妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第20話 ファーストライブ

 8月になり、ついに月光花の単独ライブが行われる。

 

 ひめぎくが妖魔界にも宣伝をしたことで妖怪にも知れ渡り、京都の人たちは月光花に期待をしていた。

 

 月光花は東京にもう一度向かい、両国国技館でライブの準備をする。

 

「ふむ、今日はここまでにするぞ。あまり歌いすぎると喉によろしゅうない」

 

「「「はい!」」」

 

「鬼ヶ島殿、大道具の設置に感謝する」

 

「まあ、俺たち鬼族は力自慢だからこれくらいはな。花柳先生も夫婦でプロデュース大変だろう。たまにはゆっくり休めよ」

 

「お気遣いに感謝する」

 

 鬼ヶ島大道具の社長の鬼ヶ島五郎は花柳の中学からの同級生で、大学まで一緒だった関係だ。

 

 その鬼ヶ島が最近起業し、月ノ姫の時から大道具を設置してきた古なじみでもある。

 

 花柳の新しい教え子たちの姿を見て鬼ヶ島は大道具を頑張ろうと思った。

 

 リハーサルを終えて月光花は宿に戻り、料理の腕が成長したわかばがカレーを振る舞った。

 

「はい、召し上がれ」

 

「これわかばが作ったの!?」

 

「すごくおいしそうだね」

 

「香りも美味と思わせるのでございます」

 

「隣で見ていて、わかばはもう調味料を間違えることもなくなったんだ」

 

「つばき先生のおかげよ。それじゃあみんな、全ての命に感謝……いただきます!」

 

「「「いただきます!」」」

 

 料理の腕が上がって成長したわかばは、みんなのおいしいという言葉に喜びを感じ、料理っておいしいと言ってもらえると楽しいんだと感じた。

 

 つばきは調味料の調整が苦手なわかばに料理を教え、呑み込みの早いわかばは急成長をしたのだ。

 

 そこで和菓子作りが得意なもみじが試しにわかばに和菓子を作らせると、わかばはマニュアル通りに作るのが得意なのか、料理よりも簡単に作り上げた。

 

 わかばが作った大福は好評で、別腹を満たすことができた。

 

 そしてついにファーストライブ当日がやってきた。

 

「月光花の皆さん! 開場しました!」

 

「はい! ありがとうございます! それじゃあみんな、昨夜に決めた掛け声の準備はいいかしら?」

 

「いいですよ」

 

「オッケー!」

 

「はい!」

 

「大丈夫だよ」

 

「もちろんだ」

 

「準備万端でございます」

 

「それじゃあいくわよ! 日ノ本に咲き誇る花の色! 真夜中に光る美しき月! 月光花!」

 

「「「いざ、参る!」」」

 

 わかばたちはライブ前の掛け声を昨夜寝る前に決め、和のアイドルとして少し古風な掛け声にすることで和ユニットらしさを出す。

 

 最初はユニット曲で、戦国時代をイメージした武士による戦の前に鼓舞をする曲を歌う。

 

 最初にカッコいいアップテンポの曲を持っていくことで会場を興奮させ、最初の出だしは成功した。

 

 続いて大正時代のラブソングで、文学が大好きな女学生がハンカチを落とし、拾ってくれた男子大学生に恋をし、どんな文学でも敵わない恋物語を歌った。

 

 二曲を歌い終え、はなたちは自己紹介をする。

 

「えっと……皆さんはじめまして! 春日はなです! えっと……皆さんの前に出ることにまだ慣れていませんが、少しずつ皆さんの前に出ることに慣れていこうと思います!」

 

「その春日はなの幼なじみの日向ひまわりです! 私は囲碁と将棋が大好きで、運動することも大好きです! みんなを明るく照らす太陽になります!」

 

「皆さん、はじめまして。紅葉もみじです。皆さんと出会えて嬉しく思います。ニンニンニンジャたいそうでご存じの方もいらっしゃると思いますのでよろしくお願い致します」

 

「藤野すみれです。時代劇とサッカーが大好きです。君たちとこうして会えることを嬉しく思うよ。もちろん、ファンクラブのみんなもね」

 

「冬野つばきだ。知っていると思うが、私は薙刀で全国大会にも出場していた。薙刀もアイドルも、どちらも全力で挑もうと思う!」

 

「皆さまごきげんよう、紺野るりでございます。日本舞踊で磨いたダンスで皆さまを魅了させられるよう、精進するでございます。最後は我らが月光花のリーダー……」

 

「常盤わかばです。皆さんもわかったと思いますが、私たちは和物系アイドルユニットとなっています。和楽器を使った曲を中心に、皆さんの中には苦手なお勉強をわかりやすい覚え歌にしたり、古典で習った物語を現代風に曲としてアレンジしたりします」

 

「わかばー、相変わらず堅苦しいよー? もっと自分のことを紹介しないと」

 

「そう言われても慣れてないから仕方ないじゃない」

 

「そうだね、わかばは勉強と文学が得意でね。よく私たちに勉強を教えてくれる家庭教師に近い存在なんだよ」

 

「文学をわかりやすく、そして今風にアレンジするのも得意なんです」

 

「もう、照れるじゃないの。すみれ、はな……」

 

「だけど料理と運動が苦手なんだよー」

 

「ひまわり~……!」

 

「ひー! つばきーわかばが怖いー!」

 

「日向、少しは遠慮を覚えようか」

 

 わかばとひまわりの漫才じみたやりとりに観客は笑い、つばきとるりでわかばをなだめる。

 

 勉強ができるから堅苦しい堅実なユニットだと思わせ、ひまわりのトラブルメーカーぶりを活かして親しみやすさを覚えてもらう計画は成功したようだ。

 

 親しみやすさを覚えた子どもたちは、もみじを見ると嬉しそうにはしゃぎ、もみじはそれに気づいて目線を低くして手を振るファンサービスもする。

 

 次の曲はそれぞれのソロ曲のメドレーに入る。

 

 はなは春の桜は一瞬だからこそ美しいという和風バラードを歌い、女性ファンに可愛いと言わせた。

 

 ひまわりは明るいポップな曲で、激しいダンスをしながら夏のお祭りの歌を歌う。

 

 もみじはお馴染みのニンニンニンジャたいそうで子どもたちだけでなく、高齢者の運動不足を解消させる。

 

 すみれは普段は王子様系ではあるが本当は可愛くなりたい乙女の曲を歌う。

 

 つばきは演歌として猛吹雪の中を突き進み浮浪の旅人の不屈な心を歌った。

 

 わかばは志賀直哉が原作の『網走まで』を現代風の歌詞にアレンジして難しいはずの文学を簡単に覚えさせた。

 

 るりは琴を余すことなく使ったダンスミュージックで、川遊びをテーマにして扇子を持ちながら舞うことで男性ファンを虜にした。

 

 ソロ曲を全員歌い終え、最後は武士道のおぼえうたをアイドルソング風にアレンジしたものを歌う。

 

 曲の数こそ少ないが、この両国国技館を会場にした理由が実はあった。

 

 その会話の様子を花柳は着物を着た女性に話す。

 

「おお、そなたも来てくれたのか」

 

「はい、あなたの教え子たちには何故このような大きな会場にしたのかお伝えしなかったのでしょうか?」

 

「ふむ、それには理由がある。それはもう一度失われつつある武士道精神を、より多くの日本人に思い出してほしいと願ったのだ。罪魔一族の再来で京都では罪魔一族を崇拝する団体が結成されたのは存じているだろう」

 

「存じております」

 

「そして東京で宣伝すれば、より多くの人々に武士道を伝えることができるのだ。そなたの協力がなければ、某は一人で抱え込んでいたであろう……お千代」

 

「ええ、そんな旦那さまの頑張りを、あの子たちもきっと感じていますよ」

 

(あの方が花柳師匠の……)

 

 花柳の隣で話しているのは花柳の妻で作曲担当の花柳千代。

 

 作詞と編曲、プロデュースを花柳が。

 

 作曲が花柳夫人が担当していて、ひめぎくは見習いとして営業をかけている。

 

 この三人のおかげで月光花の知名度は上がっているのだ。

 

 最後のアンコールでは京都通り名の覚え歌をアイドルソング風にアレンジしたものが歌われた。

 

 ライブは成功し、月光花は日本中に武士道精神だけでなく、和物アイドルとして知られるようになった。

 

 楽屋に戻って着替えると、花柳夫妻が楽屋に入る。

 

「皆の衆、よくやった。そんな皆の衆に会わせたいものがいる。お千代」

 

「お千代……?」

 

「皆さま、今宵はお疲れ様でした」

 

「わあ……凄く美人……」

 

「大和撫子でございますね……」

 

 花柳夫人の姿に月光花のみんなは見惚れ、花柳は扇子を仰ぎながら咳払いをする。

 

 少し時間が経つと、ひめぎくが遅れて楽屋に合流する。

 

「みんな! 遅れてごめん!」

 

「ひめぎくちゃん! どうしたの? そんなに息が切れて」

 

「焔間さん、少し落ち着きなさい」

 

「は、はい……。お千代先生」

 

 ひめぎくが遅れて楽屋に入ると、息を切らしている様子を見た花柳夫人がひめぎくをなだめた。

 

 お千代というワードを聞いたひまわりは考え込み、そして思い出した。

 

「お千代……あーっ! 思い出した! この人は花柳先生が前に言ってた奥さんで、作曲をしてくれた人でしょ!?」

 

「こら! 指を指すんじゃないの!」

 

「ふふっ、話に聞いた通り賑やかですね。日向ひまわりさん」

 

「えっ? 私のこと知ってるんですか?」

 

「皆さまのお名前を全員把握していますよ。それに本名が漢字表記ですが、覚えやすいようにあえて平仮名にしているところも」

 

「そうだったんですか。気づきませんでした」

 

 ひまわりが騒ぎながら花柳夫人に興奮し、指を指したことでわかばが注意する。

 

 そして月光花のみんなの名前が実は漢字表記から覚えてもらうために平仮名表記にしていたことをはじめて聞き、すみれでさえも気づかなかった。

 

 はな=春日花菜

 

 ひまわり=日向向日葵

 

 もみじ=紅葉椛

 

 すみれ=藤野菫

 

 つばき=冬野椿

 

 わかば=常盤若葉

 

 るり=紺野瑠璃

 

 ひめぎく=焔間姫菊

 

 ――である。

 

「この案は妻のお千代の案だ。皆の衆の名前の漢字は少々幼き子どもには難しすぎるのでな」

 

「確かにそうですね。その方が覚えやすいと思います」

 

「それで焔間殿、何ゆえにそんなに慌ててたのだ?」

 

「実は……妖怪メダルが一部間に合いました! これで罪魔一族との戦いに少しだけパワーアップすると思います!」

 

 ひめぎくはポケットからたくさんの妖怪メダルを取り出し、それぞれにメダルを与える。

 

 はなたちは妖怪たちの応援もあって、ようやく妖魔力を手にした。

 

「これから京都に戻ったら、本当の戦いが待っているわ。聞くまでもないけれどみんな、絶対に罪魔一族からはなの神社と京都の平和を取り戻しましょう!」

 

「「「おー!」」」

 

 ファーストライブは成功し、妖怪メダルも間に合ったことで月光花の活動は広がる。

 

 翌日には新幹線で京都に戻り、テレビを見ると月光花がローカルアイドルとしてメジャー電ビューを果たしたとニュースになっていた。

 

 そしてここからが本当の戦いとなるのです。

 

 つづく!

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