妖魔界、それは妖怪たちが平和に過ごし人間たちの信仰で成り立っている異世界。
はなの家である春日家は代々その妖魔界と人間界を繋ぐ者として、あらゆる宗教との協力の元で神事をしてきた。
妖魔界は鬼たちを中心に地獄界を管理する格式の高い世界であり、地獄にいると
ところが罪魔一族という西暦時代に京都を災いに陥れた一族が復活し、実家である
地獄界にいたはずの罪魔一族が人間界に現れたという事は、おそらく妖魔界で何かあったのだろう。
はなは家族の無事を確認し、妖魔大王の一人娘と名乗るひめぎくと、一緒に変身して戦った幼なじみの日向ひまわりと一緒に人妖神社の支社へ避難する。
「ひめぎくさん、ここがうちの人妖神社の支社よ。本社より少し小さいけれど、本社に何かあった時にのみ使用される一般人立ち入り禁止の場所なの」
「はい、ここでも
「とりあえず中に入って。妖魔界に何が起こったのか、娘のはなとその友達のひまわりちゃんに話してくれるかい?」
「はい」
「それじゃあワシらは神社の準備をするからの。年頃の女の子同士で仲良くするんじゃぞ」
「うん」
両親と祖父は同い年くらいの女の子同士の方が話しやすいだろうと判断し、後の事ははなとひまわりに託す。
ひめぎくはかしこまって正座をするが、少し経って痺れたのか足を崩す。
用意したお茶を一口飲み、ひめぎくは本題に入る。
「それで、罪魔一族ってどんなものなの? 私たちは神話で聞いた程度でしか知識がないんだ。だから詳しく教えてほしい」
「人間界では七つの大罪というものがあったよね。その大罪を行い、そして
「妖魔大王さまは私もはなの家で何度か会ったことある。妖怪の大王さまだったね」
「うん」
「それであの5人は誰かな? 私の知ってる神話ではさっきの5人はいなかった」
「アクドーが新しく生み出した子どもたちだよ。人間の悪いところを上手く利用する冷血のオロチマル、残虐な手を使う卑怯者の知将アマノジャーク。心を読み取って精神を支配する魔性の女サトリーヌ。力任せな戦術で恐怖を植え付ける豪傑オニゴロー。そして欲望に忠実なお調子者のドクロスケ。人間界よりも上位である天界と妖魔界を破壊と混乱で陥れ、最も罪深く邪魔な人間界を滅ぼし、人間のいない極楽浄土を作り上げて偽りの平和を創ろうとする、人間界で言えば悪魔的な存在だよ」
「確かに普通の人間には悪魔と言った方がしっくりくるかも。私とはなは神社に関わってるから罪魔の方がしっくりくるけど」
「ひめぎくさん、それでもう一つ気になったことがあるんだ。あなたと私ってどこかで会ったことあるかな?」
「やっぱりそうだよね。私のパパは元々は人間だった。でも禁術を犯してまで人間界の平和を守って妖怪として転生した。その名は……
「じゃあ私たちって血が繋がってるってこと……?」
「そうなるね。ちなみに私は13歳で中学二年生になるんだ」
「私の方がお姉さんなんだ……」
「だから二人とも雰囲気が似てると思った……」
ひめぎくは妖魔界で何があったのか、罪魔一族とは何者なのか、そして罪魔一族の幹部のことを話し、はなとひまわりはある程度神話を理解していてひめぎくも話しやすいなと感じる。
話の中で意外なことに、ひめぎくの父ははなの先祖とは兄弟で、妖怪として転生しているため寿命は長くなり人間である春日家ははなの代になるまでに時が流れていた。
つまり時を隔てた従姉妹関係であり、ひまわりは二人が顔が似てると納得した。
「つまり妖魔界を荒らすために地獄界から上がってきて、妖魔大王を殺して人間界よりも上位の世界を支配し、さらに本題である人間を滅ぼして偽りの平和を築いた世界を創るってことでいいかな?」
「さすが名将と言われる日向家だね。日向家は代々頭がいいって聞いたことある」
「私は学校では成績は低いけどね」
「それでも一般では厳しい難関私立大学に入れる程はあると思うよ。それよりも私ならともかく、ひまわりちゃんにもどうして妖魔の力が?」
「日本人は妖怪が身近だから妖魔力が強い傾向がある。でも自己中心的だったり、残酷だったり、自分のためだけに他人を陥れるような人間には宿らず、罪魔力が覚醒してしまい罪魔として地獄界に生まれ変わるんだ」
「そしてさっきの罪魔は私たちによって地獄界に再封印した……ということだね」
「うん。そこであなたたちにお願いがあるの。罪魔一族からこの人間界を守りと妖魔界を解放してほしい。父は人間と妖怪の関係をずっと重視して、春日家にそのお守りを託し、今ようやく人間と妖怪は共存し始めている。その関係を壊したくない……。人間界まで破壊と混乱の世界なんかにしたくない……。あんなの平和な世界とは認めたくない……! お願い……父と妖怪たちを……助けて!」
頭の回転と理解力が言いひまわりは話を上手くまとめ、ひめぎくも驚くほどの頭脳を見せる。
そこでひめぎくははなたちに頭を下げてお願いし、目には涙がこぼれていた。
大好きな父が目の前で殺され、平和だった妖魔界を支配され、ついに人間界にまで手を伸ばした。
はなは家の伝統として罪魔と戦う使命があり、ご先祖様が果たした成果を無駄にしたくないという責任がある。
そしてひめぎくの無念と悲しみを聞き、はなは勇気を出して戦う決心をした。
「罪魔が人間界に来た時、たまに人間に憑依して悪さをすることもある。そのせいでせっかく築き上げた人間と妖怪の関係性が壊れるのは嫌! 罪魔一族が掲げる極楽浄土にさせたらみんなが悲しんじゃうから、私はひめぎくちゃんと協力するよ!」
「はなさん……!
「よく言ったよはな! 私も協力するよ! あの引っ込み思案なはなが戦うって決めたんだ! 私だってこの平和な京都を守りたい!でもさ――」
「でも……?」
「私たちって、オーディションの途中じゃなかったっけ?」
「あ……!」
はなは罪魔のことに詳しく、自分にしかできないことだと理解してひめぎくに協力をする決意を表明する。
続いてひまわりも協力することになり、ひめぎくは頼もしい味方に安心してようやく笑顔を見せた。
しかしひまわりはアイドルのオーディションの途中だという事を思い出し、はなとひまわりは気まずくなった。
ひめぎくはアイドルのオーディションの途中で抜け出したことを知らないため、キョトンとした顔をして見つめる。
「オーディション?」
「あ、えっと、それは――」
「説明の必要はない」
「あっ! 花柳さん!」
突然先ほどのオーディションの主催である
「あなたは……?」
「花柳小次郎と申す。先ほど彼女たちが申したオーディションの主催なる者ぞ」
「えっと……ひめぎくです」
「よろしく」
「でもどうしてここに!?」
「あの方角からして春日家のご実家だと思ったのだ。そしていざ様子を見てみたら、そなたたちがあの罪魔と戦い見事に勝利した。そして春日家の神主から入る許可をもらい、今の話を全て聞いたのだ。神話の悪魔である罪魔一族が京都を襲っているのであろう? なら
「じゃあ私……アイドルになるんだ……!」
「やったー! 私の夢が叶ったんだ! これで二人のおじいちゃんをいっぱい応援できる!」
「でも私には巫女としての責任があるんだけどどうしよう……?」
花柳が現れてからオーディションの結果を発表し、見事にはなとひまわりは合格した。
ひまわりはアイドルになる夢は叶ったが、はなには実家の使命があり、本来ならアイドルなんてやっている場合じゃない。
同時に神社の本社が焼かれた上に奪われ、アイドルをやれる状況のはずがないのだ。
はなはせっかくひまわりが誘ったにも関わらず、オーディションの合格を辞退しようとした。
「失礼するよ」
「お父さん?」
「話はさっき花柳さんから聞いたよ。はな、アイドルをやるんだって?」
「お父さん、私はまだアイドルをやるって――」
「妖魔力を効率よく集めるには人のため世のために働き、自己犠牲にならぬようによりよい世の中にする魔力でもある。それにはながアイドルになれば妖怪たちも応援するし、人妖神社にも御利益がまた新たに出るはずだ。神社の金儲けのためではない。お前がステージに立つことで、また心がひとつになれるはずだ。大和撫子アイドルとして、日本文化を広め、彼らの友情をまた深めてほしい。花柳さん、印税などは我が神社に寄付しなくて結構です。どうか娘をよろしくお願いします。」
「よいのですか? そなたの娘さんを某に預けても」
「あなたのような方なら信用できます。それにあなたには今まで出会った人間の誰よりも強い妖魔力を感じます。罪魔一族との戦いもありますが、よろしくお願いします」
「では春日はな、日向ひまわり。他にも
「えっと、そういうことなら……やってみます!」
「やった! はなと一緒なら私、頑張れるよ!」
「これからもよろしくね」
花柳に全てを話したはなの父が部屋に入り、はなは説得されてアイドルになる。
花柳は満足そうに微笑み、手に持っていた扇子を開いて仰ぎ始める。
花柳ははなたちの事が心配で駆けつけ、同時に今までの戦いを見て合格を決めていた。
こうして妖魔大王の娘であるひめぎくと出会い、花柳の下でアイドルになり、新しい人生を歩むのでした。
つづく!