花柳がアクドーの攻撃によって重体になり、輝夜によって回復させるためにワゴンカーへと運ぶ。
そして地獄界に戻ったアクドーに備えてはなたちは花柳の言ったとおりに琵琶湖へ向かう。
しかし輝夜は花柳の回復のためにワゴンカーを出すことが出来ず、移動は徒歩しかなかった。
「輝夜先輩、ワゴンカーで移動はできませんか?」
「ダメですわ……。花柳先生の回復には時間がかかり、移動しながらだと傷が深まってしまいますわ」
「そうでございますね……ならばわたくしたちは歩いて参るのでございます」
「でも私たちはアクドーとの戦いで傷を負ってるわ。歩くなんてとても……」
「あのっ! みんなも妖怪メダルが一つじゃないのと同じように私もまだ妖怪メダルを持っていますっ!」
「はなくん……?」
「なるほどね、いつものあの人の使うんだね!」
「うん! この天狗の妖怪メダルなら私だけでなくみんなで空を飛ぶことが出来ます! ですが8人分ともなると魔力の消費が激しく使える時間が30分から15分に短縮されてしまいます」
「天狗の飛ぶ速さなら15分で十分だよ。早速それで琵琶湖に行こう」
「うん! 妖怪メダル! 天狗!」
はなはいつも参拝に来てくれる天狗の妖怪メダルをもらっていて、複数人使うと時間は短縮されるが空を飛ぶことが可能となる。
するとはなたちの背中から黒い翼が生え、空を飛べるようになる。
はなたちは急いで琵琶湖へと向かい、輝夜は花柳の回復に集中することとなった。
「皆さん……どうかご無事で……!」
「うう……!」
「先生、今から治しにかかりますわ……! 罪魔により穢れし傷よ……この癒しの妖魔力で彼の傷を治したたまえ……!」
輝夜はワゴンカーの中で花柳を寝かせ、陣を描いて回復呪文を唱える。
輝夜は人妖神社でアルバイトの経験があり、ある程度神通力も持っていて回復に特化した力を持っている。
こちらは月光花、15分よりも前に琵琶湖に到着し、ダイダラボッチを探し始める。
ダイダラボッチはかつて自分の足跡で琵琶湖を作ったという神話がある大型の妖怪だ。
そんなダイダラボッチによって武士道先進、妖魔力、神通力の三つの力で現れる化身の修行をする。
「琵琶湖と言ってもとても広いから探すのに苦労しますね」
「あれだけ大きな体を持っても妖怪だからそう姿は出さないだろう」
「それでも見つけなきゃ京都は……ううん。日本中が危ない……」
「ひめぎく、何かダイダラボッチに会えるヒントはないの?」
「確かこの変だったはずだけど……ここから先は私に任せて」
ひめぎくが案内した場所でダイダラボッチに会えるかもしれないので、緊張した空気でひめぎくが祈りを込める。
そしてひめぎくはダイダラボッチを呼ぶために大声で叫び始める。
「ダイダラボッチさん! あなたの力が必要な時が訪れました! どうかあなたのお力をお借りしたい!」
ひめぎくが叫ぶと大きな地響きが鳴り、はなたちは足場を崩し始める。
転んだ直後に湖から大きな人型の妖怪が現れ、背中には水が多く流れ込んでいた。
そして大型の妖怪は人間ではありえないくらいの低い声で唸る。
「誰だ……? この我を呼び覚ます者は……?」
「あれがダイダラボッチ……!」
「大きいだけでなく威圧感もあるね……」
「すみません、私が呼びました! あなたの力はどうしても必要なんです!」
「むむ……何だ、妖魔大王の娘ではないか。一体我が眠っている間に何が起こったのだ?」
「実は罪魔一族が妖魔界を侵略し、人間界にも侵攻してきました! そして人間を滅ぼして極楽浄土を創るとも言ってました!」
「むむむ……では妖魔大王はもう……!」
「はい……父は罪魔一族に暗殺されました……!」
「なるほど……春日の人間がかつて罪魔共を地獄界に封印したアレを継承する時というわけだな……。だが化身は人間の秩序を魔力とした武士道精神、潜在能力を妖怪並みに引き出す妖魔力、そして神の力を借りた魔術である神通力の三つ全てが同じパワーでなけでば化身は本来の力を発揮できぬ……。さらに使いすぎれば死にはしないが、長くて1週間は眠らなければ回復できぬ……。学生には学業がある以上はとてもリスクの高いものだ……。お主等にパワーをコントロールし、最大限まで上げることが出来るのか……?」
ダイダラボッチは化身を召喚し操ることの難しさを説明し、はなたちに扱えるかどうかを試す。
同時にそれは体力的な負担も激しく、使いすぎれば長くて1週間は眠るリスクも話す。
当然平安館女学校は偏差値が高く、授業に遅れることは致命傷となる。
それでもはなたちの表情は変わることなく、ダイダラボッチに決意を表明する。
「それでも今の私たちには必要なんです! リスクはわかっています……でも守り切れなかったら勉強どころか明日すらなくなってしまうんです! だからこそ私たちが化身を使い、罪魔一族からこの世界を守りたいんです!」
リーダーのわかばはダイダラボッチに真っ先に自分たちの答えを叫ぶ。
それを聞いたダイダラボッチは考え込みながらもうなずき、わかばの答えを尊重して答える。
「うーむ……それほど深刻な状況のようだな……。ならば琵琶湖の底に来るがいい……。河童の妖怪メダルを使い、湖の底に潜るのだ……」
「るり先輩、すまないがよろしくお願いします」
「かしこまりました、つばきさん。妖怪メダル! 河童!」
るりが河童の妖怪メダルで淡水なら泳げるようになり、はなたちはダイダラボッチの案内で湖に潜る。
そこには古文書にも書かれていない鳥居があり、人間には入れない領域となっていた。
「ここが化身の修行の場だ……。お主等にはここで座禅を組み、八咫烏さまに祈りを捧げ化身の力を得る……。だがお主等の祈りが足りぬと八咫烏さまに届かず、河童の力も失って溺れてしまう……。そうなる前に我が陸まで上げて救おう……。お主等……覚悟はよいか……?」
「ここまで来たら逃げるなんてないでしょ! ダイダラボッチさん、見ててください!」
「では8人とも、ここで座禅を組み祈りを捧げよ……。我が八咫烏さまに呪文を唱える……」
ダイダラボッチに化身の力の入手方法を教わり、言われるがままはなたちは並んで座禅を組む。
「八咫烏さまは私たち妖魔界の神で、妖怪なら誰もが尊敬する妖怪なんだ。そんなお方からお力を得るなんて光栄すぎるんだ……」
「私たち人間も八咫烏に導かれて日本という国が生まれたと神話で聞いたことあるよ。だからこそ緊張しちゃうなあ……」
「大丈夫よ。八咫烏さまは慈悲深く、そして人間の無限の可能性を信じて日本を託した方だから私たちを信じてくれるわ」
「はい!」
「では儀式を行う……。各自祈りを捧げよ……」
ダイダラボッチは湖の中で人間と同じ大きさへと変身し、神社の神主姿で儀式を執り行う。
はなたちは座禅を組みながら祈りを捧げ、八咫烏が祀ってある神座へ視線を向ける。
ダイダラボッチが御幣(ごへい)を振ると鈴の音が聞こえ、はなたちはより祈りに集中する。
するとはなたちの体がズシンと重くなり、座ることすら出来なくなる。
「やはり人間には荷が重かったか……」
「体が重い……!」
「これが化身の強すぎる魔力……!」
「でもこれに耐えれば……!」
「ほう……ここまで耐える人間は初めてだ……」
はなたちは座ることすらできないはずなのに座禅を続けようと根性を見せる。
ダイダラボッチもここまで耐え抜く人は初めてだとつぶやき、儀式を続ける。
すると黄金の光がまばゆく光りだし、はなたちを包み込んだ。
「うわっ!?」
「この光は……八咫烏さま……!? まさか儀式は成功したのか……!?」
「何だって……!?」
黄金の光の正体は八咫烏で、ダイダラボッチも驚きを見せる。
そして先ほどまで重かったからだが嘘のように軽くなり、そして煩悩から解き放たれたような気分になる。
するとはなたちの心に神々しい男性の声が聞こえる。
『皆の武士道精神による穢れなき魂、潜在能力を最大限まで引き出している妖魔力、そして私の力と心を強く受け継いだ神通力……この私にも届いたぞ。優れたる未来のヤマタノオロチたちよ、地獄界で拡大しつつある罪魔たちの暴走を止め、そして穢れし魂を浄化してほしい。そのために日ノ本の力を受け継いだ化身を使うといい。この三つの力を最大まで上げて同じ力となりし時、化身はお前たちの力となるだろう。私は輪廻の頂点でお前たちの健闘を見守っているぞ……』
「八咫烏さま……ありがたき幸せであります……!」
八咫烏は自らはなたちに語りかけ、そして化身を使う者として認められた。
ひめぎくは感極まって涙を流し、ダイダラボッチはひめぎくの肩をポンっと叩いて励ました。
「あれが八咫烏さま……!」
「なんかさ……あまりにも神々しすぎて何も言えなかった……!」
「私もずっと神社で働いたけど……八咫烏さまの声をはじめて聞いたよ……」
「そうね……。八咫烏さまの意思を私たちは受け継いだわ。だからこそ罪魔一族との戦いに終止符を打ちましょう!」
「「「うん!」」」
「皆さん! そろそろ河童さまの能力が切れそうでございます!」
「もうそんな時間なんだね……!」
「我が地上まで送ろう……しっかり掴まるがいい……」
八咫烏の力によって化身の力を得た月光花は河童の能力が切れかけたのでダイダラボッチによって地上へ送られる。
校歌が切れるギリギリのタイミングで地上に戻り、はなたちはダイダラボッチに別れを告げる。
「ダイダラボッチさん! ありがとうございました!」
「お主等の力は我の想像を超える見事なものだった……。この化身を使えた者は初代春日家の兄弟のみだ……。彼ら以来二千年ぶりと言ったところだ……。妖魔大王の娘よ、そして選ばれし人の子よ……。我ですら守り切れなかった妖魔界と人間界を……我の代わりに守ってくれ……」
「もちろんです! 私たちに任せてください! みんな、行くわよ!」
「「「おー!」」」
こうして月光花は化身を手に入れ、アクドーとの最終決戦に挑む。
つづく!