Q. カードゲーマーは星の救世主になれますか? 作:上殻 点景
木製の椅子にはこれでもかと強奪品が纏められ、不要物は通路に投げ捨てられている。強盗団のボスは連絡を取り続け、部下達は忙しなく動き回っている。
一方、縛られた銀髪少女と金髪おっぱい軍服。
俺も少佐も通路に放置されている。
見張りの子分は遠く、
行動は見られているが、
声ぐらいなら聞こえなさそうである。
もぞもぞ動き、
少佐と頭を合わせた状態になる。
「で、どうすんだ」
「どうもせん」
少佐からは消極的な声が飛ぶ。
(全員地獄送りにしようぜ。とか言うかと思ったが)
思ったより冷静である。
「どうせ奴らはこの先の駅で逃げるつもりだ」
現在は平地、
この先には山が1つあり
登って下った先には駅が1つ。
「あそこは東西の交通が交わる場所」
「逃げるにはもってこいと」
「既に駅には連絡済みだ」
少佐は舌を見せる。
したたる涎に、
輝くは金属光沢の塊。
(口の中に小型通信機を隠してたのかよ......)
えげつなと思いつつ。
「なら俺達は縛られとけばいい訳だ」
「いや縄ぐらいなら自分で切れるだろ?」
手を自由に動かす少佐。
よく見れば紐は切断されている。
「そういう訓練は受けてないんで......」
「どこの箱入り娘だ、貴様は」
呆れられるが、
普通は縛られた状態で、
縄を解くことは不可能である。
(魔法でも使って解いたってところか)
「腕をこっちに回せ」
そう言いながら、
少佐はバレない様に縄を解き、
僅か数秒で俺の手足は自由となる。
流石、少佐である。
「ただし、暴れるなよ」
「あー、分かってるよ」
「動くのは駅について奴らが動き出す瞬間だ」
(余計な行動はするなってことね)
寝たふりでもしとこうと思う中、
耳に聞こえるのは、
異音
発砲音よりは重音。
駆動音にしては重圧。
ガゴンガゴンと車内に響く。
「兄貴、迎えが着ましたァ」
「戦利品もバッチリですァ」
「野郎どもッ、飛び移るぞァ」
窓から見えるは異質な列車。
「新型──魔導機関車ッ」
「おいおい、いったいなんだそいつは」
「帝国で開発中の新型列車だ。まだ世には出てないハズだぞ」
外観は闇を纏い。
先端には馬鹿いデカいドクロ。
ライトは眼光の如く妖しく光る。
(まるで暴走族の改造車だな)
「相変わらずイカした列車だァ」
「流石兄貴としかいえねぇ列車だァ」
「コイツをくれた俺たちの依頼主に感謝だァ」
強盗達はすでに新型列車に飛び移ろうとしている。
「一体......どこからそんなものが」
「唖然としている場合じゃねーだろ、逃げられっぞ」
「分かっている、もちろん分かっているッ」
縄をぶん投げ、
走り出す俺と少佐。
「何はともあれ、奪ったモンは返して貰う」
走りながらいつもの文言を詠唱。
「宇宙決闘を申請ッ」
流れるは電子音。
[宇宙決闘法を申請します]
[お互いの決闘の対価を確認]
「賭けるのは俺の全部」
[対価の確認中・・・]
[等価ではありません]
[【承認不可】]
「なッ⁉」
(俺と少佐の命じゃ釣り合わねェだと)
「こうなりゃ、力技で」
「もとからそのつもりだ」
ならばとばかりに、
俺と少佐は強盗に近づく、が。
「兄貴、奴ら脱出をァ」
「焦るなァ、俺が殿を務めらァ」
「流石兄貴ァ」
最後に残るは強盗のボス。
2丁も銃を構えており、近づかせる気はなさそうだ。
(今は座席隠れているからいいが、通路に出たらハチの巣だな)
こういうときは自分で頑張らないのが一番。
「少佐、任せた」
「当然、任せろ」
だがしかし、
少佐が飛び出る前に、
影が射線に飛び出る。
「返せェ、父ちゃんへのプレゼントだぞォ」
「おい坊主ッ、死ぬ気か」
俺達の行動に触発されたのか、
本人の意思が限界だったのか、
どちらにせよ最悪のタイミングである。
「五月蝿いガキがァ」
乾いた音は2発。
音はブレてゆっくりと。
「......ヒッ」
「なんて顔してんだ、坊主──」
口から血がにじむ。
(ちょっと当たり所が悪かったかもしれねェな)
腹部に熱いものを感じる。
どうして俺は射線に飛び出しちまったのか。
どうして守っちまったんだけどなぁ。
視界はゆっくりと暗くなっていく。
◇◆◇
天井の灯はチカチカと点滅する。
「起きたか」
「俺は?」
「数分、気絶していた」
声の主は少佐。
背中で感じる通路はひんやりと冷たい。
「現在は?」
「山の手前だ」
窓の外は少し傾いている。
「やつらは?」
「目下追走中だが......」
少佐の歯切れは悪い。
「山に入れば逃げられるだろう。
奴らは新型、こちらには乗客もいる。
とてもじゃないが、追うことは不可能だ」
「そうか──痛ッ」
空き缶が投げつけられる。
(誰だ、怪我人にモノを投げんのは)
また坊主かと思いきや、
俺たちを囲むは非難の眼。
「おい、あんたら軍人だろォ!!」
「なんで賊取り逃がしてんだッ」
「そうだ、そうだ」
ここぞとばかりに、
乗客からは罵声が浴びせられる。
「いや、我々は────「フンッ」」
乗客が殴り飛ばされる。
唖然とする俺、
無表情なままの少佐、
乗客を割って現れる男。
「ちょっとは、頭を冷やせ」
「誰だッ、アンタはッ」
「ここの車掌兼───」
適当に剃られた顎髭、
眠たそうにした車掌は、
目を半開きにして名乗る。
「───軍人さんが守った息子の父親だ」
◇◆◇
殴られた乗客は起きあがる。
どうやら威勢もまだ衰えていない様子。
「クソッ、何しやがる」
「ちっ、イキのいい乗客だ」
「そんな腰抜け軍人どもに付きやがって」
ぺっと血を飛ばし、
口を服で拭う乗客。
「......腰抜けねぇ」
車掌は俺を見る。
「寝そべった俺を見ても何もでねぇぞ
だが車掌の言いたい事は別らしい。
「......嬢ちゃん、決闘を申請してなかったか?」
「別に大したことじゃねェ、いつもの事だ」
「......何時って、お嬢ちゃんなぁ」
車掌は髪を搔く。
ぼりぼりと音がなり、
どこか呆れた様子を漂わせる。
「まあ、対価が足りなくて成立はしなかったが」
「......対価が?」
殴られた乗客はほら見たことか、と周りに叫ぶ。
「みろ、やっぱり腰抜けじゃないかッ」
「いったい対価には何を賭けたんだ?」
「勲章か? 髪か? それとも高そうな軍服か?」
「命」
「へっ?」
「自分の命とか全部だ」
「えっ、いや、あんた.....」
戸惑う乗客。
こちらを射抜く車掌。
「......嬢ちゃん、今の言葉には嘘はねぇよなぁ」
「勿論、賭けれるモンは全部賭けたぞ」
言葉を皮切りに車両は沈黙に包まれるのであった。
「────あ、あんた怖くねぇのか?」
静寂を破ったのは男性。
先程、非難していた乗客の一人だ。
「なんがだ?」
「す、全てを失うことがだよッ!!」
俺に詰め寄ってくるが、
何を必死になっているかが分からない。
「なんだ、そんなことか」
「そんな事って、あんたッ」
「そんなことだろ。こっちは奪われてるんだぜ?」
俺はゆっくりと起き上がる。
寝すぎたせいか体が少し硬い。
だが、手はパキパキと十分に動く。
「取り返しにいくなんて当然だろ」
「「「───ッ!!」」」
「......言うじゃねぇか、嬢ちゃん」
車掌は乗客に振り向く。
揺れる手は“後は俺に任せろ”とでも言いたげだ。
「......聞いたか文句を垂れてたクソ乗客共ッ」
威圧する大声は車内に響き渡る。
だが返って来る声に迷いはない。
「当然だ、クソ車掌ッ」
「耳死んでんのか、馬鹿車掌ッ」
「あたぼうだろッ、アホ車掌がッ」
車掌はニヤリと笑う。
「......嬢ちゃんの覚悟は堪能したな」
「「「もちろんッ!!」」」
「......なら今度は俺らが魅せる番だ」
ここにて乗客一同が一丸となる。
「覚悟はいいなッ」
「「「「かかってこいッ!!」」」」
この戦いは記録には残らない。
だが確かに歴史の1ページである。
強盗追撃戦の始まり始まりである。
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
この話は2話と言ったような気がしますがまとめきれなかったので3話になります。悪いのは作者なので作者を木の下にでも埋めてください。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。
感想があれば投稿頻度が上がります。