妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第66話 かぐや姫とヤタガラス

 無間地獄での決戦を制した月光花は地上の人間界へ戻り、アマテラスは雄々しく立ちながら姿を消す。

 

 疲れ果てたはなたちはその場で座り込み、普段から紅葉流忍術の厳しい稽古を積んできたので体力だけは残っているようだ。

 

 座り込むとかぐや姫が姿を現し、そこには意外な姿があった。

 

「皆さま、よくぞザイマノミコを討伐なさいました。月の世界から感謝いたします」

 

「えっ!? かぐや姫って……美月先輩!?」

 

「嘘でしょ!? 美月先輩ってかぐや姫だったの!?」

 

「どうやらあなた方ヤマタノオロチには事情を話す必要はありますわね。この体はわたくしの生まれ変わりの体、言わば仮の姿ですわ。本来のわたくしは既に故人で、この女性として生まれ変わり、前世であるわたくしの記憶を使ってあなた方を見守りましたわ。そして……我がペットのヤタガラスもまた、あなた方の心を試しながら見守り、そしてあなた方は見事にわたくしたちの想像を超える心をお持ちでした。これで心置きなくわたくしの魂は成仏し、いずれ彼女からわたくしの記憶は消えることでしょう。あなた方の今後のご活躍を、この美月輝夜として見守っています。そして肉体を借りたこの子にお伝えください、今まで肉体を貸してくださってありがとう、おかげでヤマタノオロチは成長し、ザイマノミコを討伐したと……。では皆さま、また会う日までごきげんよう」

 

 はなたちに後世と任せ、かぐや姫の魂は天へと昇っていく。

 

 すると輝夜はその場で倒れ込み、つばきとすみれによって介抱された。

 

 輝夜が目を覚ますと、つばきとすみれが声をかける。

 

「ん……ここは……?」

 

「美月先輩、目を覚ましましたか?」

 

「あの子は……どこに行ったのですか……?」

 

「あの子って誰のことですか?」

 

「わかりませんが……わたくしの意識の中にいた高貴な女の子ですわ……」

 

「美月先輩、その女の子ならもう成仏しました。美月先輩に憑りついて私たちを見守っていたのですが、その役目を終えお別れしました」

 

「そんな……わたくし、まだあの子にお別れを伝えてませんのに……」

 

「美月先輩とその女の子の出会いはどんなものですか?」

 

「えっと、記憶にはないのですが……わたくしが睡眠をしていると体験したことがないことが夢に出ましたわ。それも平安時代くらいでしたわ。夢はたまに前世の記憶がよみがえるきっかけとも言いますが、きっとわたくしの前世なのだろうと見過ごしましたが……ごくたまにわたくしとしての意識がなくなり、気がつけばそこにいましたわ。それも……わたくしの中にもう一人女の子がいるような意識がありましたの。あの子は一体……?」

 

 輝夜が疑問に思い考え込むと、今度はヤタガラスが本来の三本足の神々しいカラスに戻り、はなたちの前に立つ。

 

「皆の者、よくぞ我が主かぐや姫の念願であったザイマノミコの討伐を成功した。妖魔界の神である俺としても礼を言おう。もう一度人々が秩序を壊さない限り、長らく蘇ることはないだろう。しかし油断をすると復活が早まり、再度災いをもたらすであろう。そのためにお前たちが後世に心を伝え、子孫に受け継ぐのだ。それが代々伝わるヤマタノオロチの役目だ。期待しているぞ」

 

「ヤタガラスさまのお力に慣れて光栄でございます」

 

「だがこれ以上、俺は人間界にいるわけにはいかない。俺を見つければ必ずや人間たちは騒ぎになり、混乱をもたらすだろう。だからこそ俺は妖魔界からお前たち人間の心を見守ろう。我が子孫たちであるカラスたちがお前たち人間の心を俺に報告するだろうが、己らしく生きるだけでよいとだけ伝えておく。そして俺の存在自体が永遠に幻であることを願う。それが世界にとって幸福なのだから。ヤマタノオロチ、否……月光花よ。また俺が必要ならば妖魔界の八咫山で祈りを捧げるといい。その時は駆けつけ助言を与えよう。では……さらばだ」

 

 ヤタガラスは普通のカラスへと姿を変え、そして無数に分離して去っていった。

 

 はなたちはヤタガラスの美しさに魅了され、飛び立つのを見守った。

 

「日本のカラスが世界のカラスと比べてとても賢い理由はヤタガラスさまの血を受け継いでいるからなんだね」

 

「そうなるとお天道様が見ている、という表現は間違っていないかもしれないな」

 

「カラスの恩返しってあるくらいだし、賢い理由がヤタガラスさまの子孫って考えると納得だなあ」

 

「それじゃあみんな、人妖神社で少しだけ休もうか?」

 

「そうですね、でははな先輩の家で休息しましょう」

 

 ヤタガラスが去った直後に少しだけ休んだはなたちは体を休めるべく人妖神社へ向かう。

 

 体がボロボロかつ輝夜もまだ疲れ切っているのでタクシーを使おうとるりがタクシーの予約を取ろうとした。

 

 するとひめぎくの様子がおかしくなり、突然叫びだす。

 

『ひめぎく、聞こえるか?』

 

「パパ!?」

 

「どうしたんだい、焔間くん?」

 

「今、パパの声が……!」

 

 亡くなったはずの妖魔大王の声はひめぎくにしか聞こえず、すみれが心配そうにひめぎくの背中をさする。

 

 それでもひめぎくは妖魔大王との会話を続け、すみれはその様子を見守る。

 

『長きに渡る因縁をよく断ち切ってくれた。私はひめぎくがとても誇らしく思う』

 

「そんな、私ひとりじゃ無理だったよ。最高の仲間たちに恵まれたから勝てたんだ」

 

『そうか、ならばその仲間を永遠に大切にするといい。そしてひめぎくに悲しいお知らせがある』

 

「何かな?」

 

『これを最後にひめぎくと話すことは叶わないだろう。我が魂はもう転生することが決まった。だからひめぎく、ここで本当のお別れだ』

 

「そっか……じゃあ私との記憶は消えるんだね。本当は嫌だけど、輪廻を繰り返し魂の修行をするものだから受け入れるよ」

 

『理解に感謝する。本来は言ってはならないことだが、少なくとも遠い場所ではない。近くの人間の子として転生し、みんなと共に過ごすだろう。誰の子とは言えないが、もうすぐ答えがわかる、とだけ伝える。ではひめぎく、仲間たちと幸せになるんだよ』

 

「パパ! 私は命をかけてまで妖魔界と人間界を守り抜いたことを誇りに思うよ! だから……今度は私がパパを超えてみせるからね! さようならパパ……!」

 

 妖魔大王は新たに人間の子として生まれ変わるとひめぎくに伝えられ、涙を流しながらひめぎくは父と別れた。

 

 その様子を一部始終見ていたすみれは事情を聞き、涙をこぼしてひめぎくの頭を撫でて慰めた。

 

 ひめぎくは父との別れの寂しさからすみれの胸の中で大泣きし、すみれはひめぎくの気が済むまで抱きしめてあげる。

 

 そして人妖神社に着き、休息を取ってはなたちはゆっくり休んだ。

 

 つづく!

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