はなたちは花柳小次郎の下でプロデュースされるアイドルグループの一員になり、はなの父の許可もあって養成所へ向かう。
養成所は木造建築で、平安館女学校の近くにある。
この平安館女学校は平安館大学を母体としていて、幼稚園から大学まである西日本の名門であり、中等部からは男女別学になる。
制服も女学校では桜色の着物にあずき色の袴の制服で、夏服はさすがにセーラー服になる。
部活も武道系や伝統的な日本文化系の名門で、とくに武道では世界中の高校であまり負けないそうで、負けた時は世界中のネットが荒れるほど強い。
袴制服は高校までで、大学になるとさすがに私服で登校する。
その学校の近くに最近建てられた文化会館があり、今年から花柳が全財産を出して買い取った場所だった。
10年前は名プロデューサーであり、わずか1年で世界的アイドルグループの月ノ姫を築き上げた。
しかしわずか数年で姿を消してしまった幻のアイドルグループとも言われている。
それから何度も撫子アイドルグループを作り、日本文化をより世界中に知らせるために尽力を尽くした。
ところが指導がかなり厳しく、ついていけるアイドルは今まで誰一人もいなかった。
この情報はひまわりが把握している程度で、はなは花柳の稽古が怖いものだと思い込んだ。
そしてついに稽古の時が来た。
「コホン、今日からそなたたちが新しい大和撫子アイドルグループの一員だ。メンバーは全員で7人、それぞれ個性的な経歴があるようだね。
「「「よろしくお願いします!」」」
「では最初に歌唱力を見る。まずは日向殿、歌ってみなさい」
「はい! あ~~~~~~~~~♪」
「ふむ、なるほど。発声が素直に出てるし声量も悪くない。ただ音程が少しブレているな。次は紺野殿」
「かしこまりました。あ~~~~~~~~~♪」
「ほう、紺野殿は美しい歌声だ。繊細な心がよく聞こえる。春日殿、そなたの歌声を聞かせてほしい」
「はい……! あ~~~~~~~~~~♪」
「うむ、発声も悪くないし力が入っているわけではないのだが、声量不足といったところか。となると性格面で引っ込み思案であろう。しかしそれでも構わない、時期に慣れると信じている」
歌の稽古では理論的発声の
精神統一のできている
音域こそ低いが力強い発声の藤野すみれ。
そしてひまわりに負けない力強さの冬野つばきがそれぞれ歌い終え、次に
舞踊稽古はいわゆるダンスレッスンで、基本ステップだけでなく日本舞踊や
ひまわりは運動神経がよく、慣れない動きでも難なくこなした。
るりは日本舞踊で慣れていて、すり足も簡単にこなしす。
つばきはかつては
実家が忍術の道場であるもみじはダンスに苦戦はするものの、安定した体幹で覚えれば完璧にこなしていった。
最後に演舞稽古で、演劇やパフォーマンスなどを総合的に見る。
はなは最後まで緊張し、花柳に認めてもらおうと必死だった。
それでも花柳ははなを見ると渋い顔をし、はなは自分には才能がないのかと気分が落ち込んでしまう。
他のメンバーには何かを感じたのか頷き、それぞれの才能を発揮する。
休憩に入り、はなはベンチで少し一人で考え事をした。
その様子をつばきに見られ、おしるこの缶をはなに渡す。
隣に座ったつばきは、はなを励ますために声をかける。
「君が春日はなだね。私は冬野つばきだ。よろしく」
「よろしくお願いします。冬野先輩ってあの薙刀の全国大会に出場した冬野先輩ですね。学校でも有名です」
「君も
「そんな……冬野先輩はカッコよくて一流の薙刀選手ですよ。私なんて人妖神社の巫女見習いなのに……実家を守れなかったですから……」
「あの人妖神社の炎上事件か? そのことは本当に残念だ。私が悩んでいる時に、姉であり声優をしている冬野つつじがこのプロジェクトを薦めてね。新たな私を見つけるにはこれがいいだろうと受けたのだ」
「そうなんですね」
「君は恐らく神社の使命に追われた上に、元々引っ込み思案な性格なため、委縮してしまったのだろう」
「どうして私の性格を……?」
「目を見ればわかるさ。だが君には何か特別な力を感じる。それをモノにするには時間はかかるかもしれないが、希望を捨てないようにしてほしい。さぁ、そろそろ稽古の時間だ。気を引き締めていくぞ」
「は、はい!」
つばきの励ましによってはなは少しずつではあるが自信を持つようになる。
はなはつばきのことを最初は何となく堅苦しく怖い先輩だと思い込んでいたが、想像以上に優しい先輩で安心する。
「さて、次の稽古は……否、先にそなたたちによい知らせだ。某が個人経営する芸能事務所、花柳文化劇団をここに創立する事になり、そなたたちがその劇団の所属芸能人だ」
「もう所属でございますか?」
「少し早すぎる気がしますが……?」
「それに伴い、そなたたちには宣材写真を撮ってもらう。それぞれ着物は用意してある。好きな着物を着て写真に写るがいい。所属芸能人は今のところ、そなたたちだけだ」
「「「はい! ありがとうございます! プロデューサー!」」」
「うむ。だがその前に一つ言い忘れていたことがある。私の事はプロデューサーではなく、先生呼ぶといい。その方が和の雰囲気があってよいだろう」
「「「はい! 先生! ご指導ありがとうございました!」」」
「それとそなたたちにアイドルとしての教育係に名乗り出た者がいる。今日からこの教育係の先輩の指導を受けてもらう。入りなさい」
花柳は早くも芸能事務所を立ち上げ、花柳文化劇団を結成する。
ここにははなたちの他に後から歌舞伎俳優や時代劇俳優、さらには日本の伝統的な舞踊や音楽などに携わる者も多く入る予定だ。
教育係と呼ばれる事務所の先輩がいることを知らされ、はなたちはどんな厳しい先輩が待っているのか不安がよぎった。
しかしそんな不安をかき消すほどの先輩がレッスン場に入り、はなたちを驚かせた。
「
「美月輝夜って……あの月ノ姫の永遠のセンターと呼ばれた、あの美月輝夜!?」
「よくご存じですわね。嬉しいですわ」
「美月殿は平安館大学に通いながらインテリアイドルとしてソロ活動をしている。月ノ姫で唯一芸能活動を続けていて、そなたたちの教育係として立候補したのだ。と言っても、厳しい先輩ではなく、某の厳しいレッスンを励ます癒し系だ。美月殿、彼女たちをよろしく頼むぞ」
「かしこまりました。では皆さん、宣材写真を撮りに参りますわ」
教育係の美月輝夜を迎え、和物アイドルのレジェンドがはなたちの手本となる。
宣材写真を撮り終え、はなたちの活動が本格的になる。
芸能事務所とはいえ、プロの事務所ではなくローカル路線で今後はテレビを目標に地道な活動をするとのことだ。
1週間が経ち、新たな情報が入る。
同い年で隣のクラスにいるすみれが父の人脈で時代劇のエキストラに出演。
後輩のもみじが実家の忍術道場のロケに来る大物俳優のインタビューで出る事になった。
はなとひまわり、るり、わかば、つばきの仕事はもう少し後になりそうだが、はなは神社の子という事で神社の仕事をしながらと大変だが知名度を上げるにはいい機会だった。
新和物アイドルプロジェクト、今ここに始動。
つづく!