はなだけは究極奥義、妖魔月光斬を知っていたが未だに使えたことがない。
ひめぎくでさえも知らなかった大技にプレッシャーをはなは感じるが、それでもぶっつけ本番でやってみることを決意する。
「みんな、やろうよ! 私でさえ出来たことがない大技だけど、アクドーに勝つためならやってみる価値はあると思う!」
「はながそこまで言うならやってみよう! 私ははなについていくよ!」
「はな先輩が決意をなさったのなら、私にもやらせてください!」
「はな君ほどの実力者が出来ないともなると、私たちもサポートするよ」
「あのアクドーを倒せるのなら試してみる価値はあるな!」
「私も賛成よ! これ以上みんなを巻き込まないためにも!」
「はなさん! その妖魔月光斬はどのようにお使いになられるのでございますか?」
みんながはなのやる気に賛同し、ひめぎくもうなずいて賛成する。
そんな中で使い方が気になったるりははなに使い方を質問する。
そしてはなは深呼吸をして説明する。
「それは……武士道精神と妖魔力、そして神通力を魂に集めます。化身と一体化することで化身が持つ妖魔刀が黒い霧に包まれ、罪魔力を闇に封印して罪魔となった者の魂をも浄化して消し去る究極の技です。その代わり一度でも外したら気を失うほどの威力なのでリスクも非常に高くなります」
「ならギャンブルだね。はな、私もやるよ」
「ひめぎくちゃん……みんな! 妖魔月光斬をするためにアクドーを弱らせよう!」
はなは妖魔月光斬のためにアクドーを弱らせる作戦を立て、アクドーも溜息をついて月光花にトドメを刺そうとする。
「どうあがいても貴様らの敗北はもう決まっている! 今ここで死ぬがいいっ!」
アクドーは月光花の最後の抵抗に終止符を打とうと攻撃を仕掛け、はなたちは化身に三つの力を集中させる。
するとそれぞれの化身たちの刀が黒い霧に包まれ、ついに妖魔月光斬の準備が出来る。
「これで終わりだっ!」
「花柳先生の先祖代々の因縁をここで終わらせてみせる! みんな!」
「「「うんっ!」」」
「地獄の業火に焼かれて死ねえっ!」
「「「妖魔月光斬っ!」」」
アクドーの右手から黒い地獄の業火が月光花を襲うと同時に、月光花の化身が刀で満月を描くように刀を回し、そしてアクドーに斬りかかる。
地獄の業火と刀が競り合い、徐々に地獄の業火が押し始める。
「ふはははは! 所詮貴様らは下等な人間だな! 我の力の前にひれ伏すがいい! そして人間も妖怪も絶滅し、真の極楽浄土を創ってみせよう!」
アクドーは高笑いしながら月光花を終始押していて、はなたちは自分たちの弱さを悟って諦めかけた。
「っ――!?」
「え……!?」
アクドーの力に負けて諦めた瞬間、アクドーの右肩に切り傷が出て血が流れる。
そこには折られたはずの刀がアクドーの右肩に刺さっていた。
投げられた方向を見ると、そこには傷だらけの花柳が脇差を投げてアクドーの気を散らしたのだ。
「はあ……はあ……! せめて最後の抵抗ぞ……」
「おのれぇっ! 死にぞこないの人間ごときがっ!」
「今だよっ!」
花柳の最後の抵抗に怒りが頂点に達したアクドーは花柳を殺そうと左手で地獄の業火を出そうとする。
その隙に月光花は妖魔月光斬の力を強めてアクドーの攻撃を押し返す。
するとその時だった、はなたちに数々の花びらが舞い降りて黒い霧が包み込む。
「何……!?」
「またアクドーの攻撃……!?」
「ではなさそうでございますね……?」
「この感じ……懐かしいなあ……」
「私も懐かしく感じる……」
不思議な黒い霧と花びらに月光花は疑問に感じ、周りを一度見渡してみる。
するとはなとひめぎくだけは懐かしさを感じていて、不思議な力がはなたちに力を与える。
『聞こえるか、ひめぎくよ』
「その声は……パパ!?」
『妖魔月光斬は三つの力を集め、そして思いの強さと魂の強さに反応し、罪魔を完全に断ち切る究極奥義だ。私たちでさえ使うのに苦労をしたが、ひめぎくたちなら出来ると信じている。魂の穢れが強いほど自分自身が断ち切られ死ぬリスクはあるが、ひめぎくなら大丈夫だと信じているぞ』
「パパ……」
ひめぎくには父親であり初代春日家の兄である妖魔大王の声が聞こえ、ひめぎくは涙を流しながら力を溜めて斬撃に集中する。
一方のはなはというと――
『君が春日家の今の末裔だね?』
「あなたは一体……?」
『俺は春日達希、君の遠い先祖に当たる者だ』
「じゃああなたが初代……!」
『君ほどの武士道精神、妖魔力、そして神通力を持つ者は初めてだ。私たちを超える力を十分持っている。残るは自分自身をもっと信じるのみだ』
「でも……8人でやっとなんだよ……?」
『心がバラバラではダメだ。この技は俺たち二人じゃ力を発揮できず、地獄界に閉じ込めるので精いっぱいだった。だがこの技の本当の力は8人が心を合わせて初めて発揮するんだ。自分だけでなく、仲間全員を信じるようみんなに伝えなさい』
「わかりました! みんな! 今のままじゃ心がバラバラだから心を一つにしよう!」
「「「わかった!」」」
「私がせーのって掛け声を出すわ! その後に『罪魔退散』ってみんなで叫ぶわよ! いくわよ! せーのっ――!」
「「「罪魔退散っ!」」」
「ぐわぁーーーーーーーーーっ!――」
月光花の掛け声に合わせて妖魔月光斬は本領を発揮し、アクドーはついに一刀両断されて倒れ込む。
駆けつけた街の人々は喜びを分かち合い、花柳も倒れかけながらも微笑む。
しかし月光花は戦いはまだ終わっていないという意思表示をすべく、残心でアクドーの状態を確認する。
意識を確認したところもはや虫の息状態で、とても立てる状態ではなかった。
アクドーは最後の力を振り絞ってはなたちに悔しさをぶつける。
「貴様ら……どこにそのような力が……?」
「パパと初代春日家の叔父さんが私たちに助言と力をくれたんだよ。アクドー、あなたの罪魔としての力はもうなくなったはず。だからもう一度地獄界に封印してみせるよ」
「あいつら……死んでまで我の邪魔をするとはな……。あいつらはいつもそうだ……我の思想を一度も理解せぬ……」
「本当はわかってるんでしょ? 人間の欲は消えないって。それはあなたもそのはずです」
「春日家の小娘に何がわかる……! 我がどれだけ人間に失望したか……! 平気でうそをつき裏切り……他者を陥れるのに手段を選ばず……己さえよければ誰が不幸でもいい欲望だらけの秩序も何もない世界に……価値があるとでも思うのか……?」
「アクドー、確かにあなたが生きた第三次世界大戦の時代は秩序も理性もなくなり、人間たちは大失態を犯しました。ですが一度すべてを失い人間たちは反省し、武士道精神を日本から世界に伝えるために平安館大学が生まれ、付属校も戦争が終わってからも続いています。あなたがもしあの時に改心し、平安館大学が創立されるまで待っていれば、きっと世界に武士道精神が伝わるはずでしたよ」
「ふん……その頃に我はもう罪魔に魂を売ったのだ……。今更人間らしいことなどできぬ……。貴様らに殺されるくらいなら……! 我が主、ザイマノミコよ! この我を生贄に捧げ、この世界を真の極楽浄土に変えたまえ!」
「待て! 貴様、早まるでない!」
「もう遅いわ! 我の体はすぐに地獄の業火に焼かれ、魂はザイマノミコに捧げられ二度と転生出来ぬ! 我は極楽浄土にすることを諦めぬぞ! 人間ども……せいぜいこの世の最期に震え己の罪を後悔するがいい! ふははははははっ……うぐっ!」
アクドーは自らの魂を生贄に息絶え、ついに月光花は罪魔一族に勝利を収めた。
しかしアクドーが崇拝していたザイマノミコという存在がいることを知り、戦いはまだ終わっていないことを悟る。
それでも重傷を負っている花柳ははなたちの元へ歩み寄る。
「皆の衆、よくぞ某の先祖の因縁を断ち切った。戦こそ終わってはおらぬが、ひと時の勝利を噛みしめようではないか。人間と妖怪の絆も固く結ばれていることもわかり、罪魔一族に勝利したことで春日殿の実家も取り戻したのだ。本当によくやった」
「いいえ、花柳先生がサポートしなければ私たちは諦めてしまい負けてました。最後まで諦めない武士の心が私たちを強くしてくださったんです。本当にありがとうございました」
「そうか……ならばもう少し武士の心得を叩きこむ必要があるかもしれぬ。皆の衆、戦の疲れが取れ次第、すぐに稽古を始めようぞ」
「「「はい!」」」
「焔間殿もプロデューサーとしての修行により励むように」
「はい師匠!」
月光花は罪魔一族に勝利し、京都に一時的平和を取り戻す。
同時にアクドーが崇拝していたザイマノミコの存在を知り、人妖神社や平安館大学の図書館で神話の詳しいことを調べることとなる。
それでも平和になったことを噛みしめ、月光花はアイドルとしての活動を本格的に始動し、京都を救った英雄として仕事もたくさん入ってきた。
こうして月光花は日本どころか世界でも有名になり、とくに和物アイドルとして欧米で人気を博すことになった。
そして新たな日常が始まるのです。
つづく!