妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第62話 ザイマノミコ

 天守の最深部に着くと、そこには真っ黒でおぞましい巫女服を着た女性が立ちはだかっていた。

 

 はなはあまりの罪魔力の強さに肌がピリピリと痛みを感じ、一歩後ずさりをする。

 

 ひまわりとひめぎくでさえも恐怖で恐れ、るりやわかば、つばきでさえも冷や汗が流れるほどだった。

 

 その女性ははなたちに気付き、優しく微笑んでくる。

 

「よくぞ参られました、月光花の皆さま。わたくしが罪魔の女神であるザイマノミコです。わたくしが長い年月をかけ、人間どもの心を支配し、そして破壊衝動を駆り立ててここまで参りました。何故人間は心を持ってしまい、罪魔という罪を重ね続けるのか。破壊を続ければ人間は地獄界に行き、二度と転生が出来ず世界は救済されるのです。みな自分さえよければよい、自分だけが幸せならそれでよい、だからこそ人間は地獄界が居心地が良いのです。しかしあなた方は何故抵抗を続けるのでしょうか。罪を重ね続ける人間に何の価値があるのか。破壊こそ正義、力こそ感情、そして秩序など何の意味もなさないのですよ」

 

 ザイマノミコは月光花に人間の価値と地獄界が本来の居場所だと諭し始める。

 

 実際人間は感情の生き物でコントロールしようとするほど以外にも衝動的になり制御が効かない時の方が多い。

 

 そんなことは月光花もわかっていた。

 

 それでも月光花はザイマノミコの考えに抵抗をする。

 

「確かに自分さえよければ何でもいいって生きるのは楽です。でも魂の修行としてこの世に転生した以上、より高貴な極楽に行くための魂の修行として秩序は重要なだよ!」

 

「それに地獄界にいるほとんどの人は自分の犯した罪に気付かず、今も苦しんでいるんだから、それが救済何てあり得ない!」

 

「ザイマノミコ! パパが妖怪になってまでどれだけ人間を愛し、心を信じて禁術を犯したかわかってない! あなたの野望を止め、本当の意味で人間たちを救ってみせる!」

 

「なるほど、ご返答に感謝します。ならばあなたたちの本当の罪魔力を呼び起こしてみせましょう。覚悟なさい――」

 

「「「うっ……!」」」

 

 はなたちはザイマノミコの背後にあった鏡の光に包まれ、黒い霧に飲まれて鏡の中へ入ってしまった。

 

 そこには西暦時代の人間たちが争い、憎み合って奪い合っている姿だった。

 

 人々は戦争とウイルスによって秩序が崩壊し、武士道どころか道徳心も思いやりもなくしていたのだ。

 

「この人たちは確か無間地獄にいた人たち……!」

 

「なるほど、これじゃあ人々は荒れ果てるわけですね」

 

「みんなとはぐれたけれど、試練の通りにやればきっと上手くいくはず」

 

 はなたちは西暦最後の時代へと飛ばされるも、無間地獄で見た上級罪魔の生前の姿に希望を捨てずにいた。

 

 はなは強欲が試され、成人男性がお金を儲けようとして嘘をついて詐欺行為をしている。

 

 同時にお金を求めて奪おうとする人々がその男性を襲い、お金を奪おうと殴り合っていた。

 

「やめて! 奪い合っても何も生まないんだよ!」

 

「こいつのせいで俺たちはお金が無くなったんだ! この嘘つき野郎! ぶっ殺してやる!」

 

「騙される方が悪いんだよバーカ! これはオイラの金だ!」

 

「そっか、騙してお金を奪ったんだ……。奪ったお金はね、いずれ自分を不幸にするだけでなく、新しい別のものを奪われるリスクもあるんだよ? だからそのお金は元の持ち主に返してあげて。あなたの大事なものを奪われたくなければ……ね?」

 

「オイラの大事なもの……。仕方なかったんだ……オイラには飢え時死にそうな赤ちゃんがいて、妻も飢えて死んじゃったからお金が必要なんだよ! だから……詐欺行為してでもお金が必要なんだ!」

 

「そうだったのか……」

 

「だから……こんなことしちゃいけないってのはわかってるんだ! でも……オイラが死んでもいいが、赤ちゃんだけは死んでほしくない……!」

 

「それならみんなで協力して復興を目指し、赤ちゃんをみんなで育てよう? 赤ちゃんは将来大きくなったら復興の手助けになるかもよ?」

 

「そうだな……お金は持ち主に返すよ。それに……自分のことよりも赤ちゃんだけは助けてほしいってお願いしてみる」

 

 強欲の原因が自分の子どものためにお金に執着し、人を騙してまで奪い取っていたことがわかり、生活に余裕がない時代だったと思い知る。

 

 ひまわりも食事への感謝を忘れていた人々が食べ物をめぐって奪い合っていた中で平和に食べられる事への、作ってくれた人への、そして食べられるために失った命への感謝を説き暴食を防ぐ。

 

 もみじもどうせ何もかも終わりだと諦め、何も努力せずにサボり続けた怠惰な人々を復興後に好きなことが出来ると説得する。

 

 すみれも力が全てだと民衆を支配し力づくで人々を押さえつけ恐怖を植え付けていたところをよい評価に変えられれば人々は協力するが、威張ってばかりだと足元をすくわれると説得し、傲慢な態度を改める。

 

 つばきも怒り任せに大暴れし、喧嘩に明け暮れた荒くれものに怒りの原因を突き止め、生活に余裕がなく自分が悪く言われているかもしれないという不安を励まし、憤怒を鎮めてみせた。

 

 わかばも自分より恵まれているからとその人を蹴落とそうとしたり悪口で悪評を広めようと試みた女性に蹴落とすよりも自分の力で這い上がる美しさとカッコよさを教え、嫉妬のあまりにみっともない真似をしないように心を入れ替えさせた。

 

 るりも生存本能のあまりに性的なことをする男女に対し、責任のない行動は自他ともに滅ぼし、子孫を繁栄させて復興の後を託すために子育てに専念する方が幸せが多いと色欲の正しい使い方を伝えた。

 

 しかし一番苦労していたはずの自棄であるひめぎくだが、ひめぎくは費とp人の不安と絶望を逆手に取り、折れた木の棒と破れた布で旗を作っていた。

 

「みんな注目! 皆さんは今は苦しく辛い状態ですが、このヤタガラスの旗を見てください! 皆さんの絶望的な状況を這い上がらせることが出来れば、この日本の最高神であるヤタガラスさまはお天道様から復活の手助けを助言してくれます! 皆さんの心と秩序で神様たちに認めてもらい、もう一度日本が世界のリーダーとして心の手本となり、最高の国にしましょう! 私たち月光花は――皆さんの心と行動次第で必ず這い上がると信じてます! だから――我慢しろとは言いませんが、復興したら皆さんの好きなことをとことんやって、平和だからこそできることを噛みしめ幸せになりましょう! まずは小さなさりげない日常に感謝し、その日常は当たり前なんかじゃないって思い感謝して生き続けましょう!」

 

 ひめぎくは自作の旗を振り続け、ジャンヌ・ダルクのように民衆を鼓舞した。

 

 自棄になっている人々にとってカリスマ性あふれる人の演説と行動、そして熱意に心が動き、日本を復興させると震わせた。

 

 その陰で二人の男はひめぎくの行動を見て何かをしていた。

 

 一方ザイマノミコは鏡を覗き、月光花の武士道精神あふれる行動に驚く。

 

「なんだと……!? こんな絶望的な状況で希望を捨てず秩序を保ち、さらに民衆を煽って平和を導いただと……!? うっ……!」

 

 ザイマノミコの罪魔力は無間地獄から解放した人々によって弱体化し、罪魔力で月光花の心を折ることが出来ないくらいになっていた。

 

 そのせいか月光花は強い心で民衆の心を動かし、罪魔力に支配されることなく試練の通りにしてみせた。

 

 その結果、月光花は鏡の世界から脱出し、もう一度ザイマノミコの前に現れる。

 

「そんなまさか……あの人間たちの心を動かすとは……!?」

 

「ザイマノミコ、確かに人間はこんな状況なら誰だって悪いことしてでも生き残りたいと思うだろう。だが心を失えば自分のしてきたことが跳ね返り、より憎しみを生む。この負の連鎖を断ち切るためには心と秩序が必要だ。お前のように破壊を求めているようでは、目先の幸せの後に必ずや長期的な不幸が出るだろう。だからこそ私たちはお前には負けない!」

 

「そうですか……。ならば仕方ありません。わたくし自らの手であなた方を滅ぼし、邪魔者が消えた瞬間にこの世界を破壊しつくしてみせましょう!」

 

 月光花の最期の戦いの火ぶたが切られ、人類の存続がかかった戦が始まる。

 

 心か破壊か、この運命はどうなるのか。

 

 つづく!

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