りは手間だ。
悪いが纏めて剣の錆になってもらうぞ」
抜き切られる少佐の剣。
「落ち着けよ、その物騒なモンはしまえっなァ」
2発、強盗から銃弾が放たれる。
が、少佐は避けず。
服に穴が空く。
「おいおい、直撃かァ」
だが──不動。
「終わりか、強盗?」
「嘘だろッ、直撃したハズだァ」
軍服には2発穴が開いている。
「生憎、その程度では死ねない体でな」
少佐はゆっくりと強盗に近づく。
一歩、
一歩、
一歩、
迫りくる少佐は、
獲物を逃がす気はない。
「く、くるなァ」
「雑なセリフでは引けんぞ」
ドアが開く。
「待たせました、兄貴ァ」
「よくやった、オメーたちァ」
「止まれ止まれ、こいつが目に入らんかァ」
「ほう。民間人の人質か」
人質に取られたのは女性。
先ほど見たことのある女性。
だが、少佐は前に進む。
「お、脅しじゃねェんだぞァ」
「ならばさっさと殺せ。そして貴様を殺す。骨の髄まで殺す、以上だ」
退かずの意志は硬く、
はばめる者は何もいない。
だが割り込む者は存在する。
「か、母ちゃんッ」
「ガキ、邪魔すんな」
「......チッ」
少佐の足が止まる。
「と、止まったァ」
「心臓がびくびくしましたぜ、兄貴ァ」
「馬鹿、俺たちは襲っている側だぞ、なにビビってんだァ」
強盗が少佐の周りを囲む。
少佐は剣を収め、抵抗する様子はないようだ。
「おい、この女を厳重に見張っとけァ」
「へい、兄貴ァ」
ぐるぐる巻きにされる少佐。
さながらミノムシみたいである。
「一周回って面白いまであるな」
「おい、嬢ちゃんテメーも仲間かァ?」
「いいやちげー。ただの一般人だ」
完璧な回答だ、俺。
銀髪を優雅に揺れ、
黒の帝国軍服がよく映える。
「兄貴、女の仲間がいましたァ」
「まてェ、会話に問題はなかっただろォ」
俺の両腕がホールドされる。
そして盗賊のボスの前に連れていかれる
「離せー、俺は一般人だー」
「間抜けがァ、軍服を着た一般人がいるかァ」
少佐の横に縛って放置される。
「おい、念入りに検査しろァ」
身体を念入りに漁られる。
「おい、どこ触ってんだ」
この流れはもしや──
「持ち物検査に決まってんだろァ」
「自分に自信過剰すぎんかぺったんこがァ」
「兄貴、でもぺったんこもありだと思いませんかァ」
「野郎どもよく聞けッ────大きい、小さいじゃねぇ、そこに愛はあるかだァ」
「「流石だァ!!」」
「黙れッ」
それはそれとして、
持っていたものを取り上げられる。
昼飯、防御アイテム、そしてデッキケース。
「おい、このガキいっちょ前にデッキ持ってますァ」
「ちょうどいい、ぶんどっとけァ」
腰のデッキに触れられる。
「おい、テメーッ‼ 宇宙───」「───今は押さえろ」
少佐に制止される。
「(なんのつもりだ少佐)」
「(ちょっと気になっていることがある、付き合え)」
結果、
デッキケースは取られ、
俺は縛られるのであった。
「で、どーすんだよ、少佐」
「しばらく流れに身を任すというのはどうだ」
「はいはい、ノープランですか」
そして時刻は少しだけ進むのであった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。作者です。
いつも通りカードゲームネタを書いているはずなのに、カードが出てこないうちの小説です。今回は4話ぐらいで、ねっとりと書きたかったのですが話がまとまらなかったので全2話です。
誤字脱字報告は遠慮なくしてください。作者が喜びます。
感想をいただけると更新速度が速くなるシステムです。
以下補足
Q.どうして鉄道、しかも蒸気機関車?
A.アレは蒸気機関に見えて魔力で走るハイテク機関車です。
Q.乗り心地について
A.みんな乗り心地が悪いのは知っているので何かしらの対策はしています。
少佐は気にしていないのでそのまま座ってます。
Q.どうして少佐はあっちこっち行っているの?
A.中将が情報収集のためあっちこっちに飛ばすから。
以上補足になります。