はなの所属する書道部にアクシデントがあったものの、仲間たちの支えで展示会に間に合い、前よりも高いクオリティで提出することができた。
はなだけでなくひめぎくの和太鼓部やるりの舞踊部の発表、ひまわりの囲碁部と将棋部のターン数制限の対局体験、わかばの文学部の展示会も行う。
すみれの蹴球部とつばきの薙刀道部、もみじの剣道部は武道系なので食べ物を出店することになっている。
さらに月光花としてのライブも控えていて、月光花にとって平安館の文化祭は宣伝するチャンスでもある。
文化祭当日になり、平安館大学含む系列の学校はついに盛り上がりを見せる。
「すごい! 本当に袴制服だ!」
「これはインストグラム映えするっしょ!」
「チックタックにも動画投稿しようぜ!」
「やはり袴制服は世界的にも珍しいのだな」
「そうね、民族衣装を制服にする学校は世界でも指で数えられるくらいしかないもの」
「その中に平安館も入るのでございますね」
「そうだね。そのためか外国人も結構来ているよ」
「私たちも平安館生としておもてなしをしなければならないね」
「さあみんな! 月光花としてだけでなく、平安館生として頑張るぞ!」
月光花のみんなは月光花としてだけでなく、清く正しく美しい大和撫子として来客を迎え入れる。
そしてその中に意外な人物も訪れていた。
それははなにとってビックリする人が個人的に来ているのだった。
「平安館か。紫吹さんが気になる子がそこにいるって聞いたが、どんな子なのか……」
色黒で黒髪ショートヘアの男性がスーツ姿で平安館に入り、緊張しながら文化祭を満喫していった。
はなとひまわりのクラスはりんご飴を売っていて、売り上げははなとひまわりの効果ですぐに売り切れていった。
もみじのクラスの団子屋、すみれのクラスのフランクフルト、わかばとつばきの和洋折衷レストラン、そしてるりのコーヒー店も続々と売り切れていった。
ひめぎくのクラスの妖怪展示会も常に満員で、ひめぎくはなかなか店番から離れられなかった。
ようやく店番が終わった頃に和太鼓部の発表会へ向かったのだ。
はなたちは和太鼓部の発表会でひめぎくのカッコよさに感動し、コンサートホールは拍手喝采だった。
そしてもうすぐ月光花のライブの時間になり、楽屋で衣装に着替えて準備を進めていた。
「みんな! 今日は花柳先生夫妻は別件で来られないけど、この文化祭で月光花の宣伝をしましょう!」
「「はい!」」
「月光花の皆さん! 東京からの芸能関係者から来客です!」
「誰だろう……? どうぞ!」
月光花の楽屋に来客が来たことによって少しざわついた。
それも東京の芸能関係者と聞いて、まさか大規模なライブのスカウトではないかとひまわりは張り切った。
するとスーツを着た色黒の男性が楽屋に入ってきた。
「月光花の皆さん、はじめまして。私は虹ヶ丘エンターテイメントの専務、夜月晃一郎です」
「あなたはアルコバレーノのマネージャーさんですね!」
「そんなすごい人がどうしてここに?」
「紫吹ゆかりさんから紅葉もみじさんの話を聞いてね、月光花に興味が湧いたんだ。話を聞く限り、和物系アイドルで最もブレイクしてるみたいだね。君たちのライブ、期待しているよ」
「夜月さん、紫吹さんにお伝えください。私たち月光花を注目してくださり、ありがとうございますと」
「わかった。君が紅葉もみじさんだね。よろしく伝えておくよ」
もみじは夜月に挨拶を交わし、握手をして楽屋を出ようとした。
するとはなは突然思い出したように夜月を引き留める。
「あの! あなたは確か東光学園の修学旅行で人妖神社に来た高校生のお兄さんですか!?」
「そういえば人妖神社に修学旅行で来たな。何でそれを知ってるんだ?」
「覚えていますか? 引ったくり事件の犯人を捕まえてくださった方ですよね?」
「確かに捕まえたが……まさか君はあの小さな巫女の子か!?」
「はい! また会えて嬉しいです!」
「すっかり大きくなったな! それもまさか月光花に入ってたとは! そうなると手ごわいライバルになるな。じゃあそろそろ客席に戻るから頑張ってね」
「「はい!」」
はなはかつて夜月が人妖神社を訪れ、当時高校生で修学旅行で来た時に引ったくり犯を捕まえたことがあってそれを今も覚えていた。
夜月もはなを見て懐かしくなり、自分も年を取るわけだと実感した。
ライブが成功し、遅れて花柳夫妻が楽屋に訪れる。
「皆の衆、この度は仕事とはいえ遅刻したことをお詫び申す」
「わたくしからもお詫びいたします」
「大丈夫ですよ。先生方は月光花のために全国を回って宣伝していらっしゃってますから」
「常盤殿、かたじけない」
「あの、花柳先生。夜月晃一郎さんをご存じですか?」
「春日殿、彼を存じているのだな。よかろう、話そう。彼はアルコバレーノのマネージャーで、かつて甲子園で優勝した高校の主将だった。彼にも強い武士道を感じたが、スカウトし損ねた某が最も後悔していることの一つだ」
「あの花柳先生が欲しがってたなんて信じられませんね」
「でも確かに彼に大きな武士道を感じたのは事実だ」
「これはとんでもないライバルと出会ったね。私もいつまでも見習いでいるわけにはいかないな」
夜月という手強いライバルと出会ったことで、プロデューサー見習いのひめぎくの心は熱く燃えていた。
夜月に知られたことで月光花はより宣伝になり、京都だけでなく全国で仕事のオファーが届くようになった。
さらに朗報はまだまだあった。
「皆の衆、聞いてほしい。月光花は年末にNHTによる紅白歌合戦に出場することが決まった。活動してからまだ一年にも満たない中、皆はよく頑張った。春日殿は年末年始の実家の神事で忙しいと思うが、両親には紅白歌合戦に出場することの許可をもらっているから安心するといい。紅白歌合戦に出れるほど皆は本当に成長した、おめでとう」
「これも全て花柳先生のプロデュースのおかげですよ。ひめぎくもいつも広報感謝する」
「いえいえ、これはみんなが頑張ったからできたことですよ。私なんて見習いだからまだまだです」
「はな! 紅白だよ紅白! しかもはなも出ていいって!」
「私が紅白に……?」
「夢かもしれないけれど、夢じゃないんだよはなくん」
「信じられないや……! 私たち、とうとうここまで……!」
「わたくしたちも知名度が上がったのでございますね」
「となると気を引き締めていかないといけないわ」
「そうですね。わかば先輩の言う通りですね。先輩方、これからは武士道を受け継ぐアイドルとしてお手本になるように努めましょう」
紅白歌合戦出場が決まったことで、喜ぶだけでなく気を引き締めていこうと気合を入れるという月光花らしいリアクションをする。
わかばともみじは真面目さゆえに気を引き締め、ひまわりとはなは今でも信じられないと言わんばかりに喜んでいた。
るりとすみれ、つばきは気を引き締めつつも喜びを表し、性格ごとに違ったリアクションをして個性的な部分も見られた。
歴史的文学作品をわかりやすく和物アニメソング風に曲にしたり、古風で硬派な和物曲にしたりと外国、とくに西洋では大人気となっていった。
文化祭は成功しただけでなく月光花は全国どころか世界樹に広まり、西洋では月光花ブームとなっていた。
つづく!