ザイマノミコを討伐してから1か月が経ち、平安館大学は鬼族の懸命な復興技術によってすぐに復活を遂げ、元通りの校舎となる。
るりは受験シーズンながら内部進学のため大学受験はカットされ、るりは平安館大学へ進学を決めている。
るりは日本舞踊の道を進むべく、舞踊をしながら経営学を学ぶために経営学部へと進学することとなる。
そしてついにるりの高校卒業式と同時に、もみじとひめぎくの中学卒業式が行われる。
「るり先輩! ご卒業おめでとうございます!」
「誠にありがとうございます」
「紅葉くんも焔間くんもおめでとう」
「感謝します」
「本当にありがとう。みんなと一緒に過ごしてきた時間は楽しかったよ」
「けど高等部に進学でしょ? また一緒にいられるね!」
「うん! るり先輩はもういなくなっちゃうけど……月光花としてまた一緒にいられるよね?」
「はい、もちろんです」
「いつでも大学に遊びにいらしてくださいませ」
「平安館大学は数々の政治家や実業家などエリートを生み出したと聞きました。るり先輩は家元の経営を学ぶのですね」
「左様でございます。ただ舞を踊るだけならばどなたでも可能でございますが、家元の子となると経営も学ばねばならないのでございます」
「そうね、るり先輩の家柄を考えると経営を学ぶのは将来的にもいいものね」
「ご理解に感謝するでございます」
「さあるり、卒業式に行ってらっしゃい!」
「はい!」
「もみじちゃんとひめぎくちゃんも行ってらっしゃい!」
「はい! 行って参ります!」
「次は高等部の入学式で会おう」
もみじとひめぎくは中等部の、るりは高等部の体育館へ向かう。
もみじとひめぎくだけ中等部なので別行動だが、はなたちは高等部なのでるりの門出を見送ることになる。
卒業式では入場後に効果を斉唱し、校長や来客者の言葉を聞き、合唱では平安館で伝統の『仰げば尊し』を合唱する。
あまりにも美しいハーモニーは来賓者をも感動させ、教師たちも涙を流し始める。
卒業式を終え、るりははなたちと合流する。
「皆さま、お待たせいたしました!」
「るり先輩、本当にご卒業おめでとうございます」
「るり先輩は二人の先輩とは違った意味で頼りになる方でした」
「私も月光花のリーダーとしてるり先輩の助言には助けられました」
「しかし今度は私とわかばが高等部のトップとして後輩たちを導きます」
「だからるりは大学生活を楽しんでね!」
「ひまわりちゃん、大学は楽しむのもそうだけど勉強しに行くところだよ?」
「えー、いいじゃん!」
「ふふっ、ひまわりさんはとても楽しそうで何よりでございます」
るりはひまわりの楽しむ姿勢にクスっと微笑み、わかばとはなを呆れさせていた。
すみれとつばきはひまわりを見守りつつも、るりの笑顔に安心する。
後に中等部の卒業式を終えたもみじ、ひめぎくと合流していつもの事務所へと向かう。
事務所に着くと何やら騒々しい雰囲気で社員たちが慌てていた。
「おはようございます! 何があったのですか?」
「ああ、月光花のみんなか。実は花柳社長がいらっしゃらなくてね、少々バタバタしてしまっているんだ」
「どういうことですか?」
「花柳社長の奥さまのお千代さんが突然倒れ込んでね、それで救急車に運ばれてしまったんだ。今は平安館大学病院にいるんじゃないかな?」
「それってお千代さんが病気になったんじゃ……!?」
「早く平安館大学病院に行こう。お千代さんが心配だよ」
「そうね、平安館大学病院に向かいましょう!」
花柳の妻であるお千代が倒れ、病院へ搬送されたと聞いたはなたちは急いで平安館大学病院へ駆け込む。
事務所からは少しだけ遠いが、京都駅のすぐ近くで大規模な病院なので迷わずにたどり着く。
救急外来の受付で花柳は心配そうに待っていて、はなたちは花柳と合流する。
「先生! お千代さんはご無事ですか!?」
「皆の衆、どうしてここに……?」
「花柳先生がこちらにいらっしゃると社員の方から聞きました!」
「そうか、教えてくれたのだな」
「今お千代先生はどうなっていますか?」
「まだわからぬ……大事でなければよいのだが……」
普段冷静な花柳でさえ愛する妻の容体を案じ、体を震わせながら検査結果を待っている。
はなたちは普段の花柳からは想像できない姿に不安を覚え、ただ検査室の前に立ち尽くす。
「花柳千代のご家族の方、検査結果が出ましたのでお入りください」
「心得た、皆の衆はここで待つように。何も案ずることはない、某はお千代に何があろうと冷静に対応してみせようぞ」
「はい、師匠……ご乱心なさらないように」
「承知した」
1時間後に看護師に呼びだされ、花柳は診察室へと入る。
はなたちは受付で会話することなく待ち続けていた。
すると先ほどの看護師と共に花柳が診察室から出てくる。
「先生! 検査結果はどうでした?」
「それは――少なくとも病気ではなかった」
「よかった……」
「じゃあ退院できるんですか?」
「否、しばらく病院でお世話になることになっている」
「どういうことですか……?」
「実はお千代は……お腹に我が子を身ごもったのだ」
「「「えぇぇぇーっ1?」」」
衝撃の展開にはなたちは大声で驚く。
すると周りの患者と面会の関係者たちの視線を感じ、咳払いしながら軽く当た頭ワオ下げて会釈で謝る。
花柳は安堵した表情ながらも医者の説明を真剣に聞き、産科で通院することが決まる。
「それにしても胎児の状態から察するに着床して間もない時にザイマノミコと戦うなんて、君たち夫婦はとんでもないよ。気づかなかったとはいえ、今後はそういった無茶はしないように」
「申し訳ございませんでした……」
「だが君たちが陰で守ってくれたから、この子は平和な時に生まれるのだろうと思うと強くは責められないな。だが今は無茶をせず安静にしつつ散歩で運動もするようにね」
「はい、ありがとうございます」
「それにしても、あの花柳が父親か。もっと早いと思ったんだけどね」
「旦那さまも私も罪魔の脅威に備えてましたから」
「そのおかげで平和になって妊娠したんだから感慨深いよ。花柳、お子さんを大事に育てるんだぞ。ここからは内科の俺の役目は終わった、産科の女医さんの言うことを聞いてね」
「恩に着る」
こうして花柳夫妻に新たな命が芽生え、月光花も新しい日常を送ることとなる。
4月になりもみじ、ひめぎくは高校生に。
るりは大学生へと進級して新しい学校生活を送る。
月光花の新年度はここからスタートする。
つづく!