妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第31話 紅白歌合戦

 紅白歌合戦の出場が決まっている月光花はまた東京へ赴き、渋谷にあるNHTホールへ向かう。

 

 これからリハーサルに入るが、はなは緊張のあまりに体が震え、声もあまり出なかった。

 

 リハーサルで失敗したらどうしよう、そんな不安ははなを襲ってきたのだ。

 

 休憩に入りはなが落ち込んでいると、ひまわりが声をかける。

 

「はな、一旦お疲れ様」

 

「ひまわりちゃん……」

 

「やっぱり大舞台だと緊張して思うようにパフォーマンスできないのかな?」

 

「うん……大勢の人々の前で歌うとなると緊張して失敗するのが急に怖くなっちゃうんだ……」

 

「そりゃあ無理もないよ。今まではローカルアイドルとして小さなライブ会場でやってきたんだもん。いきなり大きな会場で全国放送されるとなったら普通は緊張するよ」

 

「もしかしてひまわりちゃんも緊張してる……?」

 

「そりゃあ私だって緊張するよ。でもやっぱり自分たちのアイドル道が全国どころか世界にも広まっているって思うとワクワクもする。世界中で武士道が広まれば、きっと罪魔に支配されても負けない心を持つことができるって信じてるからね」

 

「そっか……ひまわりちゃんは向上心が強いんだね……」

 

「何を言ってるのさ。はなだってあれだけ大勢の人々の前で普通の人ではできない流鏑馬や弓での射的、大規模なお祓いだってやってきたじゃない。私は人前で歌うよりも神事としてやる方がよっぽど失敗できないし難しいし緊張すると思うな。あくまでも一般人出身の私の考えね? 他の人がどう思うかはわかんないよ?」

 

「じゃあ私も十分すごいことを今までやってきたから自信を持っていいってこと……?」

 

「そういうこと! さすがはな、私の言いたいことを理解してくれるよ!」

 

「ひまわりちゃん、ありがとう。私、リハーサル頑張るよ!」

 

「ちょっとちょっと、リハーサルよりも本番で頑張って!」

 

「そうだね。一緒に頑張ろうね!」

 

「うんっ!」

 

 長年の付き合いのひまわりがはなを励まし、はなの緊張を簡単に解いてみせた。

 

 その様子を見ていたつばきたちも安心し、仲間の緊張を解くのもグループの役目だなとリーダーのわかばはリーダーとしての自覚をより強く持つようになった。

 

 休憩時間を終えてスタンバイしていると、アルコバレーノのリハーサルでもみじは何やら燃えていた。

 

 その闘志に気付いたすみれとつばきはもみじに声をかける。

 

「燃えているな、もみじ」

 

「つばき先輩」

 

「もしかして紫髪のあの子が気になるのかい? ずっと彼女の方を見ていたけれど」

 

「はい、彼女は紫吹ゆかりさん。私の実家が忍術の道場で忍の家系なのはご存じですね」

 

「そうだね」

 

「紫吹さんは我が紅葉流忍術の戦国時代からのライバル関係なんです。忍術だけでなくアイドルとしても競い合うことになっています」

 

「だからアルコバレーノの名を聞いた瞬間にもみじはやる気になっていたのだな。負けられないライバルということだな」

 

「はい。ですがあまり意識しすぎると周りが見えなくなってしまいますので、あくまでもグループとして負けたくないというだけです。個人での勝負は忍術で勝負をつけますから」

 

「それはそれ、これはこれということだね。もみじは勝負だけでなく私たちのことも気にかけてくれるんだね。嬉しいよ」

 

「今回は同じ紅組として仲間ですので、アルコバレーノの皆さんと仲良くしましょう」

 

「その方がいいな。いずれ共演するかもしれないからな」

 

「そうだね、リハーサルが終わったら紫吹くんに声をかけてあげるといい」

 

「はい」

 

 もみじの永遠のライバルである紫吹ゆかりが所属するアルコバレーノのリハーサルを見て燃えたもみじは仲間を見失うことなく、すみれたちを安心させる。

 

 すみれとつばきは先輩としてもみじの手本になるだけでなく、もみじの気持ちにも寄り添って理解することで先輩後輩はあれど対等な関係となる。

 

 リハーサルを終えてホテルで一泊し、ついに紅白歌合戦の時が来る。

 

「さぁお待たせしました! 第100回紅白歌合戦、今開演です!」

 

「はな、緊張してない?」

 

「大丈夫、私には最高の仲間がいるから」

 

「だよね! 私も最高の仲間がいるから怖くなくなってきた!」

 

「先輩方、必ずや最高の歌をファンの皆様にお聞かせしましょう!」

 

「燃えているな、もみじ。私もファンの期待に応えねばな」

 

「私のファンクラブの子たちも応援に来てくれているし、気合を入れないとね」

 

「ふふっ、皆さん気合が入ってるでございますね」

 

「当然ですよ。私たち月光花はついに全国に名が知れ渡ってますから。るり先輩も気合入ってるのではないですか?」

 

「もちろんでございます。わかばさんはあまり変わらないような気がしますが……?」

 

「これでも興奮していますよ。ちゃんとしてないと周りまで引っ張られちゃいますから。リーダーはこういう時にあえて堂々としているんです」

 

「それがわかばさんのリーダー像でございますね。わかばさんらしいでございます。だからわたくしも含めて、皆さんわかばさんについていくのでございますよ」

 

「急に褒めるなんて照れるじゃないですか……」

 

「これは本音でございますよ」

 

「もう……」

 

 わかばとるりは理想のリーダー像の話をし、るりはみんながわかばについていく理由がわかるようになる。

 

 一見わかばは融通が利かない堅苦しい印象を抱くだろうが、硬派だけど時には柔軟にいくことの大切さを同級生のつばきに倣った結果、わかばは何があっても堂々としたリーダーでいようと決めたのだ。

 

 その結果、堅いだけでなくいざという時に頼れるリーダーとなり、メンバーは全員ついていくようになった。

 

 アルコバレーノが歌い終えて月光花の番になり、ステージまでスタンバイする。

 

「アルコバレーノのパフォーマンスも素晴らしいですねえ」

 

「はい! ですが今度は京都から来た硬派で頭のいいローカルアイドル、月光花ですね!」

 

「全員西の名門校の平安館女学校に通う子たちで、武士道と撫子精神、大和魂を受け継ぐ和物アイドルですね。これは期待しかないですよ」

 

「では参りましょう! 日ノ本に咲き誇る花の色! 真夜中に光る美しき月! 月光花! いざ、参る!」

 

 月光花の番になり、琴のイントロから始まり一番売り上げのいい和風ラブソングを歌いあげる。

 

 平安館女学校からだけでなく、欧米からの熱烈なファンが駆けつけ、月光花の紅白歌合戦は大成功となった。

 

 妖魔界からもテレビで放映され、妖怪たちからも黄色い声援が届き月光花は本格的に世界的知名度を上げた。

 

 パフォーマンスを終えて楽屋に戻り、アルコバレーノと同室だったのでわかばがゆかりに声をかける。

 

「あなたたちは確か月光花の皆さん!」

 

「直接全員会うのははじめましてですね。月光花のリーダーの常盤わかばです」

 

「アルコバレーノのリーダーの桃井さくらです! お会いできて光栄です!」

 

「そんなにかしこまらなくていいのよ。私たちデビューは同じ時期で同期なんだから」

 

「いやいや、ローカルアイドルからたった半年で全国レベルになるなんてアタシらよりもすごいですって!」

 

「ふふっ、ファンの応援の量

「でも月光花の皆さんも上品かつ華やかなパフォーマンスで、私たちにはない素晴らしいライブだったわよ」

 

 お互いがお互いを褒め合い、あまりにもキリがないのでわかばがもみじのことで接触する。

 

「ゆかりさん、お久しぶりです」

 

「もみじか、久しぶりだな」

 

「さすがしのぶのライバルですね。私も圧倒されました」

 

「それほどでもない。私たちはまだまだ成長するのだからな」

 

「素晴らしいパフォーマンスなのに決して驕ることのないその心、私も見習わなければなりません」

 

「それはお互い様じゃないか。もみじほどの努力家だって決してあぐらをかくような真似はせん。高飛車きららと違ってな――」

 

「……?」

 

「否、何でもない」

 

 ゆかりがボソッと独り言をつぶやくが、もみじたちには全く聞こえず何があったのかはわからなかった。

 

 わかばの勇気ある行動のおかげでゆかりともみじはライバルとしてだけでなく対等な友人として接するようになり、歴史の垣根を超えることができた。

 

「アルコバレーノは本当に興味深いな。だが私たちも負けない」

 

「うん。私たちは日本の伝統文化を受け継いだ京都のアイドルだから。その……月光花をアルコバレーノのライバルとして見てほしいな」

 

「うん、私たちも負けないよ。はなちゃんたちにも会ってみたかったんだ。これからもよろしくね」

 

 つばきがアルコバレーノに興味を持ち接触を試みると、さくらとはなが友情の証に握手を交わす。

 

 するとはなとさくらは何かを感じたのか、しばらく見つめ合っていた。

 

(この魔力……闇の力を感じるけど、どこか心が引き締まる感じがする……)

 

(何だろう……。アルコバレーノの近くに来ると元気になるというか、落ち込んでいられないなって感じがする……)

 

「おーい、はなー!」

 

「さくらさん、どうなさいました?」

 

「「ううん、何でもない!」」

 

 お互いに何かを感じ取り、自分とは違う魔力だったと感じた。

 

 はなたちだけでなくメンバー全員がお互いの魔力に気付き、どこか心が引き締まるような気持ちになった。

 

 さらに紅組で一番大手のSBY48のパフォーマンスを終えてすれ違い様に会釈をすると、SBY48のうちの9人だけが月光花の方へ振り向いた。

 

「ミューズナイツのみんな、どうしたの?」

 

「ううん、何でもない。ちょっと月光花に何かすごいオーラを感じたなーって思っただけ」

 

「加奈子ほどのアイドルが注目ってことは、相当だね……」

 

「オレらにも感じたぞ」

 

「何だかアタシらとは違うっつーか」

 

「みんなも感じたんだね」

 

「ええ」

 

 SBY48の9人は月光花に何かを感じ、天才と言われている秋山加奈子をも注目させるほどだった。

 

 しかしそれは月光花も同じで9人に何かを感じた。

 

「あのSBY48の中の9人なんだけどさ、さっきのアルコバレーノとはまた違う何かを感じない?」

 

「ひまわり先輩も感じましたか」

 

「わたくしにもわかったのでございます」

 

「彼女たちはミューズナイツといって、SBY48の派生グループらしいわ。まさかあの子たちも……?」

 

「彼女たちの魔力は自分はこんなものじゃないと熱くなれるような感じがしたね」

 

「向上心をくすぶられるような感じだ」

 

 月光花とSBY48の派生グループであるミューズナイツの9人にもお互いの魔力をすれ違い様に感じ取る。

 

 月光花はあまりにも特別なアイドルが多くいたことに少しだけ不安を感じたが、悪いアイドルではなさそうなのでそこは安心できた。

 

 結果は紅組の勝利となり、未成年である月光花は一旦ホテルへ戻り、翌日の祝賀会には参加した。

 

 京都に戻り、はなはすぐに実家に戻って年始の神事の準備に取り掛かる。

 

 それぞれまた日常に戻り、2018年を終えた。

 

 つづく!

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