妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第11話 日舞の改革

 紺野るり、京都の日本舞踊(にほんぶよう)の家元である紺野流舞踊が実家の女の子だ。

 

 るりは家元である実家の仕事のオファーがあり、ずっと保守派である日舞(にちぶ)の世界に改革を起こすような舞を作ってほしいという依頼だ。

 

 元々紺野流は日舞の世界でも異質の改革派で、何度も日舞の常識を破ってきたのだ。

 

 そんな中でるりは今もオファーに応えるために稽古をする。

 

「お母さま、本日はよろしくお願いいたします」

 

「ええ、よろしくお願いします。るり、あなたがアイドルのオーディションに合格したときはお母さんも嬉しく思いました。これからも日舞の世界に改革を起こしてくださいませ」

 

「かしこまりましたお母さま。わたくし紺野るり、これからも精進致します」

 

「アイドルのダンスを考察するのも簡単ではありませんが、るりならできると信じています。では花柳(はなやぎ)先生、るりをしばらくお借り致します」

 

「かしこまりました。紺野殿の母上殿、紺殿をよろしくお願いいたします」

 

 花柳はるりの日舞としての才能と、創作ダンスの発案と考案に期待していて、月光花(げっこうか)のこれからの未来は明るいと予想している。

 

 だからこそ振り付けに詳しい紺野流に営業し、るりをレンタルすることで振り付けを強化しようというものだった。

 

 るりはウォーミングアップを済ませて着物に着替え、扇子を持って早速踊る。

 

 琴の音が響き渡り、るりはその音色に合わせて美しく踊りだした。

 

 花柳はるりの踊りに魅了され、扇子を仰ぎながら満足そうに見ていた。

 

 しかしるりはまだ納得いってないのか、少しだけ険しい顔をしていた。

 

「どうしたのだ? そなたの舞踊は完璧のはずだが?」

 

「いえ、確かに基本は完璧でございました。ですが……今回の曲のテーマは川の流れでございます。川を表現するには、わたくしの動きにぎこちなさを感じるのでございます」

 

「なるほど、現状に満足せず、ただ己の成長を見つめるのみ、ということか。そうとあらば(それがし)も付き合おう。某はそなたのプロデューサーなのだから」

 

「ありがとうございます。では花柳先生もわたくしの舞をご覧あれ」

 

 るりは何度も舞を踊り、花柳もるりの真剣な表情を見て厳しくチェックをする。

 

 しかし花柳は何度見ても完璧に見え、るりはまだ満足しそうになかった。

 

 何が原因なのかわからずに悩んでいると、花柳はるりの元に歩み寄りある提案をする。

 

「紺野殿はおそらくスランプになっている。我が改革を起こさねばと心が焦っているのだ。となれば、某の知り合いにいい者がいる、少しお付き合い願おう」

 

「かしこまりました。どのようなお方なのかは存じませんが、お付き合い致しますでございます」

 

 花柳の提案である人に会いに行くことになる。

 

 るりにとっては一度日舞から離れ、リフレッシュとして外に出かけることになった。

 

 外に出るとそこにははなたち6人も待っていた。

 

「皆さま、来てくださったのでございますね」

 

「もちろんです。紺野先輩の頑張りを見て私たちも刺激を受けたいので」

 

「それにるり先輩水臭いよー。私たち同じグループの仲間じゃん」

 

「ひまわりちゃん、先輩にタメ口は……」

 

「いえ、構わないのでございます。むしろわたくしが最年長なばかりに、皆さまとは距離を感じてましたでございます。ここはいっそのこと、先輩とか敬語をなるべく使わないと言うのはいかがでございますか?」

 

「お、いいねー!」

 

「確かにアイドルで言えば私たちは同期ですからね」

 

「うむ、確かにそうだ」

 

「そうは言っても……」

 

「日向さんや藤野さん、つばきはともかく、紅葉(あかば)さんは忍術の子で最年少だし、春日さんは神社の子でシャイだから礼儀を気にしますよ?」

 

「えー? そんなわかばだって結構礼儀気にしてんじゃん」

 

「それは……」

 

「うふふっ、皆さまと一緒にいると、とても楽しいでございます。では皆さまも花柳先生についてきてくるでございます」

 

 るりは自分に対して仲間たちとの距離を感じ、先輩予備や敬語で話す機会を減らそうとして距離を縮めようとした。

 

 礼儀に厳しく育てられたもみじやはな、少しだけ堅苦しい性格のわかばには難しいが、堂々としているすみれとつばき、明るいひまわりにとっては簡単なことだった。

 

 こうして距離を縮められて嬉しくなったるりは、花柳が会ってほしいという人の元へ全員で行くことになる。

 

 ついて行ってしばらくすると、そこは少し高級そうな寿司屋だった。

 

「ここって確か京都で一番おいしいといわれてるお寿司屋でございますね」

 

「その通りだ。ここは人間ではないが、とても優しくて活発な大将が握る寿司が食べれるところだ。値段は少々するが、それでも常連が多く通っている。その大将に話をしてもらう」

 

「ここのお寿司屋って確か、はなが何度もお世話になってるところだよね?」

 

「うん、ここは実は河童(かっぱ)のお兄さんが経営しているすごいお寿司屋さんなんだ。もしかしたら紺野先輩に何かアドバイスをくれるかもしれません」

 

「その通りだ春日殿。では参るぞ」

 

 はなとひまわりにとっては馴染みの寿司屋で、花柳も何度も通うほどの寿司の名店だ。

 

 そんな寿司屋に入ることにるりたちは緊張し、戸を開けて中に入る。

 

 するととても若い男性がカウンターに立っていて、るりたちを見つけると嬉しそうに声をかける。

 

「お、いらっしゃい。今日はお客さんが多いね」

 

「ふむ、大将。今日はこちらの紺野るり殿がお世話になる。皆の衆、こちらは河童の河城将士(かわしろまさし)殿だ。実は日舞でスランプに陥ってしまってな。何と川の流れをイメージしたいと仰るのだ。そこで河童である大将にアドバイスをと思って来たのだ」

 

「なるほど、アイドルグループの振り付けの参考に日舞をってわけですな。まあとりあえず、寿司でも食べてくださいや。そしたらいくらでもアドバイスを送るよ」

 

「恩に着る」

 

 るりたちは河城の寿司を食べ、あまりのおいしさに全員驚いた。

 

 はなとひまわりは何度も食べてきたのでおいしそうに食べ、河城は嬉しそうにはなたちを眺めていた。

 

 そしてついに本題に入る。

 

「河城さま、あなたは河童さんと聞きましたでございます。川の流れを表現するには、わたくしにはどうしても体が固まり、流れを表現するには難しいのでございます。河童さんともなれば川の流れにお詳しいと思うのでございます。どのようにすれば流れるような動きになれるのでございますか?」

 

「うん、なるほどね。君が紺野流のお嬢さんってわけですな。となれば無理に逆らってでも力を抜こうとするのは逆にダメだね。むしろ紺野さんの自然のありのままの動きにこそ、流れるような動きがあるんじゃないかな。本当に流れるような動きは無駄な力と考えは捨て、すべてを自然に委ね心を無心にすることにある。俺たち河童は無駄に力を入れてないから簡単に泳げるんだ。だが人間は陸の生き物だ、となれば無理して頑張るんじゃなく、すべてを自然に委ね、力を入れる時はとことん入れれば、より川の流れの緩急が表現できると思う。川はいつだって優しくも激しいものだからね」

 

「っ……! 河城さん、わたくしはただ力を抜けばいいと思っていたのでございます! ですがそれは間違ってたのでございます……。 力を抜く時と入れる時を見極め、自然らしさを表現すればよいのでございますね!」

 

「紺野流は固定概念にとらわれない、それが君の流派だからね。君はまだまだ固定概念にとらわれ過ぎてたんだ。でも掴んでくれて嬉しいよ。さあどんどん寿司を食べてくれ!」

 

「感謝いたしますでございます」

 

 るりはヒントを掴んだのか、嬉しそうに河城に握手を交わす。

 

 河城は自分の言葉でヒントになったのが嬉しくなり、るりにたくさん寿司を振る舞った。

 

 花柳は自分が全額奢るつもりでいたが、ひまわり以外はみんな遠慮しながら食べていて、そこまでのお値段にならなさそうだった。

 

 一方こちらは京都駅周辺、ある若い女性が誰かと待ち合わせしているようだった。

 

「ふふふ、今日もおじさんを釣って儲けなきゃ。私にはブランド品と好きな彼のためにお金が必要なのだから……」

 

「お待たせ、仕事が長引いたよ」

 

「あん、大丈夫。私も今来たところだよ♡」

 

「それじゃあ早速、ホテルに行こうか」

 

「はーい!」

 

 京都タワーの頂上で紫紺の着物を着ている三つ目の女性が立っていて、その女性と中年男性のやりとりを全て見ていた。

 

「人間の色欲はいつだって悪の道に走るものね。そうやって自分が破滅することを知らずに。ならばその性欲を罪魔(ざいま)が受け継ぐわ! 罪魔よ、あなたの色欲を現世にぶつけなさい!」

 

「うわあぁぁぁぁぁっ!」

 

 罪魔の女性は地獄界から二人の罪魔を呼び出し、若い女性と中年男性を襲い街を荒らしていった。

 

 罪魔は男性を除けてやたら若い女性を狙っている。

 

 もう一方は女型の罪魔で男性を狙いさらおうとしている。

 

 寿司屋にて、はなたちは罪魔の反応を感じた。

 

 場所は京都駅の方だと反応を見たはなたちは、急いで立ち上がって走り出す。

 

「皆さま! どうなさったのでございますか!?」

 

「紺野先輩は先に戻っててください!」

 

「ついに現れやがったのか……紺野さん、今は彼女たちに任せて家に戻って避難しなさい……って紺野さん!?」

 

「申し訳ございません! せっかくの仲間を失いたくないのでございます!」

 

「しかし紺野さん!」

 

「否、行かせてあげなさい」

 

「ですが先生、この気配は――」

 

「問題ありません。むしろ彼女ならきっと――」

 

 るりははなたちが危険な場所に行ってることを察知し、放っておけないという気持ちで現場に向かう。

 

 しかしるりは着物に草履なので当然移動が遅く、走るのに向いてないのか小走りで向かった。

 

 るりが京都駅に到着すると、そこには倒れているはなたちの姿があった。

 

「皆さま! 何が起こったのでございますか!?」

 

「うう……。罪魔がこんなに強いなんて……」

 

「罪魔って、あの神話のことでございますか……?」

 

 るりははなが指を指した方を向けると、そこにはまるで性に飢えたような人型の罪魔がいた。

 

 もう一人は遊女風の女性でまるでキツネが化けているように美しい罪魔だった。

 

 るりはこの光景に絶望し、このままやられてしまうのか。

 

 つづく!

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