妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第13話 東京合宿

 5月に入り、月光花(げっこうか)も本格的にアイドルとして実力をつけるべく、東京の芸能界のレベルの高さを実感させるために東京で合宿を行うことになった。

 

 そこでプロデューサー見習いとして最近苗字をもらったひめぎくも同行することになっていて、一緒に住んでいるはなとしても心強かった。

 

 新幹線で東京駅まで向かい、着いたところで向かう先は赤坂テレビの収録スタジオだ。

 

「あの、花柳先生。このスタジオで何かするのでしょうか?」

 

「ふむ、実はもう既にデビュー曲が完成したのだ。そこで皆の衆にレコーディングというものをやってもらう」

 

「もうできたんですか!? 早くないですか!?」

 

「実は我が妻の千代が作曲を担当している。お千代はかつて和楽器とバンドの組み合わせである邦楽バンドのボーカルをしたのだ。そこで妻のお千代の協力で曲が完成し、皆の衆のデビュー曲のレコーディングが可能となったのだ。悪い話ではあるまい」

 

「確かにここまで早いといい宣伝になりますね」

 

「さすが花柳先生、その行動力の早さから月ノ姫(つきのひめ)をたった1か月でメジャーデビューさせたプロデューサーだあ」

 

「ほらひまわり、関心ばかりしてないで私たちが歌うんだから準備しなさい」

 

「う、うん!」

 

 ひまわりはアイドルに詳しく、花柳が早期のメジャーデビューを果たさせたことをよく知っている。

 

 そんなことで興奮していると、わかばはレコーディングの準備をするから早くと催促した。

 

 準備ができた月光花メンバーは、それぞれ慣れないマイクでの収録に苦戦をしていた。

 

「ふむ、やはりまだマイクに慣れておらぬか。だがもうすぐ彼女たちにとって最適な先生が来るはずだ。彼女が来るまでにマイク慣れをしておくれよ」

 

 花柳の思惑は最初は慣れない収録で戸惑いがあることを予想していて、マイク慣れといういい先生がもうすぐ来ると信じてレコーディングを続ける。

 

 元々アイドルに興味あったひまわり、父の時代劇や兄の歌舞伎で芸能に慣れているすみれはすぐに慣れたが、声量に自信がないるりとはなはマイクの音声に苦労をしていた。

 

 しばらく経つと、教育係の美月(みづき)がスタジオに訪れた。

 

「おはようございます、花柳先生」

 

「うむ、おはようございます。テレビの撮影は順調であったか?」

 

「はい、ソロで歌番組のレギュラーを勝ち取ることができました。それよりも後輩たち、少し苦労してますね」

 

「うむ、そろそろ美月殿にご指導を願おうか。皆の衆、少し休憩に入るぞ」

 

「は、はい!」

 

 はなたちは歌い続けているので喉が疲れ、水を飲んで休憩に入る。

 

 はなは緊張しやすいのか思うように声が出なかった。

 

 るりも日本舞踊ではあまり声を出さないので発生に苦しみ、二人は焦りを感じた。

 

 はなとるりが溜息をつくと、美月が目の前に姿を出す。

 

「二人とも、頑張ってますね」

 

「美月先輩!」

 

「もしかしてマイクに音声が入らなくて悩んでるのですか?」

 

「はい、はなさんは緊張で声が出ず、わたくしは声の出し方が存じ上げないのでございます」

 

「なるほど、春日さんは元々緊張しやすいから緊張するなって方が無理だと思いますわ。実は私もレコーディングが怖いのですのよ」

 

「そうなんですか……?」

 

「はい、レコーディングはライブと違って正確な音程と発声を求められますわ。失敗すれば撮り直しが確かに出来ますが、何度も撮り直すと疲れたり、スタッフさんに申し訳なかったりしてしまうので、今もレコーディングは怖いんですわ。だから最初だから緊張して当たり前なのですわよ?」

 

「そう聞いたら少しだけ楽になりました。ありがとうございます!」

 

「紺野さんは喉だけで声を出そうと余計な力が入ってると思います。声は確かに喉から出るものですが、喉だけで声を出すとすぐに枯れてしまいますの。だから全身で、とくにお腹や顔で歌ってみてはどうでしょう? あくびをする感覚で声を出すと自然な声のパワーが発揮されますわよ」

 

「なるほど、美月先輩のアドバイスは参考になるのでございます。感謝でございます」

 

「いえいえ、ではレコーディングに私も付き合います。次の現場まで時間はたくさんありますので、見学してもよろしいでしょうか?」

 

「もちろんです!」

 

 美月の見学ではなとるりはやる気を出し、休憩後の収録は一発でクリアをしてみせた。

 

 あまりの急成長にひまわりも驚き、花柳は収録を予定より早く終わったことに満足したのか扇子を仰ぐ。

 

 時間が余ったので花柳の奢りで和風スイーツを食べるために喫茶店に入った。

 

 あれから美月は次の収録場所である都内の学園に行き、しばらくの別れとなった。

 

 喫茶店ではなたちは今後の月光花について話し合った。

 

「えー、では今後の月光花の方針について話し合いたいと思います。みんな何か提案があればリーダーの私に言ってください」

 

「うーん……はな、何かある?」

 

「私に言われても……」

 

 突然方針を話し合うと言われ、急に言われても方針が浮かばないはなとひまわりだった。

 

 もみじとすみれ、るりも突然のことで驚き、つばきはずっと考え込んだ。

 

 わかばは最初に自分が言いたいが、言い出しっぺなので少しは自重し、みんなの意見を聞いてからにしようと判断する。

 

 すると意見を出したのはひめぎくだった。

 

「そういえば花柳先生の奥さんは邦楽バンドという和楽器とバンドの融合したアーティストだったよね」

 

「ええ、それがどうかしたのかしら? 焔間さん」

 

「その邦楽バンドの要素をメインにしつつ、はなの実家が神社という事で、たまに雅楽(ががく)の楽器を使ったらどうかな?」

 

「雅楽の楽器ね。平安時代をテーマにした曲ならアリね」

 

「それとわかばさんは文学が好きって言ってましたね」

 

「え、ええ。日本文学と和歌は好きよ。古典が一番得意なの」

 

「古典の授業で習った物語を現代語でアレンジした曲を作るのもいいかなって思ったんだ。和歌も現代風にアレンジすれば古典と音楽の両方が勉強できるチャンスだと思う」

 

「なるほど、少々偏差値は高くなるけど、あまり馴染みのない人たちは古典は苦手意識が強いと聞く。もしそれを親しみやすい音楽として現代風にすれば、きっと簡単に覚えてくれるかもしれないね」

 

「私もそれで賛成!」

 

「異論はない」

 

「素晴らしい案でございます」

 

「たまに小さなお子さま向けに忍者や侍などをヒーロー風にしてもよろしいかと思います」

 

「和の要素をたくさん入れつつ、現代風に馴染みやくするってことね、それも採用するわ」

 

 元々偏差値が高い進学校に通うはなたちなので、月光花の方針や方向性がスラスラと出てくる。

 

 それも偏差値が高い会話をしつつも、古典や歴史の勉強に苦手意識の強い人へ向けた簡単な覚え方を取り入れるという大胆な発想が出た時は、さすがの花柳も驚いていた。

 

 実際わかばは全国模試ベスト8,るりは生徒会副会長、つばきとすみれ、はなも学級委員、もみじも学年主席と学業も生活も優秀な成績を収めている。

 

 ひまわりは成績だけで見たら劣等生扱いだが、それでも学力は一般的には非常に高く、他の進学校なら簡単に主席は取れるほどなのだ。

 

 ひめぎくも難しいと言われてる編入試験を余裕で合格したので、月光花は全体的に勉強ができるグループになりそうだ。

 

 喫茶店で長く話し合い、まとまった方針と方向性をわかばはまとめる。

 

「では月光花の方針と方向性は――和楽器と現代楽器の融合にしつつ、時々大正ロマンや雅楽、歌舞伎などを取り入れる。古典や歴史をテーマにわかりやすい物語性の曲中心にしつつ、和風でラブソングや応援歌などもする。たまにキッズ向けに和風に幼い頃から親しみを持たせる。振り付けや衣装はアイドルらしさと伝統的な和服の融合。私たちは平安館女学校に通うインテリ系なのでクイズ番組にも積極的に出演。その中で堅苦しいイメージを払拭するために庶民的なことも頑張る。こんなものかしら」

 

「はい、これでいいと思います」

 

「では先生、これでよろしいでしょうか?」

 

「うむ、常盤殿のまとめのおかげで方向性に迷わずに済んだ。皆の衆の話し合いは素晴らしいものだった。もはや(それがし)の創造の遥か上を行くものだった。見事だ」

 

 こうして月光花の親しみやすいインテリ系和物アイドルとしての方向性と方針が決まり、合宿の目的の一つが達成した。

 

 合宿所に着き、それぞれ露天風呂に入って疲れを癒す。

 

 夕食の刺身定食を食べて就寝の準備をするが、お調子者のひまわりは寝かせる気がないのか、女の子同士の合宿でお馴染みのあの話題を出す。

 

「ねえねえ、みんなには好きな人とか初恋のエピソードとかあるの?」

 

「え……?」

 

「突然どうしたのだ? 恋バナという女子の合宿でよくある話題を出すなど」

 

「みんなの恋愛エピソードが聞きたいなーって思ってさ」

 

「またあなたはそうやって……」

 

「ふふっ、よろしいでございますよ。わたくしは残念でございますが、恋愛の経験が皆無でございます」

 

「ちぇっ、るりはノリが悪いなあ。まあ私も恋をしたことないけど」

 

「それでは話題を振った意味がないではないのか?」

 

「あ、でもはなは家の都合とはいえ婚約者がいまーす!」

 

「ふえっ!?」

 

「むむ、そうなのか?」

 

「詳しくお話を聞かせてください」

 

「気になるのでございます」

 

「えっと、それは……彼は出雲大社の家系で、お父さんの大学の同級生の子で、今も男子部の平安館学院の野球部にいます。真面目で硬派な典型的な日本男児タイプです……」

 

「なるほど、はなは立派な婚約者に恵まれたんだね」

 

「うう……暴露しないでよひまわりちゃん……」

 

「えへへ、ごっめ~ん」

 

「もしかしてひまわり先輩、その話をするためにわざとやったんじゃあ……?」

 

「えー? だって隠すほどでもなくない? って痛いっ!? チョップはやめてよわかばー!」

 

「あなたは少し空気を読みなさーい!」

 

「うわーんすみれー! わかばがいじめるー!」

 

「ははは……でも春日さんには後で謝ろうね?」

 

「はい……」

 

 ひまわりの突然の暴露によってはなは気まずい空気になり、恥ずかしさのあまりに布団に閉じこもった。

 

 わかばが説教しようとひまわりに近づき、すみれのところに逃げたがすみれにもちゃんと謝るように促され、寝る前にひまわりははなに謝罪をした。

 

 はなはひまわりのトラブルメーカーブリにはなれているが、自分に飛び火することがあっても、大喧嘩をするほどにはさせないなど、トラブルメーカーにしてはまだ親切な方だった。

 

 そして翌日を迎え、全員で早起きをして食事を済ませると、花柳からある発表がされた。

 

 つづく!

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