八咫山から無間地獄へ赴いた月光花は罪魔となった人たちに反省を促すべく行動に出る。
ヤタガラスは上へはばたくが月光花が見える範囲までしか飛ばず、ちゃんと見守っている。
強欲を克服したはなと暴食を克服したひまわりは、食事に対して奪い合ったり殴り合ったりしている罪魔たちをなだめようと苦戦をする。
「これは俺のだ!」
「いいや私のよ!」
「あの二人は何を取り合ってるんだろう?」
「わからないけど食べ物かな?」
「ううん、よく見ると確かに食べ物だけど……手に取った瞬間に燃え尽きてしまうよ」
「なるほど、じゃあ罪魔には触れることが出来ない食べ物って事か」
「それなら人間の心を取り戻させればいいと思う!」
「確かに! じゃあ実践しよう!」
はなとひまわりは食べ物を見つけ、罪魔たちに見つかってもいいように祈りを込める。
感謝の心を忘れず、失った命や作ってくれた人への感謝を捧げ、ついにはなたちは食べ物を口にする。
「これ美味しいよ!」
「本当だ! すごく美味しい! すみません! よかったら分け合いませんか?」
「全部くれ!」
「ワシが全部もらうんじゃ!」
「僕がもらうの!」
「その前に食べられるために失った命への感謝を忘れないで! 今こうして当たり前のように食べられる環境がいつまでも続くわけじゃない事、みんながよくわかってるでしょ!」
「「「……。」」」
「それにせっかく作ってくれたのに写真映えのために残して捨てさせたり、食べれる平和が当たり前だと思って命や作り手への感謝を忘れたら、平和が壊された時にありがたみを感じなくなるよ?」
「それに飢えてる時こそみんなで食事を分け合い、みんなで生き残ったら復興も早くなれます。そうすればもっと平和な時間が長引き、自分だけ生き残っても意味はないって気づくはずです。だからこそみんなでこの地獄から抜け出し、反省してもう一度やり直しましょう」
「「「ああ……自分たちって自分だけが恵まれればそれでいいって思ってた……。それじゃ自分が生き残っても誰もいなければ結局生き残れないんだ……。そうやって自分たちは死んだんだった……ありがとう二人とも、おかげで目が覚めた」」」
食べ物と保身に飢えていた罪魔たちは反省し、一気に浄化され天に昇っていった。
同時に魂は白くなり小さな赤ちゃんの形となって生まれ変わっていった。
(なるほど、感謝の心を思い出させ自分だけ生き残ろうとせず周りと一緒に生き残るよう催促したのだな。春日と日向は考えたな。さてと、焔間、藤野、紅葉はどうかな?)
ヤタガラスははなとひまわりの行動に安心し、もう見守る必要はないだろうと次へはばたく。
すみれともみじ、ひめぎくは思考停止している罪魔、自分を特別視していて下級罪魔をいじめている罪魔をなだめていた。
「皆さん! 地獄界に堕ちたからもう終わりなんて思ってませんか? もう一度やり直すには何もかも終わりではなく、新たな始まりのために生まれ変わることを考えましょう! この地獄を抜け出すには生前の反省の心です! たとえ反省内容が間違ったとしても一生懸命懺悔をすれば神様も認めてくださります!」
「自分が特別だと思うことは普通のことだけど、だからって他人の特別を奪っていい理由にはならないよ。誰かの特別は素晴らしいことだし、何よりも自分がより特別に感じる瞬間でもある。それぞれの特別を尊重し合えば敬意を持って接することもできる。そして自分と区別を認めてもらい、上げてもらうこともできるんだ。だからいじめやパワハラなどで誰かの特別を潰すのはもうやめよう。自分の特別を殺すことになるからね」
「この無間地獄は自棄を起こして取り返しのつかない罪、七つの大罪を多く重ねに重ねて無間地獄クラスの罪を背負ってしまった人間であふれている。だからって諦めて現実から逃げ、より罪を重ねるのは違うと思う。自分たちは確かに過去には取り返しのつかないことをしたけど、未来を変えることだってできるんじゃないかな。もし未来を変えたいのなら懺悔し反省し、そして感謝の心を思い出して! そして今度はいい環境と経験を積んで、もう一度私たちに会いましょう!」
「「「ああ……確かに自分たちは何もかも捨てて自棄を起こしてた……。そうやって逃げて好きかってした結果ここにいるんだった……。もう二度とこんな事したくない! 二度とこんな地獄にいたくない! 過去の自分と決別しよう!」」」
自棄を起こし自分を大きくしようと自分さえよければと生きてきた結果、無間地獄に堕ちるレベルにまで堕ちては諦めてしまい反省することをやめた罪魔たちは反省し、はなやひまわりの時と同じく赤ちゃんへと転生していった。
嘘をついたり残酷だったりしたとしても元々は人間で、教育や環境次第で思想や性格が歪むこともある。
そのことをひめぎくは理解し、もう一度現世で会おうと約束を交わして反省を促し、多くの罪魔を転生させた。
(焔間の自棄の罪をまさか煽りで克服させるとはな。さすが妖魔大王だ。だが冬野、常盤、紺野はどうかな?)
ヤタガラスは安心してひめぎくたちの元から離れ、つばき、わかば、るりの元へと向かって行く。
するともう既につばき、わかば、るりは多くの罪魔を浄化し転生させていたのだ。
「怒りは簡単にコントロールすることは出来ないが、その怒りを正しき方向転換をすれば成長の糧になるか……。怒りは何も解決しないのではなく、解決方法を間違えてしまっただけと思えば怒りのエネルギーも悪くはないな」
「ええ、それは嫉妬も同じよ。誰かの才能を羨んでも蹴落としたり揚げ足取ってたら自分の能力は上げられない。その嫉妬の心を正しく違う方向に向ければ憤怒と同じく成長の糧になるってわかったわ。彼らもきっとそれを思い出したはずよ」
「誰かに構ってほしいのは集団社会である人類では自然なことでございます。ですが他人の気持ちを無理やり自分に向けるようにすれば必ずや反感を買うのでございます。だからこそ相手のことを思いやる気持ちがあれば色欲に頼らず他人に認めてもらえるのでございます。それは恋愛でも、友情でも同じでございます」
「しかし一人で百人も浄化して転生させるって試練は達成できたのだろうか」
「わからないけど人数ばかり意識したら結構忘れるわ。無意識に達成できてたことを願いましょう」
「その方が多くの人数を浄化したと錯覚を起こさないでございますね。現実的でございますが、病む理由が理想の高さと現実とのギャップならばその方がよいでございます」
つばき、わかば、るりは現実的な思考で浄化と転生を続け、年長者らしい落ち着いた態度で罪魔たちを次々と浄化していった。
すると無間地獄の罪魔の人口は一気に激減し、小さな地獄界の人口もどんどん減っていった。
(既に一人百人はクリアしているが、まだやる気ということは……なるほど、よほどザイマノミコを弱体化させ武士道精神を思い出してもらいたいのだな。ならば途中で止めるのは野暮だろう。どこまでやれるか根性を見せてもらおう)
ヤタガラスは既に試練を突破しているにも関わらず、まだ浄化と転生を続けている月光花の根性を認め、もう少し見守ることにした。
すると一兆人いた罪魔が半分になり、さらにはアイドルであることを活かして大規模なゲリラライブで反省を促し、心を取り戻す歌をオペラのように歌い上げ、より広く多くの罪魔の心を揺さぶったのだ。
ゲリラライブを終えて休んでいると、ヤタガラスが月光花の前に着地する。
「お前たち、どうしてそんなになってまで残ったのだ? 既に試練は突破しているはずだが」
「え、そうなんですか? 気づきませんでした」
「私たちは無意識に人間としての心を思い出してもらおうと夢中でした」
「たとえ届かなくても心を揺さぶることは出来たかなーって思います」
「ですがわたくしたちの思いが通じたのは大きな事でございます」
「現状に満足しては鍛錬になりませんからね。だからこそもういいってヤタガラスさまが仰るまで粘ってみようと思いました」
「ヤタガラスさまの評価よりも自分たちがやりたいって思ったから続けたのもあります」
「それにみんな転生してくれたおかげでザイマノミコはより弱体化したでしょう」
「ヤタガラスさま、試練突破を無視したことは謝ります。ですが私たちは――」
「もうよい、お前たちの武士道精神の強さはどのヤマタノオロチ以上より強いとわかった。試練も突破どころか限界まで超えた。だがそろそろタイムリミットだ。これ以上無間地獄にいれば魂が死者に近づき本当に死者になってしまう。お前たちは成すべきことを果たすために生きよ」
「「「はい!」」」
「さあ、俺の背中に乗ってつかまるがいい。現世まで送迎しよう」
ヤタガラスは月光花をもう一度背中に乗せ、現世である八咫山へと送迎する。
すると上に昇っていくので徐々に光が眩しくなり、無間地獄の暗さからは信じられないほどの光が月光花の目をくらませる。
それほど自分たちが暮らしてきた光は眩しく、そして当たり前のようにしていても実は当たり前なんかじゃないことを改めて思い知った。
八咫山に戻り、ヤタガラスはまた神聖なカラスへと姿を戻し、月光花に試練合格を通達する。
「お前たちは試練を突破しただけでなく、限界を超え長くやりきった。となれば全ての世代のヤマタノオロチが使えなかった究極の化神であるアマテラスを使えるだろう。アマテラスは究極の化神故に消耗は激しいが、どんな罪魔であろうとも心の闇を斬り、そして己の闇でコントロールする強い化神だ。この化神は俺にしか扱えないが、お前たち8人が揃い、それぞれの化神を合体させれば俺よりも強いアマテラスを生むことが出来る。コツは七つの大罪の克服するだけでなく、自棄に支配されない強い心、そして自分の弱い心を認めそれでも前に進む気持ちを持つのだ。その潜在能力が上がれば誰でも妖魔力を上げることが出来る。俺もできる限りのサポートをするが、ザイマノミコを共に討伐し、もう一度人間たちに心を取り戻させよう」
「「「はい!」」」
「ここからが本当の最終決戦だ。罪魔城にいざ行くぞ」
ヤタガラスは月光花にエールを送り、分裂して小さなカラスへと姿を変えて憑依する。
その瞬間に月光花8人の背中にカラスの翼が生える。
妖怪メダルにヤタガラスのメダルがそれぞれに配られ、本当の最終決戦へと向かうのだった。
つづく!