はなたちはセルフチューブで自分たちのチャンネルが何故ここまで話題になったのか、テレビを見てみることにする。
そこには月光花ちゃんねるの動画があり、プロデューサー見習いのひめぎくがカメラを持ってそれぞれのメンバーを撮影していた。
最初に映ったのははなとひまわりだった。
『皆さま、ごきげんよう、月光花ちゃんねるです。本日は月光花のメンバーの趣味について撮影しようと思ってます』
「これって私たちだよね?」
「う、うん……」
『最初にインタビューをするのは……春日はなさんと日向ひまわりさんです。お二人は幼稚園からの幼なじみで、ずっと平安館に通うエスカレーター組のアイドルです。ではお二人の趣味について撮影すべく、ついて行きましょう』
ひめぎくがビデオカメラを持ちながらはなとひまわりに近づき、それに気づいたはなとひまわりはカメラに視線を向けた。
はなは恥ずかしそうに顔を隠し、ひまわりは興味津々でカメラをのぞき込んでいた。
『ねえひめぎく、これってセルフチューブ?』
『うん、そうだよ。お二人の趣味というか、普段の姿を撮影しようと思ってね』
『なるほどね。ほらはな、恥ずかしがってないでありのままの姿を見せようよ』
『そうは言っても恥ずかしい……』
「はわわわ……!」
「あの時のはなはまだ人前に慣れてなかったもんねー」
「それは言わないでー!」
はなは恥ずかしそうにしながらも、少し慣れてきたのか徐々に話すようになり、ひまわりの日向ぼっこしながらはなの趣味である散歩を同時進行でする。
散歩をすれば日光を浴びることになるので日向ぼっこも可能であり、二人で一緒に行動することで仲の良さをアピールした。
同時にはなは読書が好きで、ひまわりはアイドル鑑賞が好きということがわかり、月光花の素顔を知ることでファンが急増したのだ。
次は数日後に収録したもみじとすみれの番で、ひめぎくはインタビューを続ける。
『こちらは紅葉流忍術道場です。紅葉もみじさんは趣味が茶道と和菓子作りということで、お茶をいただいています。もみじ、いただきます』
『どうぞお召し上がりください』
『これは……! もみじが淹れたお茶もだけど、もみじの好物の芋ようかんも名産品と変わらないおいしさだね。まるで芋の甘さとお茶の渋めの味が調和しているみたいだよ』
『お菓子作りといっても和菓子しか作れませんが、お気に召したようで嬉しいです。皆さまも私の大好物の芋ようかんをお召し上がってください』
「ふふっ、私は忍術だけではないことをアピールできました」
「次は私の番だね。意外な一面が見れるかもしれないね」
『続いてはここ、京都のサッカースタジアムです。ここに藤野すみれがいると聞きました。あ、早速見つけました!』
『やあみんな、見てくれてありがとう』
『この京紫のユニフォームは京都パープルサンバですか?』
『そうだね。私は幼い頃からこのチームを応援しているんだ。ずっと二部リーグでくすぶっているけど、必ず一部リーグに上がることを信じているよ』
『藤野くん、これは何だ……?』
『立壁さん、これはセルフチューブの撮影ですよ』
『どうも、立壁守龍です……。藤野すみれを皆さんも推してください……』
「立壁さんって?」
「同じチームを応援する優しいおじさんだよ。正体は実は妖怪で、ぬりかべなんだ」
「サッカーって妖怪も観に行くのだな」
もみじは得意な和菓子作りと茶道でもてなし、和の文化を嗜んでいることがわかった。
同時にすみれは時代劇鑑賞だけでなく、サッカーチームの応援が趣味と意外な一面を見せ、同時に妖怪のおじさんと交流があることも知られて立壁は少しだけ月光花の古参ファンとして知られた。
つばき、わかば、るりの上級生組は昨日投稿されたばかりで再生数は少ないけど、それでもグングン伸びていて話題を呼んでいた。
『つばきさんはランニングで体力を維持して薙刀に活かすだけでなく、何と合宿でも腕を披露した料理も趣味なんだ』
『最近はわかばのために料理を教えてるんだ。わかばは元々調味料の調整が苦手で少々マニュアル派のところがあるから、教えたとおりであればもう作れるようになったよ。おかげで私の得意料理の肉じゃがはもう一級品だ』
『もう、恥ずかしいじゃないの』
『そんなわかばの趣味はこれだね』
『亡くなったおじいちゃんが昔よくやってた盆栽よ。盆栽は若い子たちにはなかなか理解できない趣味だけど、育てることがすごく大変で完成したときのやりがいは感じるわ。それと日本文学を読むことで今まで見えなかった世界を創造するのも好きよ』
『確かにわかばは文学少女って雰囲気だな。私もよく作品をわかりやすく説明してもらってるよ。勉強もよくわかばに教わってるな』
『つばきだってすごく優秀な点数じゃない。私だってつばきに教わってるものもあるんだから』
『同学年だからこそお互いを教え合ういい関係ですね』
「薙刀部で全国を目指す以上は文武両道は当然だからな。どっちかが中途半端では武士道にも反する」
「つばきは一見堅苦しそうだけど、実はとても柔軟で考えを改めるのが早いわ。むしろ私の方が堅苦しいって自覚してるもの」
「だがわかばは一度覚えれば忘れることはあるまい。考えを改めるのに流行方が確かにいいが、改めない者もいる以上、改められる方がよいと思うぞ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
つばきとわかばは同学年ということでとても仲が良く、お互いの苦手なところをカバーし合う親友のような関係だった。
勉強についてはお互い問題はないが、料理についてはつばきがわかばに教えているのが今の関係だ。
最後はるりの趣味を見てみる。
『へえ、るりさんって踊るだけでなく琴も弾けるのですね』
『はい、お琴を弾くのはとても楽しいものでございますよ。ひめぎくさんも弾いてみるでございますか?』
『よろしいのですか? 私はまだ弾いたことありませんよ?』
『チューニングならお任せくださいでございます。まずはやってみることに意義があるのでございますから』
『そう言ってもらえると気が楽になります。それとこの扇子の数は一体……?』
『日舞に活かすのもございますが、元々扇子を集めるのが趣味で、様々な模様を見て楽しむのでございます。言わば扇子のコレクションでございます』
『これって人気ブランドの扇子……! よく花柳先生と扇子のお話をなされてますが、花柳先生もすごいコレクターですよね』
『はい、花柳先生夫妻とはよく扇子集めにご協力をいただいているのでございます』
『すごい……! これがるりさんの趣味……!』
「お恥ずかしいでございます」
「さてと、今日投稿されたひめぎくの趣味はっと……」
「これこれ、そう焦るでない。今から再生するぞ」
るりの趣味が花柳と気が合うのか、よく扇子の買い物に付き合っている。
それも花柳の妻も一緒で、まるで親子のような光景をみんなで想像する。
最後のひめぎくの趣味を見ることになる。
『そしてプロデューサー見習いの私は――日本全国の温泉を巡ること。この福井の加賀は温泉街で、ここの温泉は心の穢れを落とすことでも有名です。月光花のみんなにも一緒に来てほしいな』
「ふむ、ひめぎくは温泉巡りが趣味なのだな」
「意外な一面でございます」
「まあ温泉は気持ちいいからねー」
「なるほど、焔間殿にそのような趣味があったとはな。となればたまには息抜きに皆で温泉に行くのも悪くはあるまい」
「またひめぎくちゃんと温泉に入れるといいね」
「東京合宿の時は助かりましたでございます」
「ひめぎくさんはずっと一人で妖魔界を背負ってきました。だからこそ温泉で心の疲れを癒していたのですね」
「よし! じゃあ私たちもライブを終えたらみんなで温泉に行こう!」
「「「はい!」」」
月光花はひめぎくと一緒に温泉に入るよう約束をする。
そのひめぎくは今は妖怪たちに月光花の営業に行っていて、月光花のライブのアピールをしている最中だ。
その頑張りを労うために花柳はひめぎくの趣味をあらかじめ把握していて、福井の加賀温泉でリフレッシュするように進言していたのだ。
ひめぎくは月光花が温泉に行く約束をしていることを知らずに営業を終え、事務所に戻ってくる。
「ただいま戻りました」
「「「おかえりなさい!」」」
「わっ!? 急にどうしたの!?」
「ひめぎくちゃん、いつも私たちの知名度のために営業をしてくれてありがとう。これ、たまには温泉でまたゆっくりしていって」
「もしかして私の動画見ちゃった……?」
「実は見ちゃった……」
「そっか、それじゃあもっとみんなで頑張らないとね。罪魔との戦いの疲れもあると思うし、ファーストライブを終えたらみんなで温泉に行こう」
「やったー!」
「もう、ひまわりが行きたいだけじゃないの?」
「そんなことないよー!」
「ふふっ、賑やかで平和が一番だね」
「そうだな、このくらいの空気は私も心地よい」
「ええ、少しだけ先輩後輩の壁がなくなりましたでございますね」
月光花は一見賢く硬いグループだと思われるが、柔軟なつばき、ムードメーカーのひまわり、空気が読めるすみれ、癒し系のるりと意外と個性がバラバラだ。
そのためか実は空気もよく、恥ずかしがり屋のはなや礼儀正しすぎるもみじ、完璧主義のわかばも居心地がよく感じている。
罪魔との戦いではさすがに真剣だが、普段くらいは明るくしていたいのは人間として普通の気持ちだ。
そんな中でついにファーストライブが始まった。
つづく!