妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第59話 最後の試練

 八咫山にて月光花は全員試練を突破して合流し、ヤタガラスによって最後の試練を与えられる。

 

 それぞれ大罪の試練を突破した後とはいえ、最後の試練ということで緊張が走る。

 

 ヤタガラスは月光花をジッと見つめ、山頂のほこらの前に着地すると体が黄金に光り人間の姿へと変える。

 

 その姿は神話時代の日本の神のような姿で、若くも凛々しく威厳のある男性だった。

 

 そして女性なら誰もが惚れるであろう美貌も持っていて、月光花は全員ヤタガラスに見惚れる。

 

「これがヤタガラス様のお姿……」

 

「私のガラではないけど、とても整った顔立ちに見惚れてしまうよ……」

 

「あの……それよりも最後の試練はどんな試練ですか?」

 

「よい質問だ春日はな。お前の先祖はかつて禁術を犯してまでも武士道精神に則り世界の滅亡を防いだのだ。その血を受け継ぐ者としての覚悟を既に背負った顔をしている。だがそれだけではあのザイマノミコを討伐することは出来ない。そこでお前たちに大罪の集大成として無間地獄へ向かってもらう。この試練は初代ヤマタノオロチですら成功しなかった最も厳しい試練だ。万が一お前たちが命の危険を感じたらすかさず俺がお前たちをここに戻そう。無間地獄は罪魔として最も罪深い人間たちが堕ちる世界で、心から反省した者はもう一度人間界に転生し、心の修行をする権利が与えられる。その転生者を全員の合計で100人に達すれば試練は成功だ。罪魔に染まりきった人間たちを心から反省させ転生させた功績となるだろう」

 

「つまり無間地獄に落ちるほどの罪魔になった人間たちを反省させ、転生としてチャンスを多くの人に与えるってことですか?」

 

「うむ、さすが勘のいい日向ひまわりだ。しかし罪魔になった人間を転生させるのは難しく、魂から既に罪魔に染まった生粋の罪魔もいる。念のために俺もついていこう。では無間地獄へ参るぞ」

 

 ヤタガラスははなたちを背中に乗せ、無間地獄へと送り出す。

 

 地獄の最も低く暗い世界にはなたちは不快に感じ、るりに至っては酔ってしまうほどだった。

 

 それほど無間地獄というのは罪魔に染まり、悪臭もするのだろう。

 

 阿修羅界や餓鬼界、動物とは違う畜生界を通り過ぎ、そこには絵画で描いてあるような地獄の光景があった。

 

 人々は焼かれたり凍えたりしていて、罪の深さによって様々な罰が設けられていた。

 

「ここが無間地獄……」

 

「これは……残酷でございますね……」

 

「パパに連れてってもらったことあるけど、こんなに大規模になってたっけ……?」

 

「ここでお前たちが受けた試練を実践し、罪魔たちを反省させ転生のチャンスを与えるのだ。初代ヤマタノオロチすらも99人で精いっぱいだったが、今のお前たちなら出来ると信じている。だがここは危険だから念のために俺は普通のカラスとしてお前たちのそばで見守ろう。そして命の危険を感じたらすぐにお前たちを元の場所に戻す。見捨てたりしないから心配するでないぞ」

 

 ヤタガラスはその場を立ち去らず、また普通のカラスの姿になってはなたちに同行する。

 

 はなたちはヤタガラスのその言葉に安心しつつも自分のことは自分で守るよう変身をする。

 

 すると目の前で阿修羅界以上に激しい殴り合いが発生していた。

 

「お前だけは許せねえ! 殺してやる!」

 

「俺だってお前を許す気はないぞ! 首をへし折ってやる!」

 

「いいぞ! もっとやれ! 殺し合え!」

 

「ここって地獄というより無法地帯ね……」

 

「西暦最後の時代もこんな感じだったってパパが言ってた」

 

「核とウイルスによって秩序が崩壊した世界だったね。私たちは平和な時代に生まれてよかったよ」

 

「気になったんだけど、この人たちの服装って西暦時代の服じゃない?」

 

「本当だ、ひまわりちゃんよく気付いたね」

 

「平安館資料館に飾ってあった物と似ていたからそれかなと思って」

 

「あの時は生きることで精いっぱいで力がなければ生き残れない時代だったな」

 

「だから自棄に支配されてこんな好き放題しているのですね」

 

 平安館資料館に飾ってあるボロボロの服が西暦最後の時代の物で、それと同じ服を着ているとひまわりが気付き、無間地獄の9割が西暦最後の時代の人々だとすぐに分かった。

 

 実際に力なき人々は自分を強く見せようと必死で、目が合っただけで殴りかかるなど無法地帯だった。

 

 その度に極卒が必死に抑え込み、もはや反省する事なんて無理ではないかと悟ってしまう。

 

 そんな中でつばきは勇気を出して罪魔たちに声をかける。

 

「すみません、この無間地獄についてどう思いますか?」

 

「ああ? ここは居心地がいいね。何をやっても怒られないし好き放題やれる。それもこれもザイマノミコ様が支配してからさ。あの方が支配してくださったおかげで極卒共も何もしてこない。俺たちは何も悪いことしてないから罰せられるのは理不尽だと思ってたしラッキーだよ。お前たちもここにいるってことは理不尽に罰せられて落とされたんだろ? 恨むなら閻魔とかいうクソ野郎を恨むんだな」

 

「なるほど、ありがとうございました。閻魔って本当にいるのか?」

 

「閻魔はいないけど、死後に鏡が死者の人生という映画形式で親族や友人に見せられ、バツが多かった者は地獄に行くセルフ閻魔式に変わったんだ。ほとんどがバツの結果を受け入れ自ら地獄に行くんだけど……無間地獄に行く人はそれでもなお受け入れず反省もできず強制的に落とされてしまうんだ。そういう人たちがこの無間地獄にいるんだ。でも上部の命令で仕方なく虐殺してしまった軍人でも供養したり懺悔すれば罪は軽くなるよ。その分命令した上司の罪が重くなるけどね」

 

「ある程度救いはあるのね。反省の心って大事ね。それじゃあみんな、試練で培ってきた武士道精神をこの罪魔たちに手本として見せましょう」

 

 死後の世界を知ったはなたちは無間地獄に落ちる人たちがどんな人かを知り、どうやって武士道精神で反省を促すかを考える。

 

 しかしこれほど魂まで黒く染まった人を反省させ転生させるのかが課題となっている以上、とても難しいものになると実感する。

 

 つばきが質問した人も全然反省せず、むしろザイマノミコを崇拝していて無法地帯でいることに喜んでいたのだから。

 

 そんな中ですみれはうつむいたまま考え事をしている。

 

「……。」

 

「どうなさいましたかすみれさん」

 

「いや、気のせいかもしれないけれど……ザイマノミコが強い理由はこの罪魔の数の姓じゃないかって思えるんだ。もし罪魔たちが反省し、数多く輪廻転生させれば力も弱まるんじゃないかって考えたんだ。これは賭けになるし違うかもしれないけど……試してみる価値はあると思うんだ。どうかな?」

 

「なるほど、そう考えるのも自然なことだ。なら一層転生させなければならないな」

 

「ザイマノミコの魔力が罪魔たちの存在ならば数を減らせば力も弱まるということですね」

 

「そうと決まったら早速罪魔の数を減らしてみよう! 私たちがお手本として!」

 

「今までの大罪の試練を乗り越えた私たちならいけると思うわ! みんな、自分の身は自分で守りつつ彼らに心を思い出させましょう!」

 

 こうして月光花の武士道試練は開始され、罪魔たちの数を減らすために行動を起こす。

 

 ヤタガラスはカラスの姿のままはなたちが見える範囲まで上へはばたき見守る。

 

 つづく!

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