妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第10話 嫉妬と怒り

 もみじとつばきは妖魔使いに変身するも、罪魔(ざいま)が得意とする薙刀に薙ぎ払われて背中を強打して気を失う。

 

 元々この顧問は薙刀で全国大会に出ていて、腕は確かなものだった。

 

 いくら実戦慣れしているもみじやすみれといえど、憤怒と嫉妬でパワーアップした罪魔に敵うはずもなかった。

 

 そんな中で罪魔は薙刀を振り回しながら暴れだし、八つ当たりのように生徒たちを襲った。

 

「はははっ! 破壊は楽しいなあ!」

 

「ひっ……!」

 

「しっかりするんだ! 藤野さん! 紅葉(あかば)さん!」

 

「ダメよ、二人とも気を失ってるわ」

 

「彼の過去に何があったのか……気になるな」

 

 つばきは顧問の過去に何があったのか、どうして道中中に固執するのかを考え込む。

 

 わかばはもみじたちを安全な場所へと避難させる。

 

「破壊……破壊! 破壊ぃぃぃぃぃっ!」

 

「こやつ……破壊という衝動に駆られている……! まさか!?」

 

「ちょっとつばき!?」

 

「手始めにお前を殺してみるか……」

 

「い、いや……!」

 

 罪魔は寺沢を襲おうとし、寺沢は震えながら助けを求める。

 

 するとつばきは罪魔に向かって走り出し、寺沢の前に大の字になって立ちはだかり守ろうとした。

 

「誰だ貴様は……!?」

 

「貴様がなぜ破壊行動に駆られるのかは知らないが、無暗に傷つけることが武士道とは思わない! 貴様が生前に誰かを傷つける生き方をしたのなら私は許さないぞ! もし関係のない人を巻き込もうというならば……私が彼女たちを守るっ!」

 

「ふざけるなっ! なら貴様だけ死ねっ!」

 

 罪魔は逆上してつばきの左手を目掛けて薙刀を振り下ろす。

 

 つばきは寺沢をかばいながら攻撃を受け止めようとする。

 

 すると薙刀は突然動きが止まり、罪魔は気が付けば遠くに離れていた。

 

 そこには頭を打って流血しているわかばがつばきをかばっていたのだ。

 

「常盤さん! 何故無茶をするのだ!?」

 

「何言ってるの!? あなたと私はクラスメイトで友達じゃないの! 彼は自分が思い通りにならないからって、あなたに嫉妬しているのよ。嫉妬は成長のエネルギーにもなるけれど、傲慢さと強欲さなどが混ざれば大きな罪になる。文学をたしなむおばあちゃんが言ってたわ。だから私は友達として……武士道精神に則って……あなたの大切なものを守りたいの!」

 

 すると黒い霧がつばきとわかばを包み込み、つばきには椿の花びらが、わかばには緑の葉っぱが現れた。

 

 つばきとわかばはついに妖魔使いとして認められ、胸から篠笛が現れる。

 

 気を失っていたすみれともみじが目を覚まし、その光景を見た瞬間に感動と同時に、変身することを促す。

 

「先輩方……私たちがさっきやってたことを真似してください……!」

 

「さっきやってたことって、あの呪文と笛を吹くことか?」

 

「今頼れるのは先輩方だけです……。どうか私たちの分まで……彼を止めてください……!」

 

「わかったわ! つばき、今は私たちに出来ることをやりましょう!」

 

「そうだな! 行くぞ!」

 

「「妖魔変化(ようまへんげ)!」」

 

 つばきともみじは篠笛を吹き、黒い霧がまた二人を包み込んだ。

 

 つばきは猛吹雪の中で黒い着物にえんじ色の馬乗り袴、白い足袋にえんじいろの鼻緒の下駄が装備された。

 

 手元には罪魔と同じ薙刀が現れ、得意の薙刀でつばきは先頭に出る。

 

 一方の若葉は若草色の着物に黒い行燈袴(あんどんばかま)、白い足袋に若草色の鼻緒の草履(ぞうり)が装備される。

 

 手元には戦国時代に使われた火縄銃が装備され、左手首に輪っかになった火縄が巻かれていた。

 

 二人は浮かんだ名乗りを上げる。

 

「氷の妖魔使い! 冬野つばき!」

 

「風の妖魔使い! 常盤わかば!」

 

 罪魔は突然の出来事に怒り、そしてつばきが現れたことで嫉妬のエネルギーが膨大した。

 

「何が何だか知らないが、貴様らを殺したい!」

 

「わかば、すまないが援護射撃を頼む。おそらくわかばが前に出ても狙いは私だからな」

 

「その方がよさそうね。わかったわ」

 

 つばきは薙刀を振り回しながら距離を取り、チャンスの場面で薙ぎ払ったり叩いたりし、いざという時には斬撃をする。

 

 一方のわかばはつばきに目線が集中しないように火縄銃でかく乱し、足元にわざと打ってバランスを崩そうとした。

 

 すると罪魔はさらに憎しみが溢れ、もはや理性というものを失ってしまう。

 

「殺す……殺してやるっ! 破壊っ! 破壊ぃぃぃぃぃっ!」

 

「しまった!」

 

「つばきっ!」

 

 つばきは一瞬のスキを突かれ、罪魔の薙刀で刺されかける。

 

 しかしわかばが飛び出し、罪魔の切っ先に当たることはなかった。

 

 同時にわかばは罪魔のパワーを利用し、薙刀を掴みながら受け流しながら投げ飛ばした。

 

「うおっ!?」

 

「なんと……!?」

 

「つばき、大丈夫!?」

 

「ああ、大丈夫だ。それよりも常盤さん、すごいカウンターだったぞ」

 

「ああ、バレちゃったわね。確かに運動は苦手だけど、護身術だけはおじいちゃんの影響で習ってたの。相手を攻めるのは苦手だけど、相手のパワーを利用して受け流したり、手元から武器を話すことはできるのよ」

 

「ふっ、意外な一面を知ったな」

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

「さてと……そろそろ終わりにするぞ!」

 

「ええ!」

 

 わかばはスポーツどころか武道すら苦手だが、祖父の影響で護身術だけは得意になり、受け流しやカウンターを覚えていた。

 

 そのパワーがつばきを守るために活かされ、運動音痴なイメージを持ってるつばきはわかばの意外な一面に驚きながらも感謝した。

 

 そしてつばきとわかばは、武器に妖魔力を込めて罪魔を浄化する。

 

「ゆくぞ! 吹雪斬(ふぶきぎ)り!」

 

「援護するわ! 木枯砲(こがらしほう)!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁーっ!」

 

 罪魔はつばきとわかばの必殺技で浄化され地獄界へ戻っていく。

 

 破壊された武道場は元通りになり、つばきとわかばは後輩たちの安全を確保し、武道場へ戻す。

 

 すると教頭が顧問を武道場へ連れているのが見える。

 

「離せ! 俺は校長先生から直々に頼まれて指導しているだけだぞ!」

 

「しかし君は少々暴力に走りすぎだ! 恐怖による教育が子どもたちのためとは思えないがね?」

 

 顧問が怒鳴りながら教頭につまみ出され、つばきの前に押し倒される。

 

 つばきはため息を吐きながら顧問を見つめ、顧問は態度を荒くする。

 

「冬野つばき! 貴様がいなければ滋賀の琵琶中が出るはずだったんだ! 貴様の教会への報告のせいで俺は学校をクビになり、職を失ったんだ! 貴様さえいなければ全国制覇は俺たちのはずだった! だから貴様の母校を潰し、二度と薙刀部を活動できないようにする復讐を果たすはずだったのにまた邪魔しやがって! こうなったらお前を殺してやる!」

 

 顧問は声を荒げながらあらかじめ持っていたサバイバルナイフを手に持ち、つばきの腹部を狙い刺そうとする。

 

 つばきはとっさの判断で避け、顧問は教頭の足払いで転びナイフを手放す。

 

 起き上がろうとするとわかばは涙ぐみながら顧問に平手打ちをして説教を始める。

 

「あなたは誰かのせいにしないと自分を守れないの……!? 何でもつばきのせいにして……それで勝てないとわかったらつばきを潰そうとしたことを謝ろうともしないで……あなたのやってることはただの逆恨みよ! 私は無関係の人だけど、友達が何度も潰されそうになるの我慢できるわけないじゃない! 今まで潰そうとしたことをつばきに謝りなさい!」

 

「ふんっ!」

 

「謝る気がないか……。残念だけど武士道に反する行為だな。やむを得ん……」

 

 顧問はつばきや今まで酷いことをしてきた部員たちに謝るどころか悪態をつく。

 

 全く反省しない顧問に愛想が尽きたつばきは、警察に連絡をして今までの証拠も見せながら報告をする。

 

 顧問は捕まり、今までの体罰を隠してきた校長は教頭の報告によって函館市教育委員会からクビを言い渡された。

 

 すると寺沢はつばきに泣きながらお礼を言う。

 

「先輩、本当にありがとうございました……。あのままだったら私たちは全員、薙刀を嫌いになってやめるところでした……。やっぱり先輩は全国に導いただけじゃなく、私たちを守ったヒーローです」

 

「そんな大したことはしてないさ。私一人だったらきっと止められなかった。わかば、これからも友達でいてくれるかな?」

 

「もちろんよ。これからもよろしくね、つばき」

 

「常盤先輩もありがとうございました。常盤先輩もカッコよかったです。私決めました……高校は平安館女学校に通います」

 

「平安館女学校はお勉強ができないと厳しいと聞いたわよ? 偏差値が足りなくても救済として武士道精神が強ければ育成科に入ることもできるけど――」

 

「ふふっ、それは問題ない。寺沢はこれでも全国模試はベスト16に入るほどの学力だ。見た目は確かに勉強は苦手な薙刀少女って感じはするが」

 

「せんぱ~い、それあんまりですよー!」

 

「それなら問題ないわね。もしかしたら、つばきの部活の後輩かもしれないわ」

 

「その事なんだが実は……高校に入学してから薙刀部に入っていないんだ。あれから左手首の痛みが治らなくて、イップス状態になってたのだ。もし私にイップスの克服する時間があれば、付き合ってくれるか?」

 

「わかったわ。あなたの薙刀を見たいと思ってたから、絶対復活させましょう」

 

 こうして道中中の暴力事件は解決し、つばきは薙刀がイップスになったが、わかばの努力もあって、たったの三日で克服できた。

 

 後に薙刀部の中途入部試験を満点で合格し、薙刀部とアイドルの二刀流を務めることになる。

 

 そして元顧問は、事情聴取でとんでもないことを言い出したとつばきに連絡が届いた。

 

「もしもし、警察の方ですね。それで彼は何と言ってましたか? ふむ、なるほど……罪魔一族と名乗る男に復讐するように促され、気が付けば洗脳されていたと……。わかりました、ありがとうございました」

 

 つばきは電話の報告で罪魔一族がもう既に人間と接触していることに危機感を感じた。

 

 神話の授業で習ったことが本当になり、つばきとわかばは深刻な顔で見つめ合う。

 

「もしかしたらあの時の罪魔はあの顧問の逆恨みによる嫉妬と憤怒に反応して破壊衝動のある罪魔が召喚されたのかもしれないわ」

 

「なるほどな、その考えはあり得る。今までも人間の罪魔力に合わせた罪魔が現れたのだからな」

 

「となると今後人間が罪魔によって被害が出るのは時間の問題ね」

 

「これ以上犠牲者を出さないためにも私たちがしっかり守らねばな」

 

「そうね、気を引き締めていきましょう」

 

 つばきとわかばは罪魔召喚の仮説を立て、人間の罪魔力に反応してそれぞれの罪魔が現れると説く。

 

 その話を聞いていた花柳(はなやぎ)に罪魔使いとなったことが知らされ、花柳はつばきとわかばを呼び出す。

 

「冬野殿に常盤殿、先の戦いはご苦労であった。話は藤野殿や紅葉殿から聞いているぞ。罪魔の神話が真実になった以上、そなたたちも戦わねばならぬ運命が来たようだ。アイドルを続けながらの妖魔使いとしての戦は一筋縄ではいかぬが、そなたたちさえよければ続けてくれないか?」

 

 花柳はつばきとわかばに究極の二択を選ばせる。

 

 つばきとわかばは緊張で唾を飲んだが、答えは変わらなかったので花柳に自分の気持ちを伝える。

 

「私はもし自分の大切な人や物を守れるのなら、罪魔との戦いに参加します。恐怖は確かにありますが、それよりも過去の自分に負けることの方がもっと怖い。だからこそ、罪魔との戦いに参加します」

 

「私も冬野さんと同じ気持ちです。前までの私なら、きっと逃げ出していたでしょうし、何より現実的じゃないと受け入れることもできなかったでしょう。この月光花のリーダーとして、逃げるわけにはいきません。最後までお付き合いさせていただきます」

 

「なるほど、そなたたちの返答に感謝する。ではこれからも月光花としてよろしく頼む」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

 つばきとわかばは正式に月光花として活動することが許される。

 

 花柳はつばきたちが部屋から出た後に満足したのか扇子を仰いで喜んだ。

 

 つばきとわかばは、これから京都で起こる事件を自分たちで解決しようと決心した。

 

 つづく!

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