妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第44話 就任

 はなたちは人妖神社で妖魔界の入り口である井戸に向かう。

 

 そこには妖怪たちが人間の姿で出入りをしていて、多くの妖怪たちが人間界に遊んだり仕事をしたりしている。

 

 もちろん人間も出入りができるが、相当強い妖魔力でないと出入りが出来なく、妖魔力が低いと二度と帰って来れないリスクもあるため人間は基本出入り禁止のルールだ。

 

 はなとひまわりは特別な修行を積んでいるのでたまに訪れる程度だが、もみじたちや花柳が妖魔界に行くのは初めてで緊張感が漂う。

 

「本当に大丈夫でございますか?」

 

「私たちは初めて妖魔界に行くのだから不安はある」

 

「ましてや六道のトップの天界の一部だと思うと怖いわね」

 

「ひめぎくが来てほしいって言ってるんだから特別に許されてるはずだよ?」

 

「少し心の準備が必要かもしれないね」

 

「確かに初めて行くとなると緊張するもんね。じゃあまず妖魔力を心に集中させてみて」

 

「わかりました……」

 

 ひまわりの指導の下でもみじたちは心に妖魔力を溜め込み、妖魔界への入り口を開ける。

 

 すると月光花の強い妖魔力で井戸に黒い渦が現れる。

 

 そこには妖魔界への入り口が開き、いつでも入れるようになっている。

 

「これが妖魔界の入り口だね……」

 

「某でさえも初めての事だ。春日殿や日向殿は普段からこのような事をしていたのだな」

 

「妖魔界のルールはまず武士道精神が強く、天界にふさわしい魂を持つことです。天界にふさわしい魂じゃないと高度な次元に耐えられず体ごと消滅してしまい二度と人間界に戻って来れないんです。だけど人間界だけでなく他の下界にイタズラ目的で来る妖怪hは落ち妖怪として展開を追放され罪魔として地獄界に落とされます。それは人間も同じかと思います」

 

「妖怪も天人も厳しいルールがあるのだな」

 

「はい、ですが皆さんほどの妖魔力と武士道精神ならきっと高度な次元にも耐えられると思います。ではこの井戸に飛び降り、妖魔界へ向かいます。私が先頭を切って飛び込みますので心の準備が出来たら飛び込んでください」

 

 はなは真っ先に井戸へ飛び込み妖魔界へ向かって行く。

 

 ひまわりも続いて井戸へ飛び込み、他のみんなが飛び込むのを待つ。

 

「じゃあリーダーの私が先に行くわ。じゃないとみんなの手本にならないもの」

 

「ではその次にわたくしが先輩として飛び込むでございます」

 

「本来なら某が真っ先に飛び込むべきだが、皆の衆にケガしてるから介抱する者が必要と案じられてしまった」

 

「すみません先生、やはりケガ人ですから無理はさせられません」

 

「冬野殿の介抱に感謝する」

 

「じゃあ行くわよ! そーれっ!」

 

 わかばに続いてるり、すみれ、もみじと飛び込み、つばきは花柳を介抱しながら井戸へ飛び込む。

 

 すると深く落ちていき、気が付けば夜空の上から落下していった。

 

「ちょっと何これ!? 落ちるんだけど!?」

 

「きゃぁーーーーーーっ!!」

 

「万事休すか……!」

 

 空から急降下したので月光花は死を覚悟して落下を受け入れた。

 

 すると家屋くらいの高さまで落ちると急に減速し、ゆっくりと足から着地していった。

 

 人間界よりも次元が高いので不思議な力も強く感じられたのだ。

 

「皆の衆、無事か?」

 

「はい、無事です」

 

「落ちると思ったら着地が出来たでございますね……」

 

「でもこれが妖魔界……」

 

「綺麗な街並みですね……」

 

 妖魔界の様子を花柳たちは見渡し、そこには永遠の夜空ながら提灯が明るく街を照らし、和風の建物が多いながら高層のものも建てられていて和風の異世界のような幻想的な街並みだった。

 

 風も心地よく炎も暖かく、水も人間界よりも澄んでいた。

 

 そして妖怪たちが本来の姿で楽しそうに暮らしていて、高度な次元に耐えられた人間たちも観光に来ていた。

 

 周りを見渡すとはなとひまわりがみんなを見つけて大きく手を振る。

 

「みんなー! こっちこっちー!」

 

「ひまわり! あなたね……危うく私たちは死ぬところだったのよ!?」

 

「ごめんってー! てっきり飛び降りるから落下すると察したのかと思ったよー!」

 

「だからって急に減速して落下死の心配はないって早く言いなさい!」

 

「ごめんなさーいっ!」

 

「すみませんわかば先輩! 一番把握してる私が説明するべきでした……!」

 

「はな、あなたも説明不足は感心しないぞ?」

 

「つばき先輩……すみませんでした……」

 

「今後は気を付けるように頼む。わかばもそのくらいにしておくんだ」

 

「ふう……わかったわ。きつく言いすぎてごめんなさい」

 

 はなとひまわりは楽しみのあまりに妖魔界に行くにつれての説明を言い忘れ、わかばに本気で叱られてしまう。

 

 二人もすっかり反省し、もう二度と説明不足はしないと誓った。

 

 つばきが上手くなだめつつも注意をし、はなとひまわりは落ち込みながらも妖魔界へ案内する。

 

「それじゃあ早速妖魔界を案内するね」

 

「楽しみにしているよ」

 

 ひまわりは妖魔界のグルメを案内し、はなは街並みやルールを説明する。

 

 ひまわりが案内したグルメは日本の伝統料理や家庭料理と変わらないが味付けは少しだけ薄めながらも旨味が強く高級料理を食べている気分になる。

 

 はなは妖魔界にいる間の人間には潜在能力が発揮され、空を飛んだり水の中で息を吸えたりとするが、妖魔界に着いた瞬間に自分から自分の潜在能力を無意識に自覚するようになると説明をする。

 

 月光花はもう既に妖魔力で妖怪の力という潜在能力を自分で把握しているので妖魔界でも違和感なく過ごせるのだ。

 

 街を歩いていると一人の青鬼が声をかけてくる。

 

「あんたたちは月光花のみんなだね!」

 

「はい、どうしてそれを?」

 

「姫様から話は聞いているんだ! 妖魔界へようこそ! あなたが月光花の先生の花柳小次郎さんだね?」

 

「いかにも某が花柳小次郎だ」

 

「罪魔一族との血の因縁をよくぞ断ち切ったよ! あなたがいなければ妖魔界も人間界もどうなってたことか……! 今まで先祖の呪いで辛かったな?」

 

「否、先祖の呪いを人間界で知る者は家族と妻以外おらぬ。妻はそんな某の呪いを受け入れ、そして共に断ち切るために戦ってきたのだ。そんな妻を誇りに思うぞ」

 

「罪魔の血を引いていてもここまで謙虚でいられるとは……さすが月ノ姫の先生だ!」

 

「月ノ姫って妖魔界でも有名なんだ」

 

「おうとも! 月ノ姫も立派な妖魔力を持っていたぞ! 君たちよりは弱いが充分強かった! それともうすぐ新しい妖魔大王の就任式がこの中央広場で行われるんだ! ついてきてくれ!」

 

 青鬼の案内で中央広場へ向かい、新しい妖魔大王が誰なのか楽しみにしていた。

 

 中央広場には多くの妖怪が集まり、妖魔大王の姿を拝めようと待ち構えていた。

 

 しばらく時間が経つと急に歓声が沸き上がり、新しい妖魔大王の姿が現れる。

 

「妖魔大王様ー!」

 

「えっ……!?」

 

「新しい妖魔大王ってまさか……!?」

 

「ひめぎくさん!?」

 

「やはり焔間殿だったようだな」

 

「ひめぎくちゃんなら妖魔大王にふさわしいですからね」

 

 そう、新しい妖魔大王は同じ月光花のメンバーでプロデューサー見習いのひめぎくだったのだ。

 

 はなと花柳は特別驚かなかったが、他はひめぎくの立派な姿に驚く。

 

 ひめぎくは非常に高貴な平安貴族の服を着て妖魔大王の証である尺を手に取る。

 

 そしてひめぎくはマイクで演説を開始する。

 

「皆さん、新たに妖魔大王に就任しました焔間ひめぎくです。この名前は人間界で名づけられ、お気に入りの名前です。この世界では姫様としか呼ばれなかった私に名を与え、そして人間界で共に罪魔一族と戦った仲間たちのおかげで妖魔界に平和が訪れました。その事に武士道精神を失わなかった人間たちに感謝を表明します。そして罪魔一族は真の黒幕である地獄界の女王、ザイマノミコとの戦いを控えています。彼女を討伐すればきっと武士道精神は長く続くでしょう。そこで……今こちらにいらしている月光花の7人を私と共に……ヤマタノオロチの称号を与えます」

 

「「「おおーーーーーーっ!」」」

 

「はな、ヤマタノオロチって?」

 

「妖魔界に伝わる伝説で、とくに妖魔界で評価された8人の人間が自由に妖魔界を行き来して平和と秩序を保つ警察的な役割だよ」

 

「そんな称号を得るとは誇り高き称号だな」

 

「はい、素晴らしい称号でございます」

 

「でもひめぎくって妖怪じゃなかった?」

 

「前の妖魔大王さまが元人間だから人間の血を引いているんだよ。だからかもしれないね」

 

「そうだったね。ひめぎくははなとは従妹同士だったね」

 

「それで妖魔大王自らがヤマタノオロチを襲名するのね。素晴らしいわ」

 

「皆の衆、戦いは確かに終わってはおらぬが、だからと言って張り詰める必要はない。今はこの平和なひと時をゆっくり堪能しようではないか」

 

「「「はい!」」」

 

 はなたちは妖魔界でひめぎくの妖魔大王就任式を迎え、そして人間界へ戻る。

 

 人間界に戻るには渦上の扉に乗ることで人間界こと人妖神社の井戸から出てくる仕組みだと今度ははなもひまわりもちゃんと説明をする。

 

 そして月光花たちは説明通りに人間界に帰り、芸能界を引っ張っていくのでした。

 

 つつづく!

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