はなとひまわりは口論しているうちに罪魔に見つかり、これ以上犠牲者が出ることを恐れたひまわりによって逃げる。
罪魔に抜かれては追いついたツノの生えた女の子が金棒で二人を守り罪魔を振り払う。
「あの……ありがとう!」
「危ないところだったね。あなたたちがこの神社を守ってきたのは知ってる。いつも妖怪たちの事をありがとう。でも今は早く逃げて避難してほしい。これ以上、人間たちが
女の子は黒い鬼の方へ向かい、そのまま去っていった。
ひまわりは安心したのか少し座り込み、はなは手を差し伸べて立ち上がらせる。
「大丈夫……?」
「う、うん。大丈夫。それよりもどうして罪魔一族がここに……!?」
「そっか、ひまわりちゃんはうちの神話を知ってるんだよね。いつも神話を真剣に聞いてたから……」
「まさか神話が本当にあったなんて思わなかったな。ねえはな、もしかして巫女として罪魔を封じるためにもう一度行くの?」
「それが春日家代々に伝わる仕事だから……。ひまわりちゃんは避難してて。私もしっかり仕事を果たさないと……! お父さんたちももう……」
「そっか……わかった! 絶対無理はしないでね!」
「ありがとう!」
はなは直系としての責任を果たすべく、巫女服に着替えて罪魔の方へ走っていった。
一方のひまわりは避難するはずもなく、はなの命が心配になってこっそり駆けつける。
はなに見つからないように木陰に隠れ、戦闘の様子を見る。
「パパの仇……ここで晴らす!」
「ジャマ……!」
「きゃああっ!」
罪魔は女の子を腕だけで吹っ飛ばし、もはや誰も手に負えない状態となった。
「妖魔大王の娘よ、我々の邪魔をするではない。我々は人間界を支配し、我が罪魔一族がこの地上を人間のいない極楽浄土にするのだ」
「くっ……! こんな時に……妖魔力を宿る人間がいれば……!」
女の子が追い込まれると先ほどのスキンヘッドの男が現れ、倒れた女の子の胸ぐらを掴んでいった。
女の子は首を掴まれて苦しそうに暴れ、ひまわりは怖がりながらも飛び出そうとした。
しかし恐怖のあまりに足が震え、前に進むことをためらった。
「待って!」
「はな! 着替え終えたんだ!」
「あなたはまさか……!?」
「人間がまだいたとはな。だが貴様……忌々しい妖魔大王の付き人と似ているな!」
「せっかく人間と妖怪が和解し平和に過ごしてきたのに……どうしてあなたたちは人間を滅ぼそうとするの?」
「簡単な事だ。人間とは生まれた時から罪を背負い、その罪に対して何も思ってはいない。そんな罪や欲望だらけの下等生物など、この地上では邪魔なだけだ。人間は全員地獄界で裁かれ、自然だけが過ごす極楽浄土を創りだすのだ。」
「なら私は……それでも反省をして秩序を守ろうと努力する最中の人間たちを邪魔するあなたたちを……もう一度封印するっ!
「そんなものなど……当に克服済みだわっ!」
「きゃあぁぁぁぁっ!!」
「はなっ!」
巫女服に着替えたはなはスキンヘッドの男を封印するために魔封筆を使って陣を描く。
しかし春日家に代々伝わる封印の陣も男に全く効かず、男の薙ぎ払いではなは吹っ飛ばされる。
その様子を見ていたひまわりは悔しそうにうつむき、もうこの世は終わりなのかと悟った。
「貴様は妖魔大王と同じ血のニオイがするな。どうやらこの我を封印したあの男の血を引いているようだな」
「うう……!」
「血のニオイでわかる。貴様があの末裔と言うならば……ここで殺して家系を根絶やしにし、我が罪魔一族が支配する極楽浄土を創るのだ!」
はなが苦しそうに暴れ、女の子ももはや立つことがやっとの状態で、誰も男を止めることができなかった。
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!」
「ぐおっ!?」
「きゃっ!?」
ひまわりははなのピンチに居ても立ってもいられず、怖がりながら勇気を出してはなの元へ走り出し、男の体当たりをしていった。
男は激しく突き飛ばされ、はなを手放す。
「はな! 大丈夫!?」
「ケホッ……ケホッ……! ひまわりちゃん……ありがとう……!」
「まだ人間がいたか! 貴様も私を見た以上、タダで済むと思うでない! この巫女諸共、死ねいっ!」
「そうはさせない! 私は………第100代目の春日家の神主、春日はな! 確かに人間たちは罪を犯すし、欲に負けて自分勝手なことをするよ? でも人間には失敗して経験値を稼ぎ、そこから心を成長させることが出来る! あなたはその過程すらも否定するみたいだけど、私はそんな人間の……武士道精神を信じたい!」
「はな……。はなはいつもそうだよ。人間には七つの大罪があるっていつもおじさんから教わった。でも大罪と言っても、人間の感情では当たり前のことだし、それを逆に支配してコントロールするものだと教わった。生まれた時から大罪……? それはあなたがそう感じているだけじゃないの!? 私は確かに学習能力もあんまりないし、悪いことをしてないわけじゃないけど、何度も反省して心を磨き過去の自分を越え、そして武士道精神を磨き続けてきたんだ! 私もはなと同じ……この武士道精神を信じるっ!」
はなとひまわりは自分たちの武士道精神を信じて叫ぶと、黒い霧とナデシコとヒマワリの花びらが二人を包み込み、二人の胸元から漆黒の篠笛が現れた。
「グオオオオオッ!?」
「この闇の魔力は……!?」
「まさか……! はな!」
「ひまわりちゃん! この笛は春日家に代々伝わる伝説の笛だよ!」
「マジで!? そういえば闇に支配されるけど悪い気が全くしないよね……?」
「これは人間の闇を逆に支配し、秩序と規律を重んじる武士道を重んじた大和魂がある人にしか使えない力だよ!」
「じゃあ私たちはその力を……!?」
はなとひまわりは大和魂に目覚め、今までにない力が湧いてきたことを実感する。
大和魂は武士道を重んじ、規律と秩序を守り抜き心の闇を乗り越えた者にしか得られない力で、罪魔を封印する特別な魔力が備わっていた。
同時に人間の力ではない何かを感じ取り、二人は潜在能力が目覚めつつあった。
「二人とも! その笛を手に取って『
「えっと…わかった! いくよ! はな!」
「うん!」
「「妖魔変化!!」」
変身をするために笛を吹き黒い闇の霧とまばゆい月の光、そして自分自身の影が二人を包み込み、怪しいなオーラと共に私服から和装の動きやすい衣装になった。
はなは黒の巫女装束と撫子色のミニ袴、黒の足袋型ニーソックスに撫子色の鼻緒の草履と大きな日本の和弓が装備される。
一方のひまわりは黒い浴衣衣装になり、リボン結びされた向日葵色の帯が締められ、白い足袋と向日葵色の鼻緒をした下駄、そして向日葵色の襷掛けがかけられ武器は足軽が装備していた槍が装備された。
「花の妖魔使い春日はな、参上!」
「炎の妖魔使い日向ひまわり! 参上!」
はなとひまわりはついに変身し、妖魔使いとして完全に目覚めた。
男は二人の変身に逆上し始める。
「妖魔使いだと……!? 問答無用! 殺せ!」
「コロス……!」
「危ない!」
「きゃっ!」
ひまわりははなを庇うために飛びつき、そして二人で高くジャンプをする。
するとあまりにも高く跳んでいて、ひまわりは興奮しながら下を見る。
「はな! めっちゃ跳んでいる!」
「すごい……! でもこのままだと落下する……!」
「じゃあさ、はなはこの高さから矢を放って! 同時に私が槍で落下しながら突っ込むから!」
「ひまわりちゃんの作戦は絶対成功するもんね! 信じてる! 矢を……放てっ!」
「グオッ……!」
「すごい! 当たったよ!」
「やるね! 今度は私の番だ! せいやー!」
「グフゥ……!」
二人の息の合ったコンビネーションに男はイライラし、女の子は二人を見ながら勝てると確信する。
金棒を杖の代わりにして立ち上がり、渾身の声で二人に叫ぶ。
「そのまま必殺技を放ってください! 今のあなた方なら出来るはず!」
「うん!」
「オノレ……オノレェェェェェェェェッ!」
「地獄界から這い上がった罪魔を封印するよ!
「罪魔! 地獄界でしっかり反省してよね!
「グオォォォォォォォッ……!」
甲冑を着た黒い鬼は必殺技で浄化され、空中に登っては黒い魂となり地獄界に戻った。
罪魔がいなくなったことを確認し、逃げ遅れた人がいないかはなは境内を見回る。
「うう……ここは……?」
「大丈夫ですか?」
「ああ、君たちが助けてくれたのか……。ありがとう、春日家のお嬢さん、それにそのお友達。あの悪魔はどうなったんだい?」
「地獄界に魂ごと封印されました」
「やはり春日のお嬢さんの魔力はすごいや。俺以外にも逃げ遅れた人や妖怪は居ると思う。俺も少しだけだけど協力させてほしい」
「ありがとうございます」
先ほど逃げ遅れた男性を助け、男性は救助を手伝いながら神社に一礼をする。
境内の逃げ遅れた人々の救助を終え、はなとひまわりは休憩室で一息つく。
しかしそれでも禍々しい魔力は消える事がなく、燃えてしまった目の前の神社と家は全焼してしまった。
はなは家族の安否のために家に近づくと、身体中に痺れと熱さがほとばしり、そのまま突き飛ばされた。
「きゃあっ!」
「はな! 何あれ……? はなの家が結界に……!」
「貴様が私を封印した男の末裔なのは知っている。我はアクドー、罪魔一族の将軍なる者だ。貴様の拠点である忌々しい神社は我々罪魔一族が乗っ取った。返してほしければ人間を滅ぼすか、我々と戦って命を落とし、地獄で永遠の苦しみと地上が極楽浄土になるのを見ていること、あるいは我々と手を組み極楽浄土にするのに協力することだ。それまでせいぜい我々に抵抗しているといい――」
「そんな……!」
「待て! はなの家を返して! 消えちゃった……」
アクドーと名乗る男は消え、はなは残された家族はさらわれてしまったと絶望して泣きそうになった。
ひまわりははなの悲しみを受け止めることしかできず、泣きそうになるはなの頭を撫でながら胸に抱き寄せる。
「はな!」
「おお! 無事だったか!」
「ふう、これで参拝客は全員避難したし、一族全員も無事とわかったわい!」
はなが泣きそうになっていると、神社の正装をしている男女の夫婦と一人の男性老人がはなの元へやってきた。
「お父さん! お母さん! おじいちゃんも!」
「はな! どうやら奴らが現れた様じゃの」
「ひまわりちゃんも無事でよかったわ! それとあの女の子は……?」
「えっと……わからない。でも、何だか初めてあった人って感じじゃないんだ」
「えっ? はなもそう感じたの? 私も同じなんだよ」
はなの両親と祖父ははなと合流し、家族全員無事だったことがわかった。
はなとひまわりは女の子とは初対面なのに、なぜか懐かしさを感じていた。
しかしはなは家族が全員無事だったことに安心し、少しだけ立ちくらみがして倒れかける。
そこにひまわりが抱きかかえてはなを支える。
「あなた方が春日家の方々ですね。はじめまして、妖魔大王の一人娘のひめぎくです。100代目神主候補の春日はなさん、母上の春日
「100代目神主候補の幼なじみ、日向ひまわりです」
「よろしくお願いします。あなた方二人には強い妖魔力を感じました。でもあなた方の拠点は……」
「それなら心配はないぞ。本殿がとられたのは痛いが、隣町にある支社の別荘なら無事だ。そこにはばあさんもいるぞい」
「本当によかった……!」
「感動の再会は後だよ。はな、お父さんたちと一緒に別荘へ来なさい。ひめぎくさんもご同行願えますか?」
「はい。それに妖魔界について話さないといけないので」
「妖魔界に何か異変があったようね。詳しく聞きましょう」
家族と無事に再会できたはなは本殿と家を失いつつも別荘である支社でひめぎくと名乗る女の子の話を聞く。
妖怪の国である妖魔界で何か異変があったと母は気付き、罪魔一族と深い関係がありそうだ。
もし人間と妖怪の信頼関係がもい一度崩れるようなことがあれば、西暦時代の最後に行われた第三次世界大戦のような悲劇が繰り返されるとはなは胸が苦しくなった。
別荘に着き、ひめぎくが話す内容は――?
つづく!