妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第9話 母校へ

 つばきとわかばにある依頼が届いた。

 

 それはつばきの母校である北海道の道中中学校の薙刀部からだ。

 

 つばきは薙刀部の依頼を聞いてその仕事を受けたが、わかばはつばきの様子を見て花柳に話をする。

 

「花柳先生、冬野さんの仕事、私も一緒に同行してもよろしいでしょうか?」

 

「ほう、自ら仕事に向かうとは感心するぞ。しかし何ゆえに同行するのだ?」

 

「実は冬野さん、先ほど仕事の依頼の話をしてた時に左手首を押さえていて、その左手首に何か秘密があるのではないかと思い、一人にすると何かよろしくない事が起きるのではないかと考えております。もしよろしくないことが起きれば、グループにも悪影響が出てしまうと思ったのです」

 

「なるほど、慎重な考えながら大胆な行動力か。その姿勢、(それがし)は気に入ったぞ。冬野殿とは同級生であったな。では依頼主に交渉をしてみよう」

 

「ありがとうございます」

 

 わかばはつばきのオファーに同行できないかと花柳に話し、花柳はクライアントの道中中学校にわかばもついて行っていいかを確認する。

 

 電話で確認すると花柳はわかばの方を見て少し微笑み、電話を終えるとすぐにわかばに向かって報告する。

 

「交渉の結果だが、同行しても構わないとのことだ。『月光花のリーダーが来るなら喜んで』と仰ってた。そなたの働き、期待しているぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 わかばの交渉によりつばきのオファーに同行し、つばきの母校へ飛行機で行くことになった。

 

 その内容は薙刀で全国準優勝した副将として後輩たちのコーチをしてほしいというものだった。

 

 そしてついに、つばきとわかばは道中中にてコーチの仕事をする。

 

「すまないねわかば。君にまで手伝わせてしまって。私一人では少し不安だったんだ」

 

「いいのよ、クラスメイトでしょ。それよりも最近、道中中の薙刀部で暴力事件が起きたって聞いたから、あなた一人にするの心配なのよ」

 

「うむ、確か今の顧問が部員のミスで暴力を受けたと聞く。だが学校はその事実をもみ消し、無罪判定となっていたようだ。私がいた頃の薙刀部とは違うと言うのだろうか……?」

 

「ねえつばき、顧問が変わったという話は聞いてた?」

 

「そういえば後輩から話は聞いている。私がいた頃の顧問は3か月前に盲腸で入院してしまって、代わりの顧問が務めていると」

 

「そうなのね、どんな人なのかしら……? あの暴力事件は2ヵ月前だから一致してるわね……」

 

 つばきとわかばは最近顧問が変わったことを話し、つばきは自分がいた頃とは違うと感じていた。

 

 わかばは顧問が変わったタイミングと暴力事件のタイミングが一致したことを考え、顧問に何があったかを考察する。

 

 少し待っていると、オファーを出した生徒が校門に着く。

 

「遅くなってすみません! 生徒会の仕事で手間取りました!」

 

「うむ、生徒会のお仕事、お疲れだ」

 

「ありがとうございます。あ、申し遅れました。私は道中中薙刀部の部長で生徒会長の寺沢友希菜(てらさわゆきな)です」

 

常盤(ときわ)わかばです。今日は冬野さんとご一緒させていただきます」

 

「冬野先輩のお友だちと聞きました。どうぞお上がりください。武道場まで案内します」

 

 寺沢はつばきとわかばを武道場まで案内するために移動をする。

 

 わかばは緊張しながらも校舎を眺め、つばきは懐かしいなと感じながら校舎を見渡す。

 

 つばきは何故寺沢が自分たちにコーチを依頼したのか気になり、つばきは寺沢に質問をする。

 

「寺沢さん、なぜ私たちにこの仕事を依頼したのだ?」

 

「はい、実は最初に依頼してほしいと言ったのが教頭先生なんです。最近我が校に新しい校長が就任したのですが、その時から学校の雰囲気が変わってしまって。同時に薙刀部の楽しんで全国制覇のはずが、どんな手を使ってでも厳しく指導して勝利のみ、敗北に価値はないというチームスローガンになってしまったんです。前まで楽しかった学校がこんなに恐怖政治になったのはおかしいと感じた教頭先生が、校長先生に隠れて生徒会と協力し、アイドルだから実態を晒してほしいんです」

 

「なるほど。だがこれは本来は弁護士や警察に頼むものだぞ。アイドルは確かに拡散力はあるが、もし公になれば君たちの個人情報も見られてしまうリスクはある。だがそのリスクも承知の上って事だろうから、それほど学校を取り戻したいのだな」

 

「はい……」

 

「なるほどね……。春日さんの神社の大火事といい、タイミングがピッタリすぎるわね……。もしかしたら……」

 

「わかば、どうしたのだ?」

 

「いいえ、何でもないわ」

 

「さあ着きました。ここが武道場です」

 

 武道場につくと、そこには薙刀で激しく打ち合っている音が鳴り響いていた。

 

 同時に一人の男性の罵声が聞こえ、わかばは一瞬だけビックリした。

 

 覗いてみると、一人の男性が男子生徒を頭ごなしに怒鳴っていたのだ。

 

「今の動きは何だ! そんな動きで一本が取れると思ってるのか! こうしろと言ったはずだぞ!」

 

「あの……もし指示通りに動いたら、相手がケガしてしまいますし……」

 

「言い訳するな! ケガさせようが勝てばいいんだ! そんなこともわからないなら薙刀やめちまえ!」

 

「うぐっ……!」

 

 新しい顧問らしき男性は部員のケガを恐れたミスにより怒鳴られ、最後には平手打ちをされて倒れ込む。

 

「えっ……!?」

 

「ちょっと……何よこれ……!?」

 

「これが今の薙刀部です……」

 

 男子生徒は抵抗できずに泣き出し、そのままゆっくりと立ち去って行った。

 

 つばきは部の変わりようにショックを受け、わかばは顧問の野蛮さに引いてしまう。

 

 それでも稽古は続き、顧問による罵声と暴力は止まらず、休憩時間に入る。

 

 しかし休憩時間がやってきたのに、顧問は部員全員に怒鳴り散らしてきた。

 

「おい! いつ休んでいいって言った? 水を飲む暇があったら早く準備しろ! そんなこともわからないのかこの馬鹿ども!」

 

「ひどい……! 今スポーツでは水を飲んだり休憩して体をケアした方が練習の効率がいいって言われてるのに……!」

 

「あの顧問の先生が来てから薙刀部どころか学校は変わりました。校長先生に訴えても動くどころかあの顧問を擁護してばかりで何も動いてはくれません。だからアイドルである先輩方に拡散してもらって、顧問の先生を追い出したいんです……。卑怯なのはわかってます。でもそうしないとこのままだとみんな……」

 

「寺沢……っ!」

 

「ちょっと冬野さん!?」

 

 つばきは寺沢の涙に耐え切れず、顧問の先生の態度と指導方法に怒りが湧き、いても立ってもいられずに顧問の先生に詰め寄った。

 

 それに気づかずに顧問の先生は溜息を洩らし、愚痴をこぼした。

 

「ったく、最近の若者は根性がないんだよ。俺が若い頃はもっとスパルタで奴隷のようにやってたのによ……」

 

「突然失礼します。私はこの薙刀部の卒業生の冬野つばきです」

 

「あん? 何だね君は? 卒業生なんだから俺の指導にケチツつけに来たのか?」

 

「確かに厳しさは必要ではありますが、理不尽な厳しさは選手を潰し、信頼を失い、挙句には薙刀の競技人口の減少と選手レベルの低下を招きます。それにいくら中学生とはいえ、まだ感受性が豊かなので暴力を受ければ心に深い傷を負い、将来大人になってゆがんだ性格になってしまいます。このままでは――」

 

「俺に指図だと……? どこかで見た顔だと思えばあの時の女か! 相変わらずいい度胸してるな貴様! 大体お前のような準優勝選手がいることが気に入らねえんだよ! 何ならお前の左手首、もう一度ぶっ壊してやろうか?」

 

「まさかあなたは……! やはり全国大会の準決勝で左手首を狙い、壊せと指示した人でしたか。それがまさかここに来るとは……!」

 

「はっ! 俺はこの学校に負け、エースである冬野つばきを潰したが、それが学校にバレてクビになった。その復讐で身分を隠してここに就任したときは嬉しかったな。だったらお前の手首をへし折って、二度と薙刀ができないようにしてやるっ!」

 

「くっ……!」

 

 顧問の先生はかつてつばきが全国大会準決勝で当たった学校の元顧問で、勤め先の学校から武士道に反すると言われてクビになった経歴があり、その逆恨みで身分を隠して道中中の薙刀部を潰そうとしていたことがわかった。

 

 顧問はつばきの左手を掴もうとした瞬間、わかばが飛び出して顧問を受け流しながら投げ飛ばした。

 

「それっ!」

 

「うわっ!?」

 

「わかば!」

 

「危なかったわね、冬野さん」

 

「わかば、そういえば君は運動は苦手だったが、護身術だけは誰よりも優秀だったな」

 

「護身術は運動音痴でも自分を守るための本能で動くものだから、案外できるのよ」

 

 わかばは運動が苦手で、いわゆる運動音痴なのだが、護身術だけはプロ級だった。

 

 それに腹を立てた顧問は、わかばの顔を殴ろうとする。

 

「このガキ! アイドルだからって調子乗るんじゃねえっ!」

 

 顧問の男性はわかばの顔を殴ろうとするも、つばきは薙刀を手に取って顧問の手首をはたく。

 

「あの男、罪魔にしたら面白そうッスね! でも罪魔を召喚して自分だけ助かろうとするのも悪くないッス! じゃあ……暴れるッス! 罪魔召喚!」

 

 つばきの胸ぐらを掴んだ瞬間、床から今度は目が死んでいて包丁を持っている罪魔が召喚され、生徒たちは逃げ惑い顧問は自分だけ助かろうとして生徒たちを押しのけて逃げる。

 

 つばきとわかばは生徒たちを逃がすために逃げ遅れてしまう。

 

「先輩方、大丈夫ですか?」

 

「藤野さんと紅葉(あかば)さんか、助かったぞ。でもどうやって来たのだ?」

 

「説明は後です! とにかくあの罪魔を何とかしないといけません!」

 

「あの化け物は何なの……?」

 

「あれは罪魔といって、人間が七つの大罪の心が大きくなった時に転生する地獄界の化け物です」

 

「本来は地獄界にしかいないはずですが、平安館の神話の授業で習ったのなら、聞いたことはあるはずです」

 

「そういえば罪魔と人間が争ったって聞いたことあるわね……」

 

「詳しい話は後にします! 藤野先輩、参りましょう!」

 

「そうだね!」

 

「「妖魔変化(ようまへんげ)!」」

 

 すみれともみじは篠笛を懐から取り出して吹き、妖魔使いへと変身する。

 

 変身後にすぐに罪魔に立ち向かうが、包丁を武器を前にして手も足も出なかった。

 

 このままつばきとわかばは、罪魔にやられてしまうのか――?

 

 つづく!

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