初代ヤマタノオロチに力をつけてもらうために人妖神社へ向かう。
はなたちは急いでたあまりに徒歩で向かい、少し時間はかかったが人妖神社に到着する。
そしてもう一度井戸の中へ飛び込み、妖魔界へと赴いた。
そこには前と違って慌ただしくしていて、ザイマノミコが復活したことがもう話題となっている。
「人間界にザイマノミコが復活したとなれば妖魔界にもいずれは……」
「私たち妖怪にも勝てないほどの悪魔よ……。さすがに今回ばかりは……」
「人間界にザイマノミコが復活したことがもう話題になってるな……」
「それほど衝撃が大きかったのでございますね……」
「ひめぎくちゃん、初代ヤマタノオロチはどんな方たちかな?」
「西暦が始まる遥か前にザイマノミコは世界中で厄災をばら撒き、人間たちを何度も滅ぼそうとしていたんだ。有名なのがノアの箱舟だね。そこで日本にも目を向けてきたのだけど、ヤタガラス様と協力して8人の人間たちがザイマノミコを地獄界に長らく封印してきたんだ。その封印した場所がまさか平安館だったのは知らなかったけどね……」
「そういえば『御影石には絶対に触ったり近づいたりしてはいけない』って創立時から先生方に言われた気がしますね」
「厳重な警備とセキュリティで守られていたね」
「それにヒビが入ったということは罪魔一族との戦いで傷がついたのかもしれないな」
「それしかないね。それで8人の人間たちは後に神となり、ヤマタノオロチとしてヤタガラス様は任命し、六道に自由に行き来できるようになった。しかし西暦に入ると誰も伝える者がいなくなり、すっかり忘れられてしまったんだ」
「そっか……古文書も見つからなかった以上は伝えようがなかったもんね……」
「それに当時は妖怪は忌み嫌われていて、人間と交流することがほとんどなかったから伝え損ねたというのもある。私もパパも生まれていないとはいえ、あの時にちゃんと和解していればザイマノミコの厄災も伝えられたのに……」
ひめぎくは自分が生まれていないとはいえ、もっと早く人間と妖怪が和解してザイマノミコの厄災を伝えられなかったことを後悔する。
しかし神話というのは長い年月を経て忘れられるものであり、まだ見つかっていない事実もたくさんあるので誰もひめぎくを責めなかった。
ひめぎくもはなたちの心情を察し、顔を上げて前を向く。
「過去を嘆いても仕方ないよね。今は妖魔界でレジェンドとして隠居している初代ヤマタノオロチに会いに行くことが先だね」
「その通りよ。化身も使える以上、ザイマノミコを止められるのは私たちだけなんだから」
「切り替えてザイマノミコを倒すことに専念しよう!」
「そうだね、それが先だよね。初代ヤマタノオロチはヤタガラスさまが住んでると言われている
「それだけでも充分ヒントになるかもしれないよ?」
「ありがとう、はなさん。だけどヤマタノオロチの修行はとても厳しく、七つの大罪という人間どころか妖怪や天人でさえも日常的で乗り越えられないものばかりだからどうやって克服し、七つの大罪をいかにコントロールできるかがポイントだよ。少なくとも一昨年の私は憤怒だったけど乗り越えられなかった……」
「ひめぎくくんでも乗り越えられないほど厳しい試練なんだね」
「それほど七つの大罪は日常的に起こることだからどう乗り越えるかか……」
「でもそれってさ、時代ごとに変わったり人によって答えが変わるんじゃないかな? ほら、人間ってこんなにたくさんいるでしょ。だから正解は一つじゃないと思うよ」
「ひまわりちゃん、いくら時代ごとに変わったとしてもさすがに大きくは……」
「いや、確かにその通りかもしれない。いくら伝統的な組織だとしても形は変われど歴史が続くこともある。となれば初代ヤマタノオロチにどうやって新しい答えを見つけるかもポイントになると思うぞ」
「なるほど……伝統的な答えはもう既に広まっているけど、新たな答えなら嘘も付けないしごまかしも効かない。後はどう理解させるかがポイントと思えばみんなならできると思う。少しだけ緊張が和らいだよ、ありがとうひまわりさん」
ひまわりのさりげない言葉で緊張していたひめぎくの緊張も解け、伝統にこだわると思い込んでいたはなでさえも納得するほどの答えに月光花は希望を持つ。
八咫山に着くと山が黄金に輝いていて、よほどの上級の魂でなけれは浄化されるほど神々しく光っていた。
それでもはなたちは臆することなく八咫山へと足を踏み入れる。
「きゃっ――!?」
八咫山に足を踏み入れると突然道がまばゆく光り、月光花を散り散りにしていく。
はなたちは一人になった不安で周りを見渡し、一緒にいたはずの仲間を探しに行こうとする。
するとそこにはそれぞれに8人が目の前に現れる。
こちらははなの様子、そこには桜並木が並んでいて夜景がとてもきれいな場所だ。
「ここは……?」
「ここは強欲の間よ」
「あなたは一体……?」
「申し遅れました。私は初代ヤマタノオロチ、一ノ巻イチヒメと申します」
「私は――」
「存じていますよ。あなたが私の跡を継ぐヤマタノオロチであることも」
「そうでしたか……」
イチヒメと名乗る女性はとても黒髪ボブショート姿で清楚な雰囲気があった。
はなは思わずイチヒメに見惚れ、魂が吸い込まれるような感覚になる。
一方ひまわりは夜ながら明かりが灯っていて、辺りに神輿がたくさん置かれていた。
「みんなはどこなの!? 私はどうして一人なんだ!?」
「おー、あんたが今のヤマタノオロチかの!」
「その声は……誰!?」
「こっちじゃ、ワシは初代ヤマタノオロチ、二ノ巻ニノジョウじゃ! よろしくな!」
「初代ヤマタノオロチ……!?」
「あんたの活躍は聞いておったが、果たして暴食を乗り越えることが出来るかのう?」
「暴食……!?」
ニノジョウと名乗る男性は小柄ながらも豪快で、オールバックのロングヘアが特徴だ。
ひまわりは暴食が試練の知り、キョトンとしながらニノジョウを見つめている。
もみじは紅葉並木が並んでいて、明るい空を見上げていた。
「ここは一体……? 私たちは八咫山にいたはずでは……?」
「へえ、まさか今のヤマタノオロチさまがここに来る日が来るとはねえ」
「何者……!? 怪しい奴め!」
「そう警戒するなよ。ここは怠惰の間といって、君の怠惰はどんなものかを試す部屋なのさ。俺は初代ヤマタノオロチ、三ノ巻サンスケだよ」
「こんな軽薄そうな男がヤマタノオロチ……?」
少しチャラ目の雰囲気で身軽そうな男性はサンスケと名乗り、軽薄な雰囲気にもみじは警戒していた。
それでも気配を消せる能力に驚き、一応敬意を込めるために会釈をする。
次に藤と紫陽花、菫の花が咲き誇る花畑にいるすみれは、雨に打たれながらもはなたちを探しに行く。
「みんなは一体どこへ行ってしまったんだい……?」
不安そうに周りを見渡すと、そこには権力のありそうな白髪で白い口ひげを生やした男性が急に目の前に現れる。
「うわっ!?」
「驚かせてすまねえな。オラは初代ヤマタノオロチ、四ノ巻シロウってんだ。んでここは傲慢の間といって、お前さんの傲慢さを試す場ってやつだ」
「傲慢か……今の私に試すのはいいかもしれないね」
「呑み込みが早いな。お前さん、いい目をしているな。早速始めるか」
シロウという男は偉そうながらも物分かりのいい男性で、すみれも驚きながらも心を少し開き始めた。
つばきは吹雪が襲いかかっている雪世界に迷い込んでいた。
「これほど吹雪が舞ったのならこれ以上探すのは困難か……!」
「苦労をしているようだな」
「誰だ!?」
「俺は初代ヤマタノオロチ、五ノ巻ゴウキ。憤怒の間の管理人といったところだ」
「ではあなたが初代ヤマタノオロチ……」
ゴウキが現れると吹雪は止み、しんしんと降る雪景色へと変わっていく。
ゴウキはまるで修行僧のような恰好で、お坊さんの見た目ながらも大柄な体をしていた。
わかばは初夏の木々に囲まれ、風を感じながらも仲間たちを探し回る。
「みんなどこなの!?」
「探しても無駄さ。ここは嫉妬の間だからね。お仲間はみんなそれぞれの試練の間にいるよ」
「きゃっ!? 急に現れてビックリするじゃない!」
「ごめんなさいね、アタシは六ノ巻ロクナ。初代ヤマタノオロチってやつさ」
「じゃあみんなはそれぞれの試練の間にいるってことですね?」
「そういうことさ。アタシは嫉妬の間を管理する者さ。アンタを今ここで試そうってワケ」
「なるほどね……初代に認めてもらったということね」
ロクナという豪快で派手な女性はわかばを認めていて、自分からわかばに声をかけていくなど大胆な行動を取っていた。
わかばも最初は敵意があったが、後に認めてくれたと感じ取って敵意をなくす。
るりは田んぼが並んでいる川辺に迷い込み、一人で路頭に立っている。
「はて……わたくしは今まで八咫山にいたような……?」
「あら? また色欲の間に迷い込んだ者がいるのかしら?」
「あなたは一体……?」
「私は七ノ巻ナナミ、初代ヤマタノオロチよ。色欲を担当しているの」
「色欲でございますか……」
「あなたは見込みありそうね。試練に挑むことを許可するわ」
るりは遊女のような姿をしたナナミという女性に認められ、試練を受けることを許される。
るりは物事が早く進むことにただ立ち尽くし、ナナミに言われるがまま試練を受けることとなった。
ひめぎくはいくら周りを見渡しても闇で見えなくなっていて、手探りで前に進んでいた。
「ここはどこ……? 暗すぎて何も見えない……?」
「何と、まさか隠し試練の間に迷い込む者が現れるとは思わなかったぞ」
「隠し試練の間……? その声はまさか……!? ハチコ様!?」
「初代ヤマタノオロチ、八ノ巻ハチコだ。そなたはよほど上級な魂を持つのだな」
「そんなまさか……?」
「ここに来るのは汝が初めてだ。今まで訪れた者は誰一人もいなかったからな」
「そうでしたか……」
ハチコという女性はポニーテールで結われた凛としたいかにも女侍のような姿だった。
過去に誰も踏み入れられなかった隠し試練の間にひめぎくは戸惑い、どうして自分がそこにいるのかがわからず周りを見渡した。
月光花はそれぞれ試練の間に迷い込み、ヤマタノオロチの修行をつけるのだった。
つづく!