妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第39話 アクドーの過去

 アクドーは罪魔になる前は人間であり、生前から罪魔となったことを話す。

 

 西暦時代に何が起こったのか、アクドーはすべてを話そうとする。

 

「我が生きてきた2000年前……人間どもはまさに外道を極めていた。そう……汝らの知る第三次世界大戦だ……」

 

「「「……!?」」」

 

「あの時の世界は本当に腐りきっていて、人間どもが自らを滅ぼす瞬間でもあったのだ。まるで地獄界よりも地獄らしい世界だった――」

 

 アクドーはさらに話を続け、はなたちは何が起こったのか神話の真実を聞きだす。

 

 それは西暦2020年のことだった。

 

 世界中で秩序が崩壊し、世界の覇権を狙ったある国家が四方から侵略を開始し、日本も例外ではなかったのだ。

 

 その侵略のために核兵器だけでなく、生物兵器や化学兵器も使うほど激しい戦争となっていた。

 

 戦火に巻き込まれ京都では春日達巳と春日達希の春日兄弟は別の神社で神職をしていて、戦争の終戦を祈っていた。

 

「兄者、このままいけば日本のみならず人類は滅びてしまいます!」

 

「わかっている! もしこのまま人類の秩序が崩壊すれば本当に世界は終わる……! そうならないためにも世界中に武士道精神を伝えなければならない!」

 

「しかし世界中で略奪や殺人テロが増えてる以上、どうやって武士道精神を伝えればよろしいのですか!? こうして祈ってばかりじゃ何も……!」

 

「こんな時に我々を導いてくださる神が訪れれば……!」

 

 春日達巳は神社の神に祈っていたものの、人々の秩序が崩壊してしまい祈りが届かないことを誰よりも嘆いていた。

 

 弟の達希もこのままではいけないと焦っていて、どんな対策をすればいいのか悩んでいた。

 

「春日、また祈っているのか」

 

「花柳!」

 

 彼は花柳亜久人、アクドーの生前の姿だ。

 

 花柳亜久人は最近結婚し子どもも生まれたばかりで幸せな家庭を築いていた。

 

 しかし花柳の様子は変で、何かを隠している様子だ。

 

「どうせ人間たちは滅ぶんだから祈っても無駄だと思うけどな……」

 

「お前のネガティブな癖は何とかならないのか?」

 

「そうですよ、亜久人さんは悲観的すぎますよ」

 

「しかし現実でこのような戦争ばかり起きている。世界が壊れるのも時間の問題だ。いっそ人類は一度滅びた方がいい薬かもしれないぞ」

 

「おい……もう一度言ってみろ? 今度それをまた言ったら許さないからな!?」

 

「兄者! 今喧嘩しても何の意味もないですよ! 亜久人さんも取り消してください!」

 

「ふん! 貴様のお人よしには心底うんざりしていたんだ! 俺は人類がいるから世界中での問題は解決しないと思ってるからな!」

 

「お前がここまで冷酷で人間嫌いだと思わなかったよ……! お前は出会った時からネガティブで悲観的になる癖があったけど、ここまで絶滅論者だったとはガッカリだよ! 二度とこの神社に来るな!」

 

「言われなくてもそうするよ! 勝手に祈ってろ自己犠牲野郎のお人よし!」

 

「あっ……! 兄者、いくらなんでも言い過ぎでは……!?」

 

「あいつめ……!」

 

 花柳と春日は幼稚園の頃からの幼なじみで、春日はポジティブかつお人好しな性格をしていた。

 

 一方の花柳は反対にネガティブで人類がいなくなれば問題は解決するという人類絶滅論者だった。

 

 二人は顔を合わせる度に喧嘩をしていて、ついに絶交をしてしまったのだ。

 

 それがこの二人の運命を狂わせることを知らずに。

 

 花柳は空き缶を蹴り飛ばしながら怒りをぶつけ、妻と子が待つ家に帰っていた。

 

「おかえりなさいあなた。また春日さんと喧嘩でもしたの?」

 

「何でもない……。今から気分転換してくるからまた外に出る」

 

「わかったわ。あなたのことを待ってるからね」

 

「ああ、行ってきます……」

 

 この会話が夫婦として最後の会話となり、花柳は嵐山の方へ一人で向かって行った。

 

 花柳は嵐山に着くとブルーシートで隠していた何かを取り出す。

 

 そこにはたくさんの人々の遺体があり、花柳は身分を隠して殺人行為を繰り返していた。

 

 人類がいるから世界の問題は解決しない、だからこそ誰にも見つからずに自分の手で粛清してきたのだ。

 

 すると花柳は魔法陣を描き、呪文を唱え始める。

 

「ついに長年の時を経てこの時が来た……。人類うを滅ぼすには罪魔の力が必要だ。さあ、人々の骨……生贄として捧げよ! 自らの肉……あなた様に捧げよ! うあぁーーーーーーっ……! そして……畜生共の血……力づくで奪い生贄として捧げよ……! 罪魔を束ねる地獄界の帝王ホロビノミコよ……この世界に甦れ!」

 

 花柳は罪魔の帝王であるホロビノミコへ生贄を捧げ、黒く不吉な霧が嵐山を包み込む。

 

 さらに黒い雷が花柳に直撃し、花柳の体は燃え尽きていった。

 

「ふはははは! 熱い……熱いぞぉーーーっ! 力がみなぎってくる……! 今なら何でもできる気がするぞ! 覚悟するがいい人間どもっ!」

 

 髪は抜け落ち肌は灰色に染まり、人の形をしていても原型を留めていない変わり果てた姿になった花柳は罪魔として生きたまま転生する。

 

 花柳は嵐山から飛び出し、京都の上空から攻撃を仕掛けてくる。

 

「さあ人間どもよ! 自らの犯した罪を嘆き死に絶えるがいい! 貴様らが生きている限り世界に平和は戻らぬのだから破壊しつくしてみせようぞ!」

 

 花柳は京都に空襲を仕掛け、京都から人類を滅ぼそうとする。

 

 その異変に真っ先に気付いたのは春日兄弟だった。

 

「この気配は……!?」

 

「兄者……この気配は人間のものじゃないですよ!」

 

「かといって妖怪でもない……まさか地獄界の罪魔か!?」

 

「罪魔ってあの地獄界に転生した罪人たちのことですか!?」

 

「ああ……六道の中でも最も極悪な人間が罪魔なんだ。まさか生きたまま罪魔になるなんて……! 止めなければ世界は地獄界に変わってしまう! 止めに行くぞ!」

 

「はいっ!」

 

 春日兄弟は罪魔力の根源の方へ向かい、嵐山の方へ向かって行った。

 

 すると人々の遺体が散らばっていて、達希はあまりの景色に吐き気が起きる。

 

「何ですかこれは……うっ!」

 

「達希、大丈夫か?」

 

「あまりにもおぞましい……! 一体誰が……?」

 

 春日兄弟は遺体の調査を進め神職の力である神通力を使って真相を確かめる。

 

 すると人の手で殺され、そして何者かに生贄にされたことが判明する。

 

 調査を終えて春日兄弟は神社に戻ろうとすると、罪魔となった花柳が戻ってしまう。

 

「これを見られたからには生きては返さぬぞ……覚悟するがいい人間よ」

 

「しまった……見つかった!」

 

「兄者……!」

 

 花柳も春日兄弟も本人たちとは知らず一触即発状態になり睨み合う。

 

 達巳は神通力を使って罪魔を封印しようと試みるも、花柳は達巳の動きを見て気づき始める。

 

「ほう、その力は神通力を持っているようだな」

 

「何故それを……!? まさかお前……花柳か!?」

 

「だとしたらどうする?」

 

「その姿は一体……!?」

 

「我は花柳亜久人ではない。我の名は……罪魔の将軍アクドーだ」

 

「アクドー……お前、どうしてこんなことをしたんだ!?」

 

「人間がこの世に存在するから秩序は崩壊し、心を失ったのだ。こうなったのは人間どもの自業自得だ。罪をこれ以上重ねる前に粛清をし、この世界を真の極楽浄土を創り上げる。そのためならば罪魔になろうとも構わぬのだ」

 

「お前……そこまで落ちぶれるとは思わなかったよ! もうお前は友達なんかじゃねえ! 地獄界に封印してやるっ!」

 

「兄者! 私も協力します!」

 

 春日兄弟と花柳ことアクドーは直接決闘をし、春日兄弟は罪魔となったアクドーを地獄界に封印しようと試みるも、罪魔となったアクドーの力は強く、とても人間の力では叶わなかった。

 

 達希はアクドーの一発で気絶し、追い込まれた達巳は呪文を唱える。

 

「この呪文は禁術で命と引き換えになるが……世界を守るためならば仕方あるまい! 妖魔力よ! 我に世界を守る力を与えたまえっ!」

 

「何っ……!?」

 

 達巳は禁術である妖怪の力を使い、人間をやめて妖怪へと転生した。

 

 天狗の飛ぶ能力、鬼の圧倒的パワー、河童の水の中でも生きる呼吸などを手に入れ、アクドーを徐々に追い詰めていく。

 

 しかし達巳の心臓は徐々に止まり、呼吸も荒くなっていった。

 

 そしてアクドーを追い詰め、達巳はついに封印の魔方陣を描くことに成功する。

 

「しまった……! 力が抜けていく……!」

 

「罪深き罪魔よ……地獄界に眠りたまえっ!」

 

「春日……貴様ぁーーーーっ! このままで済むと思うなよ! 人間どもは必ず罪を償う時が来る! いつか地獄で這い上がり、もう一度人間どもを滅ぼしに来るぞぉーっ!」

 

 こうしてアクドーは地獄界に封印され、極卒たちに罰を与えられるのだ。

 

 封印が成功すると達希が意識を取り戻し、達巳の方へ這いながら近づく。

 

「兄者……アクドーは……?」

 

「ああ、地獄界に封印した。だが……ちょっとリスクが大きすぎたかな……。俺もここmでみたいだ……」

 

「兄者……嫌だ! 兄者を失ったら私はどうすれば……!」

 

「案ずるな弟よ……。俺が死んでも……お前が跡を継げばいい……。お前は俺よりも神通力や武士道精神が強い……。だから俺はお前に後を託せる……。だから……頼んだ……ぞ……」

 

「兄者……兄者ぁーーーーーーっ!」

 

 こうして達巳は息を引き取り、そのまま亡くなってしまった。

 

 達巳の葬儀が終わり、京都では禁術を犯し妖怪になり命を落としてでも罪魔を封印した英雄として祀る新しい神社を建設することとなった。

 

 葬儀が終わった三日後に京都で異変が起こる。

 

「急に空が暗くなったぞ……?」

 

「何? あの黒い雲の渦は……?」

 

「この気配は妖怪……?」

 

「春日さん、何かわかりますか?」

 

「あれは……八咫烏さまだ!」

 

 黒い雲の渦から三本足のカラスが舞い降り、それは八咫烏というものだった。

 

 神話で日本の建国のきっかけとなった神の使いが現代に舞い降り、京都中はパニックになる。

 

 そして八咫烏は達希を見つけると達希の方へ降り立つ。

 

「お前の兄、春日達巳は人間としては死んだが、妖怪として転生し、禁術を犯してまで世界を救った功績を称え、妖魔界という妖怪の世界の大王に就任した。人間ではなくなったが、妖怪としてお前の兄は生きている。だから案ずることはない」

 

「そうでしたか……。しかし兄を失った私にどうすれば……?」

 

「この世界を巻き込んだ戦ですべてが焼かれてしまった。だがもう一度立ち直る覚悟があるならば、この武士道精神をもう一度後世に伝えるべく学び舎を建てよ。お前ならばできるはずだ」

 

「武士道の学び舎……」

 

「この国日本は一度は戦に参加したが、今回の罪魔の事件で戦を放棄し、自力で立ち直る方へ転換した。その様子を俺は見ていたぞ。その覚悟がある限り、日本はもう一度立ち直れる。残るは……お前自身が後世に残す覚悟があるかだ」

 

「八咫烏さま……承知しました。私、頑張ります!」

 

「そしてお前の兄と今後も交流を続けるべく、妖魔界や天人の住む天界を結ぶルートも確保した。そこにお前自身が新たな神社を建て、そこを拠点とするといい。妖怪たちとの絆をこの町から深めるのだ。ではさらばだ、またお前に言い残すことがあらば現れよう」

 

 八咫烏の助言により達希は立ち直り、京都から武士道精神を学ぶ神道の教えを取り入れた大学、後の平安館大学を創立し、兄と八咫烏を祀り妖怪たちの交流の場を設ける人妖神社を創立した。

 

 アクドーの話を聞いたはなとひめぎくは神話の真実を知り、唖然としていた。

 

「ご先祖様はそんな偉大なことをしていたんだ……」

 

「驚いたのははなのご先祖さまやパパの兄弟とアクドーが幼なじみだったなんて……!」

 

「だったら何でその友達を殺したのだ!」

 

「我の野望のために奴は邪魔だったのだ。奴のせいで我は地獄界で理不尽な罰を与えられ、苦しんできたのだ。真に罪を重ねたのは人間どもなのになぜ我が罰を受けねばならぬのだ」

 

「そっか……だったらなおさらあなたの野望を止めてみせる! みんな!」

 

「「「うんっ!」」」

 

 西暦時代から続く因縁を解くべく月光花とアクドーの戦いはここから始まる。

 

 つづく!

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