平安館の文化祭も終わり、はなたちは本格的に封印魔法の修行に入る。
支社なので施設は本社と比べて小さいが、修行する場としては充分でひまわりたちにとっては集中できる場所でもあった。
神社の裏に人が入ってはいけない竹林が立っていて、そこには大きな妖魔力が感じられる。
はなたちは巫女服に着替えてこれから修行を開始する。
「ではこれより、上級封印魔法の修行を始める。娘のはなは習得済み、幼なじみで幼少期から修行をしてきた日向さんはまだ半分しかできていないがそれでも充分完成の素質がある。他の5人ははじめてだね」
「「はい!」」
「この封印魔法に必要な魔力は、平安館で鍛えられる武士道精神。妖怪と接することでパワーアップする妖魔力、そして我が人妖神社で修業してようやく得られる神通力だ。人々の正しい心、妖怪の高い力、そして神々の恩恵の三つが高くなった時にようやく罪魔を地獄界に封印することができるようになる。ただ慣れないうちは体の負担が大きくてね、本来なら一日休まないと回復しない危険な技でもある。だが君たちには武士道精神と妖魔力が極めて強い。残るは神通力さえ会得できれば容易く習得できるだろう。でははな、手本を見せなさい」
「うん! まずはこの
「「はい!」」
「そしてこの筆は封印だけでなく、火と書けば武器に火が灯り、水と書けば水が流れるという文字によって魔法があらわれるようになってます。文字が綺麗なほど威力が増すようになってますので、慌てず素早く丁寧に書くようにしてください」
「なるほど、ここでも日本人らしさが現れてるのですね」
「私はせっかちだからなかなかそれが習得できなくて悩んでたんだよね」
「ひまわりさんでも苦労なさってるのでございますね」
「戦場だとどうしてもゆっくりはしていられないから仕方のないことだ」
「だけど戦国時代ではそれが当たり前だったのよね。私たちもしっかり習得しなければ罪魔一族には勝てないわ」
「そのために私たち春日家が君たちに修行をさせているんだ。しかしまさか妖魔界の姫様まで修行したいとは意外だったよ」
「私はまだ武士道精神が甘いから戦えないけど、少なくても戦力になりたいと思ってます。このままジッとしているのはパパに申し訳がなくて」
「ひめぎくちゃんがいたら百人力だから応援してるね。それじゃあ最初にみんなの魔法属性を発表します。みんなそれぞれの属性の文字を筆で書いてください」
はなは月光花全員の魔法属性を把握していて、それぞれの魔法属性を発表する。
ひまわりは火、もみじは闇、すみれは雷、つばきは氷、わかばは風、るりは水、そしてひめぎくは地と知り、それぞれ文字を書く。
するとひまわりには大きな火柱が立ち、もみじには姿を消すほどの黒い霧が立つ。
すみれには稲妻が走り、わかばには木の葉が渦を巻く。
つばきには小さな吹雪が起こり、るりには淡水ではあるが雨が降る。
そしてひめぎくは岩から金属類ができあがり、はなはひめぎくの魔法属性に驚く。
「すごい……! ひめぎくちゃんは今まであまりいなかった地属性だ……!」
「地属性……?」
「土や岩、金属系などの硬くて強いパワー型の魔法属性だよ」
「なるほど」
「みんなの文字魔法はこんなところかな。ちなみに私は花属性だよ」
「じゃあはなの文字魔法を見せて!」
「わかった」
ひまわりのリクエストに応えるべく、はなは花の字を筆で書きあげて撫子の花びらが舞い、竜巻を起こして的に当てた。
その威力は修行中のみんな以上で、修行の成果が強く見られた。
それによってみんな火が着き、真剣に修行を開始した。
時間が流れて夕方になり、もう遅い時間なので修業は切り上げた。
「よし、今日はこのくらいにしよう。みんな、お疲れ様」
「「「お疲れさまでした……!」」」
「今日はみんなはじめてなのに上手かったね。とくにひまわりちゃんはしばらく修行しなかったからブランクがあったのに思い出してきたね」
「勉強とか囲碁や将棋のためにサボるんじゃなかったなあ……」
「だがこれからは勉強や部活、アイドルに戦闘などたくさんの草鞋を履いて修行せねばならないのだから気を引き締めていかないとな」
「はい、その通りでございますね」
「はなくんはこんなに大変なことをこなしているんだ。私たちもしっかりしないといけないね」
「よーし、もっと頑張るぞ!」
修行は一週間続き、全員が文字魔法を扱えるようになるほどになり、ついに一人でも使えるようになる。
本題の上級封印魔法についてはまだまだ粗いが、それでも実際の戦闘でもある程度は封印できるようになっていた。
ぶっつけ本番にも関わらず封印できたことにひまわりは嬉しくなり、喜びのあまりにはなにハイタッチをするほどだった。
そしてクリスマスシーズンに入り、人妖神社の年末の神事が開催される。
それは流鏑馬による占いで、来年の日本はどんな運命を辿るのかを占うものだ。
ひまわりは月光花を全員集めて人妖神社へ待ち合わせする。
一番最後に到着したのはひめぎくだった。
「お待たせ!」
「遅いよひめぎくー!」
「まあひめぎくさんは神社のお手伝いをしていますからね」
「だとしても遅れてごめんなさい!」
「いいのよ。さあ、はなの雄姿をみんなで見ましょう」
わかばが先頭になって仕切り、はなの流鏑馬の準備が整ったので観客はカメラを持って撮影準備をする。
そのはなは流鏑馬の名人で、成人男性も顔負けの実力があって今年の流鏑馬にも選ばれるほどの腕前だ。
はなは正装に着替えて馬に乗り、弓を持って流鏑馬を開始する。
「お待たせしました! 人妖神社の一年を締めくくる神事をまもなく開催いたします!」
「今日はよろしくね、黄泉丸」
黄泉丸とは人妖神社の流鏑馬で走る馬の称号のことで、それも一番格が高い馬にしか名付けられない名誉ある馬だ。
黄泉丸はとても気性が荒くて並の人間には乗りこなせないが、はなにだけは懐いていて簡単に乗れるので流鏑馬のエースとして選ばれたのだ。
プライドが高くて自分が認めたものにしか乗せないくらいの高貴な馬なので扱うのも大変なのだ。
そんなはなと黄泉丸のコンビの流鏑馬はとても美しく、見るもの全員を魅了していった。
流鏑馬の結果を神主が発表することで来年の日本の運命を知ることになる。
はなの放った矢の当たり具合を会議で見た結果、ようやく占いの結果が発表される。
「今回の流鏑馬占いの結果だが――残念ながら来年の日本には大きな災いが降りかかってくる。それも日本だけでなく世界規模でだ。だが三つの力を持つ8人の神の使いが世界を救い、忘れられた武士道精神を思い出させ、世界規模で秩序が再構築されるであろう――という結果だ。皆さんは最初は苦難しかないだろうが、最後はみんな幸せになるということだ。希望を捨てずに徳の流れに身を任せ、そして武士道精神を心の中で起こしなさい」
結果は不安ではあるが、それでも最後は幸せになれるという結果になり観光客はホッとして帰っていった。
神事の後片付けをしていると、ひまわりたちがはなのところへ駆けつけてくれた。
「はな! 後片付けの手伝いに来たよ!」
「みんな!」
「せっかくの仲間なのだから、私たちにも手伝わせてほしいな」
「助太刀致しますでございます」
「みんなでやれば早く終わるでしょう?」
「本当にありがとうございます!」
わかばたちの手伝いがあって後片付けは素早く終わり、はなたちは早い休憩に入る。
今は災いが襲いかかるが最後は8人の神の使いがやってきて世界を救う、その占いにはなたちはずっと気になっていた。
今は自分たちは7人で、最後の一人は果たして誰なのか。
つづく!