妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第61話 攻城戦

 ヤタガラスの妖怪メダルをもらい、ザイマノミコが待ち構える平安館大学の敷地にある罪魔城へ赴く。

 

 戻る途中で花柳に無事に戻ってきたと連絡を入れ、『平安館大学前で待つ』と返事が返ってくる。

 

 ヤタガラスの送迎で人間界に戻り、ヤタガラスは目立たないよう普通のカラスの姿となって平安館上空を飛んで立ち去った。

 

 すると花柳夫妻と輝夜が目の前にいて合流する。

 

「皆の衆、よくぞ無事に戻られた。某は安心したぞ」

 

「ただいま、師匠」

 

「花柳先生、これって……」

 

「私たちの母校である平安館大学がザイマノミコによって滅ぼされ、罪魔城となってしまいましたね。卒業生として見過ごすわけにはまいりません事よ」

 

「私も東京から戻って参りましたわ。このままジッとするだなんて出来ませんもの」

 

「美月先輩もありがとうございます。ですがこの城は範囲が広く、徒歩で行くには遠く険しい道のりになるかと……」

 

「正門も重そうでございますね……」

 

「みんなで押してみよう。せーのっ!」

 

 つばきの提案で11人全員で力を合わせて正門の扉を壊して突破する。

 

 そこには大勢の下級罪魔がうろついていて、正面突破は難しい状態となった。

 

 徒歩で行くと絶対に捕まると判断し、正門の前で作戦会議を行う。

 

「さてと、これからどうしましょうね?」

 

「このまま突破すれば罪魔たちのえじきになると思う」

 

「車があれば突破できるんだけどね……」

 

「申し訳ございません……ワゴンカーはこちらに向かう途中で黒い落雷に遭い、大破してしまいました。それにおぞましい女性の声で『汝の正体は知っている。汝に近づかれては困るのだ』と脅されましたわ……」

 

「車で向かうとバレるんですね、これは一大事です」

 

「うーん、何かいい手は……」

 

「車がダメなら、戦国時代みたいに馬を使うのはどうでしょうか?」

 

「はな、そんな都合よく馬なんて……あっ!」

 

「ひまわり先輩、何かいい案が浮かんだのですか?」

 

「はなのところの神社の黄泉馬たちがいるじゃん! 彼らを使えばきっと!」

 

「そんな都合よくいくわけないでしょ! それに正門がまた閉まったらどうするの? さすがのひまわりでも――えっ!?」

 

 ひまわりははなの神社にいる黄泉馬たちを使おうという提案をするも、都合よくいるわけないし遠くて迎えに行ってもまた正門が閉まるだけだと叱ろうとする。

 

 すると目の前に馬が8匹も待ち構えていて、とくにリーダーの黄泉馬がはなの元に歩み寄ってくる。

 

「来てくれたんだ!」

 

(春日のお嬢、俺たちの背中に乗りな。俺たちは妖魔界の馬だから二人乗りくらいは楽勝だぜ)

 

「そうだね、ありがとう。それじゃあ……みんな! 行こう!」

 

「「「うん!」」」

 

「某とお千代は共に乗ろう! 美月殿は春日殿と共に乗るのだ!」

 

「かしこまりましたわ!」

 

(それじゃあ俺たちに振り落とされないようしっかり掴まれよ! いくぞっ!)

 

 黄泉馬たちははなたちを乗せて全速力で走っていく。

 

 当然足音で下級罪魔に見つかるも、はなたちは変身して武器を使い下級罪魔たちを薙ぎ払う。

 

 まるで戦国時代の攻城戦のように攻め、黄泉馬たちはなりふり構わず走り続ける。

 

 城の中は枯れた森林で覆われ、灼熱の熱さだったり凍える寒さだったりと地上ではありえないくらいの寒暖差がはなたちの体を襲う。

 

 そんな時にひめぎくは灼熱ゾーンで鬼の力で地獄の業火に強くなり、極寒ゾーンではつばきの雪女の力で寒さを凌ぐ。

 

 水辺は血の池、木は針山、岩はまるで人骨のようで無間地獄にいた時と同じ強烈な臭いとはなたちの気分を害する景観だった。

 

「ひどい……平安館をこんな姿にするなんて……!」

 

「あの御影石はもしかしたらザイマノミコを封印するための岩だったのかもしれないな」

 

「あの御影石には絶対に触るなと代々先生方から聞かされていました。まさか今になってその通りになるとは思いませんでした」

 

「となるとザイマノミコは多くの上級罪魔を使って御影石を力で割ったのかもしれない。となればヤタガラスの試練で多く浄化したのは正解だったかもね!」

 

「それならば急ぎましょう!」

 

「皆の衆、ヤマタノオロチの試練で何か吹っ切れたようだな。某すらも突破できなかった厳しい試練で何かを得たのだろう……」

 

「旦那さま……」

 

「心配するでないお千代。某はむしろ喜ばしいのだ。教え子たちが気付かぬうちに成長するのは先生の明利に尽きる」

 

「そうですね、私も嬉しゅうございます」

 

「某たちが出来ることはおそらく……」

 

「ええ、そうですね……」

 

 花柳夫妻ははなたちの成長を喜ぶと同時に、自分たちにできることは限られているので何かを感じ取った。

 

 奥へ進んでいくと徐々に攻撃が激しくなり、櫓や狭間から大量の矢が飛んでくる。

 

 さらに奥には鉄砲の弾丸も飛んできて進路を防いでいたのだ。

 

 それでも黄泉馬たちはダメージを受けず突破を続ける。

 

 しかし突破もここまでだった。

 

「これはまずいな……」

 

「今までは下級罪魔でございましたが、ついに中級罪魔が……」

 

「今の私たちなら中級程度は怖くないけど、今ここで消耗したらザイマノミコに勝てなくなる……」

 

「どうするひまわりちゃん?」

 

「私たちが戦う必要があるかもね。いこう、みんな!」

 

「「「うん!」」」

 

「その必要はない――」

 

「え……?」

 

 ひまわりが自分たちで戦おうと意思表示をすると突然花柳夫妻が馬から降りる。

 

 同時に輝夜も馬から降り、覚悟を決めた表情で中級罪魔を睨む。

 

 花柳は刀を取りだし、千代は素手で構え、輝夜も杖を握り中級罪魔に立ち向かう。

 

「そなたらは某たちを置いて先に行くがよい!」

 

「でも先生を置いていきたくないです!」

 

「私たちなら大丈夫です! 皆さんは最後の希望ですからお行きなさい!」

 

「私たちにできるのはここまでですわ! ここは私たちに任せて皆さんは早く行きなさい!」

 

「でもっ!」

 

「はな、行くよ! ここで先生たちの意思を尊重しないのは武士道に反するし、何より勝つためにはこれがベストなんだよ」

 

「ひまわりちゃん……」

 

「はなが優しいのは私たちも知ってるよ。だからこそ師匠たちの努力を無駄にしないためにも行くんだよ? 大丈夫、見捨てるわけではなく私たちに託しただけだから信じよう」

 

「ひめぎくちゃん……! 先生方、絶対に死なないでください! 信じて……ますから……!」

 

「武士に二言はない! 行くのだ!」

 

「「「はい!」」」

 

 はなは涙を流しながら花柳たちを置いて先へ急ぐ。

 

 ひまわりとひめぎくの説得ではなも意思を受け継ぎ、馬を走らせて去っていく。

 

「お千代、某の呪われた血がここで役に立つとは思わなかったぞ」

 

「旦那さま、もう旦那さまは因縁を断ち切りましたから呪われてはいません。それにその血は罪魔との戦いに決着をつける運命だと信じましょう」

 

「心得た。最後まで夫婦で共に世界の未来を守りきろうぞ!」

 

「ええ!」

 

 花柳は剣道で鍛えた剣さばき、千代は空手で鍛えた格闘技術で中級罪魔たちを圧倒していった。

 

 一方の輝夜は杖を使って魔術を唱え、中級罪魔や後から駆け付けた上級罪魔をも凌ぐ。

 

「さてと、現代人の武士道精神を見せてもらいますわ。頼もしい後輩方――」

 

 輝夜の瞳が茶色から赤色に変わり、上級罪魔でさえも鎮め地獄界に再封印していった。

 

 花柳夫妻の妖魔力も強く、化神こそ使えないが罪魔たちを続々と封印していく。

 

 一方のはなたちは罪魔たちの猛攻を退けて馬と共に天守閣へ入っていった。

 

 しかしひまわりは一旦馬を止めてみんなもそれに続く。

 

「ねえ、気づいたことがあるんだけどさ」

 

「どうなさいましたか?」

 

「さっきから罪魔たちの攻撃が本気じゃ無さ過ぎる気がするんだよね。なんだかわざと通している気がするんだ」

 

「日向もそう感じたのだな」

 

「実は私も感じたよ、ひまわり君と同じくね」

 

「やっぱり……みんなも感じたんだ」

 

「きっとザイマノミコの罠かもしれない。だけど罠だとわかって攻めないと結局世界は破壊されてしまう。となれば――」

 

「「「死を覚悟の上で攻めるしかない!」」」

 

「決まりね」

 

「ええ、決まりですね」

 

「よーし! 待ってろザイマノミコ! 絶対に白黒つけてやるんだから! はーっ!」

 

 月光花は罠だとわかった上で死を覚悟し、そして死を恐れずに世界を守る誓いを立てて馬を再度走らせる。

 

 しかし黄泉馬たちは度重なる猛攻を避け続けたせいで徐々に息を切ら始め、走るペースも落ちていった。

 

 天守閣の中に入り、罪魔力がひときわ大きなところに着いた瞬間だった――

 

「きゃっ!」

 

「いたた……!」

 

「みんな!」

 

「もう限界だったようだな……」

 

「もういいよ、みんなよく頑張ったよ。後は私たちに任せて回復したら避難して?」

 

(すまねえなお嬢……俺たちはここまでだ……!)

 

「いいんだよ? 私たちならもう大丈夫。みんな……行こう!」

 

 黄泉馬たちもガス欠が起きついに倒れ込んだ。

 

 立つことも出来ないくらい息は完全に上がっていたのではなたちは休ませることにする。

 

 天守の中は非常に暗く、ろうそくがなければ前が全く見えなかった。

 

 薄気味悪い雰囲気の中で最深部へ進むと、真っ黒な巫女服を着た女性が待ち構えていた。

 

 つづく!

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