妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第36話 因縁

 ひめぎくと花柳、そして輝夜と合流したはなたちはアクドーとの戦いに備える。

 

 輝夜は先輩として月光花を見守り、ワゴンカーの中で祈り続ける。

 

 ひめぎくが左手で金棒を握り締め、アクドーを睨みつける。

 

「これ以上あなたの好きにはさせない……! パパの仇を取る……!」

 

「ふん、誰かと思えば妖魔大王の小娘か。あの忌々しい春日の血を引く小娘が今更何の用だ?」

 

「あなたにはわからないでしょうね……。幸せだったパパとの時間を奪われた悲しみを……!」

 

「ひめぎくちゃん……」

 

「大丈夫、今すぐに倒したいけど頭は冷静だよ。アクドー相手だと一人じゃ勝てないのもわかってる。だからみんなと一緒に……罪魔一族の因縁を終わらせよう」

 

「やはり妖魔大王さまの娘ですね。私情があっても冷静でいられるなんて心が強いです」

 

「ならひめぎくに協力せねばならないな」

 

「そうね、妖怪たちのためにも。私たち人間のためにも極楽浄土に軟化させないわ!」

 

「これで正々堂々とどちらの理念が正しいか勝負が出来る。罪深き人間の味方をする下等生物と…人間を滅ぼして理想の世界を創る新世界の神との戦だ。貴様ら人間どもがいかに下等生物であるかを思い知らせてやるわっ!」

 

 アクドーは将軍として立ち上がり、子どもたちである五将軍の仇を取るべく軍配を手に持つ。

 

 そしてひめぎくのことをよく覚えていて、妖魔大王との深い因縁を感じられる。

 

 ひめぎくは意外にも冷静で、はなたちを安心させていた。

 

 花柳が見守る中で戦闘は始まり、わかばの火縄銃による攻撃から始まった。

 

「放てっ!」

 

「奇襲か! だが甘いっ!」

 

「やっぱり銃では攻撃が通らないわね!」

 

「でも私ならいけるよっ!」

 

「ふんっ! 貴様のような馬鹿者が早々に突っ込んでくるのは想定内だ!」

 

「誰が馬鹿者だって!?」

 

「貴様が学力が低いのはわかっている。故に考えるよりも体が動くのだから馬鹿者なのだ」

 

「なるほどね、やっぱりアクドーって頭が固いんだね!」

 

「ほう……? 貴様は囮だと言うのか?」

 

「まあ、そういうこと! はな!」

 

「いくよっ! それっ!」

 

「貴様のことは前言撤回しよう。だがぬるいわっ!」

 

「ならば私たちがいこう!」

 

「はいっ!」

 

 月光花が果敢に攻め続けるもアクドーはことごとく攻撃を止め、月光花の攻撃が全く通用しなかった。

 

 ひまわりは特攻を仕掛けながらたくさん作戦を考え、そしてそれをはなたちが実行に移す。

 

 無限に湧いてくる作戦に対しアクドーも徐々に追い詰められ、ひまわりの策が徐々に通用し始めてきた。

 

「こやつめ……次々と小賢しい真似が浮かんでくるのか……!」

 

「ひまわりちゃんは囲碁と将棋の名将だから作戦を考えるのが得意なんだよ!」

 

「学力も一般レベルではかなりいい方だね」

 

「日向は自頭がいいってものさ!」

 

「なるほど、返答に感謝する。ならば少々本気を出さねばならないようだ……はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 追い詰められてきたアクドーは着物をはだけさせ、気合を入れ始めると餓鬼のように痩せこけた体がだんだん筋肉質な体へと変わる。

 

 元々低かった声がさらに低くなり、荒々しさも現れ始めた。

 

 軍配が少しだけ小さく見え、見た者を震えさせる禍々しさにはなは一歩食い下がる。

 

「これがアクドーの本気……!」

 

「はなさんがここまで怖気づくなんて……」

 

「正直言って私も怖い……」

 

「あの罪魔力の高さは只者じゃない……!」

 

「ふははは! 貴様ら人間どもの罪魔力を集めればこの程度など容易いことだ! 地獄界から集めた罪魔力は無限なのだよ! 人間どもが現世で罪魔力を高め、死後に地獄界に集まってくるのだからな! 人間どもが六道で地獄界によく集まったおかげで我もここまで強くなったのだ!」

 

「だからって私たちは負けない……! 私は100代目春日家神主、春日はな! あなたの罪魔力を封印してみせるよ!」

 

 アクドーがさらに強くなったことではなたちも恐怖を感じ、アクドーの大きくなった罪魔力に怯む。

 

 それでもはなは怖がりながらも勇気を出して一歩前に進み、弓を引いて矢を放つ。

 

 しかし矢はアクドーの胸に当たるも弾き返されてしまう。

 

「そんな……!」

 

「妖魔力が最も強いはなの必殺技が一切通用しないなんて……!」

 

「このままでは私たちはもう……!」

 

「どうした? もう終わりか? この春日家の小娘が最後の切り札というのなら我に勝てないのもうなずけるな。ならば……この国諸共消えるがいいっ!」

 

 アクドーは軍配を天に掲げて黒い雷を鳴らす。

 

 はなの渾身の一撃が通用せず、最も強いはなの最期の一撃が通じないことにひまわりたちは諦めがついてしまった。

 

 するとアクドーは突然倒れ込み、胸には大きな斬られた跡が残った。

 

「え……!?」

 

「一体何が起こったのでございますか……?」

 

 アクドーにダメージが通ったことにはなたちは呆然とし、何が起こったのか周りを見渡してみる。

 

 そこには大太刀を手に持った花柳がアクドーに遠くから斬りかかっていた。

 

「これ以上……某の教え子を殺めることは許さぬぞ……!」

 

「貴様……その剣技はどこで……!?」

 

「アクドー、そなたのその動きは花柳家に代々伝わる花柳流武術だ。そなたはやはり……某の遠い先祖だったのだな」

 

「何だと……!?」

 

「祖父や母上から聞いたことがある。某の遠い先祖は妻と子を捨てて罪魔として生きたまま転生し、地獄界に堕ちてしまったとな」

 

「まさか……貴様は我の子孫だというのか!?」

 

「「「えっ……!?」」」

 

「お師匠さん……」

 

 花柳の口から信じられない事実が発覚し、アクドーとは血の繋がった遠い先祖だったことが判明する。

 

 その事実を花柳から話されると、ひめぎくは花柳を悲しそうに見つめていた。

 

 そしてひめぎくだけは花柳のことを知っていたようだ。

 

「ひめぎくさん、何か知っているの?」

 

「実はパパから聞いた話だけど、お師匠さんは先祖の呪いと因縁をずっと抱えていて、花柳流武術を罪魔一族との戦いに備えてずっと伝承し続けた呪われた家系だったんだ。それにアクドーも元々は人間で、魂を罪魔を束ねる罪魔の女神に売って罪魔となったんだ……」

 

「ではアクドーは元々人間で、自ら罪魔となったということだね?」

 

「そうだ。皆の衆に黙ってしまってすまないと思っている。だがこれは元々某の先祖が生んでしまった因縁だ……。某が自らその因縁を言わらせるのが筋だったが、某が力をつけるには武士道先進と妖魔力、そして神通力が必要だった。だからナデシコアイドルを集めてその三つの力を集めていたのだ。皆の衆を利用していたみたいですまない……!」

 

「花柳先生……!」

 

「皆の衆はここで休んでいるとよい。ここからは先祖のけじめを某がつける!」

 

 花柳はアクドーに斬りかかり、アクドーをさらに追い詰めていった。

 

 アクドーも徐々に軍配では防ぎきれず、ついに花柳の大太刀で軍配が斬られる。

 

 花柳は満月を描くように刀を振り、そして上から一刀両断する。

 

「これが花柳流武術最終奥義……月光花吹雪斬っ!」

 

「ぬうぅぅぅっ……!」

 

「くっ……! やはりただでは斬られぬか……!」

 

「やはり貴様は所詮は下等生物の人間……。この程度の力で我を倒そうなど千年早いわっ! 阿修羅波動っ!」

 

「うわぁーーーーーーーっ!」

 

 花柳はアクドーの最後の切り札によって直撃し、体全体が地獄の業火のような炎に全身を焼き尽くされた。

 

 花柳は焼かれたまま倒れ込み、全身には大きな火傷を負ってしまった。

 

 アクドーは花柳が死んだと確信して後ろを振り向いて立ち去ろうとした。

 

「人間にしてはよくやった方だ。さすが我の子孫というべきだったな。だが……人間とはやはり弱く小さな生き物だ。一人では何もできまい……。さらばだ、我が子孫よ……」

 

「生憎だが……某はただでは終わらぬぞ……! 罪魔力封印ノ陣はもう既に完成している……!」

 

「何だと……っ!? 力が抜ける……!?」

 

 花柳は斬りかかりながら強すぎる罪魔力を弱体化させる花柳流武術の対罪魔一族の魔方陣を描いていた。

 

 アクドーは上手くその策にはまり、アクドーの罪魔力は徐々に弱体化していった。

 

 体つきは変わらないが力が抜け、アクドーは悔しそうに魔法陣から脱出する。

 

「くっ……! まさか地獄界で最も嫌われた魔法陣が使える者がいるとはな……! だがそのようなことをしたところで我には勝てぬ……! その小娘ども程度では何もできまい……! 一旦退却するとしよう……!」

 

 アクドーは自分が不利になると察して人妖神社から去り、地獄界へと戻っていった。

 

 しかし花柳は重傷を負ってしまい、息をするのもやっとの状態になっていた。

 

 はなたちは花柳が心配になって近くまで近づく。

 

「先生! 花柳先生!」

 

「しっかいしてください先生!」

 

「もみじ! 応急処置をお願い!」

 

「ですがここまで火傷していては特効薬は……!」

 

「よい……某はこの程度では死なぬ……。だが今の皆の衆ではアクドーには勝てぬ……。代々花柳家に伝わる言い伝えを皆の衆に伝授する……。琵琶湖に向かい……ダイダラボッチの元へ行き……化身を身に付けるのだ……。人間の道徳心に反応する武士道精神……妖怪と同じく潜在能力を引き出す妖魔力……そして神の力で運を切り開く神通力の三つが重なる時……化身は大いなる力を得るだろうと……」

 

「先生、その琵琶湖に行けば力は得られるんですね……?」

 

「そうだ……皆の衆は……琵琶湖で修業をしてくるといい……。某が愛した日本の伝統と文化と心を……守ってやってくれ……。頼んだ……ぞ……」

 

「「「先生ーーーーーーーーっ!」」」

 

 花柳は意識を失ってしまい、はなたちは悲しみに明け暮れて泣き叫んだ。

 

 ワゴンカーで避難していた輝夜は気まずそうに花柳に近づき、はなたちを励まそうとする。

 

 そして輝夜ははなたちに思いを託す。

 

「私は平安館大学医学部の大学生ですわ……。花柳先生の治療は必ず私が成功させて見せます……。だから皆さんは早く琵琶湖にお行きなさい……」

 

「美月先輩……でも……!」

 

「行こうみんな……。美月先輩は私が小さい頃から人妖神社で治療系の神通力の修行をしていて、治療神通力のスペシャリストなんだ……。だから先輩を信じて……化身という力を得よう……!」

 

「はな先輩……」

 

「美月先輩、花柳先生をお願いします。月光花のリーダーとして、必ずアクドーを倒してみせますから」

 

「ええ、お願いしますわ」

 

 重体となった花柳を治療するために輝夜は残り、月光花は琵琶湖へ向かって行った。

 

 人妖神社の本社は取り戻したが、花柳という恩師を渋滞にまで追い込まれた傷はあまりにも深い。

 

 アクドーを倒すべく月光花はダイダラボッチに会いに行く。

 

 つづく!

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