妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第17話 特撮ヒーロー

 名門忍術道場を開いているもみじ、時代劇俳優の父と歌舞伎俳優の兄を持つすみれ、そして薙刀の全国準優勝経験者のつばきは、三人で特撮ヒーローものの撮影をしていた。

 

 この三人の人選はアクションが得意そうかつ、アイドルがヒーローをやるという路線で、たまたま京都で撮影をするために月光花のもみじたちが監督に注目されたのがきっかけだ。

 

 もみじはアクロバットな動き、すみれは殺陣を把握している動き、そしてつばきはパワフルかつ美しい動きで撮影を順調に進めていた。

 

 この『戦国ガールズ』という特撮映画は、時代劇風のアクションと現代の世界観の両立を目指し、京都市の街で撮影をしている。

 

「いいねえ! さすが妖怪少女の主演だねえ! 三人とも、なんか慣れてるんじゃない?」

 

「そうですね、こちらの紅葉さんの道場で何度か稽古してもらいましたから」

 

「なるほどねぇ、紅葉流忍術ともなれば当然かあ。じゃあこの調子で頼むよ!」

 

「「「はい!」」」

 

 こちらの監督は熱くパッションを求める人で、特撮は派手でカッコよくてなんぼだというのがモットーだ。

 

 とくにもみじの道場ではアクロバットな動きも教えていて、すみれやつばきもよく道場で稽古をしているくらいだ。

 

 休憩時間になり、三人は秘密の会話をしていた。

 

「お疲れ様、私の奢りで飲み物を買ってきたぞ」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

「つばきさんの気遣いは本当に嬉しいよ」

 

「ふふっ、すみれはまだ先輩にさん付けはするが、大分友達感覚になってきたな」

 

「先輩なのに呼び捨てはさすがに私も難しいよ。でも喋り方くらいはそうでもしないと、距離がいつまでも縮まらないからね」

 

「だがもみじはやはり育ちがいいのか、まだ敬語のようだな」

 

「私の場合はクセのようなものですね」

 

「確かに小さな子どもや後輩相手でも礼儀正しくいるね」

 

「紅葉家は相当礼儀正しい家系なのだろうな」

 

「忍術は基本的に忍ぶものですから、どうしても礼儀正しくしないといけないのですよ」

 

「確かにその通りだね。それに特撮の動きについてだけど、やはり妖魔使いとして活動もしていることは黙っておこう。他の人たちを巻き込むわけにはいかないからね」

 

「うむ、もし巻き込まれでもしたら被害が広がってしまうな。それだけは避けなければならない」

 

「関係のない方々を巻き込んでしまえば、私たちも戦いに集中できなくなりますからね。なので私の道場で稽古をしていることにしています」

 

「だが実際に、紅葉流忍術道場で稽古はしているな」

 

「確かに私たちだけ特別な稽古だね」

 

「あれは紅葉家の直系しか許されない最も厳しい秘密の稽古です。なので一般の門下生はおろか、相当熟練した上級者でも習うことが禁じられている稽古なのです」

 

「ということは私たちは認められたという事かい?」

 

「はい、先輩方は秘密の稽古をしても耐えられそうですから。実際にはな先輩も和弓コースでどの師範よりも優秀な成績を収めています」

 

「さすが人妖神社の直系だね」

 

「ああ、彼女はなにせあの神社の年に一度の神事である、あの流鏑馬の達人なのだからな」

 

「あれだけのバランスでどんな角度でも矢を放てるのはすごいね」

 

「はい、そんなすごい先輩方と共にアイドルをやれて、私はとても嬉しいです」

 

 もみじは実家の道場で月光花の戦いのために特別に秘密の稽古をつけていて、相当厳しい稽古を積んでいたようだ。

 

 それも戦いのために一般人を巻き込まないように、罪魔一族と戦っていることを伏せ、紅葉流忍術道場で厳しい稽古をしているということにしている。

 

 これはもみじがメンバーにいるからできることで、花柳もそうするように命じていたのだ。

 

 その結果、罪魔との戦いに誰も巻き込まれていないのだ。

 

 ただ最近は罪魔一族を崇拝する一般人による破壊行為も目立っていて、月光花にとっては秘密にしながら戦うのも苦労している。

 

 休憩時間が終わり、つばきたちは撮影再開の準備を進めた。

 

 撮影が再開され、台本にはないアドリブもしながら撮影を続ける。

 

 すると監督は無茶な要求をしてきた。

 

「すまない、この崖に落ちるシーンなんだけど、危険なのはわかってる上で変更を申し込みたい。落ちるシーンはCGでなんとかする予定だったけど、紅葉さんがあまりにも素晴らしすぎるので、実際に崖に落ちるシーンを再現してもらいたいんだ。落下地点に超丈夫なエアーマットを用意するし、もしものためにスタッフが体を張ってキャッチする。どうかな?」

 

「随分無茶な要求だね。もみじ、大丈夫かい?」

 

「無理なら無理だとはっきりと言うのだぞ。出来ない約束をするのはうそをつくのと同じなのだからな」

 

「確かにいつもの私なら、この程度のアクションは簡単です」

 

「ほう……?」

 

「ですが今回ばかりはお断りさせていただきます」

 

「それは何故だ? もしや、最近あの化け物と戦っている謎の少女と関係しているのかね?」

 

「それは……」

 

 監督が急に核心を突いてきたので、つばきとすみれは巻き込みたくない一心で言葉に詰まる。

 

 もしここで言ってしまえば一部の人が野次馬で駆けつけ、攻撃に巻き込まれるかもしれないからだ。

 

 しかしもみじは大胆な答えを出す。

 

「はい、その謎の少女が私たちです。私たち三人だけでなく、月光花のメンバー全員がその謎の少女です」

 

「ほう……?」

 

「もしこのアクションで全くの無傷なら、考察する人はおそらく私たちの正体に気づくでしょう。そうなれば弥次馬も集まり、いずれは関係のない皆様を巻き込んでしまいます。もしそうなれば私たちだけでなく、芸能界にも大きな悪影響が及ぶでしょう。なので今回のアクションは控えさせていただきます」

 

 もみじの衝撃的な発言に監督は言葉を失い、少しの間だけ黙り込んだ。

 

 つばきとすみれは言ってしまったのか……と心配そうにもみじを見守っていた。

 

 すると監督は笑顔で頷いて、もみじの肩をポンっと叩いて励ました。

 

「そういうことなら私に任せたまえ。私が何としても一般人を巻き込まないようにしてみよう。ただし、実際に飛び込むのはやってもらうよ。心配するな、私だって君たちには感謝しているんだ。ここのところ京都は物騒だからね。そんな京都を君たちは守っている。そこでだ、エンディングに君たち三人が京都で起こっていること、そして謎の少女と化け物を見かけたら命のために逃げて避難することをセルフチューブでこちらの公式チャンネルで投稿しよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「となれば、宣伝かつ君たちの会見のために少し残ってもらうけど、残りの二人は大丈夫かい?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「花柳先生に連絡します」

 

「すまないね、急な予定変更で。それじゃあ飛び降りシーンを撮るぞ!」

 

 もみじは勇気を出して監督に全てを話し、実際に崖から飛び込むシーンをする代わりに一般人を巻き込まないためにも協力をすると約束をした。

 

 撮影では本当に崖から飛び降り、エアーマットがあるとはいえ、完璧な着地でケガをすることなくもみじは成功した。

 

 あまりのアクションの美しさに現場はスターティングオベーションで、つばきもすみれは驚きのあまりに言葉を失った。

 

 全ての撮影を終え、会見のシーンをビデオカメラで撮影をして全て終わった。

 

「――というわけで、もし罪魔という神話上の化け物が実際に京都に現れて襲ってきたら、絶対に近づかずに逃げてください」

 

「避難場所は京都市が全面バックアップをしますので、どうか皆さんは避難してくださいませ」

 

「謎の少女たちは罪魔との戦いに皆さまを巻き込みたくないというのが願いです。よろしくお願いします」

 

「はいオーケー! おっと、花柳さんから連絡がこっちに来たよ。どれ……? なるほど、わかった」

 

 妖魔使いとしての会見の撮影を終えると、今度は監督のもとに花柳から連絡が来る。

 

 そこには監督も驚く内容だった。

 

「さっき君たちのプロデューサーである花柳さんから連絡があってね、月光花が妖魔使いであることを逆に知らせた方がいいとのことだ。どうやら巻き込まないためにも、あえて公表して影響力の強い君たちが発信することで、重大なことだと思わせたいみたいだ」

 

「そうでしたか、わかりました。ありがとうございます」

 

 月光花のメンバー全員が罪魔と戦ってることを公表してもいいという花柳からの許可が下り、それもはなやひまわり、わかばとるりにも連絡済みだった。

 

 この会見動画は瞬く間に広がり、京都中の警察署や消防署もバックアップすることを約束した。

 

 同時に罪魔警報が京都府全体に設置され、月光花の戦いの邪魔をしないように学校や全ての企業に連絡が届く。

 

 そのおかげか月光花は京都で最も注目を浴びているアイドルグループとなり、知名度も爆上がりしたのだ。

 

 日常の中にも思わぬこともあるが、つばきたちは慌てることなく冷静に過ごし、監督もこの三人の将来が楽しみで、この作品がシリーズ化するのも時間の問題だろうと感じ、つばきたちを再オファーしたのだった。

 

 つづく!

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