妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第49話 平安館、崩壊

 アイドルワールドカップで優勝後、白銀雪子の見舞いに参加しアルコバレーノと深い交流をし、満を持して京都に里帰りする。

 

 京都ではアイドルワールドカップの優勝を記念し、平安館大学の武道館で臨時コンサートを開くこととなった。

 

 日本中を回り、京都で一番のアイドルとなった月光花の快進撃は続き、ついに世界一の純和物アイドルとして欧米を中心に話題となる。

 

 もちろんはなの人妖神社のみならず、もみじの紅葉流忍術、つばきの薙刀部、るりの紺野流日舞教室は多くの新規客でにぎわっている。

 

 そんな中で平安館大学の武道館で臨時コンサートの準備に取り掛かっていた。

 

「すごい……私たちって期待されてるんだ……」

 

「私たちは世界でとんでもないことをしたんだね」

 

「それほど世界に与えた影響力は大きいのだろう」

 

「世界中で武士道や和の心、大和撫子精神が流行しているのでございます」

 

「平安館の校訓がようやく世界に広まったのね」

 

「ですが私たちは決して驕ることなく、今後も心の精進をするまでです」

 

「そうだね。気を引き締めていきつつ、自覚を持って模範にならないとね」

 

「みんな本当にお疲れ様。妖魔界でも月光花が話題になっているよ。さすがヤマタノオロチだね」

 

「ひめぎく、そのヤマタノオロチってもっと詳しく聞かせてくれないかな?」

 

「ヤマタノオロチは妖魔界で優秀な武士道精神、妖魔力、そして神通力を持つ選ばれた8人の人間が人間界と妖魔界を行き来する権利のある特別な役職で、代々春日家がその役目を背負ってきたんだ。私もヤマタノオロチになっているけど、パパが元々人間だったことから妖魔大王ながら兼任しているんだ」

 

「確かに妖魔大王なのに人間界にとても出入りしていてヤマタノオロチにするには最適だね」

 

「そして妖魔界でもトップである天界にも出入りができる特別な役割だからみんな優秀だってことだね」

 

「そうなんだ、すごく光栄なことだね」

 

「そして地獄界にも時々訪れ、人間界や妖魔界に侵入した罪魔たちを鎮める役目もあるんだ。罪魔一族との戦いもその一部だよ」

 

「じゃあはなはヤマタノオロチに最初からなってたってこと?」

 

「ううん、私はヤマタノオロチになるための修行中で、前までお父さんがやってたんだ」

 

「紅葉流忍術のご先祖さまも一部任命されていました。長い歴史で見れば私で13人目です」

 

「はなともみじは前から知っていたようだな」

 

「さすが歴史ある一家でございます」

 

「そうね。そうとなれば責任重大だけど、私たちなら乗り越えられるわ。そしてこの臨時コンサートも成功させましょう!」

 

「「「はい!」」」

 

(なんだろう、この胸騒ぎは……?)

 

「ひめぎく、どうしたのだ?」

 

「あ、えっと……なんでもないです! さあ臨時コンサートを頑張りましょう!」

 

 ひめぎくが胸騒ぎを感じた中でも臨時コンサートの準備も終わり、リハーサルを通して最後の調整を済ませる。

 

 音響、照明、大道具などもしっかり確認し、本番に向けて最後の確認をして解散する。

 

 臨時コンサートは日曜日に行われ、平安館大学や付属校の生徒たちで凱旋コンサートをするライブ形式となっており、一般人は入れないようになっていた。

 

 そしてついに臨時コンサート当日になり、平安館大学や付属校の生徒たちが全員集まり、ついに臨時コンサートが開演した。

 

 和風だけでなく和楽器を使わずとも和風の雰囲気があるロックやEDM、ポップスなど最近多様な音楽性を見せるようになってきた。

 

 さらに京都の通り道の数え歌を盆踊り風にアレンジした曲も京都では有名で、観客による数え歌音頭を合唱する。

 

 コンサートは成功しつつある中でひめぎくだけはあまり浮かない顔をしていた。

 

(この違和感は一体……? そういえばアクドーがザイマノミコって言ってたけどそれと関係があるのかな……?)

 

 ひめぎくが考え事をしていると、その様子を見ていた花柳がすかさずひめぎくに声をかける。

 

「どうしたのだ焔間殿、そのような浮かぬ顔をして」

 

「花柳師匠……実は気になったことがありまして……」

 

「ほう、それは何ゆえか?」

 

「実はアクドーが死に際にザイマノミコに自分を生贄に出したことで気になって……そのザイマノミコって何者なのかパパにすら聞かされていないからどんなものなのかなって……。それにこの平安館大学から何かおぞましい罪魔力を感じるんです……。武道館のそばにあるあの御影石と何か関係があるのですか?」

 

 ひめぎくはずっとザイマノミコについて考えていて、先代妖魔大王からも何も聞いていないことで何者なのか気になっていた。

 

 そして武道館にある御影石は決して近づいてはならないと大学関係者も話していて、ひめぎくはそれが引っ掛かっていたようだ。

 

 花柳は真剣な顔で軽くため息を吐く。

 

「焔間殿の言う通り、その御影石はザイマノミコと関係がとても深いのだ。某も先祖代々から聞いていたのだが、その御影石には太古の昔、それも神話の時代にヤタガラスと協力した神々が世界中に破壊と混乱を招いた地獄の女神ザイマノミコと戦い、地獄界に封印した地とされている。ザイマノミコは世界中を回り秩序を破壊し混乱を招いた最悪の女神と呼ばれていて、日本にもザイマノミコが侵略しようとしていたのだ。ところが神々によって封印され、二度と人間界に現れぬよう地獄界に封印し、超強力な御影石をこの地に置いたのだ。だがいつしかその神話は完全に忘れられ、西暦最後の時代に知らずに平安館をここに建てたと聞いた。だがアクドーが自分を生贄に捧げたことで御影石が弱まったとすれば――」

 

 花柳は先祖代々から受け継いだ神話を話すと、途中で武道館に自信ではありえないほど激しい揺れが起こる。

 

 ステージでもその揺れは感じられ、会場は大パニックとなった。

 

 するとはなは突然うずくまり、みんなははなを囲うように隠す。

 

「うっ……!」

 

「どうしたのだ!?」

 

「はなさん! しっかりするでございます!」

 

「はな! 何があったの!?」

 

「突然頭が割れるように痛む……!」

 

「皆さんは落ち着いて外に避難してください!」

 

 会場は大きな揺れで大パニックとなり、徐々に武道館が崩れかけていくのがわかる。

 

 観客を一旦全員外に避難させ、月光花は最後に残って外へ避難する。

 

 すると武道館だけでなく平安館大学の敷地内は大きく破壊され、地面から大きな禍々しい城が出てきた。

 

 生徒も職員も全員避難が済み、月光花と花柳は外で合流した。

 

 城の上の黒い雲から雷が落ち、そして黒い渦へと変わっていった。

 

「ふふふ、人間たちの己のために逃げ惑う姿を見るのは愉快ですね。皆己の可愛さ故に他人を気遣う余裕などなくなったのでしょう」

 

「あなたは誰!?」

 

「申し遅れました、私は罪魔を束ねる女神ザイマノミコと申します。私を召喚すべくアクドーのみならず、罪魔一族の信者たちによる生贄のおかげでようやく人間界に舞い戻ることが出来ました。そして私が手塩にかけて作り上げた罪魔城はいかがいたしましたか?」

 

「ふざけないで! 私たちの学校を壊しておいて! 私たちの学校を返して!」

 

「ほう? この地はそもそも私が人間共を滅ぼすための拠点だった場所です。後からこの地を奪ったのはあなた方人間でしょう? 奪ったと言われる筋合いはありません。それに私は人間が進化してからこの世界が亡ぶだろうと判断し、人間に正義の鉄槌を下す時を何度も待ち、そして実行してきたのです」

 

「先見の明のつもりだろうけど、生憎私たちは反省と公開を繰り返し、そして君の思うようにはいかないようにしたつもりだよ?」

 

「確かに2000年前よりは成長したでしょうが、徐々に秩序は風化し、罪魔一族を崇拝する者も現れたでしょう? その時点で人間はもう秩序などなくなりかけたのです。綺麗事だけで平和などあり得ないのです。真の平和は暴力と破壊であり、人間の滅亡こそが地球のためなのです。もし私の思想がお気に召さないのであれば、この罪魔城に入り私を討伐してごらんなさい。月光花の皆さまの武士道精神、妖魔力、そして神通力とやらに期待しています――」

 

 若干ヒビが入った灰色の肌に漆黒の一本結びの髪、目は血のように赤く真っ黒な巫女服を着た成人女性と同じくらいの姿をした女性こそザイマノミコで、非常に落ち着いた態度で月光花に宣戦布告をしかける。

 

 罪魔城を地獄界から地上へと侵攻し、平安館大学や付属校は完全に破壊されてしまい、月光花だけでなく平安館生の学び舎はなくなってしまった。

 

 途方に暮れる理事長を花柳が保護し、ひめぎくは激しく震えながらも月光花の元へ歩み寄る。

 

「みんな……アクドーが崇拝したザイマノミコを目の前にして恐怖を感じたと思う。でも彼女を倒せば秩序も元通りになるし、学校も取り戻せるはず。みんな、最後の戦いに挑区覚悟はできてる……?」

 

 ひめぎくは恐怖をあまりに自信を無くし、月光花に最後の戦いになることを諭して戦う覚悟を試す。

 

 ひめぎくは怖がって下を向いていたが、月光花の顔つきを見るために顔を上げる。

 

 すると月光花のみんなの顔は曇るどころか戦う顔をしていて、ひめぎくは涙ぐむ。

 

「私もみんなも同じ気持ちだと思う。学校を壊され奪われ、そして大切な人たちに危ない思いをさせてしまった。人間は滅ぶべきだと否定されて悔しい思いもしたと思う。最後の戦いでもそうじゃなくても、私たちは日本の誇りだから最後まで戦うつもりだよ」

 

「はな……私はどうして弱気になってたんだろうな……。ひまわりたちもこんなに覚悟を決めているのに……。わかった、私も一緒に戦う。死を恐れて逃げたっていずれは滅ぼされるなら抵抗して生きる方を選ぶよ」

 

「頼りにしているよ! ひめぎくプロデューサー!」

 

「共にザイマノミコと戦いましょう!」

 

「私たちも負けるつもりはないよ」

 

「学校を取り戻すためにも全力で戦うつもりだ!」

 

「それに私たちは一人ではないのでございます!」

 

「世界平和のために最後の戦いに挑むわよ!」

 

「はい! みんなとなら勝てる気がします! そうだ、また妖魔界に赴いて初代ヤマタノオロチに会いに行きませんか? 彼らならきっと強大な罪魔にも対抗できる力を与えてくれるはず!」

 

「初代ヤマタノオロチ……私の神社にも伝わる神話上の神々だね。ひめぎくちゃん、みんんな、妖魔界に行こう!」

 

 ザイマノミコの侵略に対抗すべく初代ヤマタノオロチに会うためにもう一度妖魔界へ向かう。

 

 月光花の新たな戦いが始まり、世界平和のために今日も戦う。

 

 つづく!

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